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人間の歴史。  作者: TAK
近世への道筋
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中世の終わり、近世の始まり

「昔はよかった」


というのはどう考えても年寄りの思い出補正がかかるので自分の感覚さえ信用しませんが、昔と今の違い、その事実だけは確かにあります。

例えば、昔の子供は間違いなく命は安かったろうなと。


今も昔も男子たるもの、


「見えない誰かと戦うのが好き」

「バカを煎じて突き詰めるほど男子の中で優秀」

「なんだかんだで結構死にそうな目に合ってる」


娘が保育園の頃、おなじ保育園のバカ男子の命を何度救ったことか。

前を見ない、横も見ない、グダグダ動かないくせに車の前に限っては突っ込んでいく、目に刺さりそうな棒状のものを振り回す、道路を飛び出す男子を引っ掴んで引き戻すことを何度したことか。


おまけに昔の方がそれを守る生活というか技術というか、教育体系というか安全性というか、そういうものはとてつもなく低かったでしょう。


私も小学生の頃、血だらけになりながら家に帰っていたのは3回ほど。

そのうち二回はへらへら笑いながら誇らしげに。

同世代の同僚も、溺れそうになった、道に迷った、バスにひかれそうになった、くだらない武勇伝をいっぱい話ます。

大人になってもバカ自慢は如何なものか?はともかく、結構サバイバルして生き残っていたのが私らの世代。

ま、子供多い、兄弟多いですし。


そして私の子供の頃は、現代と違って工事現場の管理が杜撰。

クレーン車さえ鍵つけっぱなしでおきっぱなし。

おもちゃ屋には様々な火薬が揃っており、小学生はたとえ低学年でも手に入る。

そして瓶拾い、鉄集め、ガキでもその気になれば悪い金が簡単に手に入る。



血だらけで家に帰って思い出の一つ


工事現場から拾った長い鉄パイプにロケット花火をパンパンに詰め、導火線を引き出してピアノ線と粘土で後ろをパッキングし、川を跨いで仲間と戦争ごっこ。

お手製のショットガンがもろに顔面にあたり、血だらけになりました。


火薬と鉄製のパイプがあればアホでも銃が手作りできるという実例でした。




さて、

どの国より原始的だったヨーロッパが、ありとあらゆる敵(と味方)を地獄に叩き落としたナポレオンの軍隊に辿り着くための重要なファクターが「銃」です。

今回はそういった話を。



「信長の野望」というゲームで銃、火縄銃部隊は


動きが遅い、

雨で使えない、

超高い


といった制限はありますが、その欠点が霞むほど強力で射程距離が長いとかなんとか。

いかにも銃って、射程距離が長くて強力な兵器の印象があります。

では実際の火縄銃てどうだったのでしょう?



実際検証している人たちがいて、威力も射程も確認したにもかかわらず...諸説まちまち。


弾は400m以上届くんだ、

いやいや27m離れたらあたらないよ?


とかなんとか。


まあそんな喧嘩がありましたが、どの答えも別におかしくありません。


実際、弾が届く距離というだけならかなり遠くまで飛ばせます。

それが有効かどうかはまた別な話ですが。


まあ端的に言うと、火縄銃、というか現代のショットガンも含まれますが、大口径で銃身が短いor銃身の工作精度が低い、かつ弾ではなくて玉を撃つような銃は命中精度があきれるほど低いです。

有効射程、軍隊としての射程はそれほど大きいものではありません。

まあ戦争は一対一で戦う訳でもなし、1000発に一発しか当たらないような銃でも、1000丁集めて撃てばよいだけなのでいろいろフォローする手段はありますが。



で、まあどれも数字でどうこう比べるより、実際使った人のご意見を採用する方が現実に沿ってるでしょう。

日本の戦国時代では100-200mが火縄銃の戦術距離っぽいらしいからそうしましょうか。

因みに火縄銃(マスケット)が主流で、それに備えた城の銃の備えは200m、火矢といった炎焼の備えは3-400mくらい。

 

で、他の兵器はどかというと...


世界最初の遠距離兵器「投石」

投石紐を使えば100-200m


アフリカで使われた石器時代の「投槍」

石器時代からある投槍具を使えば、ちょっと練習すれば現代の成人男子でも200mいけます。

達人だと300m以上離れたライオンを仕留めることが出来るとか。


イギリスの長弓兵

実際の陣地は2-300mの設定だったらしいが、普通に400m先まで届くとか。火矢とかだともっと遠くからOK


火縄銃

確実にあてるのは50m以下

面で制圧することで陣地は200mくらいの設定

最大射程は500mくらいまでいけるとか。

でもまず当たらない。

矢と違って曲射が出来ないので射程短。



こう並べてみると意外に遠くに飛ばない火縄銃マスケット

いわゆる大口径のショットガンのようなものですから遠距離に届くかどうかは怪しいものです。

そして届いたとしても当たらないは、威力が削がれているは。


円弾ですから風で浮くし、空気抵抗は受けやすいし、ちょっとしたきっかけで回転しちゃうし、想像よりさらに惨いかもしれません。


信長の野望的な強さはあんま信用できないですね。

更に、銃をそろえることは非常に高価、弓兵の方が簡単的な感じですが、それさえ違います。

和弓のように複雑な職人の弓、それを訓練するまでの時間、そんなものより鉄を型に流し込んでつくる銃の方がよほど安いです。

何から何まで頓珍漢だったのがコーエー。

ま、私も信用していたので偉そうには言えませんが。



さて、とは言いつつ一応数字に出ない威力として、至近距離で当たると確実に死にます。

あたると当時の鎧とか全く関係なくズタボロです。

大口径で弾がつぶれる衝撃も含めてすごいことになるんですね。



アメリカの銃規制がなかなか進まない理由、ロシアの田舎の人がアメリカ製44マグナムを手放せない理由はこういうこともあったり。


私は田舎育ちなんで結構切実なんですが、たとえば田舎でグリズリーやら狼やらが来たとき、女子供が、肩や腕は外れるかもしれませんが、至近距離で頭を撃ち抜ける44マグナムが一番です。

なにしろ熊は怖いです。

腕がありますから。

その巨体で襲われたら、一撃で沈めるしかありません。

なので至近距離で頭を撃ち抜くのが自衛の手段として最適。

当たるとぐずぐずですから。


日本も結構大変です。

熊も怖いですが、たとえばイノシシとかで大怪我とか切実。

44マグナムはさすがに携帯できないので猟銃ですが。


自分が殺される可能性が高い獣は実は草食性の方が切実です。

肉食獣は「食う」という目的があるのでまだ対処しやすいですが、草食動物はひょんなところで脅えるし自衛するので不意を突かれるんですね。

イノシシなめてはいけません。

アフリカで一番人間殺した哺乳動物はカバです。

ライオンではありません。

ちなみに鹿は滅んでしまえと思っています。

あいつら山を殺します。


動物愛護団体だの平和だのの前に植物愛護団体作ってもらえませんかね?

人間の生き死にはこっちだと思うのですが。

どうでもいい話ですが。


何にせよ、銃っていまでも必須なものです。

それが許可制かどうかはともかく、アメリカの銃火器協会がこだわる理由ってのは少しはわかります。

いじめや諍いで学校が血の色というのとどちらが大事かという意見はお任せしますが。



とってもくだらない話をしていましたが、この中に銃の有効性を書いてしまいました。


「女子供でも熊を殺せる」

「大量生産が効く」


コーエーのゲームは今の銃で想像して、遠距離、火力高い、火縄だから雨に弱いと勝手に性格づけてしまってますが、本当の有効さは切実にわかります。

私もイノシシにひかれて入院したくないですから。



ヨーロッパで一番最初に銃は有効と認識されたのも実はこちらです。

その象徴的な戦いがフス戦争、フス派の戦い。



1410年に行われたポーランド王国・リトアニア大公国連合軍とドイツ騎士団との戦いです。

中身を知りたければコミック「乙女戦争」大西巷一がお勧めです。

面白いしトンデモっぽいですが、実は見事に史実に則ってます。

なかなかに興味深い。



根本的な原因は、後から侵入したドイツ人とチェコ人の争い。

中身としては宗派の違いを埋めること。

征服者のドイツ貴族、ドイツ司祭に対するチェコ人の反抗。

そして神聖ローマ皇帝でありハンガリー王でありドイツ王であった「ジギスムント・フォン・ルクセンブルク」が超嫌われ者で嫌な奴という背景もあります。


そしてその背景の延長で「チェコ人」「ドイツ人」という民族意識も芽生え始めました。

中世にはなかった文化的な意識です。

遺伝子でも出自でもなく、宗教、食べ物、生活スタイル、価値観といった様々なアイテムを複数人共有するもの。

後から来たドイツ人、しかも嫌な奴に従えるかといういさかい。



日本人は単一遺伝子ではないのに単一民族と思われている何か。

あるいは白人だろうがアラブ人だろうが中国人であろうが、様々な宗教が混じりあっても「俺はタタール」という何かかも知れません。


中世のあやふやな何かが段々と明確になっていきます。

同時に国境も明確に出来上がり、その民族の代表とその統べる範囲が明確になり、争いが始まることになります。

国家意識、それは最終的に大殺戮につながる最初の一歩なのかもしれません。


次は、その「民族」につながる戦術。

端的にいうと「銃」ですね。


まあここで中身を見るより、「銃って何が有効だったの?」はこの戦術でわかります。

強力なドイツ騎士に対して乙女たち~正確に言うと乙女も含めた農民達ですが~が対処した方法、天才「ヤン・ジシュカ」が考えたこと。



鉄の荷車を作ったこと。

それを陣地にして中で銃を撃ち続けたこと。

大砲をたくさん用意したこと。

接近戦はあくまでも防衛的に、農民でも簡単に使える長束、鉄球モーニングスターを使用したこと。


東欧のリトアニアがイスラムの影響で、ヨーロッパで優れた火砲の生産国であったのが大きいです。

まあ大砲といったも石の塊を放る程度ですが。


ちなみに銃はこんな感じ。

工作技術が低いので、まだまだ火縄銃マスケットには遠いです。

でかい理由は、工作は大きい方が楽だから。


・25mm口径、20g火薬を詰め、50gの弾丸を発射する

・重さは10キロから15キロ

・製造技術が未熟で銃身と弾丸の隙間が大きい。

・大量の火薬を使用しなければ必要なガス圧が得られないので

 銃自体も分厚く大きい

・火薬を大量に使うので発射時の反動が凄まじい

 だから固定して使う

・でかいので人間の頭くらい簡単に吹き飛ぶ


44マグナムが売れてる理由と同じ。

アメリカがなかなか銃を手放せない理由と同じ。

私が猟銃を撃つ理由と同じ。


自分より強力な敵、それが猛獣なのかドイツ騎士なのかはともかく、それを倒せる武器が女子供でも扱える。

しかも学ぶ操作はたくさんあれど、一生かけて騎士になるに比べれば、引金をひくやり方だけ。

訓練も簡単です。


騎士の騎馬突撃は全く勝負になりませんでした。


持久戦で、クロスボウや大砲に持ち込んで火力戦に持ち込んでも、装甲馬車があり、工業国であるリトアニアがバックについているのでドイツ騎士はとても不利。

更に騎兵大国であるポーランド王国(キリスト教としては穏健、ユダヤ人もOKな国だし)が隙間を守り、実に20年も当時は最強の騎士団「ドイツ騎士」と戦い続けました。


ジギスムントはフス派を倒すために何度も十字軍を呼びかけますが、端的に言うと死屍累々。


最終的には同じ戦術を行い、壮絶な銃撃戦・砲撃戦による力押しで決着をつけました。

お互い防御的な戦術しかとれないので平押し、力押しによる殲滅戦です。


ここでもう一つの銃の特徴「補給が大事」も出てきます。


まあそういった運びですから、最後の一兵まで戦うしかありません。

最後は残酷な結果です。

フスは全滅、皆殺し。



これが中世と近世の境目かどうかはわかりません。

しかし、みなが近世のアイテムと考えるいろいろなものが出現してます。


「民族」

マスケット

「農兵」


中世は何となく終わり、近世が始まります。

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