蒼き狼
さて、中世の日本に少しばかり寄り道しすぎましたが本流に戻ります。
世界は中世になり、一言で言えば「てきとー」な政府の下で自由に経済活動をする姿というのが世界の定番になってきました。
自分たちがイスラム圏に所属している、自分たちが唐に所属している、自分たちが日本に所属しているのは生活スタイルなのか、緩い宗教なのか、考え方なのかはともかく。
というか、きちんと古代のような法治国家にしようとした国はことごとく崩壊しているか、古代から抜き出られないかという感じで上手くいかない状況で、緩い国家、古代の経済活動だけの国家だけが生き残っている状況です。
そしてヨーロッパやインドのように、そんな区別は存在しなく、ただバラバラに分かれた国というだけなのに、なんとなく意識を共有していてルールがあるといった特殊な地域も存在しています。
何となくキリスト教徒でなくても教皇様のルールは守っとけとか、イスラム圏なのかバラモン圏のか仏教なのかも含めて共存させるのが定番な地域とかの意識が複数の国家にまたがる感じ。
「唐」にたいするベトナム地域もそんな感じですね。
人の行き来が頻繁になっている、自分たちの生活スタイルを発信できる手段がたくさんあったからでしょうか。
あるいは海運という、陸の何倍ものスピードで行き来できる手段が確立したからかもしれません。
あるいは一地域に必ず一つはイスラム商人か唐の商人が出入りする貿易都市が存在したからかも知れません。
国家意識以前の民族意識的なものも出来上がる時期なのかも知れません。
何にせよ、王様か教皇か帝王か皇帝かだれかがテキトーに政争、戦争しているのと関係なしに、
「Open Sesame!」と叫んで冒険したアラビアンナイトなのか、
「~アルネ」の将来の華僑の商人なのか、
あるいは「開墾」「開墾」「治水」「開墾」をひたすら続けた日本人なのか
は知りませんが、世界の富が増えていったのは間違いありません。
そして当然ながら周辺国家も富んでいきます。
それは
特産品があるから、
工芸が得意だから、
食料品が山ほどあるから、
特産品は嗜好品、香料、薬から、麻薬、毒まで。
あるいは絹道の隊列を組んだ商人の休憩所、
船で立ち寄る補給港、集積港だけなのかもしれませんが。
そして、その富で一番恩恵を受けたのはステップベルトの騎馬民族だったりします。
彼らはモンゴル、中央アジア、南アジアの無限にあるステップ気候の広大な大地を放牧し、家畜を育てることで生きていました。
高度な牧畜の技術、
常に動くことによる各地域の文明の吸収、
交易や畜産による富、
常に騎乗した生活をして狩りをする能力を持った生まれながらの戦闘力、
広大な地域を統べる手段を持つ統率力、
厳しい気候で生まれた頑健な肉体と精神力、
厳しい自然で培われた唯物的な意識、奪う機会を逃さない非情な機会主義者。
一応彼らはキリスト教っぽいストイックな宗教ですが、限りなく唯物的な思考の持ち主でもありました。
常に合理的で、理性的で、必要であれば残酷で、道徳は最小限、裏切られて復讐の繰り返しの世界。
ただ、やはり帝国等の定住民族からすると広大な土地でも大人口を抱えるのは難しく、人口だけは各帝国に見劣りしていました。
元々、ウイグル国家が滅びた後のここは中国の支配下でした。
支配といっても牧畜そのものが広大な土地に少ない人口、オアシス国家自体も点在、とても統治しきれないという部分がありますので、中国にとってはたまに搾取はするがいつもは放置プレーが基本でした。
そんな中、モンゴルという小さな部族に一人の英雄が生まれます。
「チンギス・ハーン」
彼の個人の物語がたくさんある、しかもどれも面白いので割愛するとします。
彼が歴史の必然だったのか個人の才だったのかは微妙なところです。
アレキサンダーについては、ギリシャから脈々と続く重歩兵の戦術の集大成と言えないこともないですが、その臨機応変さ、合理的な思想からすると個人の才といって良いでしょう。
そして彼が去った後に残ったものは東西交流したという事実以外、なにも変わりませんでしたから歴史の必然とは言いにくい。
まるで化学反応のように、アレキサンダー大王が作った帝国は元の体制、元の技術レベル、元の国境線に戻りました。
しかし、チンギスハーンについては?
彼がいなかったらモンゴル高原の戦力を糾合できず、拡大膨張も控え、あのような歴史はなかったかもしれません。
しかしながら、
文明の発達による強力な騎馬戦術、
中東、中華で次々と生み出された技術の行き場、
理想の商業国家、商業都市、商業にまつわるインフラが次々と生み出される世界、
ステップ地帯の人口集中が難しいところも、人口増加が著しい、
そして、世界の殆どの人の意識が変わってしまったこと。
こういう事は個人の才では片づけられない何かを感じます。
世界中の誰もが望んでいた世界を出現させるスイッチを、彼は当たり前のように押した世界というだけ。
人の行き先は既に決まっていて、彼はそのスイッチを押す人に選ばれただけ。
世界中の富が蓄積され、軍事技術が変わり、 国境が曖昧になり、宗教観が変わり、一次産業ではない
「商業」が大きくなる過程で、地面の下のマグマが蠢くように、モンゴルができる原因が少しづつ醸成されました。
尤も、周辺にとってはその超国家の出現は突然であったでしょうが。
彼らの力の源泉は「騎馬」です。
生まれた時から騎乗し、弓を使って敵(獲物)を倒すのが日常生活。
短くても張力を保った複合弓でステップを駆け抜け、家畜を管理し、敵を倒し、獲物や倒し、時々は弱い街を略奪し。
彼らの扱う「騎馬兵」は他の国家より考え方は違いました。
他国家にとっての騎馬は、
あくまで戦場での機動力で、
重歩兵の補完で、
突破されそうな味方の穴を埋める、
あるいは突破できそうな敵の穴を突く
三兵編成、歩兵、弓兵、騎馬の一つ。
モンゴルの場合は、
軍編制上は、万人隊、千人隊、百人隊、十人隊といった10進数単位の編成。
ちなみにこちらは狩りするときの単位でもあります
軍編成上は先鋒隊、中軍、後方輜重隊
こちらも結構あたりまえ。
ただし軍種がずいぶんと他地域と異なることになります。
主力は軽装騎兵(先鋒・弓でちくちく相手を痛めつける)、突破戦力として中軍は胸甲騎兵(刀剣、鎚矛、戦斧、槍で相手を叩きのめす重装騎兵)、後方輜重隊で補給物資、後方人員(外国人や技術者、工兵部隊、攻城兵器、その他)
他国と違って基本的に全部騎乗。
騎馬が主力で、突破するだけでなく、全てを支える主力、蹂躙後の追撃も含めてすべてをこれらで片付けます。
ちなみに重装騎兵はヨーロッパの騎士と同じ役割ですが、機動力を保つ地味な兵種で中身はずいぶんと違います。
攻城兵器や傭兵、工兵、あるいは女子供、機動力がないのは全て後方輜重隊。
外国人で成り立っていることが多く、工兵は中国人、技術者はイスラム人、攻城兵器は掘る、火薬で投げ飛ばす、カタパルト、その時代の最新技術をいち早く取り入れ、外国人に任すのが通例。
合理的で、こちらも他国とずいぶんと違います。
しかしながら、騎馬そのものはスーパーパワーではありましたが、あるいは一人あたりの富も科学技術もとても高いですが、今までは人口の少なさで世界に影響を与えにくいものでした。
#といいつつ、中国の歴代の王朝を多数
北方騎馬民族が占めたりするので
力はあったでしょう。
さらに内部でも縄張り争い以外に秩序はなく、政治もせいぜいクリルタイという集会でいくつか部族同士で決め事をする以外は、とくにどうこう縛りもありません。
少ない人口で家族/一族/部族が牧畜をして日々の生活をして、
気が向いたら都市と交易をし、
更に別な都市で得たモノや技術を売って金儲けをし、
さらに可能であれば都市や集落を襲って金儲けをし、
必要であれば部族全員をクリルタイで集める。
まさに現代の遊牧民、馬賊のイメージ通りな自由な生活を満喫してました。
自由に生きるため、あるいは富にはそれなり代償が必要です。
敵は牧草が生えるような荒地や厳しい天候なのか、
馬の速度でさえ足りない広大な大地なのか、
安定した食料が供給されない不安定さなのか、
定住しないがゆえの福利厚生医療機関のなさなのか、
あるいは襲わなければならない都市なのか、
あるいは自分の富を奪おうとする同族なのか....
彼らに高齢化やら年金問題やら医療問題など一切なかったでしょう。
弱い者は勝手に死んじゃいましたから。
が、ハートランドである中国や中東、あるいはその間のオアシス国家の文化、技術がモンゴルにも底上げがなされます。
商業が栄える中東の富、それに影響を受けた中国も増大するGNP、ローマ帝国ビザンチンも当然その富を増大させた一因です。
その富をやりとりする商社の役割をした絹道とオアシス国家、遊牧民の富も人口も同時に増大し、恩恵をうけます。
あいもかわらず各部族の集まりではありますが、ケレイトといったヨーロッパでも噂が流布されるほど大きな集団(王国?部族?)が いくつか生まれ、千人規模の集団規模をとれ、糾合すると万単位の軍隊をつくれるようにはなっていました。
#ちなみに豆知識
彼らはネストリウス派の緩いキリスト教徒だったりします。
正教ではそれなりの地位を築いていたのですが、
モンゴルの情報がこないローマ中心のカソリックは
蚊帳の外でした。
だから、ヨーロッパが席巻した今ではこの事実は小さい
宗教、法律に縛りがない機会主義者たちが万人規模で集まれる状態。
しかも各地の交易でノウハウ、技術、知識はたっぷり。
当時の超兵器である騎馬を日常から扱っている屈強な集団。
しかも食料さえ自前で兵站など一切気にしなくて良い革新的な軍事組織。
なにか一つの意思があれば大爆発を起こす環境です。
それを起爆させたのがチンギスハーンです。
いろいろと嫁さんを奪われたから、親を惨殺されたから、諸説はありますが実際はどうなんでしょう。
どちらにせよ、確たる部族の後ろ盾を持たないチンギスハーンの個人的な集団。
ただし「勇者」という通名で呼ばれたカリスマの彼は、強烈な意志で各部族を糾合し、裏切り裏切られ、親友を殺し、いろいろな物語をつくりました。
紆余曲折はたくさんありましたが、金王朝に逆らったタタルを倒し、ケレイトを併合し、ナイマンを倒し、ジャムカを処刑し、 全モンゴルを統一しました。
その後もよくある物語の通り、まるで散歩に行くようにユーラシア大陸を征服します。
征服する先々で都合よく人材、技術、官僚組織、資金のバックアップといったものを手に入れてますます加速して。
世界も一次産業だけではない、商業という産業が一定の地歩を築き始めた証拠でしょうか。
世界中も商業を切望するようになり、いろいろと得られるアイテム、リソースが散らばっていたとも言えます。
まるでRPGゲームのアイテムのようにそれを拾い集めて、彼はかってない広大な帝国を築き上げます。
ちなみにこの頃はその名のとおり無敵でした。
新兵器、戦術、富、情報戦、兵站、合理性、当時の超大国も含めて、ありとあらゆる国々より一枚も二枚も上手です。
ついでに商業で生きてきたからか財テクにもたけていましたし。
1200年代、突然ユーラシア大陸に異分子な国家が産まれたのです。
「イェケ・モンゴル・ウルス」
大モンゴル帝国です。
当時のことを後代は「パクス・モンゴリカ」、「パクス・タタリカ」としてその繁栄を現します。
世界を一変させた彼らはこう呼ばれるにふさわしい人達でしょう。
最近、某バーチャルアイドルのコンサートに関わっています。
長女が大好きなのですが、
・そのコンサートのチケット価格や予約の取りにくさに目を剥き
・超大型の豪華機器に目を剥き
・楽屋裏で働いている名だたるデザイナー、スタッフに更に目を剥き
驚きの連続。
更に全然別件の某アイドルの給料の安さにも驚き、いったいこのバーチャルアイドルは人月いくらで動いていて、そのチケット価格で元が取れるのか心配になってきました。
まあ一日何ステージもこなせるタフなアイドルらしいですが。




