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人間の歴史。  作者: TAK
第一次世界大戦前夜
165/176

火ノ圀

バルカン


Vulcānus


火の神


鍛冶神ヘーパイストスとたまに同一視される。


Volcano=火山もこれが語源


いろいろな物語も「戦争」「争い」「殺し合い」「乱暴な民」「兵器」いろいろな意味の代名詞。

ヴァルカン人のミスタースポックも、一定期間ごとにいつもの論理的な態度を維持できなくなり、争いを求めるようになる。

ゲームやなろう小説でも攻撃的な、主に味方が多いですが「バルカン」「ボルケーノ」。

こういう名前の飛行機や武器で敵をバッタバッタと倒していくのがよくあるゲーム?





ま、これから語る「バルカン半島」には全く関係ないんですけどね。


名称は半島奥にどかっと横たわるバルカン山脈から来ており、トルコ語、オスマン語、テュルク系の言葉全般の「山」の意味。

バルカン山脈は「山」山脈、バルカン半島は「山」半島で頭痛が痛い的なネーミングですが、日本の「バーニング・ファイティング・ファイター」ではないですが世界中でよくあること。



なぜ第一次世界大戦の話の前にこれが出てくるのか。

第一次世界大戦で必ず出てくる「if」「謎」的な話が必ず出てくるからです。



「サラエボ事件」


まあ事件はいかにも「大事件だったんだよ~」的な感じで世界中のどのドキュメンタリー番組でもそんな感じです。

まあ、当時の事件としては、当事者たちはともかく、正直、第一次世界大戦参戦国の殆どの国の記事としては小さかったんです。


またやたら、「歴史の偶然!」「もしかこの小さな事件が」「セルビア人の青年がいなかったら」的な話が多いですが、第一次世界大戦は必然に近い状況だったことを今回は言いたいので抜き出させていただきました。


そもそも東洋に「朝鮮半島」があるならば、西洋に「バルカン半島」あり。

歴史を見ると見事に争乱地帯です。


共通しているのはこんな感じ?


朝鮮半島がこの3つがせめぎあっているところ


・農業国、文明国、超大国である歴代中国政権


・海洋国家である日本かイギリスかアメリカ


・科学が進んでいるが人口は少ない騎馬民族、ロシア




バルカン半島はこの3つ


・農業国であり、貿易国家でもあり、文明国であり、

 大抵は超大国であった中東ペルシア、イスラム、トルコ


・科学が進んでいるし軍事的にも強者なことが

 多い騎馬民族クリミアやらロシアやら


・地中海、西ヨーロッパのそれ以外。ローマの

 海洋国家の時もあり、弱者の中世ヨーロッパの時もあり、

 産業革命後の超絶強者な西ヨーロッパ的なこともあり



尤も、朝鮮半島はあまり争乱地域という以外は価値ありません。

寒冷、枯れた土地、資源はあるが日本以外はあまり価値ないしょぼい鉱物資源。

盾としての役割、特に陸からの防衛に有利な地形なので亡命者の逃げ込む地、純軍事的には価値が大きいのですが。

海からは脆弱、良港ばかりなのですが、そもそも日本海が荒れた海、海軍が力を持つのはかなり後です。

中国が強い時は安定します。


日本が強い時も安定してそうですが、古代と朝鮮併合の短い期間だけなのでなんとも。

日本の資源との対比、地形等で日本が一番愛称良さそうですが、、そもそも日本が浮き沈み激しい国なんでそこは安定しないですね。バルカン半島における地中海世界も同じなので実は同様なのかもしれない。




大してバルカン半島は、


同じように海軍からは脆弱、陸軍には防御力高い。

ただし地中海は内海同然なので古代の海軍でも十分活躍できます。

気候も「地中海性気候」「温暖湿潤気候」「海洋性気候」「湿潤大陸性気候」と狭い地域で気候もバラエティ富んでます。

だれからもそこそこ欲しい土地。


地中海沿岸なので荒れやすく大地の回復も遅めなのですが、天然の草原が広がる平野部はそこそこ肥えていて食料はそこそこの生産力。

それ以外は塩分の濃い地中海らしく痩せていますが、、バラエティに富む気候も併せるとヴァラエティに富んだ特産品がたくさん。

オリーヴやブドウがどの時代も有名ですね。

大麦、トウモロコシ、たばこ、じゃがいも、ヒマワリとかも。


鉱物資源は乏しいですが、何の因果か21世紀でも戦乱の地、コソボだけは鉱物資源豊富。

石炭、鉛、亜鉛、クロム、ニッケル、金、銀、鉛、アルミ、ボーキサイト、せレン、マンガン、アンチモン、カドミウム。


これがコソボの不幸の原因。

何故にここまで鉱物資源があるかは謎です。

解明しようにも戦乱で一国が落ち着いて学術調査する時間さえないです。


中ヨーロッパや新ヨーロッパの地層できわめて古い地質が重なり、アルプス造山帯で堆積が激しく、イタリアの火山島の新地形がより複雑にし、そんな感じでデボン紀以前、ヘルシニアン鉱床生成期、カレドニアン鉱床生成期で堆積され、下部の地形は火山性・堆積性鉄鉱床が別な鉱物を生成し、、、まあようするにいろいろな地層が重なった不思議パワーがこの地の鉱物資源を豊富にしたようです。

NATOが迷わず出したのも個々の資源とかの陰謀論が囁かれています。

フォークランドの強気も含めて、こういう陰謀論というか都市伝説というか、こういうのどこまで本当なのですかね?


ま、朝鮮半島と大きく違うのは、周辺の誰もがそこそこは欲しがる土地。

なので戦乱ではない時期は見捨てられてたのが朝鮮半島ですが、ここは常に争いが起こってます。

主に中東が強い時は安定した地ですが、それ以外の手段が手に入れたら常に前線です。


おかげでたった666,700平方キロメートル、意外に広いですね、、に国も民族もモザイクのようにひしめき合ってる。


アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、コソボ、北マケドニア、モンテネグロ、クロアチア、ギリシャ、イタリア、ルーマニア、セルビア、スロベニア、トルコ。




言葉もすごいことになります。

ブルガリア語、マケドニア語、セルビア・クロアチア語、スロベニア語、ロマンス語、ルーマニア語、アルバニア語、ギリシア語、テュルク語、トルコ語。


まあびっくり。

こんな感じで各国の思惑がひしめき合って状況で「サラエボ事件がなかったら」、、ま、別な事件が起こるだけですね。




古代史以前でもイリュリア、トラキア、ダキア、マケドニア、モエシア、文明っぽいものがひしめき合っていました。


牛、馬、羊、農産、銅や鉄の採掘、細工、それらの交易、他と比べて一歩高い文明を築いてます。


特筆すべきは

・黄金文明と呼べるほど大量かつ精巧な金細工

・養蜂といった特殊産業

・ダキア人の育てた「戦闘馬」


マケドニアやモエシアのように、何もないけど衝突地点なのでいるとかももちろんありますが。

が、隣に大帝国があり、有名な古代文明がおなじくひしめき合っており、ここがメインとなることは難しそうです。

フン族だの中東だの、ちょっと油断すれば押し寄せてくる戦乱の地は先史から。

呪われた地ですね。



バルカン半島を最初に歴史でまともに扱うのはギリシャでしょうか?

先史以前はオリーブ、ブドウという特産物があり、地中海という内海で貿易も盛ん。

大理石がとれるので建造物も積極的。

文字もあり、文学もあり。


「エーゲ文明」、「キクラデス文明」、「ミノア文明」、「ミケーネ文明」


なんか永井豪先生を思い出すのは私だけ?


高度だったようです。

が、平和的すぎて海の民か海賊やらヒッタイトにやられて滅びたとかなんとか。

紀元前1200年のカタストロフとかでいろいろ言われてます。


それが滅びたかどうかはともかく、その後に歴史に躍り出たら、フェニキア人だのが都市国家を作っており、アテナイだのは実はこれより前に都市があったとかなんとか。

まあ文明が特徴的なのは認めますが、中東におくれること1000年?

都市国家群が出来ただけに思います。

干ばつだの戦争だのはあったが「暗黒時代」とか住んでた人は思ってなかった気がする。

後の歴史が印象深いから遡ってそうしたかった歴史学者がいただけでしょう。



じゃあ、その何の変哲もない都市国家群が有名な理由は?

一つはフェニキアと同じく地中海のそこら中コロニー作ります。

規模にくらべていろいろな場所に跨って有名になりました。


そしてもう一つは


「ペルシアに攻められて勝った」


まさにバルカン半島の最初ですね。

東洋と地中海世界の狭間。

まず「戦争」


逆に「マケドニア」が世界征服仕掛けたこともありますが、ギリシア中心に戦争、戦乱が起こっていたのは毎度のこと。



ローマ時代はパルティアからの侵攻の激突地、、という時期は少なかったのですが、それはローマが強すぎただけで中東への入り口としての紛争はやはりたくさん。


ローマ全盛時はゴート人の南下侵入、ゲルマン人の侵入。


ローマが滅びるあたりは西ゴートとダキアの侵入


6世紀はスラヴ人(ロシア、まだないですが)南下


7世紀はサーサーン朝ペルシア帝国の侵入

アヴァール人・スラヴ人・ランゴバルト人の侵入

ペルシア滅んで今度はイスラム帝国の侵入

セルビア人の南下


8世紀

ドナウ・ブルガール人の侵入

トルコ系遊牧民ブルガール人がブルガリア建国

ブルガリアと東ローマ帝国の紛争


9世紀

フランク王国を撃退

ルーシ(ロシアと言ってよい?)の侵攻

ヴァイキングの襲撃


10世紀

東ローマ帝国領土奪回?侵攻?

キエフ・ルーシとの紛争


11世紀

テュルク人が侵入

ノルマン人との戦争

十字軍の通り道


12世紀

東ローマとテュルクと戦争

ブルガリア貴族の反乱

ヴェネツィアがコンスタンティノープルを占領してラテン帝国建国


13世紀

モンゴル帝国の侵攻

キプチャク・ハン国の侵攻


14世紀

セルビアとブルガリアの戦争

セルビアと東ローマ帝国との戦争

オスマン帝国がカリポリス周辺を占領

オスマン帝国がアドリアノープル征服

東ローマ帝国がオスマン帝国の属国に

ボスニア王国が成立

オスマンとセルビアがコソボで戦う

オスマンのブルガリア併合


どんどん戦争が増えていきます。

なんか飽きてきたんで19世紀行っちゃいます。



19世紀


1804年 - 第一次セルビア蜂起

1815年 - 第二次セルビア蜂起

1821年 - ワラキア蜂起、ギリシャ独立戦争

1817年 - セルビア公国の成立

1832年 - ギリシャの独立

1852年 - モンテネグロ公国成立

1860年 - 初代モンテネグロ公ダニーロ2世、暗殺

1867年 - オーストリア=ハンガリー二重帝国が成立

1868年 - クロアチアの民政地域に一定の自治

1868年 - セルビア公ミハイロ・オブレノヴィッチ3世が暗殺

1875年 - ボスニア蜂起

1878年 - セルビア王国、ルーマニア王国、モンテネグロ王国の独立

自治公国としてのブルガリア公国が成立

オーストリア=ハンガリーがボスニアとヘルツェゴヴィナを軍事占領下におく。

1885年 - ブルガリア、東ルメリ自治州を併合。

    ブルガリアとセルビアとの間に戦争勃発



20世紀


1903年 - マケドニアでイリンデン蜂起

1903年 - セルビアで国王アレクサンダル1世が暗殺

1905年 - モンテネグロ公、日露戦争で大日本帝国に宣戦布告(そして最近まで忘れてて日本とずーっと戦争状態)

1906年 - セルビアとオーストリア=ハンガリーで「豚戦争」(関税戦争)

1908年 - ブルガリア、オスマン帝国からの完全独立を宣言

     オーストリア=ハンガリーがボスニアとヘルツェゴヴィナを併合

1910年 - 「モンテネグロ王国」成立

1912年 - 第一次バルカン戦争発生

1913年 - 第二次バルカン戦争発生



・・・・書いてて飽きてきた。

もう古代から近世まで、21世紀まで戦争・紛争だらけ。

暗殺だらけ。




サラエボ事件がちっちゃい記事だったのがわかりますね。

サザエさん並みに戦争があれば、サザエさんのテレビ欄は淡泊になるものです。



ちなみに、WW1がわけわからん奇妙なパズルだけあって、実はサラエボ事件自体も不思議な玉突きで起こった事件です。


ゾフィー・ホテクという名の女性がいました。

ホーエンベルクの公爵夫人


オーストリア=ハンガリー帝国の継承者であるオーストリア大公フランツ・フェルディナンドと恋に落ち、そして結婚しました。


ただ彼女は皇族ではなく、ただの伯爵令嬢でした。

お高く止まった貴族社会で、身分の低い奥さんを王室公式行事に同行させることが許されません。

唯一の例外が軍事的立場で行動している間であれば妻同行もOK。

ボスニア軍視察はこんな理由だったのです。

大公は妻とのデートでオープンカー


そして暗殺。


しかもセルビア政府が関わっているわけでもなく、ただただ無数の物騒な団体の一つ「黒手組」が行えただけ。

モザイクのように言葉も、民族も宗教も入り乱れ、ボスニア人、セルビア人、ムスリムがその侵攻してくる連中に鉢植えのように政権をすげ替えられます。


今回は1877年の露土戦争でロシア。

オスマン帝国を破ってスラヴ系国家のセルビアが幅効かせてます。

そして、破られたオスマン、ロシアを無視できないヨーロッパ諸国、さらにヨーロッパ諸国でもモザイクのように思惑が絡み合い。。




隣国でロシアに反感をもっているオーストリアはセルビアに無条件の謝罪を要求しました。

大嫌いで汚い反サラエボの連中が行ったこと、治安以外には責任なし、しかもわざわざデートで無防備なオープンカー。

下賤な娘と結婚した王家の義務を放棄したロクデナシのせい。


セルビアはさぞかし屈辱に感じたでしょう。

「大嫌いで汚い」という言葉は21世紀での争いを皮肉ってます。

「国のために殺せ!」ってクロアチアのTVのCMでやってました。


ああいう悪感情のあれはここより前からずーっと続いてます。

しかも強国が押し寄せ、鉢植えのようにすげ替えられ、、そのたびに不平等、虐待、虐殺が行われます。

ある意味、当たり前のこと。




セルビアは謝罪を拒否しました。


オーストリアはセルビアに宣戦布告しました。


セルビアの最大の同盟国「ロシア」がオーストリアに宣戦布告しました。


オーストリアの同盟国「ドイツ」がロシアに宣戦布告しました。


ロシアの同盟国「フランス」「イギリス」がドイツに宣戦布告しました。



日常の一つとして埋もれた記事程度の事件なのに、まるで自動でスイッチが入るように戦争の季節がやってきました。


生き残ったテロリストは、自分たちの所行が何を引き起こしたか気づいたのは数年後でした。

サラエボ事件当事者最後の生き残りとなったチュブリロヴィッチは、ベオグラード大学教授、ユーゴスラビア森林相を勤め、1990年に死去しました。

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