男の子は武器が大好き!
さて、戦争は続きます。
1916年は引き続き膠着状態、、、といったら怒る人は多そうです。
歴史に残る戦いが多いですからね。
でも小学生の相撲でも、その5-10倍の体重の国技館の相撲でも、一応膠着状態と言いますよ?
近代戦闘の皓歯として日清戦争と日露戦争を以前に挙げましたが、こちらの方はプラス要素として「制海権」「機械化」「砲による火力支援」「空軍」が特色として目に付きますかね?
新兵器も出ましたが既存の兵器の使い方も随分と異なることになりました。
まあまずは1916年を追っていきましょうか?
・西部戦線の埓があかず、その中で英軍をなんとか諦めさせようと無制限通商破壊戦をしかけます。ちなみに現在は「ドイツは悪!」的な考え方ですが、そもそも英軍は無差別どころか、人さえ介在しない無人の「機雷」で北海方面のドイツを封鎖しているので英軍は偉そうには言えないと思います。
・第一次大戦最大の戦いと言われる「ソンムの戦い」が起こります。
8日間、大砲1500門以上でドイツ軍の陣地を砲撃、合計150万発以上使いました。
にもかかわらずドイツ軍は塹壕でほぼ無傷、機関銃の砲火でイギリス軍を撃ちまくり、2万人ばかし殺します。
そのうちの8千人は攻撃開始30分以内。
それでも攻勢は継続、イギリス軍が軍事史上初めて戦車の実戦投入しました。
NHKとかディスカバリーチャンネルでは新兵器!過去と異なる戦争!戦争残酷!とか言いますね。
まあ子供の相撲か国技館の相撲かはしりませんが、結果論では変わりません。
7月1日から11月18日まで攻勢を続け、10kmほど前進しました。
英仏軍損害は62万人。
ドイツ42万人。
イギリスの歴史家ジョン・キーガン
「イギリスにとって、ソンムの戦いは20世紀最大の軍事悲劇であり、その歴史全体においてもそうである。」
「ソンムの戦いは命をなげうって戦うことを楽観的に見る時代の終結を意味した。そして、イギリスはその時代には二度と戻らなかった。」
まあ映像見て、結果見て、そういう事言ってるんでしょうが私見としては「学者が印象で語るなよ!」とか思ってしまいます。
こういう奴のコメントが後のNHKとかディスカバリーチャンネルなのでしょうね。
一つの戦いとしてはドラマチックなのでしょうが、そんなの数年前からずーっと続いており、すでにそれ以上の兵士が死んでます。
いまさらしたり顔でコメントされてもね。。
・ユトランド半島沖海戦が起こります。
この時代の海戦はあまりに索敵範囲が狭く、かといって目標近くだとそもそも陸上から火力を投射できてしまい(大砲の射程は似たような感じです。間接射撃が発達して戦艦が圧倒的になるのはもう少し後)封鎖は難しく、お互いがやる気ないとなかなか大洋では実現しないのが海戦です。
が、第一次世界大戦はロシア-英国間、英国、各戦線への北側からの投入のための北海、イギリスーフランス間のドーバーは違います。
・そもそも狭いです。
・さらに全沿岸は人里です。
・そこら中に商船が居ます。
とっても濃い場所です。
ドイツはイギリスの戦意を挫くためにも通商破壊戦に終始していました。
ドイツはとにかく逃げまくっていましたが、イギリスの諜報、無線傍受、大量の偵察部隊でドイツ艦隊を捕捉し、撃滅します。
犠牲はイギリスが多く、でもドイツはUボート以外は自由に動けなくなり、まさに「イギリスが制海権を持っていた」と言えるでしょう。
ということで、この年も膠着状態となります。
この次あたりはアメリカ参戦、ドイツは奈落の底へ!という感じになりますが。
そんな感じですが、同じ膠着状態でも小学生と国技館では全然違う。
良い機会なんで今回はここら辺「新兵器」をメインにしてみましょうか。
男の子は武器が大好き!
<歩兵>
根本的な役割は変わってません。
古代の重装歩兵から変わってないかもしれません。
現代でも変わってないかもしれません。
何言ってんだこいつ?
というくらいにローマ時代の重歩兵と現代の歩兵は違います。
でも役割は将棋で言う「歩」ですし。
長槍が銃剣に変わっても、射程が投げ槍や弓なみに伸びても、移動が汽車や自動車になっても、盾や柵が塹壕やタコ壺に変わっても、とりあえず将棋の「歩」みたいに、まずは受け止める役は変わりません。
火力も一対一が前提です。
槍が小銃になっても殺せる人数はたかがしれてます。
現代戦がWW1をテーマにした戦争映画と異なって見えるのは、歩兵の役割が大きく減じているからです。
人命の価値が大いに上がり、今や航空機や艦船でミサイルや砲や爆弾で無力化してからの進軍か、逃げるときだけですからね。
ちなみにフォークランド紛争でも塹壕(陣地?)でにらみ合いしてます。
第一次世界大戦では、日露戦争からはじまった機関銃が有効利用されてますね。
後半はマシンピストル、サブマシンガンと呼ばれる火器もできました。
ハンドガン、ピストルと呼ばれる短射程の弾丸をばらまくものですね。
攻撃側も機関銃みたいに制圧できるため、、と言われますが、最終的には塹壕で振り回したり、いわゆるギャング映画やマフィア映画みたいな使い方の方がメジャーでしょう。
気球、飛行船、飛行機もまずはこちらに入れるべきでしょう。
画期的でした。
古代~中世の要塞が高地だったりするのは伊達ではありません。
敵は一部しかわからない、自分は全容がリアルタイムでわかるというのは圧倒的に有利です。
大砲の射程も圧倒的になりましたし。
あと予備陣地という概念や、火力援護、火力制圧、他兵種からの援護が前提といくつか変わってます。
あと狙撃兵の価値が大きく上がってますね。
その影響で指揮官はあまり叫ばなくなり、頭を出さなくなり、徽章も衿で隠すことになります。
それでも一番苦労するのは変わりませんが。
<特殊部隊>
なんかグリーンベレーやらSASやらは映画では、スパイだかテロリストだかの真似ごとしてますが、本質的には「乃木将軍の決死隊」ですね。
第一次世界大戦のトリ、「浸透突破」は要するにこちらです。
陣地の重要な部分を浸透し、突破し、崩れてファイヤーゾーン、十字砲火の一部が無力化した後に歩兵を乗り込ませる。
電撃戦、現代戦まで通ずる我々の典型的な歩兵戦ですね。
ちなみにフォークランド紛争もSASが大活躍しました。
まあ現代歩兵がしょぼい空軍援護しか得られず、海軍もアルゼンチン海軍を相手するだけでまともな援護もせず、優秀なSASがたくさん死にました。
あ、WW2では急進する現代陸軍を偵察したり、威力偵察(どの程度の戦力か一当てしてみる)とか増えてますが、WW1では、、まあ少しはやってます。
<砲兵>
日露戦争の倍以上の射程です。M189、QF18ポンド砲、名だたる砲はもうすぐ射程10km越えます。
重砲化もめざましい。
当然、間接射撃。
日露戦争、、どころか17世紀からやってますが、そもそも砲の操作盤からシステマチックな目盛りがついてます。 乃木将軍の現地改造ではなく、間接射撃前提で最初っから設計されてます。
通信手段は、、野戦電話、無線(モールス?)、伝書鳩、気球や飛行船から通信筒、飛行機から通信筒?
いろいろ出てきましたが本当に使われてたのが何かはわかりません。
そこから得た数字を計算して、計算結果を操作盤を操作してというやり方が確立しました。
まあ一会戦で何十万発も撃つわけですから経験値も激増したでしょう。
第一次世界大戦で一番重要な兵器です。
というか7割はこいつらが殺しました。
<毒ガス>
「あんなのは自然災害と変わらんよ」
と知る人は言います。
私みたいな素人には恐怖に感じますが、確かに風任せなのでガス室でもない限り有効活用は難しいかもしれませんね。
敵味方が認める有効活動をドイツは始めました。
数万発に一発ガスを詰めて放ったら、壊乱まではいかなくてもパニックにはなりました。
知らない人には恐怖です。
NHKやディスカバリーチャンネルでは「恐怖!」「新兵器!」「新しい時代!」でしたが犠牲者は数千人、すごい高価な価格でしたが犠牲は0.1%越えてません。
<戦車>
NHKやらディスカバリーチャンネルでは「新兵器!」「戦争を変えた!」「超すごい!」的な感じですが、、、うーん、、まあ記録からすると、、
、
三個戦車中隊60輌のマークI戦車は輸送時トラブルや故障で稼働できたのは18両。
エンジントラブルや破損、砲弾孔に落っこちるとかトラブルで突撃できたのはわずか5輌、それでもドイツ軍兵士は謎の新兵器にパニックに陥ってフレール一帯の丘陵地帯の占領に成功するが、長大な戦線からすればほんの一部。
要するに装甲貼って戦場でも動けるようにした自動車です。
自動車ですからいろいろな役割があります。
WW1では攻撃側がよわよわだったので「塹壕の代わりに装甲板もっていけばいいじゃない!」という役割ですね。
そんな後ろ向きな理由なので、後ろ向きな活躍しか出来ませんでした。
現代戦では決定的な力を持つMBTを前提に巻き戻したりすると、もっと強くあって欲しいでしょうが。
ついでにディスカバリーチャンネルでのコメント
「ドイツは戦術で戦争を解決しようとした、連合軍は科学力で解決しようとした」
ようするに連合軍を良く見せようとしたら戦車を賞賛したいですもんね。
どう考えても連合軍はサンドバッグでしたが。
<飛行機>
性能はこんな感じ
初期のタウベ
100馬力
最大速度:120km/h
後期のS.E.5a
200馬力
最大速力:222km/h
たった数年で二倍です!
素晴らしい。
まあ偵察や観測の一手段として有効活用しましたが、それ以上でもそれ以下でも、、という感じですかね。
偵察を排除するために戦闘機を作り、最初はハンドガンの撃ち合い程度がだんだんエスカレートしていき機銃になり、なんと一万機以上も生産します。
この頃の陸軍的には偵察の一手段でしかないので、なんかえらい大枚はたいて不毛な争いだなぁとか思ってしまいます。
爆撃、、、
フォークストン周辺 死者95名 負傷者195名の被害
ショーンクリフ 死者18名 負傷者90名の被害
どちらか一方に航空機がなくても戦局に影響なかったと思います。
この直後は圧倒的な力を持ち、WW2は実質は航空戦になり、現代では主兵器となっている今、信じられないかもしれませんが。
<海軍>
ドイツ初の弩級戦艦ナッサウ級
常備排水量 21,000t
最大速力 19.5ノット
主砲 28.3cm(45口径)連装6基
日露戦争からさらに性能が上がってます。。。
微妙な活躍です。
ナポレオンの頃のドレイク船長と効果は同じくらい?
制海権を取られると自由に艦船が使えなくなります。
物資が滞りました。
まあ政治に大きく影響しました。
英独どちらも苦しんでます。
が「戦局」というと微妙。
取ったからと言って戦局が変わるわけでもなし。
ナポレオンの脆弱な政治力だったら多少の物流でも大変なことになりますが、、当時の国民の不満はそれどころではありません。
徴兵の取られ、殺され、軍隊に食料を取られ、人口が増えてそこら中にある町は蹂躙され、海軍がこなせたのはほんの一部です。
といってもインド洋でも大活躍、アルゼンチンでも大活躍、合衆国東海岸でも大活躍、日本海軍も大いに活躍します。
戦局はともかく日本海軍も含めていろいろな話は面白いですよ?
ただ本質的に海軍の役割は軽巡エムデン、帆船ゼーアドラーの活躍と、その活動を止めたユトランド半島沖海戦の英海軍の活躍に尽きましょう。
広いインド洋で通商破壊をし、陸上を砲撃し、陸戦隊を送り込み、広い大洋を縦横無尽に動き回って嫌がらせしました。
たった一隻で大したことはできません。
だがインド洋の航行は必ず日本海軍やらの護衛が付き、撃滅のために艦隊を派遣し、多大な戦争資源を消費させてます。
たった一隻でこれなのです。
護衛艦隊を派遣するのにどれほどお金がかかりましょう?
そして制海権を取ったイギリスは、その活躍できるたったドイツ艦一隻も自由に動き回らせなかったのです。
ただし、決定的に戦局を変えた新兵器を除いて。
<Uボート>
第一次世界大戦で、あるいは第二次世界大戦で、あるいは現代戦で決定的に戦局を変え、活躍したのは潜水艦です。
役割はいつでも同じ。
ちっさい、遅い、すぐ沈む、武器の搭載量は少ない、乗ってるだけでつらい居住性、高価、表向きのスペックは良いとこひとつもありません。
沈黙のなんとかという漫画で「潜水艦最強!」「核兵器!」「無敵!」みたいな?
いやいや、潜水艦は「潜る」という機能でありとあらゆる犠牲を強いてます。
・でかくするのに、、丈夫にするのに水圧からなにから材質から形状までとっても工夫がいる
こんなに丈夫にしても水中だときついので機雷一発が(当たらなくても)沈んじゃうかも
そして潜るためのタンクが容積取ったりするのでちょっと浸水したら沈む
(船の沈み難さの一つは排水量です)
・理論的は水中艦の方が速いのですが、そんなでっかいエンジン積めないし、つんでも五月蠅いと意味ないので速度出せない
・核兵器があまりに強くて勘違いしますが、魚雷やらミサイルやら数十本で打ち止め、そう何度も会戦できない
というか、潜水艦に核兵器積めるなら、水上艦はもっと詰めますよ?
そもそも遅いので目標の艦隊に近づくだけでも大変なわけですよ。
高速運動したらすぐバレる。
低速では捕捉さえ難しい。
蛙跳びしても「ここら辺にいるな」とあたりつけられ敵が寄ってくる。
寄ってきた敵艦から避けるにせよ、潜むにせよ、進路を変えるにせよ、さらに足止め喰らって目標が補足出来なくなる。
あわてんぼうの艦長やら、司令部やら、ヒトラーさんの督戦でちょっとがんばったら沈められる。
空気も悪い、臭い、狭い場所で艦長は、進路を変更して遠回りしようか、潜んでやり過ごそうか、何としてでも捕捉するために一発逆転高速移動するか、とか悩みまくることでしょう。
そんなにたくさんのことを犠牲にしてでも得たいのは「潜む」こと。
ファイナルファンタジー的な感覚では初見殺しの忍者でしょうか?
ドイツの巡洋潜水艦「U43型」
排水量: 234t
速度: 9.7kt(18km/h)
兵装: 53cm魚雷発射管×2(魚雷×2)
乗員: 14名
よくこんなぼろ船で潜りましたよね。
しかし、事実上無敵でした。
「Qシップが活躍したんだ~」とか言ってますが、、いわゆる偽装商船ですね、、商船と思って撃とうとしたら打ち返す囮船、、ほぼ無力だったようです。
まあ浮上して砲撃ということが出来なくなり、高価な魚雷をつかうはアメリカ人がたくさん乗った客船撃沈しちゃうわとか、間接的な効果は大きかったと思いますが。
381隻の潜水艦を就役させ、その内の178隻を喪失し、終戦までに5,300隻・1,300万トンの艦船を撃沈しました。
恐ろしいのは、喪失したのは物資だけでなく、後に続く航路の維持さえ困難になり、イギリスの戦争資源を多大に失わせました。
ちなみに後のWW2の太平洋戦争でも似たようなことが起こります。
100隻に満たないガトー級潜水艦はほぼ全てが日本の対潜部隊に消失させられましたが、日本人の太平洋戦争の死因の大半が餓死、栄養失調、病死だとすると、数字上、彼らが一番活躍しているわけです。
戦艦大和や空母エンタープライズは誰もが口にしますが、誰も得しない、予算も落ちない、地味で汚い仕事だった、大半が死んでしまったガトー級の乗組員、それを撃沈した駆逐艦、対潜機の乗組員のことはだれも口にしない戦いですが。
こんな感じで決定的な戦いが地味に、文字通り水面下で行われていました。
ひたすら地味だが決定的な兵器だったのがUボートです。




