そして大企業ができあがる
エジソンの活躍はとってもその頃の電気がわかりやすい。
「努力の人」だけあってその時代の電気をそこら中でついばんだだけあります。
彼があまり手を出さなかったのは「無線通信」くらいですね。
「空間電極特許」とか研究はしていたのですが素直に功は友人のマルコーニさんに譲ってます。
それだからというわけでもないですが無線通信の分野でマルコーニはエジソンのようにビジネスで大活躍してます。
前から電波、電磁波そのものは認知されていたのですが(雷、火花、放電、雑音その他で、そもそも電気工学やってりゃわかりやすい)、導体通したり、水を通したり、いまいち無線がどこまでやれるか、なぜ銅線がなくても通ずるのか、理屈の方はかなり長い期間を使って模索してました。
今でも光、電子の流れ、イオン、クーロン力、しまいにゃ重力だの空間だの組み合わせていろんなことが言われてます。
現代でも「電気」そのものは実はいまいちわかってないですものね。
銅線通る電気エネルギーがどうして空間を通るのか?それがどこまで通じるのかは?想像しにくいのかも。
私の方も幼いころの「金属の電子が動くから導電するんだよ~」のころはわかりやすかったのですが、電磁波、光波、波長、それがどのように銅線に及ぼし、誘電させるか、抵抗が起こるか、いまだに意味がわからなくなります。
これでも国際な電気学会の一員(^^;
1831年)ファラデーが電磁誘導現象を発見、1873年)マックスウエルが数学的に電磁波の存在を予知、更に電磁波が光の速度なので、光と電磁波は同じものと予測しました。
で、それをモノとして1887年)ヘルツが火花放電をさせて、離れた部屋のリングで計測で来て存在を実証し、その後はあれよあれよという間に現象は整理され、利用することになりました。
中身的には実験中の現象、導体や配線を検討している間に「ああ、あれか」と思いついた技術者多かったんじゃないですかね?
特にマグネティックスピーカーはみんなが研究してましたから。
理屈がわからなくても実現は簡単。
私も小学校は3年生の頃に鉱石ラジオ作れましたし。
理屈は知らなくても作るべき回路はとっても簡単です。
端的に言うと、ヘルツがやった鉄輪で火花を受ける代わりに鉱石で電気信号を受けるだけ。
そしてその微弱な波をイヤホン(マグネティックスピーカーの一つ)で聞く。
すでに有線でもいろいろやっていましたしね。
1898年、マルコーニはマルコーニ無線電信会社を創設しました。
大西洋を渡るモールス信号を送受信できるようにし、大いに儲けています。
航海中の船と連絡できるのはとっても大事ですし。
そんな中、基本的な回路の素子の元の元、「真空管」がうまい具合に発明されます。
これはエジソンが電球作ってる途中で気づいたのが最初と言われてます。
始めは電球内部を真空にすることで長持ちしないかなぁ?という偶然です。
それでなんとなく熱電子放電現象を発見(どうしてなのかは解らない)、それに興味を持ってフレミングが学会に発表、それを知ったレントゲンさんがいろいろ試してみて波長が違うX線を発見。
意味が解らないままどんどん電気の世界が広がります。
「意味わからないけど実用化」は現代では素粒子物理学とか量子力学とかでしょうか?
現象はわかる。
理屈はわからん。
でも整理すれば使える。
今となっては元をたどりすぎてニュートン物理学さえ謎が多すぎるんで「現象は知ってる」の一つになっちゃいましたが。
20世紀も半ばになると世界の殆どを知った気分になった科学者は、21世紀になるとどんどん増える謎だらけ。
皮肉なものです。
「原子」「陽子」「中性子」「相対性理論」でわかった気分になったのですが、未だに「ある」と思っていた重力子は発見できません。
最近は「無い」と予測され始めました。
じゃあなんで重力はあるんだよ?
エーテルとか精霊とか異次元とか持ち出されてもおかしくない雰囲気になってきました。
おっと話がずれ始めた。
元に戻しましょう。
真空管は、最初は熱電子放電現象で、検波、検電のために作ってます。
でも電気、電波の状態が正確にわかるんだったら、そもそもそれを製品にして、正確にその波形をコピーする回路にならなくね?
それを二極にして相手側に渡したら「整流回路に使えね?」
三極にして波形を増幅したら「増幅回路に使えね?」「スイッチに使えね?」。
まさに電子回路の基本がここで出来上がっています。
モールス信号のようにトン・ツー・トン・ツー程度の信号だったら、スパークさせてトン・ツーに合わせ送信先に大きな放電をさせるだけでよかったのですが、音声となるとそううまくいきません。
音声の波形をそのまま電子信号に変えるのはスパーク、火花放電、方形波では無理。
できないので真空管が出来るまでは音声を受け取るラジオ、無線受信機は増幅無しの「鉱石ラジオ」のような使い方が主流でした。
とうぜん音声の波形がそのまま電気の波形になりますが、増幅してないんでちっちゃいちっちゃい音しか受け渡せない。
それを3極真空管で波形を増幅させればスピーカーを動かせるようになります。
ちなみに2極管をダイオード、3極管はトライオード、半導体を使う前からこの言葉を使ってます。
1906年12月24日、フェッセンデンが電波でヘンデルの曲を流したのが史上最初のラジオ。
1920年11月、世界最初のラジオ局、KDKAが大統領選挙の結果を放送しました。
それにあわせてラジオも、高価だったのにたった数年で数千台も一気に売れてます。
船ではいまだに手旗信号、マストの発光信号でモールス信号を使ってますが。
(そもそも現代の軍事は電波戦がとっても重要なのでなるべく電波はだしたくない)、
まあここら辺になると20世紀もたったことなので後に話をまわしましょうか。
第二次産業革命が始まったばかりの頃はまだまだモールス信号程度が無線技術です。
その後に大いに発展しますが、第二次産業革命の頃はまだまだ原始的。
それでもとっても便利になったのですけどね。
手探りで、大洋に出たら全く連絡つかない、探検に出たら連絡手段なしな世界では、それが火花のトンツートンでもうれしいものです。
それだけで他の産業が大いに伸び始めるきっかけです。
それこそ船舶とか。
そして明確に第二次産業革命か?となると疑問な部分がありますが、その新産業、技術の発展、使えるネタが増える、それが重工業にシフトしていく様子、会社、資本、投資の在り方が大幅に変えていきます。
モータリゼーション、蒸気機関車、蒸気船の発達、大規模工事、大規模建築は巨大な投資が必要なものが突如増えます。
そしてその商機を逃さないために大規模投資をしたのがアメリカ合衆国、ドイツ、あるいは南米といった新興国の存在が大きい。
皮肉なことに当時の先進国である二国、すでに巨額なインフラを投資し終えて軽工業中心に工場が乱立しているイギリス、重農主義の延長で農家の延長の工業しか発展していないフランスは出遅れることになってしまいますが。
(ちなみに日本は微妙。元の産業のニーズは軽工業、西洋の真似した重工業、19世紀のうちはいまいち集中していない様子が現れます。
さらにスエズ運河といった大規模土木。
そして新金属、新工法、電気や石油や石油化学の組み合わせで新たにできること、
こういった組み合わせは、既存の第一次産業革命の延長にあった重工業を一気にジャンプアップさせます。
こういうハイブリッドなジャンプアップで一番理解しやすいのは船舶でしょう。
そもそも、帆船は20ノット以上の高速船まで実現し、鉄鋼、ゴム、帆布、化学製品、18世紀以前では考えられないような大型高速船が実現できています。
1000t、2000t、3000t以上の船が量産できる技術力。
タグボートといった蒸気船のおかげで喫水や港湾の運動性など無視できる設備が出来上がり、コンクリートの大型桟橋、護岸工事といった土木工事技術の発達、新素材。
西洋と呼ばれる科学体系、技術体系、国家体制以外ではどこも追随できない状況になっています。
ちなみにコロンブスだのマゼランだのドレーク提督とかの絵画もこの頃の船舶の様子を逆引きして描いてます。あるいは劇画でゴート人のヘルメットを被った、嘘なヴァイキングとか、当時の様子を想像して描いているので、300t以下の軍船、100t以下の小舟をなんかかっこよい巨大船として描き、皆の誤解を助長してます。
あるいはバベルの塔も?
古代の粗末なピラミッド程度の建物【想像図)が、なんか巨大なピサの斜塔っぽいかっこいい建築物に超能力者が住んでいるという。
そのまま蒸気船、動力船になってもおかしくないですが、ひつこく帆船は地歩を築いています。
嵩張る石炭、燃料が必要なのでその補給の給炭所を各港湾におかねばならない、
小回りは効くが根本的に推進力がなくて速さが稼げないしまりのない外輪船、
根本的にメンテが常に必要なスクリュー船、、、底に穴を開けて軸を通すスクリュー船は、根本的に船底に穴が開いて水が漏れるのです。そもそも高速回転するスクリューの軸受けの摩擦熱を冷やすのは海水です。常に船底から水を漏らさなければならないのがスクリュー船、メンテ、排水が常に必要なのがわかるでしょう?、、、メンテが大変でコストに見合わない。
更に、そもそも荷物を安く大量に運搬できるからの船舶です。
積荷を占めたい部分が燃料である石炭置き場になってしまうのは本末転倒です。
そして港湾技術。
給炭所をそろえ、蒸気船であるタグボートを備え、大型船舶を並べる桟橋を並べ、その整備のためのドック、乾ドックが揃います。
たとえば新素材、新金属、新工法。
ピストンでなく高速回転する、熱に耐えるタービン、長持ちする軸受けやパッキン、効率の良い高度な工作技術が必要な大型スクリュー、それを据え付ける工具や設備を手に入れます。
新燃料。
ガソリン、軽油、ゴムや医薬品で石油の需要が高まり、そのあまりモノである重油。
嵩張る石炭倉庫に変わる重油タンクは、少しでもその容積が減らせます。
そしてその容積分大きくなる大型船舶も受け止められるようにする護岸工事、海底土木。
無線も馬鹿にできません。
港は燃料補給、整備、停泊、回港もちろん途中の燃料切れから行き先変更まで港に頼ることが多くなりますし、連絡が出来るのはとっても便利。
そんな、いつでも帆船から動力船に移れる機会がありつつの、躊躇しつつの、、
そんな帆船を捨てる決定的なことも大型土木工事でした。
様々な技術が揃う中、スエズ運河が1871年に出来上がります。
パナマ運河の出来上がりは20世紀でしたが、アメリカの積極的な投資、政治工作で大いに進んでいます。
そして当然ながら運河で帆走は出来ません。
喜望峰を遠回りする高速帆船より、燃料を余分に積んだ重い、しかし近道が出来る動力船の方がコストが徹底的に安くなったのです。
いくら頑張っても、更に帆船が頑張る世界ではなかなか定着しなかった動力船、第二次産業革命後は趣味、観光、沿岸船としてしか活躍できなくなり、やがて消えていきました。
結構ひつこかったんですけどね。
蒸気機関車はもう少し素直です。
19世紀も後半になると出来て100年以上たち、軌道の総延長が凄いことになります。
土木、レールの大量生産も大いに助けたでしょう。
輸送量も膨大になり、船舶が発展すると港湾周辺内陸に運ぶ需要も膨大になり、それは当然ながら大型化、高速化を目指すことになります。
それも多岐に渡ります。
大型ボイラー、その圧力を受け止めるためのボイラーは高度な冶金、工作技術、シールド技術が必要です。
その巨大なボイラーの蒸気は大出力をだし、それを受け止めるためのピストン、ロッド、車輪。
車輪や軸受けは大型化の余波の重量を受け止める頑丈さも必要ですね。
そして高速下でも壊れない、摩擦熱を発生させないための精度や工作技術。
高速になればその振動を吸収するばねも必要ですね。
その大馬力をつなげる客車、連結器、大型駅、整備施設、運行施設、通信、etcetc。
更にその鉄道が運んだ荷物を更に細かく駅から各家庭に運ぶための自動車、トラック、バス、馬車、バイク、自転車。
用途によって様々な車種が出来ます。
バイクは初期は4輪より安価さを求めた部分もあります。
小さいだけで安いし手軽になりますからね。
ちなみに帆船と同じく、馬車も皆の認識と異なるイメージとなります。
映画に出てくるような幌馬車、インディアンに追いかけられる大型の幌を覆った奴、馬も馬格が大きい競馬馬のような奴、は19世紀ですね。
大きな帆布、サスペンション、小型で丈夫な(鋼鉄製で複雑な加工が必要とする)馬具は帆船と同じく産業革命の産物。
追いかけてくる、馬に乗って後込ライフル銃持ったインディアンと同じく映画の産物ですね。
さて、このように第二次産業革命がおこりましたが、実は最大の余波は企業が大型化したことでしょう。
それは製造業、新規産業に限らず全般。
船舶、自動車、蒸気機関車、とにかく大型というだけで工場の規模は巨大になります。
そしてそれを作るため、鉄鋼、建造部品、工具、材料、化学製品、etcetc
そしてその大量なニーズをこなすために大量生産、、ベルトコンベアで部品が流れ、最終段階で製品が出来上がるという、、そのラインをいくつも作ることも工場の巨大化が進みました。
そして人員も増え、イギリスで核家族化が進んだ延長で、現代の「サラリーマン」「工員」のイメージが出来上がります。
後述しますが、その変化はたとえば町、市、県、州の自治体が丸ごと変わるような大規模なもの。
そして会社が住処や商業まで用意する必要まで出てきます。
そして一つの工場で国が変わるほどの生産数、生産規模は製造者だけでなく、経営者、営業、販売窓口、輸送ルールまで変わります。
極端なことを言うと、一社、一工場で船を出す出さない、船舶を新規に建造するというところまで大規模になる。
そしてそのために更に自治体を変える。
都市に製造しない「会社」「本社」という概念ができ、一度も工場を見ない製造会社の社員、自分の会社の製造物の知識がない経営者まで出来る分業が進みました。
そしてそれを整理する総務や人事といった間接部門も巨大になり、さらにそれを支える商業や住居、その間接部門を効率化するための商品、更にそれを支える工場とその自治体、、、とりとめもなく巨大な社会が増殖し始めます。
第二次産業革命は、最初の産業革命とは違った様相をし始めます。
そしてそれに馴れた社会はそれ以外の産業も変質し始めます。
投資の仕方、株式会社のルールは、同じでも規模が違う、使っているインフラが違う。
金融業も、不動産業も、建築業も、サービス業も、製造業に合わせたようにその体質を変えていきます。
大量の労働者を満足させるサービス業、たとえば旅行業界も、一度も自分が世話しているツアーを知らない会社員、経営者がいるような分業の進んだ会社になります。
銀行も懇切丁寧な人の判断での投資ではなく、業態のマス分析で安全性、投資効率を決める。
そしてそれを肩代わりする「分析」「統計」といった新しいサービス業が出来る。
このうまいタイミングで時流に載ったアメリカは無敵になります。
そしてそのアメリカの作ったビジネスの時流にのったドイツも、現代まで通ずる産業を発展させる。
逆にいままで先進国だったイギリスはその形態変化についていけず、たとえば車ならロータス?ジャガー?どこか家族経営的な製造業、ユニークだが一流とは言えない製造業が現代でも続きます。
(金融や資源は、それこそ初期はアメリカを支える主人公で、いち早くマス的な業態に移行しますが)
フランスも重農主義の余波を受け、たしかに一流から1.5流の立ち位置にはなりますが、フランス製品がファッション、インフラ以外ではユニークであるがいまいちな形態なのはこの時代から。
科学は一流、国民性は洗練されても「工業国」とはなかなかいわれない。
(今はルノー、ジェマルトといった一流を抱えていますが、それがフランスというブランドを使っているわけでもないですしね)
イタリア、東欧、スイスといった昔からの一流製造業は、一流と言われたまま、主人公にはならない、メジャーになりにくい立ち位置。
フェラーリは大衆車ではないし、フィアットやランチャは実は大衆車のメーカーなのに他国ではそう見てくれない、こんなイメージはこの時代である程度固まります。
産業革命はずーっと続いていたとも言えますが、どうしても私が「第二次」産業革命として分けたかったのはそこらへん。
今回はこんな感じにしておきましょうか。
私は昔「ランチャデルタ」というイタリア製のラリーカーというかスポーティな車に乗っていました。
イタリアでは「ランチャデルタ」はヴィッツというかカローラみたいな大衆車だったのに気づいたのは現地に行ってからです。
インテグラーレだのエヴォルシオーネだの続かないとスポーツカーとして認めてくれません。
そしてスポーツカーとしてもあまり感動しない車種だそうで。
ベンツもお手頃な価格の大衆車があったり、バスやトラックメーカーも良く考えればそうだろうとわかりますが、現地でバスやトラック、タクシーのエンブレムを見るまでは、やーさんがのる高級車としかわかりませんよね?




