映画「ポカホンタス」...正直、極悪非道な映画だと思います
北アメリカ大陸、各国とも杜撰な経営、期待しない程度にほっぽっておかれた状態です。
なので、そこらは一都市..というか集落ごとに自治、生き方、商売の仕方が任されるような感じで複雑な関係が出来上がりました。
そして現地住人もそれに染まり、自分の損得でいろいろとヨーロッパと関係が絡み合います。
以前、私は
「狩猟採集」の延長に「農耕」があり、「北斗の拳のようなかわいそうな農耕をしているおじいちゃんから種籾を奪うモヒカンとかあり得ない」
と宣いましたが、ここではそれが崩れはじめます。
どちらがどうというわけでもなく、双方の損得、双方の組織、双方の価値観で様々な人間模様が錯綜します。
まず、最初にスペインが領土宣言してスペインの領土となりました。
誰もが無視しました。
だってみんな南米の搾取に懸命だし、ヨーロッパ他国はそれを最初っから無視する気でしたし、インディアンはそもそも領有の概念がありません。
フランス人が来ましたが彼らは毛皮の取引をする商人でした。
インディアンと仲良くなり、彼らは高値で取引できれば満足で港と商館さえ維持できればあと何も欲しがりませんでした。
インディアン同士で毛皮の奪い合い、毛皮の奪い合いでボロボロになった農地の復讐、奪い合いの際の争いで女子供が誘拐されまくり、復讐の復讐、惨劇の惨劇が起ころうがそれはインディアンのこと。
どうでも良い事です。
最初にアメリカ大陸にやってきたイギリス人は、キャプテン・スミスという、如何にも海賊風な男です。
アステカやインカのように黄金を夢見、それを見つけるために縦横無尽に探しまくり、インディアンを拷問し、争い....
そして本国に見捨てられ、孤立し要塞化した砦のような村で食糧が尽きかけていました。
拷問したインディアン達に食料が欲しいと申し出ると、
「キャプテン・スミス殿。あなたがこの地に来たことについて、私は疑問をもっている。私は親切にしてあげたいのだが、この疑問があるので、それほど親切に救い手をさしのべるわけにはいかないのだ。というのは、あなたがこの土地に来たのは、交易のためでなく、私の人民を侵し、私の国をとってしまうためだ、と多くの人がいっているからだ。この人たちがあなたにトウモロコシをもって来ないのは、あなたがこの通り部下に武装させているのを見ているからだ。この恐怖をとり払ってわれわれを元気づけるよう、武器を船においていらっしゃい。ここでは武器は要らない。われわれはみな友人なのだから…」
「トウモロコシを船に積め、さもないとお前らの死体を積むぞ」。
どっちが文明人かわかりませんね。
なんだかんだで冬を乗り切ってますが。
ま、この恥知らずな蛮行を実行したのでしょうな。
ちなみにおまけの話。
なぜかイギリス本国にはこんな恋愛物語が伝わります。
スミスはポウハタン族に捕らえられる。村の広場に連行され、まさにスミスの首が切り落とされるというそのときに、一人の乙女が飛び出して命乞いをします。
「この白人の男は、きっと悪い人ではありません。どうか命を助けてやって下さい」
そして結婚して幸せに暮らしましたとさ
....ぜってぇ嘘でしょうね。
更にその話は極悪非道なおまけ話が多いです。
その娘は実在して、実際にジェームスタウンに住んで、イギリス人と結婚して、子供を産んでます。
夫になったのは、キャプテン・スミスではなくて、ジョン・ロルフという人物ですが。
一目惚れしたという与太話より、どう考えても人質として無理矢理つれてこれたと考えた方が辻褄あいますがね。
そして一番図々しいのは数百年後、ディズニー映画という会社が、その人質にされた乙女の名前の映画を作りました。
「ポカホンタス」
当然ながら、話の内容はあり得ない方の恋愛話、与太話。
銃で脅され、村を守るために人質にされた乙女は、この映画についてどう感想を述べるか興味あります。
ライオンキングとかもそうですが、こういう話を聞くと素直に「夢の国」と尊ぶ気は失せますな。
ここら辺のお話はこの本がおすすめ
「奪われた大地」フィリップ・ジャカン著 富田虎男 監修 創元社
逆にキャプテンスミスのように、ほぼ男だけで黄金を奪う目的で来る者もいれば、前回の話のように、清教徒達が逃げるように入植した話もあります。
こっちの方はこの書籍がおすすめ
「貧しきリチャードの暦」ベンジャミン・フランクリン
この人、農業を粛々とやって最後は大金持ちになった人です。
随分後の「大草原の小さな家」ローラインガルスとかもありますが、なかなか過酷で、大変な生活っぽいですね。
一生懸命耕し、一生懸命アメリカという国を作っていったようです。
---
ヨーロッパでは名門に価値があるが、…アメリカでは他人のことを『あの人はどういう身分か?』とは聞かないで、『あの人は何ができるか?』と聞くのである
---
尤もこっちもトラブル多数。
マンハッタンの土地はガラス玉とかで「欺して」手に入れた土地。
とか
土地交渉に行くときはラム酒をもってきて欺して契約書を結ばせたんだ
とかね。
もっともこちらは逆の意味で一方的すぎますな。
摩天楼そびえ立つ世界一の商業地がガラス玉で買えたのならともかく、水はけの悪い、何もない、孤立した使い道のない島だったらそれくらいじゃね?とか思います。
あと、ある部族にお金を払ったら、それに味占めて別な部族がお金をもらいに行き、さらに次の部族が..難癖つけて最後は家族惨殺とか。
土地所有という概念がないインディアンに土地を購入する行為を行ったための悲劇と、別にインディアン側も品行方正でもないですね。
逆にある部族はその清教徒の生き方に感銘して、一緒になって耕して同化するとかもあったので、こっちの話は
「白人悪い」
「白人が搾取した」
「白人が欺した」
と一方的なのは如何でしょうか?
きちんと正価をはらって土地を入手したつもりの開拓民もいれば、
開拓民を略奪したインディアンというのも実際にいるわけですし。
インディアンと一緒に耕し始めた人もいれば、
そんな土地を「狩りの邪魔」と全滅させたインディアンもいれば、
自分が購入した土地(誰にお金を払ったかはともかく)それを必死に守る開拓民もいれば、
逆に攻め込んで虐殺した民兵もいれば、悲喜こもごもです。
こんな誰が正義で誰が悪か、誰が得して誰が奪ったのか、誰が奪って誰が奪われたのかもよくわからない状態だったのが独立前の北アメリカです。
だってインディアン的には、そもそも土地所有の概念なんてないので、ただで金(あるいはガラス玉?)もらえてラッキー程度、
開拓民はお金払ったので俺の土地とおもったら次の部族が来て欺されたとか、
インディアンを脅し、殺し、搾取したという人もいれば、むしろ欲の皮つっぱらかって殺されたヨーロッパ人もいれば、
ただただ現地がどうなってるか興味なしに、ひたすら商売だけしている商人とか。
自分達の都合で現地人が殺し合いになっても「じゃ、買わなきゃよくね?」という道理を私は支持します。
そんなぐっちゃぐちゃな状態が破裂して世界を巻き込んだのが「フレンチ・インディアン戦争」
フランス軍+インディアン vs イギリス軍
という図式で歴史では語られてますが、正確には
インディアン(フランスに毛皮を売っていた部族) vs インディアン(毛皮売ってる連中の敵対部族)
が最初だったのです。
そしてこの争いがイギリスの開拓民や、その協力部族達の圧力となり...
1755年、ピッツバーグで爆発します。
フランスは川沿いの紛争を調停するため、あわよくばケベック州のフランス主権の土地を増やしたいために軍を進出させます。
そしてそれをよく思わない、紛争にむかついているバージニア民兵「ジョージ・ワシントン」がぶち切れ、待ち伏せ攻撃で全滅させます。
もっともその後、現地民兵は負け続け、イギリス軍も投入されましたが負け続け、現地人を守り切れず、フランスと取引しているインディアンの大部隊に全員が惨殺されるとかひどい話が多発します。
尤も、イギリスもフランスも(スペインも)本国ではこの争いは乗り気ではなく、現地のフランス軍-ヌーベルフランスと言いますが有利でも、その後の戦力拡大の投入とかしてません。
なんかもたくたしてました。
一方、イギリス軍は本国がタカ派ウィリアム・ピットが首相になったので現地のイギリス軍は増員されます。
そしてその大兵力でケベックを落とし、モントリオールを攻略し、イギリスの大勝利となりました。
ちなみにスペインはさらに「やる気なしお」です。
お金でフランスにルイジアナを売っ払い、イギリスにフロリダとキューバ)ハバマと交換し、とんずらしました。
その時点では良い買い物だったかもしれません。
スペインは北アメリカへの影響は0となりました。
そして北アメリカの支配はイギリスに完全に移りました。
「ばんざーい、これから北アメリカで大金持ちになるぞー!」
とはなりません。
北アメリカの全てを手に入れても、そこには毛皮とタバコと貧乏農場しかありません。
せっかく選挙で勝って、北アメリカ入植者のために大枚はたいて守ってやったのに。
黄金もない
宝石もない
なんの儲けもない。
あるのは貧乏農場だけ。
なんのやくにもたたない。
どころかあいつらおれらに感謝してないよね?
俺ら頑張ったのに、命かけたのに、一生懸命イギリス国民を説き伏せたのに、評価は「無駄」。
ふざけんな!
俺らのメンツもあるし、「おまえ良い仕事したよ」と国民に褒めてもらうためにがんばらな!
こんな事情が独立戦争前夜です。




