「ブンブン」か「ぐるぐる」か「ガシャコン、ガシャコン」を思い浮かべておけば良いです
産業革命を説明するのはどこも苦労しているようです。
「一言で」となると次女の教科書のように「蒸気機関」となっているのが大抵。
しかし、それ以上となるともうね。
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発明のことを言ったり、文明の発展度のことを言ったり、生産力、科学、社会、地球に及ぼす影響、もうひっちゃかめっちゃかです。
それだけ大きなモノをと言えましょう。
こちらで、「歴史の積み重ね」というテーマで論ずるとなると。
蒸気機関でぶんぶん回す。
そしてそのぐるぐるを使って「自動」「連続」「じゃかじゃかつくる」とか思い浮かべておけば良いでしょうかね。
あ、ポンプとかは上下運動でガシャコン、ガシャコン動くだけなのでぐるぐる回るところはないですね。
でもまあ、「ブンブン」か「ぐるぐる」か「ガシャコン、ガシャコン」か知りませんが、そんなん頭の中でイメージしてくれれば。
他の世界が「ざくざく」と人力か水牛か牛か馬かしりませんが、一生懸命耕してその作物のカロリーだけが文明活動の唯一に近いエネルギーなところ、ヨーロッパ世界は掘り出した石炭を釜にくべて蒸気機関を回すだけで、どんどん他国を引き離していったのです。
ブンブン回すだけで何とかなったモノはこんな感じ?
・灌漑用のポンプ→農地が広がります。
灌漑が楽になります。干拓とか荒れ地、乾燥地も農業出来るようになりました。
食料生産が一気に楽になりました。
・鉱山を広げるための地下水くみ上げポンプ→掘れる鉱山が増えます
・鉱山のトロッコ→掘った石炭や鉱石を少ない人数で地上に持ってけます
・送風機→ふいごとか人力で高炉に空気を入れてましたが、強力な扇風機で効率よく鉄作れるようになります
・攪拌精錬法→反射炉をかき回して炭素を減らし、良質な錬鉄が作れるようになる。ちなみに蒸気機関でなければ2世紀に中国でやってました。中国すげぇ
・工作機械、中ぐり(筒を作るために鉄を掘る)、旋盤(鉄を削る)、ねじ切り(鉄の棒に溝をつけてネジをつくる)→木材と違って鉄を切ったり削ったり溝作ったりとかは力がいりますもんね。蒸気機関で強力なパワーを手に入れました。
製鉄所も様変わりします。鉄塊を出荷してお任せではなく、板や鋼材にして表面加工してすぐ使える状態で出荷するようになります。
鉄、石炭、産業革命の原動力は蒸気機関のおかげで級数的に増大します。
鉄、石炭はそこら中で使われることになりました。
鉄のスプーン、鉄のフォークとナイフ、鉄鍋、鉄釜、フライパンといった食器や調理用具もここから。
ハリウッド映画で中世のヒーローヒロインの王子様お姫様ががシャンデリアの煌びやかな食卓でフォークやナイフでお食事は※単なるイメージです。
ついでにヨーロッパ中が建築ラッシュ。
人力、木材、石、漆喰、手作りの高価な輸入品の煉瓦でねりねり、しこしこゆっくり立てていたのが、一気に建材という形で大工に優しいものが揃いました。
・ルブラン法、ガラスの製造→塩化ナトリウムに硫酸やら石灰石やら石炭やらを混ぜて加熱して混合してとか、一連の処理を施すと炭酸ナトリウム=ソーダガラスの原料をじゃかじゃか作ります
・ポルトランドセメント→石灰岩やらカルシウムだかをじゃかじゃかかき回して加熱するとセメントが出来ます。建物や道路に重宝
・煉瓦→古代から作り方はあんまかわりませんが、固めて加熱して正確に切って、重ねてといった一連の流れを自動化。ヨーロッパに大量に出回ります。
煉瓦=ヨーロッパというわけのわからないイメージがある割に、ローマ時代のヨーロッパ人がいなかったヨーロッパ以外は大して生産してなかった煉瓦が一気に流行します。
ルネッサンス、モダニズム建築とか産業革命前の煉瓦の生産はどこでどうやって作られて、それが他の建物に使われたかとか調べてなかったのが 現代のヨーロッパ=煉瓦造りの建物という勘違い
日本の大河ドラマの馬突撃とか、アメリカ西部劇のようインディアンと馬でバンバン打ち合うと同じですな。
ついでにガラスも実はこのころからようやくメジャー。
それまでは輸入品か手作り貴重品。ベネティアンガラスが価値あるのは工芸と言うだけでなく貴重品。
・リン酸石灰=肥料
1843年に生産開始しています。
化学物質を混ぜて肥料が出来るは結構でかいイベント。
丁度、四圃制で農地の遊休期間をやめて、クローバーやら豚の餌を育てて土壌に窒素を定着させるとか科学的な手法も確立した頃なので大きく農場も変わりました。
「農地が広がった」以外に、土地当たりの生産量も飛躍的に広がります。
蒸気機関をジャカジャカ回して肥料をたくさん作りました。
それ以外に塩酸とか硫酸、火薬、化学物質の大量生産はいろいろ波及します。
電池もそういった世界の一つですね。
・自動織機
綿製品、革製品とか大量生産。
一気に安くなりました。ミシンとかもこれに含まれますか。
・製紙、複写機、輪転機
紙製品、製本、印刷も蒸気機関でぶん回して自動化します。
聖書が大ベストセラー。
キリスト教が更に広がる一因。
こんな感じで蒸気機関をガチャガチャ回すだけで、色々なモノがバンバン作られます。
大量に作ったら、大量に運びたくなりますね。
ということで乗り物も蒸気になります。
蒸気機関車はいろいろみんな考えていましたが、1804年が最初と言われてますね。
「10トンの鉄を牽引して、16kmの距離をひけるかというコンテスト」
をクリアして商売が始まりました。
前のモンゴル人ではないですが馬は繁殖、育成が結構なお金がかかるのです。
蒸気機関のおかげでみんな助かりました。
...といいつつ、飼料、余剰食糧、化学の発達によるアラビア馬の品種改良とか、「馬の発展」も実は産業革命後にいっきに花開きます。
中世の騎士、近世に馬術学校やら騎馬兵やらがあったので、これが初めてとは言いませんが駅馬車、農作業用の馬、炭鉱輸送用の馬、競馬、19世紀に需要が一気に拡大してます。
それこそ桁違い。
馬も、使われているのは昔からですが、現代の農場や競馬や大河ドラマの騎馬とかのイメージは全て産業革命後に確立された技術の結果。
鉄道馬車も1820年、19世紀。
辻馬車は17世紀ですが頻繁に使われるのは産業革命後。
マイフェアレディとか。
ちなみにタクシーメーターや万歩計は19世紀の辻馬車から発展した。
船舶の方は「外輪船」
河川、湾内、湖畔ではこちらがメジャーに。
バス代わりの河川の船に、帆船は似合わないですよね。
ただ外洋の帆船に成り代わるのは結構先の話。
というか帆船のピークは1880年代で、むしろ産業革命のおかげでヨーロッパ帆船が大きく発展します。
他国を引き離したモノ、織物機で作った帆、鉄製の丈夫なワイヤー、桁材、金具、大量生産の大砲、羅針盤、伝声管、鉄製品で船の概念が大きく塗り替えました。
ただ、底に穴を空けなければなりませんが一気に高速を得られるスクリュープロペラは19世紀で出来てます。
スクリュー船と外輪船を文字通り「綱引き」させ、勝ちました。
帆船に勝つのは20世紀ですが、もうすぐです。
さて、ブンブンと蒸気機関を回し、モノが大量に溢れ、そのモノで大量に建物が増え、その建物でたくさん子作りして人口も増え、大量な肥料と農地で食べ物たくさん、製鉄業で作った食器や調理器具で健康な生活ですくすく育ち、大量の人やモノを蒸気機関をぐるぐる回して動く外輪船や蒸気機関車で運び、蒸気機関で作った建材、帆、ワイヤーその他で作った帆船で海外に旅立つと。
ヨーロッパは名実ともにナンバー1っす。
更にナンバー1を引き離す要因はたくさんあります。
大量に出回った本で、いままで読めなかった人達も本が読めます。
そして安い建材で「公共図書館」がたくさん出来上がったのも19世紀
我々が思い浮かべる「学校」も19世紀の近代学校が皓歯です。
それまでは「教育」とは贅沢なものでした。
義務・無償・中立性を基調とする近代学校は、ヨーロッパの国民を底上げし、ついでに愛国心を育て、近代的な軍隊の形勢に貢献します。
基礎教育が道徳、(間違った)歴史といったあからさまで、軍隊以外はついでなんだろうなという気配はありますが。
徴兵、愛国心、国力は近代国家の基本ですね。
日本でも寺子屋では育たなかった「愛国心」「忠誠」は国民学校で大いに育ちます。
江戸城で彰義隊の活躍を弁当見ながら見物していた江戸っ子は、数十年後、ロシアの203髙地で死屍累々になるほど忠誠心が育ちます。
大学も同じく。
紀元前7世紀創設のタキシラの僧院から脈々と高等教育はあったのですが、19世紀の産業革命で大きく変わります。
教養、自然科学、宗教といった中世の、教会の延長のような大学が変わり、1806年にナポレオンによって新設された帝国大学はちょっと軍事的な要素剥き出しです。
そしてその後、蒸気機関をぶん回してできる自動化の元ネタも研究機関として大学に求めるようになります。
歴史学、社会学、教育学、民俗学、数学、物理学、化学、哲学、心理学、現代の基本的な大学教育の骨子はこの時代に作られました。
産学一体ではないですが、そういう考え方も期待されてます。
なにせ「自動」「連続」「大量」「生産」の何かを考えれば大儲け出来る世界になりましたからね。
特許も昔からありますが、今のイメージは1883年には、工業所有権の保護に関するパリ条約
社会構成も大きく変わります。
四圃制農法が確立し、遊休な期間もなくなり、灌漑が楽になって農地が広がり、馬の品種改良、飼料の大量生産、農業は少人数で大農場を経営出来るようになりました。
昔の封建主義の体制、農奴-小作農-農民-領主といった構造が変わり、馬や奴隷-農民、作業員、小作農-経営者という構造に変わります。
そして入り組んだ小作農だった土地を大規模経営に切り替えるために「囲い込み」という形で統合します。
小作農の排除、大規模経営で効率の良い農地経営。
「雇われている人の人権は如何?」とかいろいろ問題ありましたが、結果的に各国で成功します。
余剰人口は都市部に流入し、工場、炭鉱、輸送、その他のニーズに応えてます。
日本の農業がいまいちなのはGHQが戦後にこういったことを逆行させたからではないですかね?
効率の良い大規模農業の芽を摘み、正直現代では日本のお荷物です。
私は法人化してシステマチックに経営をして大儲けしてますが、昔をひきづり、猫額農地を家族で経営し、自民党の底上げ補助が更に駄目にし、ただ耕していれば良いという甘い認識の老害、スローライフに憧れるバカちんが増えてボロボロっぽい。
隣村は廃村近いでしょう。
営業の一つも出来れば流通業に、英語の一つも出来れば売り先なんていくらでもあるほど日本ブランドすごいのにね。
あと、奴隷制について誤解があります。
産業革命で農場より工業が求められ、奴隷より労働者を求められたので、産業革命で奴隷市場は廃れた
↑
誤解
むしろ一瞬は増えてますね。
豊かになって、農場も再編され、効率の良い経営のリソースの一つは黒人奴隷です。
リバプールと言う町は元々貧相な農村、17世紀末から「奴隷貿易」をはじめて急成長、1830年に奴隷禁止されるまで潤い続け、禁止されてからマンチェスターという小さな一大工業地帯を建設しました。
John Newton という人物が、奴隷船の船長から宗教家になり、「アメージンググレイス」を作りました。
知らぬもののないゴスペルの代表曲でなぜか黒人音楽です。
フランスはフランス革命時に禁止になったが復活し、1848年まで。
アメリカは1865年の南北戦争。
奴隷禁止はむしろ中世から近世の啓蒙主義の結実と、基本的な人権を産業革命のおかげで隅々まで知れ渡った教育の成果と考えた方が無難です。
工場で働く人が奴隷か労働者か、効率よい大規模農場で働く人が奴隷か作業員かというお話。
それに密貿易やマフィア、しかもマンチェスターの様に密貿易のおかげで幸せになった人達もいて複雑です。
金融の役割も大きく変わります。
蒸気機関をぶん回してできる自動化の元ネタがあれば、あとは先行投資とリスクの覚悟で儲けられる時代。
金貸しと、中世の海運のための為替、債権、保険、小切手と言った発達は、株式、投資という役割も増えました。
最初に産業革命に成功した英国は、1816年にイングランド銀行として金本位制を採用しました。
最初の近代的な兌換紙幣。
投資のための外債発行と準備金補填でロスチャイルド家が台頭し、「持っていれば景気が良ければ増えるかもしれないから買って」という形で債券を発行します。
これで、アイデアがあれば、工場作る先行投資にあてるのに楽になります。
東インドで「株式」の管理も慣れていましたが、それも「会社」「株式」という形で発展させ、貿易業だけでなく「製造業」「農場」にも株式会社の概念が適用されます。
そしてそれがヨーロッパ国同士のリスクの持ち合い、投資や資金の融通、国際間の金融市場の調整も担い始め、国際金融も産業革命の後の産物。
あとロイズ。
保険は海運のリスク分散のために出来ましたが、それは他のモノに波及しました。
なんでも保険になります。
投資の対象でもあるしギャンブルでもあるのが最初。
生命保険。
プルーデンシャルは現代でも大手です。
工場勤務のサラリーマン、核家族化で一家の大黒柱のお父さんは大事な人になります。
死なれたら困るので生命保険が生まれました。
日本の報道は「戦後の核家族化」とかやたらいいますが、もう英国では戦争と関係なく19世紀で核家族化が進んでました。
それまでも生命保険はありますが、どちらかというと葬式代の話。
こうやって産業革命はいろいろなものに波及して、ただブンブン回すだけの蒸気機関は世界中を塗り替えました。
それは製造物、工業という単純なモノではなく、農業、学教、金融、商業、多岐にわたり影響を与えたのです。
しかし今回は主にPros (良い方)ばかりを焦点にあてましたが、Cons(悪い方)も当然あるのです。
というかブータン王国が幸福度最高なら、19世紀の英国は最悪という意見は多いっすね。
次回はそんな感じ。




