XX会社の海外営業部XXさん
歴代 世界一の帝国は何ですか?
という問題があったら、間違いなく答えは「大英帝国」でしょう。
最大版図は1918年、33700000K㎡、世界の22.63% を支配しています。
(歴代二位はユーラシア大陸を席巻したモンゴル帝国)
最初は英国統一、アイルランドの支配、北米大陸への進出、インド、中国へのちょっかい、その通り道のアフリカの支配、オーストラリアの占領、順次自分たちの力を拡大するごとに世界へ版図を広げていきました。
皮肉なのは、過去の帝国のような支配欲や安全保障といった意図ではなく、どちらかというと金銭欲です。
マハンの唱える海上帝国と同じで、海はハイウェイ、そこを支配することで商業を有利に導ける、お金儲けの手段。
そして拝金主義の原動力は当然政府ではなく株式会社を主とする経済活動団体、東インド会社とかは教科書に載るような有名な会社です。
まだ経済活動未発達のスペインの冒険者が南米を襲ってお金儲けした活動の延長ですね。
ただスペインは未発達で弱かったのでアメリカ大陸の弱い連中しか相手に出来ませんでしたが、18世紀の英国は間違いなく世界からみて強いモノ。
しかもスペインの征服者と違って随分と洗練されています。
商館と脅しのための海軍と少数の陸軍、それを背景にその国の親分を当たり障りない程度に脅し、脅す内容は
「うちの商品買ってくれない?」
「この商品、うちに優先的に回して?」
いままでにない帝国経営ですね。
ユーラシア大陸を席巻したモンゴル帝国とは随分と違います。
支配していると言い切れるかどうかも微妙。
押し売りしているかも支配しているかも微妙。
一応まっとうな商業活動だし。
ユニークで斬新で、新しい試みでした。
後年、支配したといわれつつ、その支配した国に一度もイギリス人が入ったことない地があったり。
オーストラリア、カナダ、インド以外は内陸無視して切れっぱしのように海を面する地を支配しているだけ。
あるいは英国が支配したと言われる地で「俺はイギリス人」と言ってた人がどれほどいるかも。
モンゴル帝国が滅びても「タンガ」の紋章と、先祖がモンゴル帝国に居たらしい以外根拠がない「タタール人」という集団が誇りを持って残り続けているモンゴル帝国とは随分と違う感じです。
尤もその経済活動で実は上手く行ったのはインド、中国のみ。
インド中国があまりにも大黒字だったので隠れていますが、それ以外の植民地経営は大赤字。
ボーア戦争がなければ南アフリカも黒字になったかもしれませんが駄目でした。
なにしろ世界一の強者ではありましたが、歴代ローマ、モンゴル、漢、イスラムとちがい圧倒的な強者ではなかったからです。
ボーア戦争で負けてます。
負けた理由は、相手も同じ装備、同じ戦術の軍隊だったから。
日本にも手を出しましたし勝ちましたが、英国視点で見ると内情はギリでやばかったらしい。
そしてやっぱり日本に対しても大赤字です。
尤も、日本についてはボーア戦争で孤立してしまった英国にとって、金銭では計れない「日英同盟」を結べたので一方的な持ち出しとまではならなかったようですが。
あまりにやり過ぎて各国から袋だたきだったので、弱いうちに強固な同盟を結んで恩を売れ、ロシアとタメ張れるほどの強国にたちまちなり、英国の代わりにロシアを叩きのめしてくれた日本は美味しい同盟国でしたでしょう。
ということで、歴史の教科書では歴代一位の支配国家、世界帝国と英国の強大さのみを語っていますが、実情は一位だったけど圧倒的ではなく、目的はお金だったのにそれほど手に入らず、相手も強くなっちゃうので反動も激しく、それほど美味しい世界帝国ではありませんでした。
まあ考えてみれば当たり前。
商人は売ることが商売。
それをいくらコントロールしようと、その本質は自分たちの優位なところを切り売りしてお金を儲けるようなもの。
相手の文化水準もひき上げてしまいます。
またどこぞの落合なんちゃらという人が、「アメリカは軍産複合体が支配している」「企業は戦争を望んでいるんだ!!」とかイっちゃってること本に書いてましたが、英国の植民地支配こそそれに近いですかね?
18世紀の英国はたしかに会社活動に政府が追認する感じでした。
それこそ、日本企業の海外営業部が世界で売り歩き、その一つの手段として「あいつが逆らったのですが」「殺されちゃいました」「脅されちゃいました」的な訴えで政府の軍隊が動く感じ。
アフリカ大陸やユーラシア大陸はまだまだ鷹揚な中世国家に近かったので可能な商業活動です。
現代だったら、まずそんな相手の「商法」や「国境取締法」を無視した商業活動なんて出来ませんからね。
ちなみにアメリカなんちゃらとかいうご意見はフリーメイソンと同じくらい厨二な見方です。
アメリカのそれは、多分トランプ大統領が妙にとんちきなタイミングでドイツ車や日本車に難癖つけるあれくらいです。
所詮、企業のロビイストは民主政治を支配できるわけもなく、頑張っても大統領からどうでも良いときにどうにもならないリップサービスを受けるくらいか、民衆に支持を得ている方をより強く追認させるくらいです。
世情に逆らうことは出来ません。
最近のアメリカ大統領は1980年代あたりからの貿易戦争で口出して倍痛い目に遭ったりするので(じゃあ他で買うわ!が最高の痛い目)、そういうことは口だけかちょっとだけアメ車を買わせてお茶濁しているだけなのはわかってる感いっぱいですな。
資本主義で商売への政府介入はロクな事にはなりません。
航空機とか軍事とか高価で数が少なく、市場原理で動かない商品は別ですが。
英国が行った乱暴な商売は、すでにユーラシア大陸にも席巻した西洋の概念、法治国家を元にした国家相手にはとても出来ないことです。
日本だってアメリカに逆らってアメリカ車を買わないという選択肢は採らなくてもなんも罰は受けません。
政治的な影響も皆無でしょう。
だって何したって手出しは出来ないもの。
日本はその大統領在任の何年間かだけでも恩を売るなら安いもの程度に買っているだけです。
資本主義ですな。
そして安い買い物と思います。
納得するかしないかは別にして。
はてさて
英国の企業活動としての植民地支配も、アメリカ政府のリップサービスのみのそれではなく、植民地軍としていろいろ頑張ってはいました。
が、所詮企業活動で泥縄。
XX会社の海外営業部XXさんが戦略的に動き回れるわけありません。
きちんとした国家戦略ととしての支配ではないので逐時の対応です。
アヘン戦争で勝っちゃった後、英国議会で「俺たちって極悪非道じゃね?」ってなことを話し合う会議が始まっちゃったり。
東インド会社が見せしめでインド人に人間大砲やった後に「東インド会社は極悪非道です、避難します」と議会が宣言するようなへんちくりんな議決したり。
なんか会社の役員会議やら営業会議で「XXさんやりすぎじゃないのぉ?だいじょうぶ~」みたいな。。。
ま、商売やり過ぎて相手国を餓死させたり、逆らうんで人間大砲にして木っ端微塵にする海外営業部XXさんはちょっとすごいですが。
そしてそんなドロ縄な活動も仕方ないような。
何せ奪うために戦争をするのではなく、商品を売るために戦争をするという試みが初めてなので。
インド国も、
俺のところの綿を買え、買わなければ戦争するぞ!
は初めての体験でしょうね。
奪うのではなく、押し売りされるための戦争とはね。
しかも自国より安価で、適価で。
とにかく泥縄で逐時でいい加減でした。
そして、ある意味非道ではありますが極悪とは言い難い部分はありました。
インドに適価で綿を売る、
対価を阿片でもらう、
阿片を中国に売る、
対価をお茶でもらう。
お茶を適価で自国に売る。
商売としての残酷さについても..うーん、英国の労働者自体も悲惨でしたからねぇ。
なんとも判断し難いところです。
それにしても、その後のフランスやオランダが、ただただ国家ぐるみで効率よくインドネシアやベトナムで全国民を奴隷にし、搾り取ったのに比べても随分と甘い経営ではあったでしょう。
そして少なくとも英国の方が明らかに儲かっているので、それは正しかった気がします。
国を征服して奴隷にするより、国を商売相手にして肥え太らせて商売相手にする方がより富は集まります。
ペルシアよりローマが儲かったの古代の事例の延長ですね。
そしてそれを各国が真似をし始め、全世界をヨーロッパの理屈で動き始めるまで英国の支配が続きます。
それがPax Britannica ~イギリスの下の平和~ と言われる時代です。
最初は、産業革命で作り続け、ヨーロッパの生活水準を引き上げ、飽和して余り始めた商品から始まります。
綿がたくさんできちゃって、それを当時綿の一大生産国であるインドに売るという暴挙というか、頭良いというか何というか。
こんな話から始まります。




