表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

快感

作者: イツカ

強姦罪で捕まった男は、裁判で涙ながらに話した。


「あんなことするつもりは無かった。好きだったんだ。だが彼女はあっけなく俺を振るだけでなく、ゴミを見るような目で俺を睨んで、それから嘲笑った。俺はかっとなって彼女の腕をつかんだ。彼女が悲鳴をあげたので、俺は慌てて口を塞いだ。その後は、夢中で何も覚えていない。気がついたら……彼女は裸で、ぐったりと倒れてた」


男の告白に対して、裁判長は冷淡に告げた。


「君がレイプした彼女は、精神的苦痛から植物状態になったよ」


男は地に崩れ落ち、わんわん泣いた。


「うそだ、そんな、そんな。ああっ、俺は取り返しのつかないことをしてしまった。もうだめだ、なにもかも終わりだ。裁判長、頼む、俺を死刑にしてくれ。殺してくれ。殺してくれぇ」


裁判長は眉ひとつ動かさずに答えた。


「もちろん、然るべき罰を受けてもらう」




処刑場は、真っ白な部屋だった。ロープもギロチンも、何も無い。執行人とともに部屋に入った男は、これから自分はどのように殺されるのだろうと考えた。いきなり背後から刀で斬られるのだろうか。それとも部屋いっぱいに水が流れ込んできて溺れ死ぬのだろうか。あるいはこの部屋自体が巨大な電子レンジになっていて………。考えるほどに不安と恐怖が脳を埋め尽くした。全身の毛穴から汗が噴き出て、ひざが震える。


「それでは、処刑を始める」


執行人はそう言うと、部屋を出ていった。


ああ、ついに俺は死ぬのか。あんな女に手を出そうとしたばっかりに。短い人生だった。ちくしょう、生き残る方法は無いのか。ちくしょう、ちくしょう………。


だが、扉は再び開いた。さっき出ていった執行人が、担架を引きずって戻ってきた。誰かを乗せているようだが、執行人の背中に隠れて見えない。執行人は担架を回転させ、男に見えるようにした。その上に寝ている人間を見て、男は目を見開いた。俺を振った、あの女じゃないか。


女は半目を開いたまま、ぴくりとも動かない。まるで死んでいるようだった。


「この女を犯し、殺せ」


執行人が唐突に言った。


「は?」


男は思わず聞き返した。


「この女を犯し、殺せ。それがお前に科せられた刑だ」


執行人は無表情で繰り返した。


「何を言ってる……そんなこと、できるわけがないだろう」


「できない、と言うのか」


「当たり前だ!彼女は被害者なんだぞ。なぜ殺されなければならないんだ!」


男は語気を強めた。


「できないならば、お前を死刑とする」


「ああ……ああ、もちろん、最初からそのつもりだ。彼女には何の罪もないんだ。彼女に手出しは、させない」


「お前だけでなく、お前の妹も死刑とする」


「なに、妹だと」


「そうだ。お前の妹は今、ある罪を犯して捕まっている。本来なら軽い罰で済む程度の犯罪だが、お前がこちらに従わないのなら、妹も死刑とする」


「待ってくれ。それだけはやめてくれ。俺の大切な家族まで巻き込むなんて。頼む、頼むよ。家族は関係ないんだ…………」


「ならば、刑を受け入れろ」


泣き崩れる男に、執行人は淡々と言った。




「くそっ。なぜだ、なぜだ………。なぜ何の罪も無い女が犯され、殺されなければならないんだ……。ああ、頭のおかしい執行人のせいで、かわいそうに、かわいそうに……。家族を人質にとりやがって、卑怯者、卑怯者。やい、執行人。お前には人間の血が流れていないのか。人を処刑し過ぎた挙句、人の心を忘れたか。お前のせいで、哀れなこの女は死ぬのだ……」


男は激しく担架を軋ませながら、女の首を絞めた。女の表情は氷のように固まったまま変化しないが、男を睨んでいるようにも、嘲っているようにも見えた。


「ああっ、哀れな女。俺を振ったばっかりに。哀れな女。哀れな女。哀れな女。哀れな女。哀れな女。哀れな女。哀れな女。哀れな女。哀れな女。哀れな女。哀れな……ああああっ!」


絶頂した男の目の前に、鏡台が置かれた。男は鏡の中に、恍惚とした表情の自分を見た。


執行人はため息をついて、男に告げた。


「それは精巧に作られた人形だ。それから、お前に妹はいない。お前は死刑だ」


男の顔はみるみるうちに醜く歪んでいき、髪の毛が全て抜け落ちた。


男は鏡の前で奇声をあげながら息絶えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ