じゃんけんぽん
ナポレオン、とうとう皇帝になってしまいました。
何というか、民主主義は初っ端から問題定義されてます。
「民衆が独裁者を望んだらどうなるのか」
民主主義というか、自由主義だけの問題ではないんですけどね。
だって、そもそもほぼ全ての制度は民衆を主と考えている制度ですから。
王だって殺されたくないから民衆に媚び売ります。
血統であるのも民衆の支持が受けやすいから。
実力主義や、それに近い制度は血なまぐさいので嫌になっちゃうという面もあります。
で、選挙による民主主義は素晴らしい!
絶対!
俺らは自由だ!
とまあそれはよろしいのですが、すると有権者が何をどのような基準で選択するのが良いのか?
民度が充分に高い、もう私一人を大学まで通わせていくらかかるのかな教育を受けている私が選挙をで誰に投票するかの基準。
・何も知らなきゃ、なんかマスコミの評判
・有権者の有名度
・~党とか嫌な奴らだから
・悪党とか評判だから
・頭悪そうなのは避けて頭良さそうな奴
で、更に年食ってくるといろいろなことがわかるものです。
意外に私らは情報ない。
全国民にきちんと利を分配してる?
平等は無理だけどなるべく多数を幸福にする?
もちろん一有権者如きがそれを知るのは無理なわけです。
何をやったって大なり小なり政治好きのおやぢが呑み屋でクダ巻くのと同じ。
だって家族食わせてく為の仕事が別にちゃんとあるもの。
趣味以上にそんな活動なんてしたくないです。
だいたい呑み屋でクダ巻く以上の仕事をしちゃったら、それ既に政治家だし。
#まあそれ以下の政治家がとっても多い、
どころか国民から金もらって
学生運動の機関誌レベルのものを
作るのが政治とかいってるバカもいますから
それよりはましかも
そして情報というか、それを知るためにテレビとか見ることになります。
そのマスコミというか、ああいう連中がバカだとわかったのも年の功。
例えば、私がコンピュータ会社に勤めていたとき部下の女の子がアイドルになりました。
博士号もってRISKとか研究して、プロセッサの開発が仕事だったんですけどね。
もちろん、社会人やってるその部下が....17歳デビューアイドルしやがりました。
干支一回り誤魔化したアイドル...芸能界こわっ!
まあ、そちらはどうでも良いんですけどね。
昔の話です。
で、そんなアイドルのお仕事の一つコンピュータ雑誌の表紙とか、使ってみよう新しいマイコンだかパソコン。
相手はとってもバカだったそうです。
コンピュータの専門家を名乗ってました。
なんか「インテリゲンチャな俺がバカなアイドルに世の中を教えてあげる」的な態度でくだらない話をされて殺意覚えたようですよ。
でもそんなん当たり前ですね。
記者は記事を書くことが仕事。
コンピュータに詳しくなることが手段ではあるモノの仕事ではありません。
そして小難しい知識より、スペックやすげぇところ、かっこ良いところを覚えた方がなんぼか良いわけです。
CPUの命令セットをソラで覚え、ワイヤーがどう張ってるかまで全部わからなければならないんだったら、そういう仕事つきゃ良いわけで、別にコンピュータ雑誌の記者の仕事ではありません。
で、そんな当たり前の事実でふと思うこと、政治だって同じですよね?
俺ら、何を基準に政治家選んでるんでしたっけ?
多分、俺らよりよほど頭悪いであろう。。。ま、それは言い過ぎかもしれませんが、お金払ってもらうために面白い記事やセンセーショナルな記事を書くためにそれ以外の知識は皆無であろう記者如きの情報を鵜呑みにして政治家を選択しているわけです。
民主主義の問題って全部こちら内包してます。
民衆の不満、望み、リスク、自由度、ここら辺は絶対吸い上げる人が必要でしょうけど、そんなん専門家であろう王家でもよくね?
ブルボン王朝も腐ってたが、革命政府はもっと腐ってなくね?
で、情報管制の旨味を味わった新聞記者が民衆を右往左往させて、公園でギロチンを楽しむ機会を得ると。
あくまで問題提起ですけどね。
今更王家持ち出されても、きっとルイ16世と違った素人です。
民衆はどのように政治家を選択するべきか、これは実は現代でも解決していない事柄です。
王制に比べて、多少は民衆の価値観がわかりやすい程度ですか。
でも日本の政治家の方が「パンがなければ~」と同列な事を言ってそうです。
「大事なのは平和っす!武器がなければみんな攻めてこないんですよ!」
現実はミサイルバンバン撃たれてますね。
撃たれても国会で「今度は~は遺憾とコメントしよう!」「賛成!」が仕事。
なんか数値目標決めて報奨金を出す会社の方がよほど信賞必罰しっかりしてそう。
まだまだ私らの納得いかない苦しみは続くようです。
さて、そんな課題をもたらしながら「ナポレオン」という皇帝が民主国家で産まれました。
有能そう、有名、英雄だから、あんま芸能人が当選するのと変わらない感じで。
で、実際有能だったか?
政治家としては疑問符多いです。
ボナパルティストという言葉を知っているでしょうか?
要するに国民の支持でフランスの支配者に選ばれたナポレオンとその一族に政治を任せましょうという運動です。
民衆が、革命政府にうんざりした人達がこんなん始めちゃいました。
それくらい酷い政治だったので、その反動でナポレオンの評価は高くても良かったはずですが。。。。ナポレオン法典、銀行法などは評価されてますが、正直こちらは数少ない革命政府の唯一の業績な気がします。
ナポレオンがいなくても制定されてたはず。
#こちら、現代の民主主義の元祖と言われます。
独裁の時代に生まれる民主主義の元祖。。。
しかしそれ以外の彼の政治的な業績。
占領地に自身の兄弟や懐刀の忠臣を国王として派遣。
各地に親戚送り込んで、親戚は田舎者バカなんで酒池肉林とか贅沢三昧して反乱ばっか。
なんか民衆の統治になれてる他国の王より酷そうな感じ。
少なくとも他国の王はルイ16世みたいに啓蒙主義「自分の頭で,普遍的妥当性を基準に考える」を知っていたでしょうからね。
ナポレオンがそれを基準に政治をやってたとは思えません。
それでも革命政府よりましだから良いのか。。。。
そこら中で反乱起こりました。
「反ナポレオン運動」とか十把一絡げで、「ナポレオン強かったんで敵も多かったんだよ~」で教科書では済ましてますが、普通に農民の百姓一揆的なもの多かったような。
戦争が負け始めてからはナポレオン兵隊の死因「鍬で殴り殺された」が多かった気がする。
しかし現代の政治家と違い、彼は支持されるべき価値はあります。
だって戦争が強いんだもの。
内外含めてそこら中から攻められ、嬲られ、瀕死のフランスに必要なのは「戦争」。
彼は英雄であり、戦争が強い。
その選ばれた理由の一つはまさに真実だったわけです。
もっとも、彼の戦争の強さは世に出ている本とは随分と違う気がします。
本ではこんな評価。
「選択と集中」
「機動性の有効活用」
「戦略眼」
クラウゼヴィッツとか絶賛ですが...あれ、彼の戦績でこんなん有効活用しているところは聞いたことありません。
私は素人ですが...正確には軍隊にはいたことありますが、それは天気予報と満潮干潮、海面の高さ、素人以下です。
でもそれでもわかる「違うな」
まず戦略眼とは戦闘に入る前に整える手管。
補給とか、敵の部隊より多い戦力をかき集めるとか、数戦して包囲したり異方向から包囲して数十戦に勝る価値を持たせるとか、、なんか彼は下手そうです。
そもそも、彼のほとんどの戦いはそんなん整える選択権がなかったりします。
「困ったから急いで行ってくれ」「らじゃ」
火消しの役なので既に戦闘は始まってる/選択権なし、軍政はそもそも決められてた、攻められる側で常に受け身。
実際攻めようと戦略眼が必要なロシア/スペインとか、あんま褒めるところなし。
そもそも、海戦、1回負けただけで窮地に陥る将軍様は戦略眼に優れているとは申しません。
機動性の有効活用もしてない気がします。
特に騎馬とか、活用していないとは言いませんが、他国と違って部隊を一緒にしてぶち当ててたり(あんま有効活用出来ない時代であるモノの)。
戦闘時の部隊の当て方は芸術的ですが、彼の機動性って戦闘時に限るんですよね。
運動戦とかも下手くそです。
あくまで決戦主義で、運動で戦闘を端折ったり、相手を引きずり回したり、クレバーなところ見たことないです。
選択と集中。
それこそ敵に遊兵を作ってとか、機動力で倍の部隊をかき集めるとか、ここらへん機動性と一体なのですが、こんな秀吉とかハンニバルとかグーデリアンとか、”Art of War”と呼ぶような機動だけで相手を負かすような芸術見たことありません。
せいぜい、歩兵を動かし続ける戦術レベルの話だけに限っています。
駄目じゃんナポレオン。
上だけ見れば良いこと全くありません。
彼が勝てるわけないように感じます。
でも勝ってますよね?
彼は天才でなくて秀才で、勉強してて知識が豊富で、それでいて庄屋程度の民衆に近い人。
そして既存の戦術、騎馬とか弓とかが無力化して、逆にマスケットという既存の兵器体系からはどうしても組み入れないものが使われ始めた黎明期。
彼は新しいモノを作ったわけではなく、既存のモノをかき集めて、丁寧に丁寧に組み合わせて、勝利をもぎ取りました。
彼は戦略、政治といった大きな絵は描けませんが、細かな絵は描けたのです。
「大砲」「マスケット」「騎馬」
この新しい兵器で、新しい兵器体系を作りました。
彼が丁寧に作った作品は、各国がそれを採用し新しい兵器体系として確立し、現代でもそれは教科書とされています。
戦略眼だの機動性だの選択と集中だの、結果論で一部をもぎ取って言っているだけで、彼の本質は戦闘屋さん。
将軍ではなく技術者みたいなモノです。
さて、まず「三兵編成」という言葉を知っているでしょうか?
たとえば「槍」「馬」「弓」という兵器があり、槍は馬に強くて弓に弱い、馬は弓に強くて槍に弱い、弓は槍に強くて馬に弱い、とかじゃんけんみたいに3すくみの状態を通例として言います。
で、各兵種がその兵種の3倍以上強いという前提があれば、
槍出してくれば弓出せば良い、
馬出してくれば槍出せば良い、
弓出せば馬
というようにすれば無敵じゃん!
という考え方。
まあ世界的にじゃんけんは3すくみなので3兵と言ってますが、実際は5兵だったり6兵だったり。
そして時代によっては強さも種類も異なりますし、兵種も異なります。
それに同数なら、ある兵科が3倍も強くなければ成り立ちません。
全部歩兵にしてぶち当たった方が安いし結果的に強かったりとか上手くは行きませんが。
あとローマ歩兵の様に、盾にしまった投げやりで弓兵をバッタバッタと倒したり、象兵を叩きのめしたり、フランス騎士のように長槍兵より強い騎兵がいたり、なかなか綺麗にはいきませんが。
彼は得意な大砲を中心に、マスケット兵、騎馬を揃え、この3兵で諸兵科連合を行いました。
別にこれは彼が初めてというわけではありません。
ヨーロッパではスウェーデン、ドイツがすでにこういった体制を整えています。
しかし彼はそれを徹底的に有効活用したのです。
他国は未だに中世の軍隊の様相で軍を動かしている中、彼の率いる軍隊の典型的なパターン。
マスケットで隊列並べている敵を大砲で混乱させ、
混乱に乗じてマスケットを進ませ、
逃げようとすれば騎兵で追いかける。
まるで現代戦みたいですね。
しかし、これはあくまで典型的。
ある事象は火砲を打ち続け、ある事象になったらマスケットを無理矢理に前進させ、ある事象になったら相手がマスケットでも馬を突撃させる。
全ての兵科を戦場でじゃんけんやチェスのように縦横無尽に出してきます。
中世の頃の教科書は丸無視で、特に騎兵の使い方は過去からすると駄目な事例ですが、彼は柔軟な思考で逐次逐次に一番効率が良い兵科を突出する戦術をたてたのです。
次は「徴兵」。
これもスウェーデンやドイツが既にやってますね。
ただしフランスは全てがこれです。
すでに重商主義は諦めました。
もうお金がないですしね。
モラルが高い、もう後がないフランス国民を徴兵し、短期間でマスケット兵に仕立て上げる。
練度は低いでしょうが、まだ重商主義を引きずって傭兵を雇って戦おうとする他国はせいぜい30万人。
フランスは根こそぎで一気に150万人。
延べ数で言えば300万人。
練度が著しく低かったとしても、10倍の兵力を揃えられれば無問題。
彼の所業のおかげで、ヨーロッパの重商主義の名残は一切なくなりました。
周辺諸国も国民を徴兵し、数を揃えることに終始したのです。
次は「縦列」
マスケット兵を有効活用したければ、横隊が基本です。
敵に対して横に並べたマスケットを一斉に撃つ。
行進し、戦場に着き、横列に展開して喇叭の合図で撃つのが基本でした。
ナポレオン、これも丸無視します。
マスケット兵は縦列で行進し、急迫し、まともな隊列を組まずに撃ちかける。
本来ならば悪手でしょう。
しかし練度が低いが数が多いフランスの徴兵。
訓練がなくても展開が楽です。
しかもしずしずと隊列組む前に急迫する軍。
これは他国もたまりません。
これはさすがに他国が全てを採用されるのはためらいますが、WW1の突撃体系などはこれが元ですね。
彼の戦い方。
相手が横列で待ち構えていたら大砲をぶっ放す。
まだ準備中だったら馬と歩兵で急迫する。
相手が鼓笛や喇叭でしずしずと進んでいる時にいきなり馬を突撃させる。
とにかく状況に応じて千差万別な指揮ぶりでした。
意外に駄目なのが、相手が鈍くてナポレオンが何しようがただ平押ししてきた人とか。
彼の特徴と、彼の限界を示している感じです。
そして他国は彼の真似をし始めました。
3兵編成を行い、お金ではなくて徴兵で国民軍を創設し、横隊のワンパターンではなく縦横無尽の戦闘を行う。
大砲で援護をし、隊列気にせず突撃をし、崩れたら機動力のある兵科で蹂躙する。
まるで現代戦の様みたい。
ナポレオンが中世、近世の倦怠感たっぷりの軍隊を払拭しました。
そしてそれはヨーロッパ諸国も真似をし、いつの間に世界最強となっていました。
確かにナポレオンは何も新しいことはしてません。
しかし、彼が偉大なのは誰もが認めるところです。
今回はこんな感じで。




