残念な超大国
無事、漢は東の超大国として離陸しましたが、一方西側ではどうでしょう?
こちらは中身はともかく名前だけはとっても有名な「ペルシア王国」が勃興します。
起源前7世紀、王のテイスペスがアケメネス朝がアッシリアにやられまくって弱体化しているエラム王国を屠り、北部アッシリアを屠りました。
その後はキュロス2世がメディアを滅ぼし、リュディア、エラム、新バビロニア全てを滅ぼしました。
その後カンビュセス2世がエジプト第26王朝を併合し、見事古代オリエント世界を統一します。対抗できたのは奥地に引っ込んでいたエチオピアくらい?
統一は紀元前525年とか。
領土はインドにさしかかる場所からエジプトまで。とても広大な帝国です。
そしてとても有利。
古代社会では、アフリカから抜けるのも、エジプトから東に出るのも、インドから西欧に出るのも、中央アジアから海へ出るのも、地中海世界から東へ抜けるのも、全て陸路はここを通ります。
東西の貿易をしようとしても、やっぱりここを通らない貿易路はインド洋を渡る海路しかありません。
沿岸を伝うような古代の船ではやっぱりペルシアは交差点となります。
そういった有利さで、メソポタミアを嚆矢に、こちらはいろいろな文明、文化、都市、宗教が出現したのは今までの話。食糧生産もすごい、灌漑を行う技術も発達、シンクタンクのエジプトまで支配し、とっても高度な文明でした。
帝国が出来た原動力は、アッシリア人、スキタイ人、といった騎馬民族たちを支配下に置けたこと。
技術も、富も、軍事力も持った騎馬民族は絶妙な統治方法でこれをうまくこなします。それこそ近世でも真似されるような飴と鞭を使い分けた高度なものです。
そしてその強大な力、アッシリア人、スキタイ人を率いて、そのアッシリア、スキタイを滅ぼし、オリエント一帯がペルシアのものとなる原動力となりました。
政治は王政。
けっこういろいろ、民主性がいいんじゃ、寡頭制がいいんじゃとかいろいろ考えていたようですね。さすが文明国家。滅ぼしたすべての国が神殿を中心とした国家だけあって王も「強い!」「偉い」だけではないようです。結局民主主義の欠点を恐れて制限つきの王政に決めたようです。
エジプトを吸収してその官僚制度や交通網を発達させ、楔形文字を使用するなどオリエント文明を継承する新たなイラン文明を作り上げ、それはそのまま次のパルティアとササン朝ペルシア、あるいはイスラム国家群まで継承され、西洋文明が席巻されるまで長い間同様な政治体制になります。
20の州にわけ、それぞれに知事を派遣し、監察官を派遣し、統治とともに「王の目」「王の耳」として監査機構もある優れもの。
交通網の整備として幹線道路「王の道」をつくって駅伝制をととのえ、経済活動を活発にするために金・銀2種の欽定通貨をつくり、共通の価値観を持ちあって経済を活性化させます。
国教はゾロアスター教。別名「拝火教」。
火なのはここらへんは石油が取れるから?
世界はじめての一神教と言われますが、善と悪、それを人格化した神、それを取り巻く者たちがいるので、話半分で聞いた方が良いです。
この後これが可変して多神教であるヒンドゥー教に取り込まれるものなので、あんま一神教の立ち位置ではないです。
というか一神教というのは、そもそも神の在り方そのものが徹底的に違います。
ぜんぜんぬるい宗教。
まあ、まだまだこの地はインドと深い結びつきをしているということだけが良くわかる事象です。
軍隊も征服した国々の技術を吸収しました。
鐙、鞍といった馬具が一番発達していたのはインドで、それに近いペルシアも大いに有効活用しています。
この頃はカスピ海を超えるとステップベルトで遊牧民とも近しい関係だったので、そのノウハウで部隊を作り上げてます。弓騎兵でその機動力を生かし、ちくちくと敵を疲弊させると。
中国と同じく、むしろ中国よりうまく騎馬を取りこんでます。
そして有名なのは不死隊。
定員一万人の大部隊かつ精鋭部隊です。槍と木で編んだ盾、ギリシャのスパルタ等からすると装備は見劣りしますが、その圧倒的な人数で次から次へと入れ替わり、これと闘う敵はまるでゾンビと戦う気持ちになるという。
まあこんな感じで西にも強力な超大国が出現しました。
.....正直つまらん。
多分このペルシアはしばらくは間抜けな敵役以外ではでてきません。
それなり立派な国、幸せな国、強力な国だったのでしょうが、配役としてはとってもポンコツな国、サンドバッグでぼこぼこ叩かれる国、丁度良い敵役としての配役しか回ってきません。
中国は今の華僑を想像できないほどのどんくさい農業国家。農奴がいて食糧たくさん作って富国強兵、富国強兵。
それに比べてペルシアは陸でも海でも文明の交差点。
いまだにGNPの殆どが一次産業であることは変わりありません。
商売の殆どは食糧。陸でも売り買いは食糧です。
海はまだまだ貿易路としては危険なところ。
まだまだ未熟な船舶で、帆と櫂でえっちらおっちら沿岸を渡り、嵐が来たり難破したりすれば陸につけて逃げる。スピードおそいので休み休みの航海術。
それでもどんくさい漢にくらべて華やかなアラブの商人とか、きらびやかな都会人的な位置を占めてもおかしくないじゃないですか?
交差点ですよ?
しかし、せっかくオリエントを征服して超大国としてぶいぶいいわせる時期に、いきなりペルシア戦争でギリシャと衝突します。
超大国ペルシアの相手はゴミ屑みたいな古代の都市国家。ギリシャなんて国はありません。スパルタ、アテナイ、ちっちゃなちっちゃな都市国家です。
負けました。いえ負けてはいませんが勝ててません。
いきなり地中海方向への進出を阻まれ、なんとか和平共存でいく方向でなしつけたら
...今度はど田舎小国、同じくギリシャだけどちょっと違うマケドニアがつっかかります。
というか大王とやらに負けました。征服されました。というか大征服されました。
単なる通り道にされました。
そしてその大王とやらがおっ死んだら今度はローマです。
いつのまに地中海を囲むように大帝国を築き、文明の中心は全部ローマ。
ペルシアはパルティアと名前を変えてますが役割は変わりません。
ただの邪魔なサンドバッグ。
貿易はどんくさく、陸には陣取っていましたがローマ時代は海洋がそのままハイウェイになる時期。
どんくさいまま。
こんな悲しい国がペルシアです。
ペルシャ絨毯、ペルシャ猫、悠久のペルシャ、魔法使いペルシャ、
「ペルシャ」の単語はいっぱい出てくるものの、これがなんなのかは謎な人が多いです。
まあ国っぽいということがわかっている人は多いですが。
私もです。
実はこんな国でした。
今回は短い。次はどっち行きましょう?




