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人間の歴史。  作者: TAK
中世の狭間
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中世の狭間で

中世の狭間は、いままで古代での「法の支配」「重歩兵での外線防御」「中央集権」が上手くいかなり、各地域がもがきつづけている歴史です。


イスラムは「法の支配」を、前に出すわけではなく「神のルール」を唱えることで一体感を維持しました。

イスラム教は宗教なのに「ブタの寄生虫とか、狂犬病とか気をつけろよ」みたいな生活の知恵まで入っているのはこのせい。

ついでに異宗教との付き合い方も「イスラムらしさ」を醸し出し、これ自体はイスラム教徒の嗜みとして中東戦争直前まで続きます。


1950年代まではイスラム教の隣人がいるのは、多少おせっかいではあるもののラッキーなことだったのです。

イスラエルとの戦争、アメリカへの反感でそんな良さは全て吹っ飛びましたが。

指導者ラビは政治色捨てて、昔の良さを復活して欲しいんですけどね。




唐は「法の支配」を維持するものの極限までスリム化し、一部を委譲することで神のルールと共存しようとしました。

いろいろな宗教を認め、バックアップし、共存する生き方そのものを唐の一体感としつつあります。

この後の「宋」「元」「明」「清」と続く雑多な世界は日本も見習ってます。

「西遊記」「水滸伝」「三国志演義」といった、儒教だ仏教だと名をうちつつ雑多な宗教観、まず楽しければ良いという考え方が中国人の中世以降の生き方そのものです。


尤も「唐」自体は宗教に押しつぶされちゃってますが。

あと、「外線防御」「中央集権」はどちらの国も解決はあきらめて開き直ってますね。

どちらも防衛線リメスなど作らず、何となくの影響圏が自分たちの国という感じ。

完全に守るなどやめてます。


中央集権もそうですね。

もともと「帝」だの「皇」だのは王の王の意味で、たくさんの国を文字どおり統べている古代では大いに意味があったのですが、中世では統べているのが「王」なのか「有力者」なのかわからない状態が続きます。

そもそもイスラム教のセルジューク朝だのファーティマ朝だのが共存していますが、彼らが「イスラム国」というものに所属しているのか、独立国家なのかも定かではありません。

ヨーロッパが唱える「封建主義」とは別物ですが、ある意味封建主義です。

明確に同じ法の下に国家というサービス機関が「統治している」という概念があやふやになってます。


唐が滅び、以降の中国もやがてそのようになります。


現代の概念での統治でないので、その頃の中世の版図、地図はいろいろな種類があるのがそういう理由。

別な国として色違い、なんとなく同じ国として青、空色とか似たような国として扱う、あるいは同じ国として「イスラム版図」「唐版図」として大きな国として扱うとか。


そんなあやふやな二大国の影響で、あるいは雑多な国境線のない世界は、世界中の文明を押し上げます。

特に「科学の発達」と様々な地域の文明化と、その影響による「帝国の乱立」が大きなものと言えます





科学について。



<黒色火薬>


後世に残した最大のモノは「黒色火薬」

6世紀から7世紀に中国で作られたと言います。


そしてその影響で作られたのが8世紀末から9世紀初頭ごろに唐で開発された「飛発」。

要するに銃ですね。

そしてそれがそのままイスラム世界に伝わり、大いに活用しました。

ちなみにまるで俺たちが作った的な立ち位置のヨーロッパは15世紀ごろに伝わってます。

今の世界史ではその後に、多分皆さんが必ず習ったであろう「鉄砲伝来」「種子島」「1543年」は嘘でしょうね。

日本に伝わって「ヨーロッパは日本の銃器の親分」的な立ち位置で説明してますが、南宋貿易、イスラムの貿易と、その時にいた日本の貿易の立ち位置、ヨーロッパの立ち位置を考えるとおかしいです。

まあ真実は知りませんが。

これは後代で説明しましょうか。


あと大砲。

1259年に南宋で開発された「実火槍」と呼ばれる木製の大砲が最初と言われますが、実はもうちょっと前にあってもおかしくないですね。

大砲は銃より作りやすいですし。

1453年にオスマン帝国がコンスタンティノポリス包囲戦で大活躍させたとか、難攻不落の古代の「城」を落城させて、以降の築城のあり方を大きく変えたとか言われましたが。

面倒だ、壊れる、当たらない、実際にほぼ当たらず役立ただったという事実が書かれていますがこれとはどう整合性取りましょう?

多分、大きな活躍はしていないと思います。

射石砲だのも準備が大変な割にすぐ壊れて、中国でも中途半端な兵器になってしまいます。

まあ、じつは全然別な意味で攻城戦が重要ではなくなっているのもあるのですけど。


銃も大砲も、本当の意味で活躍するのは近世になってからです。

後年に大きな役割を果たしますが、そのメリットは皆さんの考えるものと全く別かもしれませんが。


あと、中国は現代兵器にまつわるいろいろなものを14世紀『火龍経』に記されています。

火箭(焼夷矢)、火箭ロケット、火鎗、火器、地雷、水雷、射石砲、大砲、毒ガス、煙幕。

あとポンプ式火炎放射器とかもギリシャ火なんかよりすごそうです。

先進国!





<紙>


「紙」も大きな発展です。


あれ!?紙は紀元前じゃなかったっけ?


とか


羊皮紙、パピルス~


とかあるでしょう。


実際に以前からあるものですが、中国はこれを大量に消費するようになり、樹皮を主原料とした、竹や藁を原料を混ぜた紙を大量生産できるようにしたのは唐時代です。

7世紀に日本に伝わり、8世紀にイスラム世界に伝わり、ヨーロッパも同時くらいに伝わりますが本格的に作り、使うようになったのは11世紀ごろ。


ちなみに活版印刷も1041年 - 1048年頃に、膠泥こうでい活字が記録に残った世界最初の活版印刷。

朝鮮半島には13世紀。

日本は文字がとても多いので伝わってはいたでしょうがあまり流行しませんでした。

伝わったのが13世紀末とか言われます。


ヨーロッパも12世紀には伝わってますね。

イタリア半島で使われた記録があります。


教科書の


「1450年頃にグーテンベルクの活版印刷」


と憶えこまされたのは馬鹿馬鹿しい知識です。

先進国ではとっくにとっくの技術です。はい。





<羅針盤>


磁石が北を向く性質は古来から知ってました。

中国の磁石を埋め込んだ魚の模型「指南魚」は3世紀ごろから既にありました。

これを水に浮かべると北がわかるという。


でも船の上でこれはきついですね。

荒波にもまれながら、水に浮かべた木の魚が北を向くまで待つなんて無理。

ということで、船の上で揺れようが傾こうがぶら下げるだけで北を向く羅針盤が発明されました。



それ以外にも「乾ドック」とか「航路図」とかも発明され、イスラム、中国、それ以外の国々に活用されているので、海運が大きく発達している証拠でもあります。

ちなみにヨーロッパだけ仲間外ハブれです。

15世紀くらいまで、イタリア半島以外のヨーロッパにとって海は障害物で邪魔者なんで。



だんだん面倒なので並べます。


マッチ、ピストン式ポンプ、鋳鉄、鉄犂、馬具、播種器、手押し車、吊り橋、パラシュート、天然ガス、立体地形図、プロペラ、水門


偉大なるレオナルドダヴァインチとかの伝記見てから、これを知ると泣きますね。

中国、もっとすごいじゃん。


パラシュートまで既にあったとは知りませんでした。


あと紙幣の大量発行もこの時代。

金融市場まであるわけです。



ついで、


中国の天文学者は1054年に世界で初めて超新星観測記録、星雲発見とかしてます。


中東-インド-イスラムのラインは学術発展で協力し合っているのも面白いですね。


クビライが設立した中国天文局でイスラム教徒の天文学者が働き、ペルシアのマラガ天文台で中国人天文学者が観測に従事して、インドの天文学者が中国人の教授になってたり。

どの時代も宇宙はロマンなのかもしれません。

当時の先進国で研究してます。

宇宙学会やSF愛好会らしきものまであるとはね。




あと、この2国のおかげで大きくなった国もたくさん。

少なくともいままでは神話の国、短命の国、ただの都市国家に毛が生えたような国から、立派な国、文明、大帝国に成長したのは彼らのおかげ。




李朝=大越国ベトナム


北ベトナムです。

当初は中国の従属国家。

中央官庁も中国風、科挙もあり、官僚制も中国風。

儒教・仏教・道教をともに保護した大らかな国。

貿易拠点。

宋と争って勝ったり、元と戦って押しのけたり、戦闘民族でもある。

後に後継国が超大国「アメリカ」にも勝ちます。




チャンパ王国


漢に反抗した南ベトナムです。

貿易拠点として発達。

超大国「元」押しのけてる戦闘国家。



クメール王朝


13世紀に上座部仏教がインドシナを掌握するまで、ヒンドゥー教や大乗仏教が占めている雑多な国。

アンコールワットで有名。

すごい農業国で、もう肥沃で肥沃だったらしい。

米も中国に輸出している。

アンコールワットは下手すりゃ東京23区より大きい大都市。




アユタヤ王朝


現タイの中部アユタヤを中心に展開したタイ族による王朝

この後継国「タイ」は大日本帝国と対等な外交が出来る歴史ある大国。

今でも工業団地等で世界の工場候補で上位に昇る国。

経由地として便利、文化的にも上の方。



パガン王国

いわゆるミャンマー

まあ普通の貿易国です。



チョーラ朝


南インドの王朝。

当時はイスラムと対等に渡り合える唯一のインドの国。

インド洋の制海権は実は彼らだったとかそうではないとか。

北方のジャングルに守られてる地の利は良いですね。



ラージプーターナー、デリー・スルターン朝、ゴール朝、


北インドの国達。

イスラム従属国。

まあ所詮はインドは浮かばれません。

ただ、一応イスラムとは毛色が違う、仏教が主流であり、ほかにマニ教、ネストリウス派キリスト教、シャーマニズムので、独立はしている様子。




アクスム-エチオピア

昔っからキリスト教として有名で、イスラム圏に変わってもエチオピア正教とイスラム教が共存している貿易国家。

エジプトがイスラム圏になったので暮らしやすい国になったかも。

農業国家+貿易国家




スワヒリ文明


ここだけ文明ですが、一応イスラムと唐の影響ということで。


アラブ系民族とバンツーが4世紀以前に到達しているアフリカ東海岸ですが、7世紀末には東海岸にイスラムが到達することで、スワヒリ語とその都市国家群が出来ます。

スワヒリというアラビア語で「海岸、水辺、河畔、緑辺」という意味の「サワーヒル sawahil」に由来します。

各都市はバヌトゥーを中心としたアフリカ製品の輸出で、イスラムとアフリカのハイブリッド都市で、草網家具と、漆喰の家と、イスラム様式のモスクが共存するような都市。


アフリカのお祭りは、イスラムが去ってイスラム教徒ではなくなっても、ペルシャが起源とされるお祭りが残ったり(ナイルージと呼ばれる新年祭とかそうですね)、宗教だけ残って文化は固有の北アフリカ国歌とは対象的な歴史です。

まあ北アフリカはイギリスやらナポレオンやらイタリアやらスペインに言いように蹂躙された後に冷戦の影響で独立と、ある意味人造国家ですから仕方ないのかも。

世界で初の金貨を鋳造とか、1000トンクラスの大型船とか(大型船の竜骨は技術レベルを如実に表す一つの指標)かなり進んだ国家です。




サハラ交易


こちらも国家名ではないですね。


ただ、アフリカ中央部の国家と北アフリカイスラム圏とは活発に交易してます。

最盛期は8世紀より16世紀後期。

ベルベル人とかガイドに特化した民族がいたり、オアシスやラクダの飼育で、アフリカ中央部は謎のままではあるものの、最大1400頭のラクダの大隊商が行き来したりしています。

貿易は、アフリカの「金」と地中海の「塩」。

北アフリカのイスラムはずいぶんと助かりましたが、アフリカ大陸中央部は誰と交易していたかも謎。

相変わらず暗黒大陸です。




ヴァイキング


え!?こちらイスラムや唐とどう影響してるの?


ってな感じでしょうが、そもそもヨーロッパのイメージ、あるいは日本のアニメのイメージ


「二本の角のヘルメットと斧を担いだ海賊」


というのが間違ってます。


英英辞典でも


スカンディナヴィア半島、バルト海沿岸に住んでいた人々全体(海賊)

 ↓

スカンディナヴィア半島、バルト海沿岸に住んでいた人々全体


に変わってます。

普通に中東と貿易して潤った民族です。



主要産業は農業、漁業、貿易。

海賊行為はGDPの1%以下と言われてますね。

航海術だけではなく、地理的な知識・工業的な技術・軍事的な技術も優れた人達です。

尤も人口は少ない。

寒冷地で氷河期まであったんで当たり前。



ロングシップのヴァイキング船が有名です。

喫水の浅く、細長い、外洋で帆走できる、多数のオールで漕ぐこともでき、水深の浅い河川にでも侵入でき、しかも陸上では舟を引っ張って移動することもでき、とにかく中世では優れものの人達です。

当然、早くてどこにでも置ける機動力持ってるので、海賊船としても優れものです。

古代で謎の「海の民」候補なのがわかる気がします。



嘘か誠か、普段は農業をしていて、その家には個人所有でヴァイキング船を持っていて、農業出来ない寒い時期は工芸品を作って中東や中国と取引していたという...

なかなかの万能人ですね。

今の北欧人と通ずるものがある。


そのかわり人口は少ないわ、食糧事情が悪いはで、生き難い土地でもあります。

今の北欧がまさにそんな感じですね。

 #工業に優れていて、超大国以外に

  独自にジェット戦闘機作れる数少ない国

  携帯電話だの電子部品も有名

  でも人口少ない。

  中東難民来たら人口構成ひっくり返る




あとその影響でノヴゴロド公国


モスクワ大公国とかキエフ大公国とかも内包していた国。

北欧人ルーシーが建てたヴィザンチンの従属国家。

陸上での中東貿易の通り道の一つ。

ヴァイキングは普通に陸でも活躍してます。

地図も優れているし。



ヴィザンチンの従属国家なので当然キリスト教が主流。

キリスト正教だったのですが、物騒なカソリックに教化され、その後イスラムからなだれ込んだり、タタール人に支配されたり、やっぱりキリスト正教に戻ってます。

そもそも、カソリックはイギリス諸島の侵入でヴァイキングが教化され、それがルーシ諸国が影響され、乱暴な国が強引にカソリックに改宗をこころみ、なんだかよくわからない宗教争いがモンゴルで吹っ飛び、その後はロシアの状況次第というところ。

混乱してます。





まあこんな感じでアメリカ大陸以外の世界に大きな影響を与えた二国でした。

しかし、後世に最大の影響を与えた国は下の国達です。



オアシス国家で富んだ西夏

それを飲み込んだ女真族の遼、金


唐に服属しながらも影響をもらった突厥。

唐が滅ぶ前はたくさん儲けました。


そしてそれを全て呑みこんだケレイト、ナイマン、モンゴルといった部族たち。

唐とイスラムから流れ込んだ富は、彼らを極大まで力をつけさせます。


それが爆発するのが中世の後半の物語。

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