終わりのはじまり
さて、第一次世界大戦終わりました。
新兵器!西部戦線異状なし!毒ガス!戦車!飛行機!悲惨!アメリカ!
戦争の実相は実はとっても単純だったのですけどね。
・単なる普仏戦争の遺恨です。
・西部戦線以外はあんま関係ないです。
流れ。
・仏が丸裸で攻めてたくさん殺された
・ドイツが不意打ちでベルギーを通ってフランス攻めた。たくさん殺されたがなんだかんだでパリの喉元まで近づけた
・いろんな国にムカつかれてドイツは四面楚歌。でもなんやかんやでこの時代のテクノロジーは防御側圧倒的に有利なのでなんか耐えた
・もう大砲何千門、毒ガス、戦車、飛行機、狭い地域で何十万人も集まって、何もかも使って戦ったが耐えた。塹壕恐るべし
・各国が疲弊して戦線整理が出来たドイツが攻撃側になった。浸透突破で超頑張った。でもドイツ国民は生活苦しいし、なんかアメリカ参戦して悪の帝国になってるし、なんかパリにほとんど戦っていない米軍何百万人もいるし、疲れて辞めた
他の戦線、他の兵器は付け足し程度。
戦争の原因のセルビア(南部戦線)、一番死んだロシア(東部戦線)、Uボート、飛行機、戦車、付け足しとは何事かと言われそうですが、↑に影響あったかどうかという観点では付け足しと言えましょう。
ついでに日本の活躍。
太平洋やインド洋、大西洋、アフリカ戦線、世界中に飛び火しているのも確かですが、これも西部戦線の趨勢ですべてひっくり返せますしね。
その悲惨さはどちらかというと戦後にこそ影響出ました。
「世界大戦」
そもそもこの語源は"First World War"はドイツの生物学者、哲学者であるエルンスト・ヘッケルが戦争初頭の1914年9月に言った言葉です。
あるいは語源は"Great War"(1914年10月)がそれに当たるかもしれません。
が、それはあくまでインパクトのある新聞の見出し、偉人の言葉「だけ」にすぎず、それが第一次世界大戦、第二次世界大戦という自覚など当時はありませんでした。
歴史家Gareth Glover曰く
「大戦争という名称が常に1914年から1918年までの第一次世界戦争を意味する環境で育った人にとっては当惑するものかもしれない。しかし1918年以前を生きた人々にとって、『大戦争』という称号はイギリスが1793年から1815年までの22年間、フランスと戦った革命戦争とナポレオン戦争を意味した」
ちなみに日本で定着した名称「世界大戦」は、「世界戦争」と「大戦争」のいずれでもなく両者を組み合わせたものであり、この中身のない景気の良い言葉はさらに「新聞の見出し」程度の言葉だったのでしょうね。
実際、ここまで世界を巻き込まなかったら「第二次普仏戦争」「独仏戦争」でも良かったわけです。
そして今までの経緯を考えれば「賠償金」「領地のキャッチボール」「権益」
だいたいこんな感じなのはいままでの戦争でした。
ヴィルヘルム二世が同意した1918年11月11日の休戦協定は、その程度の認識で結ばれたモノで、ここで実質の第一次世界大戦は終戦となりました。
普仏戦争の遺恨とだけ考えたらそれなりドイツは犠牲を払い、パリの喉元まで迫った力も含めて「妥協したいつもの戦争」「実は勝てたけどゆるしたるわ!」と思っていたでしょう。
尤も、いつもの戦争と違う点は多くありました。
ナポレオン戦争の頃から「銃」「民主主義(全体主義)」「徴兵」という組み合わせは無敵でした。
国民という無尽蔵の兵力を数ヶ月の訓練で送れる数の暴力を極限までおこなったことなどなかったのです。
ナポレオン戦争でフランス人男子300万人が消えましたが、それでも極限ではなかったのです。
そして「民主」と言いながら民衆の不満やマスコミの好き勝手さや世論誘導も理解できない。前の戦争が以前通りだとしても、それは全く異なる様相だったのは戦争終結後です。
民衆に迎合せねばならず、マスコミに気を使わねばならず、次の選挙の対策も立てねばなりません。
国家間の正義や見栄や現実より、民衆が見る内向きな世界や正義を優先せねばならいません。
そして損害額。
「戦争は儲かるモノ」
現代でも囁かれていることですが、そして戦争前ならそういう皮算用的な計算や、あるいは個人のお財布だけは黒字に出来るかもしれないとか。
まあ本当の中身は知りません。
そういえば落合なんちゃらが「軍産複合体」だの国を搾取する悪魔とか言ってましたね。
まあ大抵の軍需産業は昔っから「優良」と言われたことはないですけどね。
赤字ばかりです。
考えてみればカスタマーが国だけ、民主主義の軍隊を要する政府は国民に媚売らねばならいません。
全体主義も結局は「俺の言うことを聞け」が最終的に行きつく先です。
何にせよ徴兵、国民軍が出来た後で儲かることは難しいです。
十万単位、百万単位を食べさせるお金。
「正義」で戦争をし、たとえ勝者でもすざましく貧乏になったことで我に返り。。
もう儲かる儲からないの前にただただ国民憂さ晴らさせ、「正義だったよ!」と慰め続けねばなりません。
いままでの戦争の賠償額や物納の値段表は全く役立たずになりました。
そして複数国家の思惑と力関係が複雑で、、、複雑ならよいんですが差がありすぎます。
殆ど犠牲のなかった日本とアメリカ、死屍累々のフランス、あまり政治的主体性はなくてよかったのに犠牲を、、どころか後半の主人公になったイギリス、一番目的も必要性もない火事場泥棒の訳なのにただただ犠牲ナンバー1なロシア。その他有象無象な南部戦線を支えた国々もなんだかんだで発言権もあります。
そしてオスマン、ロシア、滅びちゃっても「自業自得さ!」と無視していいんでしたっけ?
世論、国民は我儘ですけど正義感は強いです。
こんな感じでWW1は戦後こそ変な、、現代では当たり前な、、戦後処理が始まりました。
まず「愛国」で国民を限界まで絞り取り、恨まれてしまいました。
ロシアはロマノフ家が消えました。
ホーエンツォレルン家、ハプスブルク家、オスマン家が消え、ドイツ、オーストリア=ハンガリー、オスマン、ロシアの4帝国が崩壊します。
搾り取られた民衆がどのように怒るかの典型的な形ですが、戦争は「騎士」「兵隊」のものとは大きく異なり、国民のモノ、異なる様相を示した最初の戦争ですね。
開戦時のヨーロッパに四ヶ国しかなかった共和制国家が9つに増えます。
民衆の力を借りた戦争は民衆のモノになりました。
ついでに、民衆が当事者に変わると容易に想像できるのですが、新聞、報道戦が大きな力を持ちます。
後に「背後の一突き」と言われる民衆の右往左往がドイツの国状を左右します。
曰く
「ドイツの兵士は勝利できた。軍は最善を尽くした。責任は全て銃後にある」
「いかなる敵にも諸君らは破れなかった」
「ドイツ軍は文民によって背後から匕首で刺された」
「帝国は戦争に負けたのではなく、背後から鋭い刃物で一突きにされたのである」
前線の兵士のモラルを維持するための言葉だったのです。
実際「勝てたか?」となると戦争につぎ込める資金だけでもここまで差があります。
連合国 :580億ドル
中央同盟国 :250億ドル
なので実際は狂人の夢で、現実はとてもとても。
といっても「世論」は衆愚というだけあって集団心理でとんてもない方向にいってしまいます。
この報道は、保守派・右派にとって左翼に責任を押し付けることができる都合のいい歴史観であるため、真実はともかく大きく民衆を煽りました。
ついでに著名な社会主義者)レフ・トロツキー、ローザ・ルクセンブルク、クルト・アイスナーがユダヤ人だったため、その噂にユダヤ人がひっつきました。
ロシアからの難民が汚らしいまま逃げてきて、その膨大な人数からドイツのそこら中に受け入れさせた影響も大きいですが、ユダヤ人は悪役になりました。
第一次世界大戦で勇戦してたのに、勇敢だったのに、ヒトラー伍長が尊敬してたのに。
自分たちを受け入れてくれるプロイセン、ドイツの誰よりも愛国者であったユダヤ人は可哀相ですね。
これは「ユダヤ陰謀論」として第二次世界大戦、どころか現代でも囁かれていますね。
個人的にはユダヤ人が力をもったのは1960年代アメリカ報道等からで、それまでは大して力はなかったのと思うのですが、、、そこは所感です。
何にせよ、現代のユダヤ人の差別の直接のきっかけです。。というのは強弁過ぎますか。
歴史的に常に嫌われ者、認められているのはカソリックに反抗し続けた東欧とプロイセンのみ。
世界中で叫ばれた『虫けらどもをひねりつぶせ』という歴史を考えると、この時代になって「きっかけ」というのは図々しかもしれません。
が、これからとんでもない受難の日々を考えるとまあそういうしかありません。
民主主義最高!ということでヨーロッパの共和制国家も増えました。
フランス、ポルトガル、スイス、サンマリノ。
たった4か国しかなかった共和制国家が、ドイツ、オーストリア、チェコスロバキア、フィンランド、ポーランド、リトアニア、ラトビア、エストニア、アルバニアが共和国として建国されました。
オスマン帝国が滅び、トルコ共和国が建国されました。
勝者の国は「僕は正義なんだよ!苦労した買いがあったよね!」という大人の事情でしょう。
皇帝も責任取らねばなりませんしね。
ナポレオン三世捕虜の屈辱を雪ぎ、さぞかしフランス国民は留飲が下がったでしょう。
またロシアも皇帝は惨殺され、初の社会主義国家「ソビエト社会主義共和国連邦」が建国されました。
ニコライ一家はこれでもかと言うほど酷い惨殺されます。
もちろん幼い子供たちも含めて。
イパチェフ館というそこら中に機関砲がならんだ密閉した家に閉じ込められ、300人の衛兵に囲まれ、有無も言わさず家族全員を銃撃し、埋葬もせずに埋められてます。
イパチョフ館も解体。
まあ900万人が犬死したロシア国民の恨みなのか、これから権力を握る者が前権力者を否定するためか、「科学的」とか宣う共産主義の最初の禊なのかはしりませんが。
ペレストロイカ後のロシアで奥さんと数人の子供たちだけ見つかったらしいです。
アクセサリーも服もなしに、ただただ埋められていたそうです。
勝者側も、その講和は
カスタマーが誰か?
損害は何か?
犠牲数、プライド、力関係で足並みはそろいません。
結局、イギリス、フランス、アメリカ、各自バラバラに請求したので、普通の戦争の3倍以上の負担を強いられます。
そしてドイツのヴィルヘルムさんはアメリカに言われて早々と除かされ、残った政治家や権力者、軍事指導者は外の事情より内の事情を優先します。
具体的に言うと
「俺は悪くない!」「悪いのは銃後!」「悪いのはユダヤ人!」
結局は勝者に好きなように嬲られます。
アメリカ
なんで参戦したかもわからなければ、どう活躍したのもわからない国です。
まあ参戦しなければ仲間外れになる程度??と言ったら怒るかもしれませんが近いですよね?
国民に言い訳したのはこちら。
「僕は正義のために戦争したんだ。国民の皆さん。勝ったよ!君たちの理想と正義は実現した!お金の為じゃなく、正義のためだよ!」
ウィルソン大統領は「十四か条の平和原則」と「四原則」(民族自決・無併合・無軍税・無懲罰的損害賠償)だそうです。
「無償」だそうです。
そのかわりドイツは「平和」と言われつつ骨抜きにされました。
イギリス
参戦理由はパナマと連邦、保護しているべネルスク地域、損得のためにやりましたが、あまりにフランスがだらしなく、後半はなんか当事者にされました。
国民に「必要!得!パナマ大事!オスマン大事!」と言い続けたので当然損得になります。
マスコミも煽る煽る。
ドイツは国内荒らされてないしね。
ロイド・ジョージ「ドイツはその能力の限界まで戦費を支払わねばならぬ」
アメリカの「無償」については「値引きします!」
フランス
屈辱の普仏戦争の恥辱は雪げました。
めっちゃ屈辱でしたから。
ついでに、やはり隣国、参戦理由も欲まみれや恨みつらみで後ろめたかったのか意外と健全です。
ドイツの賠償能力を考慮し、今までの戦争の流儀に則ったりします。
意外?
「フランスによるザールラントの領有」
「フランスによるライン川左岸占領の継続」
「賠償金」
アメリカの「無償」については「値引きします!」ですが、ドイツの恨み辛みはなるべく早期に解決せねばならずと再三値引きに応じてます。
石炭とか物納や種馬とか払いやすいように考慮してたりも。
もちろん抵抗勢力もいるし、タカ派の新聞にいろいろ言われましたが一番理性的だったかも。
が、マスコミだの世論とか滅茶苦茶になり、アメリカも賠償金仕方ない、フランスは国土を一度も犯されていないドイツに責任取らせねば、イギリスは逆に「対独宥和大事!」という世論が大きくなったり、実に12回も激論を交わし、内容も七転八倒してます。
そしてその賠償額は物納も含めてはっきりせず、読むだけで頭痛くなります。
そしてどこの国も大赤字。
それでもドイツの不安定な社会で減額を繰り返し、それでもドイツ国民はつらい貧乏な現実を見て恨みつらみ、マスコミは「ドイツ国民奴隷化法案」と殺しまくって傷病年金額を膨大にした結果を忘れて「搾取されている!」と国民が騒ぎ、戦争そのものがドイツのせいといつの間にすり替わって戦勝国も取れるわけないお金を「60年月賦で!」「ドイツは絶対に払うべき!」と叫び始め。
民主主義が「愚民政治」と言うならまさにそのとおり、意見は様々でも結論はまさに愚かな妥協策の繰り返し。
世界恐慌が起こるまでそんな世界が続きます。
最初のベルサイユ条約案はそれほど懲罰的なものではなかったのですが、どんどんエスカレーションする姿。
南北戦争でも最初は正義、そのうち欲得、ありもしない根拠でどんどんエスカレーション。
民主主義の戦争ですね。
そしてアメリカ陰謀論の根拠、犯罪者は一番利を得た者、とかではないですが、アメリカはお金を借りる側から貸す側、一気に世界の覇権を握ることになります。
そしてその戦勝国、敗戦国、民族、民衆とマスコミが現実を無視して好き勝手言い、マスコミは自分が吹いた笛で踊りはじめ、その戯画化はいろいろな国でいろいろな影響を出すことになります。
まさにバタフライエフェクトと言うのですかね。
第二次世界大戦は第一次世界大戦の延長とはよく言ったものです。
あるいは民主主義の民衆に思い知らせるためには全然足りなかったと言うべきでしょうか?
まだまだ地獄は途中経過、そんな感じで第一次世界大戦は終わりました。




