プロローグ
プロローグ
2062年、第4次世界大戦の終戦後、敗戦国ノーランガント皇国は、勝戦国の統治の失敗により経済が止まり、治安の悪化、国民も飢饉により苦しんでいた。
治安の悪化に伴いこの国ではあらゆる地方でマフィアが人々を陥れ、大金を巻き上げ、マフィアどうしの抗争は止むことなく続いている。
早朝、霧が立ち込めるどこか中世風な街ノーランガント皇国の西側に位置するウェストステンで2人の男が暗がりな路地で身を潜めていた。
2人の男は所々に装飾の入った軍服のようなコートを羽織り、左腰には帯刀し反対の腰には銃がホルダーにしまわれている。
「今回のターゲットはあいつだな…」
男は言った、髪が短髪で銀色の青年が路地の影からある人物を観察している
「ギンジ先輩確かにあいつで間違いないっす」
ギンジのことを先輩と呼ぶこの、どこかまだ幼く見えるもののしっかりとした顔立ちの赤毛の青年
「おい、ユウゴ今回のターゲットは生け捕りだ、絶対に殺すんじゃねぇぞ。奴らのしっぽつかめるかもしれんからな」
と言いギンジは標的となる男の動きを目を離すことなく観察している
「わかってるすよ、生け捕りだから今回の任務僕が駆り出されてきたんでしょ」
観察されてる男、頬が痩せこけ目も虚ろで何かボソボソと呟きながら、まだ人通りの少ない街を歩いている。
「いくぞ、ユウゴ!」
掛け声とともにギンジが勢いよく路地から飛び出した。
「って、先輩待ってください!そんなんじゃ気付かれますって!」
ユウゴはギンジを止めながら路地から這い出るが、時すでに遅く、標的に気付かれた。標的となる男が背後から迫る2人に気付き走って逃げようとする。
「だから言ったじゃないすか、もうどうするんすかこれ。僕走るの苦手なんですよ」
息を切らしながらユウゴは走るもギンジと標的に少しづつ離されていく。
「ユウゴおせーぞ、そんなんじゃ逃げられちまうだろうが」
「先輩があんな勢いよく飛び出すからですよ!ったくしかないっす」
と言いユウゴがその場で立ち止まりホルダーに入れている銃に手を伸ばし、標的に向って1発の銃弾を放った。
ユウゴによって放たれた銃弾が、標的の男の左足を貫いた。
男は左足を撃たれた衝撃でその場に倒れこむ、そこにすかさずギンジが追いつき男を捕獲する。
「ユウゴてめぇ、そんなすぐに撃つんじゃねぇよ!弾1発いくらするとおもってんだよ!うちの支部、今金がねぇんだよ!その腰にさしてるもんつかえよ、なんのために帯刀してきたんだよ!」
ギンジは男が動かないように、地面に押さえつけながら、ユウゴに向って怒鳴っている。ギンジが怒鳴るたびに男を押さえつける力も強くなり、男の息が弱まっていく。
「だって、先輩、僕走っても追いつけないすよ、最初に先輩が気付かれたからじゃないっすか。それにあの距離じゃ僕のコイツもうまく使えないっすよ。 あ、ちょ、先輩押さえすぎっす!死んでしまうっす!」
「うわっ、あぶっね、うっかりやっちまうとかだったわ」
ユウゴに言われたギンジは慌てて男を押さえる力を緩める。次第に男の呼吸が落ち着いてきた。
「さぁ、吐いてもらうか、お前あの組織のもんだろ?」
ギンジが呼吸の落ち着いきた男を問い詰める。
「早くしゃべったほうが身のためっすよ、先輩あんた達に容赦ないっすから」
と後から追いついてきたユウゴが微笑みまじりで言う。
「ハハッ、ハハハハッー」
男が急に笑い始めるた。
「いーぜぇ、喋ってやろう、どーせあんた達に捕まったんだ、もう、俺は生きてられねぇしな。俺たちはな、新しいこの国が見たいだよ、あのお方に統治され、変わりゆくこの国をな!」
「なんだ、それはどういうことだ、あのお方とはいったい誰だ?」
ギンジが声を荒げ男に詰め寄るが、それをユウゴが間にはいりギンジを押さえる。
「ちょ、ギンジ先輩落ち着くっすよ!何そんな荒げてんすか。あとあんた、俺たちはあんたを殺したりしないっすよ、ちゃんと捕虜として、交渉材料になるように扱うっすから」
「ハハッ、お前ら二人なんか勘違いしてねーか、誰がお前たちに殺されるっつんただ…」
パァン!
早朝、 人がまだいない街中で銃声が響いた。ギンジが掴む男の眉間から一筋の血が垂れてくる。
「なっ、くそっ!」
「やられちゃったすね、あいつらほんと容赦ないっすから」
中世風の建物の屋根に2つの影が見える、一人は銃を太ももにつけたホルダーにしまっている。もう一人はどことなく楽しそうに屋根の上にもかかわらず、体をくるくると回している。
「ほんと君、容赦ないよねー」
楽しそうに回りながらもう一人に喋りかけるが、返事がない。
「危なかったよね、もう少しで僕達の情報があいつらに流れちゃうところだったねぇ アハハッ」
またも返事がなくただ銃弾を放った方を見つめている。
「もぉ、返事くらいしなよ! そんなんだからモテないだよ…。てか、ずっとあっち見てるけど何かあるの??」
今度は回るのをやめ、頬を膨らませながら少し拗ねたような感じでもう一人に問いかける。すると微小な沈黙の後に一言返事があった。
「どこかで見たことがあるような気がしただけだ…」
「へーそうなんだぁ、もしかしたらあんたの顔も知られてるかもね。さっ、行こもうすぐであのお方が帰ってくるよ」
と言い二人は早朝、暗がりのまだ残る闇の中に消えていった。