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人間の歴史。  作者: TAK
江戸時代
127/176

大政奉還~討幕

さて、いよいよ薩摩が剥き出しになって幕府に牙をむきます。

あと、大村益次郎が見せた快勝は、攘夷の狂った連中以外の全てが徹底的に開国、西洋化に邁進することになります。


すでに蘭学者、英学者が医学、教育機関、工学、船舶や鉄道、あらゆるところに顔出していましたが、やはり戦争が全てのものを~特に頭が固い老人や田舎者どもを~叩きのめしたのです。


「戦争は物事を解決しない」


そんな心情を持つ人達はこれをどう考えるでしょうか?


...まあ半分は当たってますが。

なにしろその解決は修羅の道というか、血の雨というか、そういう結果ですから。

それは「解決しない」にあたるといえばあたるでしょう。

だれも望んでませんからね。


大村益次郎は、黒船、攘夷から始まる国民や為政者の熱情を物理学に例えていました。

彼らのエネルギーはどのような解決をしようと、それが消費されるまで乱は終わらない。

そして、そのエネルギーに集まるのは西郷隆盛であることも正確に予想していたようです。


そして彼自身もそのエネルギーの一つです。

冷静沈着な頭脳と、そこから弾きだされる知識、案、戦略、戦術。

それだけ見ると彼はクールに見えるでしょうが、師である緒方洪庵の葬式の日、彼と争った福沢諭吉は驚いていました。

「大村益次郎は狂った」

実際、彼も日本を焼け野原にする覚悟で世直しを考えていたようです。






さて、全プレイヤー西洋化を目論んでいる様子と薩摩の剥き出しの牙は、1867年の「パリ万国博覧会」でも見えてました。

なんと「日本」ではなく、幕府、薩摩藩、佐賀藩の3つが出展したのです。

幕府は薩摩に猛抗議しましたが丸無視。

そしてイギリス公使のグラバーも、その出展をすすめた薩摩と同じように、幕府に牙を剥き始めます。

薩摩に武器を貸し与え、それで戦争が起こらなかったら丸損です。

既に薩摩は幕府との戦争を望んでいたんですね。


ちなみに、ヨーロッパではこれをきっかけに空前の日本ブームがおこります。

展示内容は、油絵、浮世絵、銀象牙細工、磁器、水晶細工、お茶屋、芸者、軽業師とか。

1867年は「電気」と「日本」がヨーロッパ中に駆け巡ったのです。


あと、佐賀藩は地味にこそっと自分の特産品を。

磁器、白蝋、紙、麻、有田焼とか。

小国なのに先見の明と、誰も問題としない小ささはちょっと悲しい。

小店を開き、大いに売上げましたが、ヨーロッパ人は佐賀藩からなにか購入しても用途わからない人多かったみたいです。


佐賀藩は討幕側に参加しましたが、その技術力と大砲といった工業製品は驚かせましたが、小さすぎて、それ以外は誰も期待していなかったりします。

哀しい。






さて、その後も薩摩は幕府にあからさまに敵意を剥き出しにし、内戦の予感を日本国中に感じさせました。

ここら辺になると、民衆も含めて薩摩と長州は討幕軍を起すだろうと予感していたようです。

薩摩は四侯会議で討幕を決意した島津公(本当に覚悟したのかはこの殿ふにゃふにゃさで疑問符ですが)の意を汲み、討幕への道を突き進みます。




まずは薩摩と土佐による薩土盟約が結ばれます。

ここで本当に坂本竜馬が大きな位置を占めているかどうかは実は不明なのですが、その盟友と言われている後藤象二郎がカウンターとして交渉し、盟約を結びます。

もっともそれは討幕の約束ではなく、幕府が平和的な移譲を目論んだ「大政奉還の建白書」です。

平和主義な坂本竜馬、その意を汲んだ後藤象二郎、ふにゃふにゃで武力で兵を出すのは渋っていた殿様「山口容堂」も平和路線を望んでしました。


まあそんな感じで薩摩とは微妙な思惑のずれ、盟約は微妙に破棄されます。

尤も、一応仲間ではあるし、大政奉還は西郷隆盛も賛成しています。

失敗するだろうことを予想してますし。

何しろ幕府もやる気満々に見えましたからね。

だって日本最大の西洋式軍隊を作り上げてます。

とっても強力です。

財力でなりふり構わず。


が、それ以外の諸藩はばらばら。

相も変わらず足並みそろってないし、様子見という感じ。

というか、長州や薩摩の一周遅れで攘夷とか?


水戸藩なんかは戊辰戦争始まっても「天狗党」とか反乱してごちゃごちゃ動いてますね。

明治になった今でも鎮圧されていないどころか未だに政争争いしてます。

薩摩と肩を並べていた雄藩の割に、たった数千人を捻出できただけ。


例えば庄内藩とか明治維新を通して文字通り無敵でした。

早くから自分のお金で軍備を整え、スペンサー銃(レバーアクション式連発ライフル・南北戦争終了でだぶついてた)を購入、兵も西洋式で身分問わず、練兵も早くから、最後まで新政府軍に負けませんでした。


その他仙台藩とか出羽藩(金沢)とかがそれなり出兵していたり、兵力数もばらばら、兵力が多くても兵器の新旧、古くても戦術が優れていたり結構バラバラで、これを見ても幕府を中心とした体制なんて滅ぼした方が良いなと思う人がいてもおかしくありません。




そういう薩摩の方は...

イギリスのグラバーの暗躍で最新式の銃、実に5万人の兵力。

なかなかのものです。

ただ、いまだに「志士」とやらが幅を利かせる上層の体制はかなり危うい感じ。

大村益次郎がここまで幅を利かせているのは、無能な将帥達がまともに戦が出来なかったからという考え方があります。

大村益次郎が指令するまでは苦戦、矢鱈出張って蛮勇だけを誇り、猪突猛進して、そんな戦歴が目立ちます。


逆に、大村益次郎が補給、指示した戦力投入、他藩との連携しての大規模作戦の場合は超強力だった様子。

実際問題として、藩は密貿易、琉球貿易、多角化で富んでいたのに、武士農民含めてかなり安月給で貧乏な連中が多かったようです。

WW2でも鹿児島は強兵を誇っていましたのは「農家継ぐより軍隊の方がまし」という部分もあるようなないような...

そんなアホだが強兵、指揮官もアホというのが薩摩のイメージでしょうか?

ちなみに長州の一周遅れで上層部も狂い始めてます。

殿様から政治家である西郷隆盛、アホな志士、暗躍しているイギリスも、戦争がしたくてしょうがないみたい。

クールな大久保利通は、しぶしぶ従う感じ?

熱病が流行って冷静さを失い始めた?

何にせよ西郷隆盛の意思に従って開戦に向けて謀略、暗躍してます。






長州は、第一次長州征伐の頃のダメダメな時期は過ぎ、高杉晋作と大村益次郎でしっかりした練兵、伊藤博文や井上馨で最新兵器を調達し、それらを木戸孝允がバックアップするというシンプルで有効な体制になりました。

志士も、アホは弾かれて未だにテロの予備行動、、というか強盗まがいをやって世間を騒がしてますが、有能な奴は高杉晋作のおかげでさくっと指揮官に就き、大村益次郎の元で鍛えられているようです。


ちなみに、大村益次郎は上層部からはとっても信奉されるかとっても嫌われるか、同輩は(主に薩摩の自称志士中心に)嫌われまくってますが、部下や下に見られる下層の人達にはおおむね好評でした。

それこそ神格化するほど慕う人多い。

提灯貼りの貧乏でも有能なら引き上げ、それこそ下の立場の者でも教えを乞い、喜ぶ態度はとっても良い人に見えたのでしょう。

奇兵隊の指揮官クラスでも、例え元志士でも慕う人多かったのです。

あと表向きは36万石、実質の経済力は100万石を超えた優秀な官僚も彼が好きだったようですね。

裏で頑張っている人も大事にしていたのでしょう。


何にせよ、長州征伐が終わっても薩摩の数分の一しか兵がないのに、優れた上級指揮官、鍛えられた中級指揮官のすごさは「陸の長州」と呼ばれるほどの強さを誇っていました。

ちなみに武器は前装式ライフル「エンフィールド銃」に置き換わりつつあります。

そして長州をダメにした志士どもはいなくなりましたが、それを甘やかした老中たちは、発言権はないものの大久保利通に騙されてきゃんきゃん喚いてます。

あ、名君の毛利敬親は理性的ですよ?

きちんと桂小五郎のバックアップしつつ、保護しつつ。





こんな感じで各プレイヤーは軍備増強に務め、数年後には内戦だろうという雰囲気を漂わせていましたが、いきなり急転直下、坂本竜馬?や徳川慶喜が無理やり終わらせようとカードを切ります。

1867年11月9日


「大政奉還」


この背景にあるのは、勝海舟を中心に、坂本竜馬、徳川慶喜、後藤象二郎らの共通した意見。


「日本が内戦になると多大な犠牲が伴う、外国が介入してアヘン戦争みたいになる」


徳川慶喜自身は、そもそも担がれたときの各プレイヤーの謀略っぷり、利用っぷり、醜さっぷりに辟易していた部分もあるでしょう。

個人の感想ですが追加で彼の性格、「義務感の強さ」「義務感がない時の怠け者っぷり」「野心なさ」は蟄居した後の様子で勝手に想像してます。

日本を何とかしなければという義務感と、辞めれるんだったらこれ幸いという怠け者っぷりが発揮した所業かもしれませんね。


ちなみに師匠である勝海舟も、理性の多さと、政治といった面倒事が嫌いとかあるので、誠に子弟らしいです。

そういえば坂本竜馬も一貫して「商売できれば良いや!」(商人の才能皆無と思ってるんですけどね)、日本の傾奇者っぽいいい加減さが3者とも目につきます。


ただ何にせよ、彼らの想いは「戦争になると日本が滅ぶ」。

なりふり構わず戦争の理由をなくしました。




しかし大村益次郎が予測した通り「戦争の理由がなくなれば戦争がなくなる」などはありえない。

むしろ薩摩は狂い、なりふり構わず戦争の季節に突入させようとします。




まず、当初から辞める気満々な3者なのに関わらず、空気の読めないインテリ気取りの山内容堂がしゃしゃります。

将軍職廃止の条項を削除しやがりました。

それじゃ討幕軍が納得せんだろうに。



同調したように幕府の重鎮達も慶喜に反抗し始めます。

慶喜も当初の潔さにも関わらず調整役で玉虫色の態度を取り始めます。




朝廷も「まるで幕府がいなくなると困る」的な態度を取り始めます。

一方で岩倉具視を中心とした公家が勝手働きをし、朝廷もまるで分裂症のような態度をとりはじめます。


まあ朝廷も困ってると思うんですけどね。

外交とか、何もしらんのにいきなり「お前がやれ」はないだろうとは思うんですよ。

まあその境目だけでも将軍、幕府、武家の棟梁、外交窓口はそのままにしましたが...ちょっと朝廷も結果論として分裂症気味になってます。





慶喜を残そうとしたのも朝廷なのに同じ日1867年11月9日に討幕の密勅が下されました。

まるで朝廷は精神分裂症ですね。

まあ岩倉具視の謀った偽勅説が大きいです。

実際に平和的に解決して一番困るのは薩摩藩とイギリス)グラバーですからね。

そして岩倉具視は昔は佐幕で徳川寄りの公家でしたが、蟄居時代に大久保利通と通じてますし。

まあ偽物でなくても、朝廷全体の本意とは程遠いと思います。


「とにかく戦争を起したい」(薩摩)


「絶対に幕府が勝てるのに惰弱が」(小栗を中心とした幕府)


双方が暗躍し、滅茶苦茶なことになります。




こういう流れで、この混乱を抑えるため慶喜は11月19日に征夷大将軍辞職を願い出ます。

朝廷は却下。

どうすればよいと...



坂本龍馬は1867年12月10日に暗殺。

大政奉還の裏切りで双方とも憎まれていましたが、西郷隆盛の黒幕説は薄いかなぁ。

所詮は薩摩にとっては小物だし、やる前ならともかくやっちゃった後はどうにもなりませんでしたしね。

そもそも大政奉還は、たとえ「失敗する」を前提に動いていたとしてもやっちゃうこと自体は反対してませんしね。

むしろ憎しみは「将軍様を騙した」という言い分の幕府側の方が多いような。。。

まあ真実はわかりません。

大政奉還は、戦争を望まない人以外の誰もが迷惑と考えていた所業だったということはわかりましたが。




1868年1月3日、王政復古の大号令で幕府の廃止を明言

1868年1月16日、朝廷は徳川慶喜を太政として継続を明言


なんかもう精神分裂症のご様子。


幕府を潰したい、

幕府を継続させたい、

新しい日本を作りたい、


いろいろ望みはありましたがビジョンはなかったのでしょうね。

ぐっちゃぐちゃになります。




そして海外との外交は相変わらず。

アメリカ・イギリス・フランス・オランダ・イタリア・プロイセンの6ヶ国公使と大坂城で会談したのは幕府で将軍です。

外交も混乱し、嫌気がさして、「王政復古の大号令撤回しろ」が議題。

もちろんイギリス政府もです。




まるで誰がプレイヤーかもわからないまま、日本政府?、幕府?討幕軍?はまるで精神分裂症みたいな結果を吐き散らします。

そしてそのような状態を横目で見ながら、何としてでも戦争を起したかった西郷隆盛は極悪非道な所業をします。



西郷の意を受けた相楽総三が尊皇攘夷論者のテロリストたちを江戸の薩摩藩邸に招き入れます。

そして彼らを京に送り、放火、掠奪、暴行、犯罪行為をたっぷり行います。

警護をしていた庄内藩は数々の犯罪者を匿う薩摩藩邸に犯人引き渡しを要求、薩摩拒否。

痺れを切らした庄内藩が討ち入り、その混乱で浪士たちが放火、結果的に薩摩邸は焼失しました。


ひでぇ謀略。

こうなると西郷隆盛が正義の志士とはとても見えませんね。


幕府はこれにより京を封鎖、

朝廷は討薩を号令、幕府軍は進軍を開始。


一方でその規模さにびびり、朝廷は旧幕府軍の入京を避けるために薩摩に徳川征討を号令。


まあ狙ったものとはいえ無茶苦茶ですね。

この鳥羽伏見の戦いを機に、薩摩のもくろみ通り、内戦が始まります。

明治維新は長すぎて、江戸時代全期間のバランスと比べて中身が濃すぎて書こうかどうか迷ったんですよ。

みんなも知ってるし、別に世間の書物と比べて面白いわけでもないし..


案の定、まだおわらない。


...もうそろそろ終わらせたいです。

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