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勲章授与式


コンコン。と、客間の木扉がノックされた。


「ラナリア様、いらっしゃいますか?」

「はい」

「国王のガルドニックだ。失礼するぞ」


 これから謁見する予定であった国王の突然の来訪に、3人は戸惑いを隠せなかった


「と、突然どうされたのですか?」


 ラナリアが舌を噛みそうになりつつ尋ねている。しかし、ドラークは国王の後ろで大人しく立っている、ルミアナ第二王女に目を向けていた。

 ルミアナ王女はドラークが転生してすぐに会った屋敷の者以外の人間で、数少ない理解者だ。

 同い年で、珍しい物や出来事に目がないと聞き、会うたびに地球での事を話している。

 実は、ルミアナ王女はドラークが転生者であることを知っている唯一の王国人だ。しかも、ルミアナ王女が自ら、『もしや転生者なのですか?』と尋ねた。

 この質問には、いつも冷静なドラークも驚きを隠せず唖然とした。

 なぜそう思ったのか、と問うと『昔、この王国に現れた魔王を討伐した勇者カナデが自らを転生者と自称し、その者は黒髪に黒い眼だった』。

 そして『度々、「ことわざ」という教訓のようなものや「えいご」という不思議な言葉を使う事があった』と、伝えられたからだそう。

 バレたのはおそらく、自分の容姿とOKなどの普段使っていた言葉を口に出してしまったからだろう。ドラークはそう思った。

 その勇者は、この国に多くの技術を残して亡くなったらしい。


「堅苦しい話し合いをするのが嫌なのは、そなたも知っているだろう?」


 国王、ルミアナ王女含め全員が苦笑いする。ガルドニック国王は、礼節や式典などの堅苦しいことが苦手であり、宰相や大臣達の悩みの種として、王太子時代から今に至るまで長く問題となっていた。

 しかも、回りの目を盗んでは上位冒険者として仮面で顔を隠しつつ討伐依頼やクエストをこなし、腕をあげている。


「だから、この後の話し合いは無しにして、ここでゆっくり歓談することにしたのだ。

 ルミアナがいるのは、ドラーク君と親睦を深めるためだ」

「そうだったのですね……承知致しました。

ドラーク、リム、行ってきていいわよ」

「ん!行こ!」


 リムに腕を引かれながら、ルミアナ王女を連れて近くのソファーに掛ける。

 相変わらずの美貌に、ドラークの目は釘付けになっていた。


「久しぶりだね!ルミアナちゃん」

「そうだねー、最後に会えたのはこないだのお茶会だっけ?」

「うん、そうだよ」

「リムもドラークも相変わらず可愛い顔してるよね」

「ルミアナちゃんの方が可愛いよ!」

「俺も、そう思う……」


 ドラークとルミアナは、互いに照れて顔が赤くなる。


「むー、なんか仲間外れにされた気分」

「そ、そんなことないよ」

「そう?ならいい!」


 リムは、不満が無くなったと分かり安堵の表情をもらす。その、ほっこりした顔に二人は思わず吹き出してしまった。

 すると、またリムがちょっと不満な顔になる。そんな風景を横目に国王とラナリアの歓談が終わろうとしていた。


* * * * * * * *


「これにて、『不滅の紅蓮鳥(フェニックス)』団長シェル・サヴァル・ホイヘンス殿以下の勇士達の、対『フレリア魔獣騎士団』戦における勲賞授与式の閉会を宣言します」


 約二時間に及ぶ授与式が終わり、漂っていた厳かな雰囲気が解けた。

 来賓が次々と授与式の会場、王城前広場から去っていく。ドラークとリムは貴族専用の関係者席を立ち父と母のいる控え室に向かう。

 途中、顔見知りのお偉いさんに手早く挨拶をしつつも急ぎ足で控え室に入っていった。


「お父さん!」


 リムが、軍服姿のシェルの胸に飛び込む。ドラークはその様なことは恥ずかしくて出来なかったが。


「お疲れ様、父さん」

「ありがとな。リム、ドク」

「ん!」


 久しぶりの父親シェルの声に、ドラークは嬉しさが込み上げてきた。


「お「父さん!お帰り!」」

「おう。ただいま。ドラーク、リム、ラナリア」


 窓から差し込む陽の光に輝く金の髪を掻き上げ、腰に手を。父はいつもの決めポーズを決めて、帰還の言葉を告げた。


* * * * * * * *


 その日の夕飯は、いつもより豪華絢爛な料理ばかりだった。

 ワイバーンの手羽先にじゃが肉ならぬシャラ肉、カッシュという紅の綺麗な花を添えたサノム(サーモンの事)の刺身。

 そして、ドラークが考案したワイバーンの卵と各種野菜を使った野菜炒め。

 ちなみに、カッシュは擂り潰すとMP回復液(魔力ポーション)の原料になる。素で食べても少しばかりだが、MP(魔力)が回復される。


「さて、久しぶりの家族揃っての食事だ!そして、私の勲章授与のお祝いだ!沢山食べて、明日(あす)を生きる力にしようぞ!」

「長い話はいいから早く食べよーよー」

「まぁまぁそう急がないの。じゃあ、食べましょっか」

「「「「いただきます!」」」」


 こうして、ホイヘンス家は賑やかに1日を終えた。



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