表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人間の歴史。  作者: TAK
近世への道筋
55/176

教会の権威

さて、ヨーロッパが近世へと辿った道を書いています。


彼らが中世と謳っていた頃は点在する都市と周辺の耕作地のみが生活圏、中心には教会があります。

フランス南部、ライン川周辺、ドナウ川周辺、端的に言うと元ローマ都市があるので、多少は文明的ですが、周辺諸国、ヴィザンティンやイスラムに比べると数段見劣りします。


ちなみに、映画でのヨーロッパは堂々とした石のお城を中心とした大世帯を想像しているでしょうが、実際は都市の80%は人口500人以下、市壁を巡らせた村落です。




現在はフランスである場所はフランク王国としてそれなりの国家を築いています。

西ヨーロッパではイスラムを除くと一番の文明国でしょう。


特に秀でていたのが軍事力。

馬に乗り、かつ馬も騎乗者も装甲で固めた「騎士」は強力でした。

ローマ時代は小麦の穀倉地帯でもあったので農業もそれなり発達しています。

といっても、スペインまで占領していたイスラム国家が手を出さなかった理由は


「面倒そう」


程度でしたが。



実際、イスラムが本当に騎士が面倒な連中とわかったのは十字軍の時です。

役割が良くわからないが強い「騎士」と、難民なのか飢民なのか、盗賊なのか蛮族なのか、そんなよくわからない連中が、人口1100万人しかいない地域から、実に30万人もなだれ込んで来たのです。

連中は信じられないことと思ったでしょう。

そして命を捨てて襲ってきて、死屍累々、その死体は疫病を蔓延させ、残った一割に満たない連中が


「勝った勝った」


とのたまわっているのです。

付き合っちゃいられないというのが正直なところでしょう。



その横には現在ドイツがあるところは「神聖ローマ帝国」。

この国はこれが全てです

  ↓

「いかなる点においても神聖でもなければ、ローマ的でもなく、ましてや帝国ですらない。」 ヴォルテール


十字軍の時に、十字軍を名乗っていた連中は神聖ローマ(ドイツ)の村も襲っていました。

国ですらなさそうな地域です。



が、いい加減十字軍にも飽き、イスラムの文明を学んで文明化していくに連れて、そんな蛮勇は消えていきました。


とくにそのシンクタンクとして「教会」の役割は絶大でした。

後に「科学サイエンス」と呼ばれる知識の体系は、次々と得た知識を呑みこんでいきます。


"scientia"ラテン語で言うと「知識」「術」という意味は、

"Science"英語では  「体系化された知識」=科学


と変質します。


「体系化された」


他地域では見られない現象でした。




実際、純粋にヨーロッパ人が発明したものは、下手すりゃ近代になるまでは「望遠鏡」「三圃式農業」くらいしかないのではないかな?


あと弦楽器。

「ギター」「バイオリン」はヨーロッパ人が堂々と誇れる偉大な発明と思う。

きっと歩きながら歌う必要性のある地域はここだけだったんだね。



にもかかわらず、イスラムや中国の知識を、自家薬篭中のものとして教会が伝え、一度もそれを見たことないのにヨーロッパ全域にばらまいているのはそれはそれで大したものです。

そもそも聖職者と軍隊、商人、ジプシー、盗賊以外は自由に街道さえ歩けないのに。


ということで、自由に行き来できない地で、教会が中心の町で、教会の教えしかわからない連中が細々と生きている割にはそれなり発達していきます。

人口もビザンティンを入れた総人口は


西暦1000年では4200万

 ↓

西暦1300年では7300万


激増しています。


フランス600万人→2100万人

イタリア500万人→930万人

イギリス170万人→370万人


増えているところは西ヨーロッパ。

十字軍でもわかるように、人間の命が大安売りの地なので、逆に知識を貯めこんで耕作地が増えるだけでも国力が増大します。


そして、皮肉なことに知識を貯めこんで人口が増えるとともに、教会の権威、騎士の権威が激減します。

民度が上がるとふざけた上位階級は潰されますね。


そもそも、中世の前期はキリスト教会が非常に敬われていたので、それが教皇が王を待たせる「カノッサの屈辱」なのですが、それ以外にも修道会での信徒の教育体系確立/組織化する、異端審問等のルール化など、次々と組織としての体制が強化されます。



ちなみに異端審問官はみなさんのイメージと違い、結構平和的なものです。


カソリック、実は現代のプロテスタントと同じでかなり分化したり、正教との兼ね合いもあったのでそれ以外もあったのですが、そこら辺の信者を正したり教育しなおしたりするだけの活動です。


1318年に、異端者と魔女を「いつでも、どこでも裁判を行ない、判決する権利を与える」とし、魔女は異端者として処分し財産を没収するようになりました。

そしてその直後、かなり残酷な所業をおこなった記録がありますが、じゃあそれがヨーロッパ中に蔓延したかというとさにあらず、どちらかというと


「おばちゃーん、神の教えはそうじゃなくってね...」


的な記録ばかりです。

もちろん、代表的な数十件は本当かもしれませんが、実際に田舎の修道士にいきなりそれを「やれ」と言われても難しいでしょう。

隣近所で、自分が祝福して、見守っていた村人を処刑なんてなかなかできませんよね。


それが証拠に、そもそも異端を修正すること自体うまく行ってません。

というか、


そもそも修道会の立場が上がり、地域で高い地位

地域の風土やしきたりで特化する、

知識の吸収での地域差、


こんな理由で現代のプロテスタントやら新興宗教なみにいろいろな宗派が増えてます。

それこそ「衣服は神に背く所業」とオールヌードでおっぱい放り出す、誠に羨ましい宗派とかマジいました。

その宗派、まだどこかにありまへんかね?

あったら教えてください。



異端審問、魔女狩りが皆さんのイメージなのは15世紀以降、本当に残酷になったのは近世以降。


むしろ近代の(エセ)知識層が蔓延してきてからの方が皆さんのイメージ通りかもしれません。


いまや世界中に蔓延する魔女狩り的な左翼活動も、奥さん、PTA活動、ママ友同士のいじめも中より上の層「~ネーゼ」だのいわれるところに蔓延していますが、自称知識層がやってます。

赤塚不二夫の「~ザマス」的な揶揄が似合いそうな人達。


インテリゲンチャ気取りの人一番残酷な所業をするのかもしれません。

本当の虐殺も近代以降ですね。

それまではそれこそ古代史以前の道理「民衆が本当に思えば王を簡単に殺せる」が起こりますから。

金王朝を殺せない理由は現代の技術ばかりが理由です。




更にキリスト教を変化させたのは外圧、具体的にはイギリス、北欧、ドイツでした。


「外圧」なのに神聖ローマ帝国をヨーロッパと言ってる「ドイツ」って何を言ってるんだ?


あってます。

イギリス人を「アングロサクソン」と言っているうち、

アングロの部分はアングル人、ドイツのユトランド半島南部に住んでた人達です。

サクソン人はドイツのザクセンにすんでいたザクセン人のこと。


アングロサクソン自体はどちらもドイツのゲルマン人のことですね。

ちなみにジュート人はユトランド半島北部に住んでた人達。


もともとイギリスはドーバー海峡を越えたケルト人が住んでいました。

そしてローマが進出して南部がローマになり、そして放棄した後に上の3民族が侵攻してきたのです。

後世はドラマチックに「七王国」とか呼ばれる時代。

NHKとかの質実剛健な面白いアニメもこの歴史を物語にしたものがあった気がします。

神話時代のロマンティックなものは近世以降に作られたものですね。

そして「イングランド=アングル人の土地」という国名もここで作られました。


ちなみにグレートブリテンの「ブリテン」はローマ時代につけられましたが、イギリスに昔から住んでいたブリテン人のことを指します。

フランスのブルターニュも同じ意味。

同じくブリテン人が住んでいたから。


2世紀の終わりから3紀の初めには既にキリスト教はブリテン島に住む人々の宗教として入ってます。

ローマ帝国のキリスト教の国教化=ミラノ勅令より早いですね。

そもそも国教化したコンスタンティヌス帝の母親ヘレナがブリテン島出身です。


そんな田舎だけど根っからのキリスト教、イギリスにカソリックはかなり早期に布教していたので元々がカソリックです。


そんな中、ゲルマン人であるアングル人、ザクセン人、ジュート人がローマ人がいなくなった空白で覇を唱えます。


さらにこのイギリスは北欧からもちょっかいを掛けられます。

バイキングからは何度も襲われ、デンマークから侵攻されて「北海連合」に組み込まれたり、離れたり。

そのバイキング=ノルマン人はそこらじゅうにもちょっかいをかけてますが。


フランス)ノルマンディー地方

ノルマンディー公国

イギリス)ノルマン朝

シチリア王国


ロシア)

ルーシ・カガン国

ノヴゴロド公国

キエフ大公国


北欧)

デンマーク

スウェーデン

ノルウェー

アイスランド

グリーンランド


中東)アンティオキア公国


ここらへん、全部ノルマン人ですね。

少数精鋭ですが強いですねぇ。

まさか中東まで征服できるとは。


もっとも、モンゴル人と同じように長く続けるのは苦手なので北欧以外は痕跡だけですが。


そして覇を唱えている連中が上手く統治するためにカソリックを受け入れます。

もちろん最初は征服の道具として形だけ。


しかしイギリス人微妙な逆襲します。


征服はされたものの、宗教は逆侵攻。

攻めてきた北欧人、バイキング、バイキングを通してヴィザンティンの更に東側のルーシー諸国(いずれロシア帝国になります)がいつのまにカソリック。


まあ、身も心もキリスト教徒になるのは実はかなり後になりますが、冷静に考えてみればヨーロッパ全域がそんな感じか。


しかしそれが更にカソリックの混乱を招きます。

ローマ教皇の言う事を聞かなそうな筆頭がこいつらですね。


そして十字軍なくて暇な騎士が世間に悪評垂れ流すような悪行を。

教皇も調子にのって女を侍らせて酒池肉林(誤用)とか、そこらじゅうに戦争吹っかける戦争大好き教皇とか、お金大好き教皇とか。


修道院もなんか権力持つと地域によって差が出てきます。

慕われる修道院もいれば、敬われる教会もあれば、極悪非道の権力者もあれば...


「アヴィニョン捕囚」でフランク王国が教皇を誘拐、神聖ローマ帝国が教皇領イタリア侵入して教皇の形骸化、イタリア取り戻す、フランク王国、神聖ローマ帝国が政治的に画策して3人擁立とか。


もう騎士もカソリックも失墜しまくり。


こんなんが中世末期の状態です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ