日英同盟締結
なんかサブタイトルには「日英同盟!!」と書きつつ、全然関係ない話をツラツラ書き続けています。
いよいよ日英同盟の内容が!!
とか
実際の日英同盟は...
とかやるべきなんでしょうが、背景はおもしろいけど、同盟自体はとってもまっとうで面白くありません。
ちゃらっと流します。
多分、アメリカ人のいう勢いだけのWin-Winではなく、普通に両者が利益を得られるとてもまっとうな同盟です。
「奇跡の同盟!」
「イギリスは早くから日本のポテンシャルを知っていたんだ!」
とかドラマティックな印象もありません。
普通。
ひたすら普通。
さーせん。
これは今までの背景でちょっと想像と違ったかもしれませんが、、というかその背景の結論の一つ「象とアリ」という認識が世間的にはちょっと薄い気がします。
日本なんて選択するほど力はありません。
「歴史を逆回しに見るな」的な主旨から指摘すると、いろいろな書物は列強の一員になった日本と、斜陽の英国という結論から逆回しした結論で「よくわかる日英同盟」を偉い人は書いてますが、偉くなくて頭が悪い私はむしろ、
「しょせん弱小、多少なことは何とかなるなる!」
「俺らがでっかいけど対等な契約しようぜ!感謝しろ!おれら恩の売り方たっぷり知っているからな!」
ってな感じで、当たり前のようにイギリス主導で日本を選んだだけにみえます。
しかも「あっても良いや」程度の。
ムガール帝国の頃のインド、清だった中国、江戸時代の日本、ありんこでも結構まともに契約してくれてますから、まあその延長に見えます。
何十年か後に列強になる「日本」がまだ弱かったという立ち位置
↑
世間の評価
南米諸国や南アジア諸国より惨めな弱小国
↑
私の評価
本当に数字だけ見ると、日本の弱小さは容赦ないっすよ?
まだまだ工業が占めるGNPの割合は低く、未だに一次産業が資本に大きく占めているので、
現代につながる数字か?
と考えるとポテンシャルの点では充分ですが、当時の人の作った数字からすると「弱小」は妥当に見えます。
直後の戦争から軍事力=工業力、技術力になってくるのですが、当時の価格付け、国力の項目を考えると未だに繁栄されてません。
私の勝手な考え方ですが、技術への対価、工業への対価、、長期的な視野でみる資本主義はそれに対して妥当な値段が付きます。
「イギリスが損する」
「日本を有利にして英国優しい」
は歴史から来る結果論で述べてます。
日本は列強になるから~
別に、結果が特別だったからと言って特別な契約ではありません。
当たり前の契約です。
象であるイギリスの売り物は「大国」「軍事力」を持っている。
アリな日本の売り物は「極東」「辺境」を持っている。
その自国に有利な条件を利用した、とっても当たり前の契約だった日英同盟。
当時の日本。
日清戦争で勝ってます。
賠償金もらいました。
でもその日清戦争のあおりで株価暴騰、しかし原材料の綿花の輸入で入超、銀行の機能不全、おかげで紡績業が軒並み潰れる大惨事でとんでもない不況です。
日英同盟のおかげでようやく外債が発行できるほど信用もなく、信用は南アメリカ以下です。
日本の立ち位置は下から数えた方が早い。
ちなみに市場は相も変わらず「官」主導。
経済原則が成り立たない状況なので、銀行云々、興業銀行云々言ってる識者が多いですが、
「そもそもそんな資本主義からほど遠い共産主義国家みたいだよ?」
(この場合は国家社会主義というべきろうだけど、そもそも民間が相変わらず微小だからね)
と見えてしまうので私には疑問符。
そんな弱小国が「ロシアに狙われている」と思い込んでいるので大変です。
すわ!日本は風前の灯!
何とかなならないものか。
当時のイギリス
巨人で象なイギリスは相も変わらず一強です。
しかし、日本があまりに弱小すぎるので日英同盟の比較としては巨人ですが、将来のポテンシャルとしての工業生産力という点で数字が出ています。
League of Nations. Industrialization and Foreign Trade,1945,p13
アメリカ ドイツ イギリス フランス ロシア
1870 23.3% 13.2% 31.8% 10.3% 3.7%
1900 30.1% 16.6% 19.5% 7.1% 5.0%
1900年はアメリカに逆転されてますね。
そしてドイツが赤丸急上昇中、フランスとロシアはますます劣悪に。
もちろん、経済力=工業力ではありません。
むしろ工業力を入れてしまうと、以前に私が言った「未だに清はお金持ち」はあてはまりません。
そして永遠に発展しなければ足元救われる資本主義では、次期発展のための投資額がある種のお金持ち指標です。
そうなると1900年でもイギリス圧倒的。
お金持ち!
1870年
イギリス49億ドル、アメリカ1億ドル ドイツ計上できず。
1900年
イギリス120億ドル、アメリカ5億ドル ドイツ58億ドル
ちなみにフランスはイギリスの半分くらい。
ロシアはゴミ。
でもイギリス投資の大半はアメリカだったりする。
自分のお金を増やす一番の手段は、将来性のあるアメリカ企業への投資。
考えてみればイギリスは、取って代わられるナンバー1のアメリカを育てているようなものですね。
結果論ですが。
考えると当たり前なものの、なんだか寂しいものです。
こんなんがイギリス。
ちなみに負けた清、外国にずたずたにされてもGNPはBest10に入るので、戦争の内容自体は日本が勝って当たり前の様子でしたが、国力から考えると奇跡です。
いまの共産国家で、、いよいよトランプ大統領、というかトランプもう関係ない、すでに議会の両党がいけいけガンガンなのでアメリカ全体の意思で中国はヤバげですが、、それでも行けてるわけですから、当時はまだましな清はやり方次第です。
結局「政府が頼りない」が全てでしたからね。
頼りになる政府が存在すれば、その国力に見合った国になっていたはずです。
日本の方にifはなくても、清のほうはいろいろありそうです。
しかし、ここらへんは中国らしくもあり、寂しくもあり。
現在の中国も、資本主義の悪いところと社会主義の悪いところがあわさってボロボロです。
長期的に見て資本主義は上手く行かない産業は自浄作用が働き、上手く行く産業は伸びる。
短期的には「倒産」は悲劇ですがね。
逆に社会主義、というか奴隷社会、農奴社会といってよいのか、当然計画的にことを運ぶわけですから障害がなければ上手く行きます。
もっとも「奴隷根性」というか、信賞必罰というか、上手くやれれば大儲けできる資本主義と違い、評価は減点主義、上手くやっても褒められないわけですから適当に怒られない程度にやるのが社会主義。
当時の清もズタボロ。
何をやっても褒められないであろう、外国に良いようにされている「清」。
幾ら働いても搾取されるだけで信用がない。
数字はともかく、実際はズタボロです。
そして結果としてイギリス独占、、とは言わないものの、同盟国だけに優先権はイギリスだったのですが、いまやフランスとロシア、ドイツに食い荒らされて、清の崩壊はすごいことになってます。
イギリスの権益は清のだらしなさでズタボロです。
何とかならぬものか。
世界の西側の方もイギリスの目論見は外れ、ズタボロ。
1899年、南アフリカで混乱がおきます。
というか、インドと似たような感じで「奴隷解放反対!」的な現地人とかトラブルで戦争おきてます。
そしてインドと同じで後年はなぜかイギリスの侵略戦争になってます。
同じように現地人に啓蒙主義を教えようとしただけなのにね。
南アフリカのブール人の国家をイギリスが侵略し、併合した帝国主義戦争が始まったと言われてますけど。
イギリスはただ貿易相手が欲しいだけなのにね。
何とかならんものか。
ちなみに南アフリカではウィンストン=チャーチルなる新聞記者がいました。
チャーチルさんを乗せた装甲列車が攻撃され、チャーチルさんは捕虜になってしまいました。
その悲劇、その後の捕虜収容所からの脱出劇はとっても面白く、一躍有名になりました。
そして1900年の選挙で保守党から立候補し、見事初当選し、26歳で政界に身を置くこととなりました。
当時はどうでも良い話でしたが、何十年後かに重要な意味を持ちます。
まあそんな感じで、日本は「弱小で困った困った」
イギリスは「忙しくて困った困った」
そんなで締結されたのが「日英同盟」です。
イギリスは、実はあまり悩まずサクッと締結に同意します。
日本は、もちろんアリンコですからそんなん上手く行くわけないと思ってました。
イギリスに愛されている伊藤博文さん、皮肉なことに自分たちが弱小と思っているので反対してます。
「そんなことよりロシアとお話しした方がなんぼか現実的だろう」
アメリカ経由でヨーロッパに出かけ、ロシアにも訪問し、日露協商を締結するため頑張っちゃいましたが。
しかし、イギリスに嫌われていた人の弟子である小林さん、
「ロシアは軍事力によって領土を支配する過激派の連中だ。仮に話合いによって同盟を成立させても、それは一時的なもので、ある日突然、強力な軍事力を背景に朝鮮を支配下に置いてしまうであろう」
あってますね。
実際、ロシアから北方領土を奪われていたりしてますし。
しかも他の南下政策と同じ、随分と適当に。
WW2直後も奪われてますし、奪っててもロシアはあっけらかんとしているので外交先としては一番信用できない国でしょう。
さすが暴虐皇帝が存在できる自称先進国。
いまの暴虐皇帝もなかなかです。
あっけらかんとしてるのも、短視眼なのも相変わらずです。
隣人が熊を飼い、成長して食い殺されても「ドジ~」で済むようなお国柄ですから。
尤も象とアリ、アリな日本が「同盟したい」と思っても象であるイギリスが「Yes」と言わなければ意味ありません。
なんとイギリスの返答は「Yes」です。
その際、ロシアにわたって苦労していた伊藤博文さんのかっこよいエピソード
「伊藤殿は、既にロシアに到着しているようです。一応、伊藤殿にも日英同盟締結の確認を取るべきだ。」
「私は、元老であっても、最高責任者ではない。最終的な判断は総理である桂殿に任せます。」
自分の自己顕示より国のために働いた、誠に漢らしいエピソードです。
政治家とはかくありたい。
さすが日本をつくり、だまって死んでいった大村益次郎の弟子らしい。
1902年1月30日 ロンドンで日英同盟が調印されます。
日本代表は林董さん。
イギリス代表はヘンリー・ペティ=フィッツモーリス侯爵。
同盟内容
・日本とイギリスは、植民地保護などお互いの利益保護のために共同行動をする
・日英いずれかが、利益保護のため「第3国」と戦争をする場合、もう1国は厳正中立を守ること。
・複数国と戦争になったら味方になって参戦する
日本にとっては涙が出る程うれしい契約。
ロシアに恐怖していた日本にとってこれほど力になるものはありません。
経済的にも、資本主義に、あるいは商人に一番大事な「信用」を得られますしね。
南アメリカより、南アフリカより弱小な国にとっては涙が出る程ありがたいことです。
イギリスにとっても良い契約。
一円もお金払わず、忙しくて手を出しにくくなっている極東にニラミ利かせられますしね。
しかも対価は0。
勝手に「信用」を使って良いぞ。
しかもアリのような日本。
利用の仕方でもたかが知れてます。
「複数国と戦争になったら」というのがイギリスらしい人の悪さですね。
ガチンコ勝負は手を出す必要はない、フランス、ドイツは露を助ける程の根性はない。
当時の情勢をよくわかってます。
一応、日英同盟の理由としてはこんなん世間では言われてます。
「清の利権争い」
まあ、あってます。
尤も、イギリス独占でまともな貿易相手だったから美味しかったけど、すでに南アフリカに手を出している状況、あるいは現地外交官の情報からすると半分見捨てていたようですけどね。
いかに対価を払わず権益を守るかとすれば、まさに日本は適任でしょう。
お金払わなくて良いし。
「独露の進出阻止」
まあ、あってます。
ドイツはロシアが「自国に目を向けない」いうだけで積極的でないですが。
尤も、イギリスはこの情報も知ってますが、握りつぶしてます
↓
「ロシアは満州に忙しくてそれより東はもう手を出さなそう」
「日本と仲良くしたがっている」
ま、ロシアは野蛮人なツァーリが統治する国。
何もかも信用できないのであってはいます。
他にいっぱい理由が挙げられます。
「1890年代の清国造幣問題」
「日清戦争後に清に大量に借款させ、財政システムを完全にコントロールする仕組み作り」
「英独同盟の失敗」
「露仏同盟の対抗!」
とか何とか?
昔の2ちゃんねるみたいなNetNewsとかでもとっても議論されました。
「おいらの理由が一番正しいんだーい!!」
とかね。
きっと全部が理由なんじゃないですかね。
契約なんてPROS/CONSを確認し、有利なら契約する、不利なら断る、それだけです。
後年の我々がわかりやすくするために契約結ぶ訳ではないですから。
どう考えてもどちらの国も損はないです。
国力に差がありすぎるので、互いの権益を侵す可能性もゼロに等しいし。
いろいろとご意見、異論はお任せするとして、私には「日英同盟」そのものは背景はたくさんあれど
「結びました!」
「以上!」
で終わり。
さーせん。
尤も長期的に見た場合に、ifな妄想はとってもいっぱい膨らみますが。
日本が本当に有利だったか?不利だったか?
もし結ばなければ世界はどうなっていたか?
ロシアと結んでいたらどうなっていたか?
もちろん直近は日露戦争。
長期的には、日本と対立し続ける良く考えてみれば太平洋を挟んで隣国なアメリカ。
何十年後かにイギリスがアメリカに媚び売る関係になる、
日本がイギリスの権益を侵すほど強くなる。
当時の人はそんなん誰も想像できませんでしたから。
日英同盟はそんなお話です。
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ちなみに、その後の世界を先導していくアメリカの立ち位置はどうだったでしょう?
実は未だに貧乏
1880年、1900年、1920年と相対的所得水準はは全く上がってません。
イギリスを筆頭に皆が将来性を期待し、投資し、食い詰め者でなく富んでいる人が期待して移民し、将来性はたっぷりでしたが。
投資は激増しました。
単純な国力は上がりました。
もっとも、南北戦争後の生みの苦しみは数十年間続き、数字上のアメリカ人は不幸が続きます。
農業は大打撃でみんな飢え死にしそうです。
奴隷解放して着のみ着のままの黒人が国民になりました。移民もカウントしなければなりません。
結果的に平均所得はぜんぜん上がってません。
まさに40年間鳴かず飛ばず。
イメージは違った?
既に金ぴか時代と囁かれ、大富豪がたくさん出てきたことを考えると、所得格差はすごいことになっていそうです。
今のアメリカ、
上位の数十人が残りのアメリカ人の財産よりたくさんお金を持っており、クルーザー、ホンダジェットを個人で所有する人達、
でも年を取った殆どは「ホームアローン」の老人ように子供たちが怖がるような孤独な生活、いつの間に死んでいく寂しい末路。
1900年ごろはそのはしりです。
まだまだ生意気言えるほど強くもなく、将来性だけですが、古き良きアメリカは消え去り弱者は話しにも出ないような悲惨さ。
アメリカンドリームの見えないところですね。
今のアメリカの抱える爆弾はゆっくり醸成されていきます。




