幕間⭐:私に巡り会えた事に、あなたも感謝しなさい!
おはようございます!
こんにちは(」・ω・)
こんばんは
今回は
五月川里奈の幕間
プロローグです(*`・ω・)ゞ
「出会いは突然だけど、別れも突然なんだよ。だから人と人との出会いには感謝しなさい」
お父さんは、昔から私にそう言い聞かせてくれた。
当時の私は小さかったから意味は解らなかったけど、
今なら分かるような気がする。
お父さん、お母さんは、私が小学二年生の時に突然いなくなった。もう十年以上帰ってきていない。きっと、会うことはもう難しいと思う。それは遠い過去。それは遠い昔。だけど忘れられない想い出。あの―――男の子との、想い出―――。
その日は学校から帰ったら、パパとママが居なかった。
いつもなら迎えてくれるのに……。どこかに行ったのかな?
「パパー、ママー里奈帰ったよー」
廊下に自分の声が反響するだけで返事は聞こえない。
……き、きっとお仕事だよね!私も、もう二年生なんだから……ちょっとは我慢しなきゃ。
私は宿題のノートを広げ、宿題をする。パパに褒めてもらうんだ!ママにぎゅってしてもらうんだ!
そんな事を考えながら、頑張った。一時間、二時間。
刻が経ってもパパもママも帰ってこなかった。
宿題が終わった頃、時計の針は上と下を指していた。
「お腹空いた……」
何か食べたい……。そうだ!私も女の子なんだから料理しなきゃお嫁さんにもらってくれないよね!は、花嫁修業?ってやつだ!
よぉし頑張ろう!
冷蔵庫を開け、卵を取り出す。黒い鉄板を準備して別皿に卵を落とす。目玉焼きでも簡単だしいいけど簡単だし……卵焼き作ろう!
フライパンを温めておいて卵を敷いて箸で形作りをするがなかなかうまく出来ない。熱気も熱く、どんどん焦げていく。
ど、どうしよう……。ま、丸焦げだよ……。電源を切って、
焦げた卵をお皿に移した。ご、ご飯は……。冷蔵庫を見てレトルトご飯があったので電子レンジで温める。
主婦って……大変なんだ……ママが帰ってきたらありがとって言わなきゃ。それとお手伝いもこれからしよう!
電子レンジから温め終わった電子音がした。開けてみるといい匂いが漂ってくる。お腹の虫も鳴いている。
四角いテーブルに、黒くなった卵焼きが乗ってる皿とレトルトのご飯を置き、手を合わせ、口に運ぶ。
「味がない……」
調味料を使わず作ったので、卵の味と焦げた味しかしなかった。でもこれが私の初めての料理だったので、捨てるのは気が引けたので全部食べる。
いつもなら大きな笑い声が響いて小さくて聞こえない秒針の音がはっきり聞こえる。
「ママ……、パパ……どこに行ったの……」
やっぱり我慢できなかった。寂しくて悲しくて涙が溢れてきた。もしかしたらもう会えないのかもしれない。そんな予感が頭を過っている。
「事故にでも遭ったのかな……それとも―――。」
口に出すのを躊躇う。もし本当にそうだったら、辛いから。
「里奈を……一人にしないでよ……」
その言葉は、小さく、儚く、誰にも届かなかった。
――――目が覚めると、ふとんがかけられていた。いつの間にか寝てしまったみたい。
でも、ふとんがかけられていると言うことは
ママ達帰ってきたんだ!そう思い、部屋を見渡すが、誰もいない。
テーブルの上にはメモが置いてあった。
「里奈、お帰りなさい。お母さん達は里奈と別々に住むことにしたの。本当にごめんなさい。強く生きてね。母より」
手紙を見た瞬間、思考が止まった。意味が分からない。もう一通お父さんから置いてあったので手に取ってみる。
「里奈、お父さん達を許してくれ。すまない。幸せになるんだぞ」
「許すって、許すって何よ……幸せって何よ……!!」
現実が受け止められなかった。パパにもママにも捨てられた。
ずっと、好きって言ってくれたパパとママ……。
私も大好きだった。私の生きてる証だった。なのに……。
「う……うう……」
どうして……。どうしてなの……。その夜はずっと、ずっと涙が止まらなかった。でも、誰も慰めてもくれなかった。
闇夜は明け、世界は今日も私の事なんて何事もないように回って、いつの間にか朝になっていた。
皆には『いつも』の朝なのだろう。だけど私には、全く違う
一日の始まりだった。
食欲もない、学校も行く気もしない。突然奈落の底に落とされた私は壊れていた。
服に着替え、私は家を出る。どこかに行くとかではない。ただ、目的もなく、歩きたかった。人生なんてどうでもいい。私なんて、どうでもいい。もう全部どうでもいい。
少し歩いていると河原に誰かいるのを見つける。男の子が一人で川遊びをしていた。
楽しそう。今の私には、男の子が羨ましかった。ついこの前まで、私は幸せだった。だけど、それも……。
空は雲がかかっていてポツポツと雨が降ってきた。
私は涙を堪えきれなくなって、膝を抱えて泣いた。こんな所で泣くなんて恥ずかしいけど、もう関係ない。私は私を捨てている。
「ママ……パパ……」
長い髪が濡れて、体が重い。
―――の?小さい声だけどあの男の子が何か言っている。
私は顔を上げると、男の子が川を渡ってきていた。その時、流れが急に速くなり、大きな大木が流れてくる。まだ遠いけど、男の子からは死角になっていて、こちらからしか見えない。
「危ない!!来ちゃダメ!」
叫びたいけど、恐くて男の子には届かない。
男の子は、川を渡ろうとして、足がはまってしまう。雨の勢いも強くなっている。このままでは、男の子が流されてしまう。
「今行くから!」
走り出そうとしたとき、誰かから手を摑まれる。振り返って見ると、背の高いおじさんだった。
「何してんだ。今、川に飛び込むのは危険だぞ」
「離してっ!!男の子が危ないの!!」
「お嬢ちゃん死ぬ気か」
「見て分かんない!?人が流されそうなの!離して!!」
私は、男に蹴りを入れる。男は私から手を離し、そのまま私は振り返らず川に飛び込んだ。
……どうせ死ぬんだったら、まだ生きたい人を助けたい。それが最期に私ができること。
男の子は流れてきた大木に掴まっていた。
「ねえ!手出して!」
「でも君まで流される」
「いいから!!」
男の子は、手を差し出すと、大木ごと引っ張り、紐を私に渡した。
「え?」
「こんな、僕の為にありがとう。僕はもう生きたくなかった。
誰も信じられなかった。誰も来ないと思ってたよ。でも、君は来てくれた。もう一度、僕は信じれるかな。バイバイ、幸せに生きてね。大好き」
川の流れが逆行し、私のいる場所は水位が下がった。紐はどんどん大きくなり、橋が架かる。逆に男の子側は更に水位は増加し、滝になっている。
「待って!待ってよ!」
私の想いは届かないまま、男の子は流されていった。
皆……、私に関わった人は離れていく。何で……。どうしてなの……神様、教えてよ……。
川の水位はもう戻っており、雨も止み、空には虹が架かっていた。まるで、生き続けた事を祝福するかのように。
河原の上を見てみると、もう男の気配はない。
助けて!誰か助けて!叫びたいのに、変わりたいのに、私は私のままだった。
通りかかったパトカーから警官が駆け寄ってくる。
警官に全てを話したが、雨など降っていないと言われ否定された。それでも私は必死に訴え、捜索してくれると言ってくれた。
パトカーで家まで送ると言われたが、私は断った。
不思議なことに、服も髪ももう濡れていない。
本当にあれは悪い夢だったのかもしれない。
私は立ち上がり、スカートのポケットに違和感を感じた。
中に何か入ってる感じがしたので手を入れてみると、星型のアクセサリーが入っていた。
「何これ……」
『大好きだよ』さっきの男の子の声が頭で反響し、思わず顔が赤くなる。家族以外の男の人から好きなんて言われたことがなくて、パパの時とは全然違って心臓が高鳴り始めた。
男の子からの。そう考えるだけで息が苦しくなった。もう、男の子はどんなに願っても会えない。そう思うと悲しくなる。
名前も分からないし、初めての会話で、最後の会話だった。
できることなら、もっと話したかった。もっと君を知りたかった。
また涙。なんか、昨日から泣いてばっかりだ。
私は星のアクセサリーを髪に付ける。鏡で見たけど、私なんか似合わないくらい可愛い。
「星に願いを。なんて」
少し笑う。私、まだ笑えたんだ。
不意にパパの言葉が蘇ってくる。
「人と人との出会いは突然で別れも突然……。また……、またどこかで巡り会えるかな。」
そんな訳ないよね。でも、この巡り会いには感謝しないと。
赤くなった夕日を背に私は家に向かって歩いて行った。
家に着くと、女の人が立っていた。
「あなた、五月川里奈ちゃんよね?」
「そうですけど……」
「あら、ごめんなさいね。怖がらせちゃったかしら。大丈夫。おばさんはあなたの味方だから。私は児童養護施設『スノードロップ』の理事長してる筑波静香って言うの。よろしくね」
筑波静香と名乗った女は、にこにこと笑って、手を差し出してくる。
「私はね、親がいなくなってしまった子供達を社会に旅立てるように、支援してるの」
「どうして、親がいないって知っているんですか?」
私が、警戒して聞いているけど、女はまるでテンプレがあるかのようににこにこしながら話した。
「数日前ね、あなたのお母さんから、相談があったの。もしかしたら里奈と離れて暮らすことになるかもしれないって」
「どういう事ですか?」
「あなたのお母さんは、命を狙われているの。お父さんの借金でね。でも、お父さんは言ってたわ。娘がいることはバレていないから、里奈だけでも、助けてくれって」
「私じゃなくて、ママとパパを助けてよっ!!なんで―――」
私は唇を噛む。血の味が口の中に広がった。
「ごめんなさい……。私にはこれが限界だった。でも、お母さんもお父さんも生きてるの。だからいつか会えるわよ。私はあなたの希望になりたいの」
女は、罪悪感があるのか、笑っていた顔はうつむき悲しそうな顔をしている。
「スノードロップ、この花はね花自体は下を向いているけど厳しい寒さの冬を耐え抜いて、その間に花を咲かすの。花言葉は希望。なんか、素敵じゃない?」
だからと、女は続ける。
「今は下を向いていて希望なんてなくて、絶望かもしれないけど、希望になるように頑張るからおばさん。必ずお父さんとお母さんに合わせてあげるから」
もう生きるつもりはなかった。この女が言っていることが本当かどうかは分からないけど、でも、もう一度、ママとパパに会うため、私は手を差し出した。
「五月川里奈です。よろしくお願いします」
女は、私の手を握ってきた。
こうして私は施設『スノードロップ』に行くことになった。
必要な物は全て買ってあげる言われたのでそのまま車に乗って施設へ向かった。
施設はまだ作られたばかりのようで綺麗な外装、プール、裏にグラウンドもあった。
女に着いていくと、私と同い年くらいの女の子や、年上の女の子が大勢いるユニットという場所に案内される。話し合っている女の子達は楽しそうだった。
リビングを通って部屋に案内され、荷物を置いて、少ししてから買い物に行くことになった。それまで、周りでも見ててと言われたが、怖くて部屋からは出れなかった。しばらくするとノックの音が聞こえたので出てみると女だった。
「行きましょうか」
私は、ここで生活するための準備を始めたのだった。
――――買い物をしてきた私は、部屋から出ずに、買ってきた漫画を読んでいた。
私は学校でも、馴染めていなかった。だから、家だけが、家族だけが救いだった。
ここの子達とは……仲良くなれるのかな……。私は不意に窓の外を見る。
私はこっそり窓から外に出ると星がキラキラ輝いていた。
「すごい、流星群だ!!」
夜空に流れる星。とっても綺麗だった。
「星……」
髪に着けた星型の髪留めを触る。
―――――どうか、どうかお願いです。もう一度、あの男の子に会わせて下さい。
こんなの無意味だって分かってる。叶うはずないって。
だけど、あの男の子は、どこか特別な感じがした。言葉では言えないけど、でも、感じた。
その感じたものが何なのかは、まだわからないけど……、
きっと……運命だと、信じて。
真っ暗な空に輝く星は、私の心を照らすようだった。
そして、あの日……。私は運命と出逢った。
それでも君は僕を憶えていてくれますか?好きでいてくれますか?
幕間 私に巡り会えたことにあなたも感謝しなさい!をここまでご覧頂きありがとうございました!!
次の話も、よろしくお願いします
(* ´ ▽ ` *)
咲ヶ丘ゆづきでした(/・ω・)/にゃー!