初めての大切な”友達”
おはようございます!
こんにちは!
こんばんは!
咲ヶ丘ゆづきです!
【それでも君は僕を憶えていてくれますか?好きでいてくれますか?】
お楽しみ下さいっ!
僕の変態ぶりは瞬く間に学校中へ広がり(女子からの疾風の如く速い噂)女子からは、蔑んだ目と殺気と軽蔑な目で見られ、男子からは尊敬とヒーロー的な扱いを受けていた。そして、付けられたあだ名は―――――。
「なぁ、あのSSS級美少女村山葉月のパンツ見たんだろ?何色だった?ねぇ?何色だった?」
これからの高校生活……先が見えないと涙を流していると、前の席に座っているクラスメイトから声をかけられた。
「俺、君端 皇帝よろしくな」
「うん……」
「で、何色だった?」
君端君は村山さんの事好きなんだろうか。いや、でもこれは好きとは違うし……。
君端君はニコニコしているが僕にとってはとんでもなく恐ろしい事を聞いてきた。ちなみに先生から連行される際、そのSSS級美少女からくすぐったい吐息で「ここで見たこと、聞いたこと、私に関すること全て、他の人に言ったら……分かるよね?(笑顔)」と言う言葉を頂いたので口を割ることはできない。というか頭に入ってこない。
あの時、世の中には触れてはいけない事、ラッキースケベなんてないことを確信した。普通なら喜べるのだろうが、僕にはそんな余裕は全くない。
「あいつ、強気で男子から恐れられてるんだよ、本当に女なのか、怖すぎだろ!ってね。むしろ男より強い説があるぞ?」
「そ、それな……」
「最近の女って怖いよな。まぁ、強気な女を落としてデレさせるってのも可愛いんだけどな」
こいつ、すごい軽そうに見えていい奴なのだ。まだ学校初日だというのにこいつの周りには人が集まる。いわゆる陽キャって奴なのかもしれない。相談されても、最後は笑顔にしているし、恋愛相談なども完璧なようで人気が高い。女子にも男子にも隔てなく話しかけている。君端君の前の席の人は会話に参加せず、携帯をずっといじっていたが、
「それ、好きなん?俺もやってるぜ!俺は島村涼花ちゃんが好きなんだけどお前は?」と相手の好みに合わせるコミュ力の高さ。
入学早々告白してフラれてしまった女の子がいれば、
「お前、可愛いんだから元気出せよ?な?女の子は笑顔の方が男子は好きだぞ。それに一度告られた男子は糸の解れそうな気持ちだから、揺らいでるから、もっと磨いてアタックすれば絶対行けるって!俺も手伝ってやんよ!ちなみにあいつの好きなタイプと告白のシチュは――――」
「ありがとう……頑張ってみる」
不思議な事に泣いていた女の子も笑顔になって前向きになっている。そうか、これが神対応か……。
こんな僕にも普通に話しかけてくれるし。やっぱり、君端君が僕に話しかけることはクラスメイトは良く思っていない。穢れが移るとか、病気が移るって言われてたのに対して
「俺は、こいつはそんな奴じゃないと思ってるぜ。男なんて皆そういう場面に出くわすから」
君端君ならいいかも❤という声もあった。ここまで明確な差があると精神に来る。僕のメンタル自称粉雪だから。さすがイケメン、モテ度が違う。
女子からは可愛いという評判もある。髪が長いのか髪ゴムで軽く結ってるのだ。確かに可愛いかもしれない。髪は艶やかで、肌は綺麗で、本当に女の子なんじゃないかと思った。本人曰く彼女の募集中らしい。彼女いないなんて驚きだ。
「でさでさ、何色だった?誰にも言わないからさ~」
やっぱこいつ男だ。女子でこんな奴いねーよ。
こいつ思春期の男のようで女の興味には勝てないみたいだ。
「ご、ごめ……ん。言うと……こ、殺され……あ、あぁぁぁあああ!」
あの時の恐怖が甦る。高校生活不安と絶望が再び押し寄せ、たった一度の過ちでここまで人生が傾くなんて思っていなかった。でも僕はまだいい方かもしれない。君端君がなんとかクラスの皆との仲を繫いでくれてる。それがなかったら僕はいじめられていただろう。
「タダとは言わねーよ。もし言ってくれたら、この噂全部消してやるよ、さらにサービスで良い噂も流してあげるけど?」
そんなことできるのか……普通の人間に……。いや、こいつ、ひょっとして神なのか?神様なのか?少し胡散臭い気もするが、本当だったらすごい。でも、もし嘘だったら……今度こそ高校生活も人生も終わりだ。
「俺を信じろよ、な?悪いようにはしない。俺ら、『友達』だろ?」
涙が溢れて止まらなかった。こんな僕を『友達』なんてくれる人がいてくれるなんて。
僕はこいつを信じようと思う。……最低だけど。
「で、何色だった?」
息を呑み、耳打ちする。
「…………ピンク」
ほむほむ……え?……ピンク!??!そいつは期待を裏切らず大声でそれを告げた。クラスはもちろん、隣にも聞こえる声で。終わった…………。今度こそ本当に終わった。次は本当に死ぬな……。再び、頭が真っ白になる。てか、これセクハラじゃん……オワタ
もう一生女の子となんて……デート……したかった……。
クラスはシーンと静まり返った。
「い、いやぁ……ご、ごめんごめん」
何がごめんだよ……ちくしょう……。己の情けなさ、人としての価値、他人の信頼。全てを失った。もう、誰も信じない。他人も、嘘も優しさも現実も、自分、さえも。
「じゃ、約束通り消してやっから安心してちょ」
「もういいよ……もう、どうでもいい」
「そんなにデートしたいんなら、俺とするか?」
カチンと来た。確かにこいつは格好いいし可愛いの二刀流だ。だが、男だ。声は女っぽいが、胸はないし、化粧もしていない。
だから言ってやった。当然だ。
「は?お前舐めてんのか?誰がお前みたいなちっぱいでブスな奴とデート行くんだよ。そういうのうざい。大概にしろ」
「………は、あははっ……そうだね、w俺男だしな―――――。
…………ごめん。…………記憶消しとくよ。……外行こうよ。呪演は外じゃないとできないから」
言われた通り外に向かう。君端君の背中は小さく、よく見ると背も小さい。髪もどのくらい長いのかも、分からない。
髪を下ろして、スカートとか履いたら、本当に女の子なのかもしれない。
玄関に着き、校庭に出る。外は雨が降っていた。大きな粒で、土砂降りだった。
こんなこともあろうかと折りたたみ傘を持ってきていて良かった。君端君に駆け寄り、傘を差し出す。彼はいらないと言ってきた。
「俺、雨好きなんだよな。なんか、洗い流される、というか。雨の時にしかできないこともあるし。それに呪演ができない」
「でも、風邪引くし」
「じゃあ、持ってて欲しい。頼むよ。でも、絶対見ていいって言うまでこっち振り返んなよ」
そう言って君端君は、何かを唱え始めた。僕は言われた通り、後ろを向く。さっきから君端君の様子がおかしい気がする。覇気がないと言うか、テンション低いというか。
何分かして唱え終わったのか、声が止まる。だけど、いいとは言われていないので向けない。
僕ら二人の空間にでもいるみたいに音も声も聞こえてこない。
だから無音が、苦しく感じた。いや、僕は悪くない……冗談でも僕は本気で傷ついた。”友達”なんて言葉で僕を惑わして、記憶消すから、なんて言って、脅して。そんなことできるはずないだろ……。嬉しかった……。本当は嬉しかったから、許せなかった。
まあ、もう過ぎた事だ。転校でもして、誰も知らない所で暮らそう。そう僕は考えていた。
「まだ?」
ちら、っと見てみると、頬が雨で濡れていた。泣いてる?
「泣いて――――」
「な訳ねーじゃん!へへお前も泣いてっぞ」
「泣いてないよ。雨だよ」
そう言ってる内に、呪演は終わったようだった。
…………。ここは?何で、外に?
雨も降ってる……ずぶ濡れじゃん!僕と君端君は急いで教室に戻った。クラスは騒いでいた。
記憶が消えたことは、彼意外知らない。
「上手く行ったな。いいんだよな、これで」
彼の言葉は誰にも届かない。僕にも、あいつにも、あの子にも……。
本当に後悔して、悔やんで。そんな未来が来るなんて、僕にはまだ、想像できなかった。
「なぁ、シーザ~。俺、瑠海たん好きなんだけどさぁ、どうすればいい?」
「シーザーっちは、部活にゃんにするのにゃ?」
自然に君端君の周りに人が集まってくる。集まる人は皆笑っている。
入学初日、教室には幸せな笑い声が響いていた。
【それでも君は僕を憶えていてくれますか?好きでいてくれますか?】を読んで頂きありがとうございました!
これからも頑張ります!応援して頂けるととっっても嬉しいですっ!(≧▽≦)
咲ヶ丘ゆづきでした!(´・ω・`)b