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人間の歴史。  作者: TAK
20世紀に入る前に
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堕ちてゆく中東

さて、20世紀近くなってヨーロッパは産業革命を果たし、それに合わせて政体、生活スタイル、産業構造、その他の変革も終わった時期になります。




中世では何もなかったヨーロッパは、近世で産業革命を果たし、ありとあらゆる国々より富んだ国となります。


工場で作られた金属製の食器、パイプ、建材、水道は不潔で伝染病が蔓延する生活スタイルは一掃されます。

来る日も来る日もシチューだけという生活から脱し、あふれんばかりの富で購入した色とりどりの各国の食材が並ぶようになります。


産業は工場がメインとなり、サラリーマンという人種が生まれます。

核家族化し、伝えるべき一族が別れたので古いしきたりは一掃され、民衆、中産階級というあやふやだが巨大な階層が生まれます。



産業や政体はそれに引き摺られるように変わります。


植民地は、工場で作られた製品を販売すること、原材料を入手するための手段で征服欲を充たすものではありません。

もちろん現在でも征服欲で他国に戦争を吹っかけますが、大抵の植民地経営は赤字です。他国なら、どんなにアホなことしても勝手にしろで済みますが、同じ国なら責任があり、その責任を果たす為に「懐柔」にせよ、「待遇改善」にせよ、「殺す」にせよ、そのお金は湯水のように流れます。

イギリスのインド経営が典型的ですね。

大黒字のインド経営は、属国になった途端に赤字に変わっていきます。



そして工場が生産した大量の銃や砲を有効活用する一番手っ取り早い方法は、徴兵して大火力をぶつけること。

民衆という巨大な階級をつくり、数百万人を徴兵し、それをぶつければ、中世の数万程度のの軍隊など相手にもなりません。

そしてそれを実現するための一番簡単な方法は、民衆という巨大な階層を主人公にすればよい。

民主主義という政体が基本となります。


もちろん例外もあります。

王政や帝国のままナショナリズムという思想で民衆に当事者感覚を植え付ける方法、恐怖政治でしばりつけるロシアのような政体も並列として存在します。


効率が良いとはとても思えませんが、..ナチのように、国家統制すれば目的を果たす為にとっても近道に見えますが、産業革命という面から発達した資本主義は、それこそ独裁者から見える「無駄」「試行錯誤」「先行投資」という観点からは一番遠いし、「中産階級」という巨大な階層を率先して牽引役にするという考え方からもとっても遠い...


そもそも「小説家になろう」というサイトに長時間かけて投稿する時間を切り捨てるような政体は、資本主義にとっては発展が望めない政体です。

まさに新規性を求めるアカデミックな活動を突き詰めるということは、そういう「無駄」なことですから。


未だに中国といった旧政体でも発展が望めるのは、それこそ日本からパクる、米国からパクる、ヨーロッパからパクる、という発展性のある国に寄生するからこそできるのです。

ベトナム?

政体はどうあれ、自分の意思で賭けられ、それに勝てれば富が手に入るという「実」があれば中産階級は動きます。

共産主義も強権を失い、それに口出せないのあれば日本と同様な立憲君主制と大して変わりありません。

天皇陛下がいようと民主主義です。

「共産主義が王政と変わらん」という主張が証明されているようなものですね。








さて、そのような体制をヨーロッパ以外で変更を果たしたのはアメリカ合衆国と日本。



結果論ですが、南北戦争という儀式は植民地、属領、モノカルチャーという産業構造を破壊し、五大湖の工場を中心に産業革命っぽいことになります。


元から民主主義ですが、連邦制からナショナリズム「ステイツ」「星条旗」というシンボルを加えて「合衆国」という総体に変わります。


「投資」「中産階級」「工業」というキーワードを無理やり他国の移民から移植するのはどうかという部分もありますが成功します。


建国時の移民は「難民」といってもおかしくない階層でしたが、南北戦争の時は、元から職人、元から投資家です。


うまくニーズにマッチしました。


というか南北戦争のある面は、移民(北軍) 対 旧体制(南軍) の争いでもあります。

移民はそれに成功し、旧体制を破壊し、それを受け入れることになります。


尤も、そんな事情に反映してかなんか合衆国は「人造国家」という感じで、かなり無理のある危なっかしい国になります。

民衆は未だに一体化せず、国民性というものが常に変化し、無理やり「ステイツ」という名の縛りを語り、なんか刹那的な政策を繰り出して周辺諸国を混乱させます。



「啓蒙主義」という民主主義では必須の、、奴隷制度とは対局の思想も、、リンカーンが無理やり移植したようなもので、被差別者への差別が他国に比べて激しく、根が深く起こります。

南軍が勝ち、自然な形で奴隷制度が廃止された場合とはずいぶんと違った結果になっていることでしょう。

フランス革命、清教徒革命と違い、民衆が納得して選び取ったとはとても思えません。


たらればなんて意味がありませんが、黒人差別が戦争が終わってから激しくなるなんて「納得した」とはとても思えませんから。

そしてそれもある種のビジネスになるのも変な話。

そういう人造国家がアメリカ合衆国。

南北戦争前の合衆国は人造国家と思えません。

そうなったのは南北戦争後。







日本は「明治維新」という形で無理やりヨーロッパの制度をフルコピー。

江戸幕府の体制が限界に来ていたとしても、そのコピーは乱暴すぎます。

しかし、元々ボトムアップの産業や政体、武士だって元々農民なのです。

しかも実は統一国家ではない。

やりやすくはありました。


しかしそんな無理をしたので、それが実際に稼働するのはずいぶんと長くかかります。

国力を上げる道具として、泥縄式に逐次に改編、マッチをさせていきましたが、それが民主主化というと今でも怪しかったりする。



日本人につきまとう、日本が先導するような技術でも「猿まね」と囁かれるのはそういった部分も多いのかもしれません。

「お上」という違和感のある上位層に従い、その範囲を飛び越えた産業を作ろうとするとなんかそれを無視できる人は浅はかな人だったり、とっても稚拙だったり。


海外からみると、優秀な部下が老害で無能な経営者に従う変な連中、ベンチャーと名づく新規産業の経営者はなんか詐欺師か無能。

新ビジネスの7割は詐欺師。

それなり有能だとサラリーマンになった方が楽なのが今までですが、そろそろそういう産業構造は限界になってきています。


これから混乱が起こるのでしょうね。

日本がどのように変わるのか、年寄りには楽しみです。

想像はつきませんが。









まあそんな前置きですが、それ以外の連中で「人間の歴史」「変化」で語れるのは二国のみ。

アフリカや南アメリカ、南アジア、東南アジア、太平洋の各諸島は暫くは従属させられるか、放っとかれるかのどちらかで、あまり歴史に影響を与えません。

しかしあまりに世界の中心で、古代史以前、古代、中世、近世に影響を与え続けた二国が堕ちるのは、とっても歴史に影響を与えます。


その一つが中国、もう一つが中東。

近世から近代に変わる頃は、この二国が堕ちてゆく話がもう一つの主軸となります。

最初は中東から行きましょうか。



中東は近世以前、ローマ時代を除いて常に世界の中心の一つとして生きてきました。

ローマの時も例外中の例外、というか中東を占めている地が、そもそも地中海世界出身だったというだけで中東が世界の中心であったことは変わりません。


古代史以前は単純です。

肥沃の土地だったから、

その肥沃な土地で巨大帝国を作りました。

巨大人口を抱えられると、その余剰人口はいろいろな方向に回せます。

中国と同様に科学技術の発展は大きなメリットとなりましょう。


古代になったらローマ時代も含め、「地中海があるから」が含まれるようになります。

古代の船舶技術で海運ができるのは大きなメリット。

そしてそもそもの場所のメリットも大きなアドバンテージになります。

アフリカ、北アフリカ、ヨーロッパ、アジアの交差点。

中国の方が更に大人口を抱えているので、それに比例するように科学の発達は中国が主導です。

しかし商業が発達し、陸路の交差点、地中海世界の海運は「科学を有効活用する」という中国と違った特色を得ることになります。

科学の発見は中国でもその活用は中東の方がよほどうまくいく。


中世になると更に船舶技術が発達し、海路でも交差点となります。

大西洋、地中海、紅海、インド洋の全てに接し、無数のアラビア商人が跳梁跋扈する世界になります。

中国も中世後半で、「元」というモンゴル人が建国した国が興り同様な立場になりますが、先行アドバンテージは大きい。

そもそも「元」の建国もアラビア商人が活躍してますし。

その後は、後に「華僑」と呼ばれる商人も活躍することになりますが、彼らの科学技術の「活用」は彼ら共に大いに世界を底上げします。


その底上げは、たとえばヨーロッパの「ルネッサンス」の発信源となります。

16世紀の「近世」「科学技術の発展」を誇らしげにヨーロッパ人は語りますが、その中身は12世紀の中国や中東で発見し、発達したものだったりします。

錬金術、天文学など最たるもの。

ガリレオだのケプラーだのが語り誇っている内容は、その何百年も前の中国と共同で運用した巨大な天文学研究所で研究していたもの。

そして「ルネッサンス」自体がヨーロッパ人が中東で留学した結果。

中世以前の石や金属、ガラスも中東から輸入したもの。

そんなオチは、中東科学技術の発展ぶりを想像できます。



となると、ヨーロッパが発展して中東が堕ちていく理由もわかりやすいです。

「大人口による経済力」→産業革命でコストの安い製品は、中東市場をひっくり返します

「大人口による軍事力」→民主主義による徴兵、マスケットによる巨大な投射火力は、中東のアドバンテージなど吹っ飛ばされます

「文明の交差点による科学技術力、活用力」

→そもそも経済の中心がヨーロッパに移り、海運のメインロードが大西洋、インド洋になることで交差点の役割は怪しくなります


そして総体的な軍事力の低下で地中海の維持さえできなくなり、エジプトも失い、スエズ運河はヨーロッパ人のものでもう交差点でさえありません。


近世の後半から近代になる過程で、まさにそれが起ったのです。







レパントの海戦を最初の嚆矢とする人が多いですが、それは私は同意できません。

その後も普通にイスラムは経済力を伸ばしており、地中海の制海権を持っています。

樽舟の延長やガレオン船がメインである限り、中東の有利さは変わりません。

むしろイスラムと関係ない「アルマダの海戦」の方が重要です。

イギリスが今までの白兵戦を無視し、英国の大砲を並べた戦列艦で強力なスペイン無敵艦隊を打ち破ったこと。

それが火砲を中心とした後のアドバンテージをまずは引き立てます。


そしてヨーロッパがアメリカ大陸を得て食糧問題が解決し、人口が増加します。

大人口の有利さがスポイルされます。

「チューリップ戦争」あたりが、その科学の発展具合で逆転を感じさせる一幕でしょうか。


それでも中東の科学技術はこの時代でも絶頂というべき頃でしょうか。

火砲は発達し、冶金は優秀で、ダマスカス鋼だけでなく中東が科学の中心であることは変わりありません。

しかしそれは蝋燭の火が消える前の最後の灯という感じで怪しげな状況です。




そしてナポレオンによるエジプト侵攻。

徴兵で何十万もの軍隊に対抗できる術はなし、鎧袖一足でトルコは撃退されます。


民主主義-マスケット-徴兵という組み合わせで、今まで強いと言われていたマムルークは無力になりました。


「ピラミッドの戦い」では、彼らの方が優秀な火砲、兵を持っていましたが、マスケットを並べた戦術は全く通用しませんでした。

フランス 2万に対しオスマン帝国は6万(ただし戦闘に加わったのは2万)

損害はフランスはたった300

オスマン帝国の被害は2万人以上です。

壊乱ともいうべき損害です。

圧倒的でした。



フランス統治とナポレオン軍の壊滅、その後の撤退フランスは撤退しましたが、その後もイスラムはエジプトを取り戻せませんでした。


フランスの啓蒙主義、民族主義に影響されてエジプトが独立したのです。

軍事的にも致命的ですが、中世のあやふやな政治体制は属領を繋ぎ止めていくこともできなくなっています。

なんとなく流れでオスマントルコ民と自覚していただけで「我が国」などという意識はありません。

しかしフランスに統治され、「エジプト」という固有名詞と周辺の人々との連帯感。

もちろんその連帯感は、生活も歴史も共有できない「トルコ人」ではなく、意識も生活も歴史も共有できる「エジプト人」という範囲に限ります。


エジプト地域をトルコ人が「我が国」と言える理由は、政治体制的にはあやふやだったのです。

統治の緩さ、自由さ、あやふやさは中世の発展の原動力でしたが、「国民」を徴兵する、「我が国」という理由ではとっても怪しい。

まだロシアのように恐怖で縛り付ける方がよかったのでしょうね。


エジプトは「啓蒙」「愛国心」「民族主義」という価値観で独立したのです。

更にトルコ自身が、ヨーロッパ諸国の影響でが共和国になる、、、つまり啓蒙や愛国心や民族という概念での統治しようとしたら、範囲はオスマン帝国ではなく、今のトルコ共和国の範囲がせいぜいなのでしょう。(どころかクルド人問題を考えると、さらに小さくてもおかしくない)





更にヨーロッパの産業革命で大きく引き離されます。


科学技術そのものとしては大きくかけ離れていません。

そもそもこの時点でヨーロッパの科学はイスラムが発信源ですし、その後のヨーロッパ発展の結果は貿易相手、隣国のメリットとして入手可能です。

ルネッサンスの逆バージョン。



まず「職人が発達していた国」という歴史は東欧と同じジレンマを抱えます。

高い技術力、その技術力に裏付けられた職人を多数抱えている場合、むしろそのおかげで工業化が大変です。


イギリスの工場は規格どおりのネジを大量に作り、フランスの工場で規格どおりのベアリングやばねを作り、それをドイツの工場に持って行って組み立てても確実に動きます。

ベテランの職人が自らの性能の良い工業製品をつくる時、それに最適なネジを選び、ベアリングを選び、ばねを選び、丁寧に作る、それはきっと性能の良いことでしょう。

しかし、ヨーロッパはいい加減にそれを購入し、組み立て、1/10、1/100のコストと時間で作れるなら、トルコの性能などどうでも良いこと。


ねじまき式の時計と同じでノスタルジーやファッションでしかありません。

産業革命は「スイッチぽちん」でどんどん出来ることこそ大事なのです。


更に一か所で作るのでなく、ネジ工場、ベアリング工場、いろいろな場所で、いろいろな人が関わり、無数の人が情報を共有することで技術の底上げも早い。


一円でも安く、ちょびっとでも性能が高けりゃたくさん売れます。

ボタン一つでばんばん出来上がるわけですから、ちょっとでも作る注文より、自分が大量受注してボタン押す機会、独占する機会を得る方が大事なのです。

隣が一円安ければ自分の工場がつぶれる可能性が高まります。

自分が一円でも安くすれば、隣の工場を蹴落とせます。


もちろん、現実は各業界で切磋琢磨していますが、資本主義は本質的には「独占」が旨味なのです。



さらに古代からのメリット「文明の交差点」はむしろデメリットに変わります。

ロシア、ヨーロッパといった各国に囲まれ、自分が弱者となるとむしろ「獲物」となりますね。


そして周辺がイスラム、オスマントルコと相いれない民族主義、ナショナリズムが蔓延します。


更にイスラム教の家族主義も「サラリーマン」「核家族化」への移行に邪魔!


更に海運は何時の間にヨーロッパ船が跳梁跋扈し、戦列艦から高速帆船、やがてスクリュー船に代わり、いつのまに陸軍国に。

そもそも中世からの経緯から、イスラム商人はオスマントルコへの愛国心なんて薄いですしね。


全てがトルコに優しくない世界となってしまいました。



20世紀前後のイベントはこんな感じ。


・エジプトをフランスに占領され、フランスがいなくなってもエジプトは独立したまま

・地中海の入り口のエジプトを失い、北アフリカも失う

・民族問題、ヨーロッパ、ロシアの圧力でギリシャを失う。更にその圧力の余波でロシアの従属国的な立場に

・1869年、独立したエジプトはヨーロッパの後押しでスエズ運河を作る。さらにその有用性、金銭的なもの、経済バックアップでイギリスの従属国に。オスマン帝国は地中海の入り口さえ失う。

・エジプトやギリシャ、オーストリアで民族主義が吹き荒れる。圧力と亡命者多数でさらに大混乱

・クリミアで民族問題...というか一種の宗教戦争で大混乱。ロシアの圧力、フランス、イギリスの介入の狭間で更に列強の従属的立場に。

・1875年にヘルツェゴビナで反乱。民族主義&宗教問題。ついこの前の奴とおんなじ。自分が統治したら無政府状態になるのに、他人は非難する民族主義者たち...

ロシアに勝利し、ロシアが更に圧力をかけてきて、さらにそれを良く思わないイギリス・フランスが介入し、更に従属的な立場に

・周辺の圧力にドイツが加わる。、1879年に同盟、制度改革に協力するかわりにバグダード鉄道の権益


20世紀になる前にすでに二流国として各国に従属されるような立場であり、幸か不幸か周辺に睨まれているおかげで圧力だけで睨み合いされて生き残っているような感じ?

ロシアがいちばんひつこい状態で200年間圧力かけられているので、それでロシア人大嫌い、それに勝利した日本大好きな国の理由。


今回はこんな感じ。

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