動物はすべからく雑食です
さて、中国の超大国「漢」が無事に離陸しました。
当時の地球中見渡しても、この帝国ほど巨大で強大な国はないでしょう。
しかし、中身を考えると。。。。
戦闘中にちょっと見下ろせる、ちょっとばかし速い程度の兵器「戦車」。
(よーするに兵隊を馬車に乗っけただけ)
重歩兵と言い切るのも微妙な、昔ながらの矛、長剣の兵
大して工夫もない弓。
一応の最新兵器は弩兵。これだけは他国より圧倒的に優れていたものです。
射程は他の弓と変わらないものの、初速と命中率が素晴らしい。
漢軍の主力。約20%がこれを装備していたと言われています。
この情報は正しいと思います。秦の兵馬俑でとっても詳しい軍隊の様子が現れています。
「ぼくのかんがえるつよいぐんたい」
ではあるでしょうが、人間は自分の想像できるものしか作れないはずですから。
で、この貧相な装備で戦ってとっても維持に苦労してます。
漢は長らく貢物を払い続ける、ときには女性も、とかなかなか屈辱的な立場に甘んじてました。
では、そのころ漢軍を悩ませていた貢物の払い先...
「匈奴」という遊牧民族です。
人口は推定で140万人ほど(ちなみに漢は2000万人以上)
仕事は牧畜(牛、馬、羊、らく)、狩猟、貿易、強盗その他。
食事は肉とヨーグルト。
遊牧という牧畜の方法で、広大な地を自分たちの家畜を率いながら巡ります。
ゲルと呼ばれるテントに住みながらユーラシア大陸を牧草求めてうろつき回り東西南北。
ちなみにユーラシア大陸は、中央ユーラシア、シルクロード等を思い浮かべる真ん中あたりを「ユーラシア・ステップ」といって遊牧民族が住んでました。
具体的には、北アジアのモンゴル高原から中央アジア-イラン高原-アゼルバイジャン-カフカス-キプチャク草原-アナトリアを経て東ヨーロッパのバルカン半島まで至るY字の帯状に広がった地帯。
文明国を覆いかぶさるように存在し、中東、南アジア、中国、後世になるとロシアや東ヨーロッパも追加で常に彼らの侵入に頭を悩ませることになります。
#ローマを除く。ローマはゲルマン人だのが防波堤になってくれた。
おかげで玉突きでゲルマン人が侵入とかになったけど
さて、牧畜ってどんなでしょう。
石器時代に生まれたのは確かですがとっても難しいと言われています。
そもそも家畜にできて育てられるものは100も満たないと言われています。
それなりの大きさで、役に立ち、しかも「飼う」ということは「集団がOKな動物であること」、「人が言うことを効かせられる」「大人しい」
具体的には
・狼が典型的な例です。リーダーがいて、集団生活をして、序列があって、
コミュニケーションをとって生活をしている。
ちなみに「犬」は狼の一変種です。世界最古の家畜(というかペット?)
・イノシシも集団で家族をつくってすごしていますね。「豚」はイノシシの一変種。
・野牛、バッファローの一変種が「牛」
・ネコ科も群れます。まさに猫はペット
(役に立つかどうかは...いえ、役に立ってますね。
人間の上位種で人間を奴隷にする最強動物(笑)
・鶏は微妙ですね。あれは閉じ込めているだけ?まあ集団生活らしきものはしてます。
・馬も群れます。とっても従順。
水牛でもう結構ギリだそうです。ダチョウ、象、シマウマとか飼う部族いますが相当無理している、というかギリ超える苦労をします。
ハンニバル、よくアルプス超えて象連れてがんばったなぁと。
とっても苦労したと思います。
熊とか飼えますが、正直勇気いりますよね。ロシアで熊飼っている人結構殺されちゃってます。
まあ私も大して知識ないんでまだまだありますが(図鑑で100種くらいと書いてあった)、全然思いつきません。なんでしょう?
まあ兎にも角にも少ないということはわかりました。
そして飼う事の難しさ。
そもそも肉食とか草食とかありますよね?
あれって何?と言うところから始めましょうか。
(戻りすぎ?まあ頭悪いんでここまで戻らないと納得できないんですよ)
動物が「食べる」ということ、これは自分が構成している物質を取り込むことです。
もちろん最終的には化学反応を起こしてエネルギーを興し、「動く」という行為で消耗してしまうかもしれませんが。
となると自分と同じ構成のモノを取り込むのが一番となります。さすがに同じ種を取り込むのは別な理由でタブーとなるようですが...食人?それこそイースター島やグリーンランド、アウシュビッツのように本当に危機的な状況でないと起こりません。生贄、儀式、勝利して敵を食う、それこそ禁忌を犯すことが大事な宗教的なものなのでまさにタブーである証拠...まあ単細胞生物、どころかウイルスの頃から動物は基本的に肉食です。
じゃあ「草食」って何?
と言われると植物「も」食べる動物ということになります。まあ私たちが考える動物は、ほぼ全て植物を摂食できる構造を持っているので、ほぼすべての動物は雑食です。
というかアメリカの肉骨粉を食べる牛、普通に肉食の兎います。悪食で野菜を食べる犬、人間の残り物を食べる猫、本当に飢えた時はライオンも草食べます。
もちろん草食動物も肉食動物も、程度はあれど特化しているし、生活スタイルとして主に植物を食べますが。
では草食動物が何が特別となると、それは消化器官ですね。
中学だがで習った植物の特徴「細胞壁」。これが難物でなかなか消化できないものです。
たとえばとっても誤解があるのですが、消化とは溶かすことです。
鋭い牙、強力な顎は溶かすための表面積を増やす以外は何の助けにもなりません。消化液で全てをばらばらに分解し、腸で吸収して体を構成する材料をかき集めることになります。
ちなみに骨はアミノ酸でできた「骨細胞」でカルシウムを貯めこんだものです。もちろん普通に溶けます。
#一応おまけ
ビタミンは別名「必須アミノ酸」といって、単に体内で作ることができない
(それを端折ることで生物的になにか有利なのでしょう)
アミノ酸というだけです。ビタミン(アミノ酸)が足りないから
病気になるのは確かですが、それを豊富にとったからと言って
良いことはありません。むしろ多量摂取は病気になります。
しかし細胞壁はマジ溶けません。大変苦労することになります。消化液は自分も溶かすことができる強力なものです。(だからこそ胃潰瘍になる)
大抵の動物は腸内細菌を飼い、それで分解することで何とかする方法をとっています。シロアリから牛まで
みんな体内に分解できるバクテリア飼ってます。
そしてその処理の仕方でとても草食動物は苦労しているのです。
牛は食道を大改造して胃を3つばかし増やしてます。そこに細菌をたくさん飼い、だらだらと植物を分解していきます。最後の本当の胃ではとっても溶かしやすく、腸はとっても吸収しやすくなった材料をたっぷり吸収します。草食動物としてはとっても優れたモノ。
ウマは盲腸をでっかくしてそこに細菌を飼ってます。盲腸って役に立つ機関なんですね。それで吸収しますが、腸の途中の盲腸で分解するので、胃より前に分解している牛よりは効率悪い。
豚や人間は腸内で分解してますね。馬に似ています。腸のバクテリアは生きるのに大変だし、分解してももう大腸になって移動してしまったり、あんま効率よくないです。まあ豚も実は雑食ですから何でも食べます
ウサギなんて食糞します。
大腸に近いところに飼っているので、胃や消化管を通った後に分解されるという特殊な構造。
大腸も腸ですが、水分の吸収に特化しているので、せっかく分解してもあとは排出するだけ。
せっかく分解した成果を摂取するには、もう一回消化菅に放り込むしかないですね。
糞を食べることは生きるため。
とにかく効率悪いです。
そして効率悪いとなれば、当然必要なものを手に入れるためにとってもたくさん食べる必要があります。
騎馬軍が出来たらその補給(糧秣)がとっても大変です。人間の食糧より嵩張る嵩張る。
そして腸内細菌で消化が得意な草も変わる。柔らかい方が良い、湿った方が良い、乾いた方が良い、根菜が良いetcetc。
また馬(あるいは戦前の日本人の子供)は必要な分を摂取したら余分なものも大量に...
それを消費するためにとっても運動が必要です。馬も戦前の日本人子供も栄養のバランスをとるため、生き続けるために運動が必要だったりします。
はてさて、牧畜ってとっても大変でしょう。
農耕より遥かに苦労します。
遊牧民族は非常に優秀です。
飼うためのノウハウ、管理でこれだけ苦労するのです。
そして乳管理、ヨーグルト等を作るための発酵管理、そして家畜たちを満足する為に広大な地を巡り、家畜たちを守るための防衛。そして腕力/武力だけではなく、少数でたくさんのものを守るためには情報やコミュニケーションも必要。
もともと知性が必要な仕事。いろいろな地を巡って各地の知識を得る機会も多く、そして家畜を守るため(ときには奪うため)の腕力武力、少数で守るための情報連携は軍隊より大変な訓練になります。
そして職業「狩猟」「強盗」。
全員が弓も剣も達人です。だってそもそも生きるための技術ですから。生きるだけで強力な兵士が出来上がる。農耕民族より少数という以外に不利な点が見当たりません。
更に寒冷地とか厳しい環境での屈強な肉体、農耕民族と比べて1人当たりの栄養事情は良いし、貿易による富もある。更に生活そのものが戦いなので成人男子ほぼ全てが優秀な兵となると。
140万人 vs 2000万人
でも対抗できるわけです。
桁も超えるほどの人数の違いでも
ついでにつらい、というか厳しいの方が良いか。厳しい日々で培われる現実主義も、残酷ともいえる容赦ない組織も。
リーダーである冒頓のエピソード
可愛がっている馬を部下に撃たせようとします。
冒頓の馬ということはみんな知っていますから、兵士の中には戸惑って矢を放たなかった者がいたら容赦なく斬り殺してしまいます。
次に、冒頓は自分の后にに矢を向けます。
当然、兵はもっと戸惑います。
同じく、またも命令を聞かなかった兵士をその場で斬り殺します。
普通の道徳、一生懸命働けば見返りが来る的な性善説は一切否定されてます。
こうやって冒頓の命令が善悪を超えて兵の絶対的なものになるわけです。
恐ろしい。。。。
そして紀元前200年、漢軍と匈奴との「白登山の戦い」
漢は圧倒的な人口です。人口が少ない匈奴に対して兵をそろえて真正面からぶつかれば撃破できたでしょう。
しかし相手は圧倒的な機動力、情報力。
三十二万の軍を率いた漢軍を翻弄し、統率のとれた軍隊を弱兵のフリをさせて騎兵部隊の突出を狙い、分断し、殲滅し。
本来は圧倒的な兵力で叩きのめせる兵力が分断され、兵力を巧みにあやつって集中させ、逆襲されたら各個撃破を食らう包囲戦をタイミングあわせて回避し、将を前に出すために罠に誘い、鏑矢といった道具を使って同時に包囲するタイミングを計り、巧みな機動力で回避しつつ戦いつつタイミングを合わせ...
漢軍は惨敗しました。
匈奴に敗れた劉邦は、匈奴へ貢納物を献上するという屈辱的な和平を結ぶことになります。そして、武帝の活躍までは、漢は匈奴に属国扱いをうけることになります。
秦の頃から勝ったり負けたり、とっても長い期間、中国は彼らに悩まされます。




