フランス王を見てドン引きした関係者はたくさん居たと思います(^^;
さて、ヨーロッパが少しづつ国境線が決まってくる時期です。
イギリスも出来上がり、ドイツもまだプロイセンですが出来上がりつつあり、オランダ、北欧もほぼ固まりました。
一度で出来上がってもまだまだ混沌としている時期なら、少しでも政治的に有利にしよう/介入しようといろいろ画策し、戦争戦争ですが王族が親戚同士なので最後までと言うことはありません。
ハプスブルク家の蔓延が良いのやら悪いのやら。
ヨーロッパ国という統一国家の実現性は、当初からなかなか難しいようです。
まあEUも無理矢理まとめ上げただけなので現代もうまくいきません。
本当はドイツとフランスとその従属国家のみでやってみたらうまくいったかもですね。
近代自我が既に生まれてしまい、民族意識/国家意識が既に芽生え始めていますので、それより上位の意識がないとまとまるのはとても難しそうです。
だって私も、日本国に所属している理由って
「そこで生まれたから」
「そこで育ったから」
「便利だから」
で、相手が合わせてくれるならともかく、自分がそれに合わせなければならないのなら統一国家なんて嫌ですね。
結構、国家意識をつなげている錨ってあやふやなんですよ。
一生とほぼ同じ時間の積み重ねで重みを感じているだけで。
なのでこの時代でも現代でも、その習慣を変える確たる理由なく「我慢せよ」はうんざりでしょうね。
争いが起こるわけです。
そしてその「国家意識」より上位が国境線と関係ない「宗教意識」なんて考えているのはヨーロッパの連中がつくった近代自我だけなんですよね。
「民族」そのものが実は科学的根拠は一切ない生活習慣が似ている人たちと言うだけ。
そんな似非科学を後生大事にWW2まで科学的根拠を無理矢理ひっつけようとした努力は、自分たちの正当性を証明しようと躍起になっているだけ。
もっともそんなしつこさが科学を生んだので悪いばかりではないですが。
とにかく世界史(ヨーロッパ史)では「ヨーロッパは近世、他は中世」とか誠にずうずうしい歴史認識らしいですがいまだ他地域に比べて苦難を味わってます。
一方で、なんやかんやで他国から認め始めるようになったのは良いこと。
とくにトルコという当時の超大国に相手されるようになったのは大きいですね。
聖書を大事にするという宗派であるプロテスタントが生まれ、おなじ聖書であいつら話せるじゃんという雰囲気が生まれます。
そして十字軍の頃の話も出来ない蛮族カソリックもプロテスタントに対抗して再編したので、あいつらとも共存できそうじゃんという芽を見つけ、まあまあ文明国としては認めてくれるようになりました。
更にオランダがチューリップを品種改良し、イスラム世界へ逆に輸出するようになって技術国としても認め始めます。
建築物が石造りとか、ルネッサンスの時に仕入れたイスラム技術で石積みバロック建築物が増えていき、親近感も生まれます。(それまでは城は土盛り、家は丸太小屋)
更にアメリカ大陸を手に入れてから数百年、名物料理も生まれます。
「じゃがいも」という食糧事情が劇的に改善され、ロシア、北欧、ヨーロッパの食糧事情が劇的に改変します。
イギリスやドイツの料理がジャガイモなのは偶然ではありません。
これが15世紀以前ではあり得ない食材が、庶民の調理方法としてメジャーなのは、この頃完全に、植栽方法も含めて定着した証拠。
ソーセージもここら辺の家庭料理に含まれているのもこの影響。
別にソーセージ自体はローマ時代から保存食としてメジャーでしたが、中世の三圃制に地力という概念で家畜の餌/人間の副食としてジャガイモやクローバーを足して四圃制にしたのもここらへんから。
18世紀のノーフォーク農法とか有名ですが、すでに16世紀後半から土地土地の作物で試みはじめていたようです。
..そして人間の激増、ペストの大流行、さらに公衆浴場、風呂禁止とかでますますあかんヨーロッパ人、人には優しくなさそうな時期ですが、発展していったのは確かです。
さらに宗教改革を経て「基本的人権」の概念を手に入れ、現代の政治体制につながる意識も得てます。
なぜか犯罪も暴虐的、略奪的なものから猟奇的なものにシフトしてますが。
正義を貫くとストレスたまるんですかね?
騎士道もこの時代から実は始まりました。
残念ながら科学技術はまだまだ大したことないです。
「パイプオルガン」「望遠鏡」ぐらい?
アコーディオンやリュート(ギター)とか?
意外に音楽はヨーロッパの誇るべき科学です。
ほかの地域では見られないほど発展している地。
中世が点在した都市で閉ざされていること、その隙間を埋める人は宗教人、学者、吟遊詩人、ジプシー、劇団。
実に全人口の30%居たとか居ないとか。
ということで、ヨーロッパは以下。
・戦争、戦争
・発展、発展
・人口激増、おかげで疫病多発で命も安い
・他地域から文明国とようやく認められつつ
ということで、この間にたくさんの戦争や事件があったので端折るつもりです。
この後一気にフランス革命で近代国家の仲間入り!
というシナリオですが、その前にそれにつながるちょっとした事案だけはご紹介しましょうか。
本当に史実で、ラノベみたいな人生を送ったスーパーマンは何人も居ます。
たとえばアレキサンダー大王。
たとえばユリウスカエサル。
なんかナポレオンが認めた英雄とかなんとか。
その中に入っているのが「グスタフ・アドルフ」。
スウェーデンの王。
まず超かっけぇ。
クラスに一人居るリア充の超豪華版。
9歳で早くも働き始める。
中二で豪華なロールスロイスを横付けにされて「とうとうあなたの力が必要になりました」と言われるよりかっけぇ。
語学堪能。
十カ国語ペラペラ。
17歳で王。
政治家としても軍人としても一流。
そして相棒の宰相が28歳のアクセル・オクセンシェルナ
冷静沈着、超頭良い
「皆おまえのように冷静であったら世界は凍り付いてしまうな」
「人が皆、陛下のように短気であれば、世界が燃え尽きてしまいますよ」
なにこの厨二な台詞。
こんなことば一度は言ってみたいBest10に絶対入ってる。
「どなたかお医者さんがはいらっしゃいませんか?」
「私が」
と飛行機で言うよりかっけぇ。
#というか私の嫁は医者ですが、
カノジョ的には絶対言いたくない言葉。
飛行機で調子悪くなるような輩は
ドラマと違って良識派な人は少ないようで。
嫌な思い出ばかりなので、
全力で寝たふりするそうです。
「見つからないように、見つからないように」
と祈りながら
そしてグスタフ嫁さん超綺麗。
ヨーロッパで最も美しい王妃と言われた人。
そしてヤンデレ。
産まれたのが娘だったから嫉妬して殺そうとしました。
ヴァレンタインにチョコレートを父親に渡す娘に殺意をむけるかあちゃんより怖い!
好きすぎてお墓を壊して遺体を掘り起こそうとし、心臓を枕元に置いて寝ようとする。
「愛が深すぎて困る」より怖い。
グスタフは勝利した戦いの流れ弾にあたって死ぬことになります。
将が死んでも勝てる強固な軍隊もすごいですが「戦場で死ぬ」というドラマティックな結末は「北方の獅子」と呼ばれるにふさわしい人生です。
そしてライバルも出来すぎている。
ボヘミアの傭兵隊長「アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタイン」。
名前だけでもかっけぇ。
12歳の時に両親に死なれ、独学で勉強。
粗野で無教養な荒くれ者
大学で暴力事件を起こして退学→傭兵
「ふん…ベーメンの孤児がそんなに珍しいか…!」
ってなにそれ、まるで少年マガジンの主人公みたいな不良。
そしてお金持ちの未亡人をたらし込んで大儲けし、一流の傭兵部隊を作り上げる才能。
まあたらし込んだというのはヴァレンシュタインが嫌いな連中の悪口っぽい。
未亡人ルクレツィアも良い女そう。
29歳だから年上のババアと言うほど年上ではない。
むしろ理想的な年上女房っぽい。
結婚後は不良、乱暴、荒くれ者は陰を潜め、ニヒルで冷静、でも温厚なかっこよい旦那様。
領民には愛され、きちんと経営し、その時代には珍しい災害対策や食糧貯蔵まで行う利け者。
たった五年の結婚生活後、彼女が死んだ後は修道院を彼女の名前にし、彼女を悼んだようです。
いろいろな殖産はほぼ大当たり、皇帝がたくさん借りるほど大金持ち、最盛期には12万5000もの大軍勢。
プラハの「ヴァレンシュタイン宮殿」すごく趣味の良いまるで漫画みたいな宮殿。
「クリスチャンだろうとムスリムだろうと死ねば同じだ。
ただの肉塊にしかならんし 行き着く先は鳥獣の餌
そして土くれに戻っていく…」
そしてあまりに有能すぎて周りに疎まれ、ライバルのグスタフが死亡したあと、すぐに用済みと暗殺されて消えていきます。
この英雄物語、出来すぎていますが全部史実。
なのにヴァレンシュタインをググっても彼が出てこないことについて,,,
まあいいでしょう。
このかっけぇ二人が激突する大活劇は是非とも書きたいモノですが.....ま、そんな才能はないので端折ります。
しかし、二人が戦った30年戦争で歴史に重要なものをいくつも残しています。
まず常備軍/徴兵制という概念。
中世の封建主義ではやっていけないほど軍隊の値段が跳ね上がり、そして騎士というノスタルジックな役立たずではやっていけないほど軍隊は殺伐とし始めます。
そして重商主義は傭兵の活躍を生みますが、その傭兵がさらに面倒。
王達はお金を貯め込み、必要なときだけ軍隊を雇うという概念はそもそも無理があるのです。
だって、戦争ないときはどうやって彼ら食っていけば良いの?
ま、具体的に言うと略奪です。
「七人の侍」とか映画有名ですが、ならず者が村を支配して略奪。
あれが起こるのはむしろ平和が長く続き、軍隊というモノが事実上なくなった日本ではなく、ヨーロッパの近世でこそ多発したことです。
そして食いっぱぐれないようになかなか決着をつけない傭兵達。
だらだらと戦争が続いた理由は彼らのせいという理屈もある。
しかし国境線が定まらない、所有権が定まらない封建主義では放置していたことですが、中央集権化し、国境が決まるのなら別な理屈が生じます。
自国民を略奪してそれをまた改めて復旧統治する費用、攻め込むべき地をいずれ占領するならばその感情、統治費用。
グスタフは自国に徴兵制を、ヴァレンシュタインは傭兵ですが略奪禁止、軍税、徴収権で兵士にきちんと給料を払うことにします。
そして商工業の奨励と大規模な製鉄所、武器工場。
武器輸出国スウェーデンはここから始まります。
更にスウェーデンが小国であることもあるのですが完全な中央集権化。
議会制ではあるものの貴族といった上流階級には積極的に役職を与え、元々領地経営は向かない土地柄、重商主義で土地よりお金という雰囲気にして素直に統治権を王に委ねる形にしました。
そして立憲君主として王制も法で縛り、選挙で選ぶ議員、統治を少しずつ委ね、ゆっくりと議会制に移行していくことになります。
それは国民という概念を生み、徴兵制とリンクしますね。
そして日本に遅れること50年、スイス傭兵、スペインのテルシオ等でうっすらと概念はありましたが、本格的な三兵編成を取り込むことになります。
もっとも今までと違って軽量な3ポンド砲を大量生産することで独自の形。
鉄砲-大砲-竜騎兵(銃を持った騎兵)
#スイス傭兵、日本は 長槍-鉄砲-軽騎兵
大砲を野戦で使用し、竜騎兵を素早く側面や弱点の場所に展開して穴を開けるという概念がこちら。
しかもマスケットは誰にでも使えるので徴兵制にはとても相性が良い。
その強力な軍隊と、きちんと給料を払った常備軍に近い10万以上のヴァレンシュタインの傭兵が今までと違う次元の戦いをすることになります。
日本の戦国時代じゃないですが、中世でお遊戯のように戦っていた騎士達、傭兵がしょぼしょぼ1000単位で雇われ戦うせいぜい万単位の軍隊、それがたった100年くらいで近代戦の皓歯となる戦いに変化していったのです。
そして日本は途中でリタイアし平和を享受している中、ヨーロッパはその最悪の結果を味わうことになります。
すでにスウェーデンも、この戦いが終わった後は国力が激減しました。
ドイツも同じくです。
英雄達が活躍し、血で血で争う30年。
プロテスタント、カソリック、主要な当事者は全員死にました。
宗教戦争はまるで潮がひくように終わりました。
なぜか勝者はカソリックな国なのにスウェーデンと同盟を組んでいたフランスが一人勝ち。
疲弊しすぎたのか、当事者が全員死んだからか、血統が多すぎて意味なくなったからか、中央集権化が大体終わって国境線や身分制度が安定したからか、よくわかりません。
ただ、この背教に近い行為をしゃあしゃあとやるカソリックの信者であるフランス王を見てドン引きした関係者はたくさん居たと思います。
ま、現代の私でもドン引きです。
あのかっこよい英雄達は何をしたのやら。
台無しにしたフランス王は地獄に落ちていて欲しい。
そしてフランス国民はこの後、地獄に落ちます。




