僕はAppleのiPodより性能の良いMP3プレーヤーを作ってたんだぜ?
さて、動力の発達を語った後は冶金でしょうかね?
冶金と言うより材料という方が良いかもしれません。
鉄が様々な工作が出来る、丈夫で軽いものが出来る、様々な性質なものが出来る、それだけでそれを使っている製品が格段に向上します。
どころか製品の可能性はまず材料から。
たとえば任天堂DS,iPhone、そういったタッチパネル、あるいは滑らせて操作するインターフェースは、まずタッチパネルが子供の玩具に使えるほど安価になること、二点以上の指の動きがセンシングできる技術があること、それが大前提です。
小さな小さなスマホも、その電子機器の集積度、電池の持ち、そういったプリミティブな技術があってこそです。
蒸気機関なんてギリシャ時代から考案されていたのです。
それを製品と出来るかどうかはアイデアではなく、蒸気を押し込める材料があるか、その大馬力を受け止める材料があるか、それが安価で簡単に作れるのか、そういうものがないと製品化はなされません。
パッキンのゴム一つ、希少金属ではない材料で作れる集積回路、熱を遮断したり伝導できる金属、こういった土台となる技術となるものがあって実現の可能性が生まれます。
もちろん、逆の理屈もあるのですけどね。
私の前々職の会社でよく聞いた言葉。
「僕はAppleのiPodより性能の良いMP3プレーヤーを作ってたんだぜ?」
「ああいう先進的なものは我が社が開発すべきものだった。技術は我が社の方が高い」
「我が社の方が薄く作れる、我が社の方が音質良く作れる、我が社の方が丈夫に作れる、なぜユーザーは我が社を選択しないのか?」
もちろんそれは間抜けの代名詞です。
実際、いまや懐かしいiPodはマーケティングや商品企画のお勉強で良く出てきます。
「なぜ売れたのですか?」
もちろん正解などありません。
マッキントッシュとの親和性。
四大レーベルを落として、まさに手元で操作するだけで音楽をダウンロードできる仕組み
ダウンロードソフトウェアの出来の善さ
MACユーザの延長のイメージ戦略
いろいろな意見を出させて企画の神髄を知るとかよくある教育。
ただ、上のように1mm薄かったから売れたとか、音質が良いから売れたなんて意見は一つも出ません。
当たり前ですね。
一体誰が、多数決で決めた製品、無難な製品、1mmだけ薄い夢のない製品を買うのやら。
一方で「これが売れる保証があるのかね?」「誰が責任を取るのだね?」
こんなマイナス評価が基準な言葉が飛び交っている会社では永遠に作れないでしょう。
ちなみにそういった老害は「ベータ」が「VHS」に負けた理由とかも巻き戻しが遅かったからとかとんちんかんなこと言いますね。
もちろん、そんな高速早送り、高速巻き戻しの機能が付加するしないの時点では決定的に負けたてたときです。
その老害に呑み屋で絡まれたとき、私は薄笑いをして無視しました。
#そういえば懐かしい。
昔は録画ってテープだったんですよ。
娘はなんで「巻き」もどすのかわかってませんでした。
MDとDVDの違いもさっぱり理解できません。
ちなみにもし企画の仕事になったら、一度は外に出ることをおすすめします。
私は娘をつれて、それをネタに(会社名隠したまま「ナンパじゃないよ?無害なおっさんだよ?」をアピールするため)何十人もいろいろな人からインタビューしましたが。
10年前の女子高生のiPodのイメージ=変な人が持っていて気持ち悪い
(確かに日本のマッキントッシュユーザーは背広着た職業の人ではないですね)
10年前の女子高生のVAIOのイメージ=はげの汚らしそうなおっさんが持っているパソコン
すでに10年前の話、今となっては何ですがなかなかにショックを受けました。
世界中で暇なときにそれをやるといろいろ発見が出来ます。
・給料の2/3が携帯電話代だったタイ人のカップル
・iPodより安く、かっこ良く、とっても売れているアフリカの携帯音楽プレーヤー、やっすいメモリーに著作権まる無視で7000曲のデータを予め入れておくすごいお得なやつ
。。。話を戻します。
ま、なんにせよ材料や加工、集積といったプリミティブな技術の発達が出来る/出来ないの門戸が開く、でも本当に出来るかは工夫次第は18世紀でも21世紀でも違いありません。
ということで、「材料」という産業革命後の技術のブレイクスルーをご紹介しましょうか。
やはり一番顕著なのが「鉄」です。
古代から、というか宇宙の始まりビッグバンが起こってから鉄は加工材として有用なものになるのはわかりきっていました。
なにせエネルギー極大、質量0のなにかが大爆発して宇宙が出来上がったとき、その核融合で変質した元素の大抵のなれの果ては「鉄」「Fe」までなのです。
それ以上の元素は核融合おこしても存在率は低いのです。
太陽も地球も、押しつぶされた中心のほとんどは「鉄」の芯。
それ以上の核融合でできた元素はいくらもありません。
人間の血液が鉄である理由は伊達ではありません。
そこら中にあるからです。
しかも地表の鉱床がそこら中にある理由も同じく。
「金」「銀」のように地球のマグマで遠心分離機の用に分離され、機会をみて噴出とかだけの稀少な鉱床ではないのです。
生物にそこら中に取り込まれているので、それが堆積し、集積し、石油や石炭と同じように古代の生物のなれの果ての鉱床が鉄鉱石の産地だったりする。
いろんな元素と親和性が良く、組み合わされているので更に存在率も高いし。
そんな金属なので、ヒッタイトからこの方、武器=鉄というくらいのメジャーな金属です。
しかし、産業革命後は大きく変わりました。
基本的な作業は変わりません。
同じような高炉を使い、炭素の高熱で溶かし、還元し、圧延して鋼を作る。
同時に燃料でもある石炭(炭素)を自由に駆使する環境も出来たので、とんでもなく変質しました。
まず、石炭を燃料として大量に扱うようになり、様々に加工もなされました。
その一つ、コークスが製鉄にとても大きく役に立ったのです。
昔ながらの木炭ではなく石炭から不純物を取り出したコークスは、木を何日も蒸して精錬した木炭より安くて大量に手に入ります。
ちなみにコークス自体はかなり古くからある中国の技術です。
使う環境があったかどうかは別にして中国ってすごいですね。
そして大量の石炭から作ったコークスと鉄鉱石は、従来と同じような高炉を使って精錬しますが、「ふいご」「輸送」「転炉」「攪拌」様々なものは蒸気機関で機械化し、人力では比較にならないほど効率よく、低コストで製鉄できます。
そもそも排水ポンプ、トロッコ、エレベータ、鉄と蒸気機関が発達すれば、石炭、鉄鉱石の採石も楽になり、そのおかげで更に発展し、更に採炭が楽になり、そういった良い感じのスパイラルが出来上がってます。
いつのまにヨーロッパで一番安い加工製品が「鉄」、さらにいつのまに世界で一番安い加工製品は鉄、東洋の手作りの木の箸より、金属のフォーク、スプーン、ナイフの方がよっぽど安くなりました。
更にコークスを扱うようになり、炭素を可変させて様々な鉄を作れるようになりました。
炭素含有量を減らして、圧延しまくって堅くした鋼鉄は刃物から帆柱、建材まで幅広く使われるようになります。
古くからあるヨーロッパの加工技術「錠前」と、鉄の固さや粘りを変えるコークスの研究、フランスがやったまさに科学の一つである「規格(ISO)」で、様々な粘り、ピッチの「ばね」は馬車や鉄道だけでなく、様々な機械に使われ、振動その他のコントロールで小型化、乗り心地、動作可用性を高めます。
バネ自体も古くからあるんですけどね。
しかし製品毎手作りではなく、部品として大量生産し、それに合わせて製品を設計する環境は「規格」を発達させたヨーロッパならではです。
ベアリングなんかも大きな役割が。
高炭素クロム鋼の同じ大きさの鉄球をつくり、それにあった軸受けにうめこむ、機械油とともに回転させるボールベアリングはどれだけ世界に貢献したでしょうか。
更に鉄が身近になることで様々な合金が作られます。
鉄を切る刃「工具鋼」は様々な加工が出来るようになります。
耐摩耗性の強い「高マンガン鋼」は機械の寿命や建築物の寿命を延ばします。
「ステンレス」は錆びない鉄として台所用品、鉄道、様々な用途で使われてますね。
「タングステン鋼」は熱耐性につよく、そもそも電球フィラメントとか有名ですか。
磁気が強いもの、柔らかいもの、とっても堅くてもろいもの、マンガン、モリブデン、いろいろな合金が出来上がります。
そして工具鋼といったあらたな合金が新たな製品を作ります。
「鋼管」「ピアノ線」「メッキ製品」とか。
鋼管は水道、下水道、衛生の発展で、想像以上に人間の生存に大きく寄与したと思います。
鉄を掘る鉄のドリルでこういったものが作れるようになりました。
ピアノ線は、まさにピアノそのもの音をよくするための真円の丈夫な線ですが、ピアノ線がピアノのために作った鋼線だったことはみんな忘れるくらい色々なものに使われてますね。
またピアノも昔からありますが、ヨーロッパの楽器としてメジャーになったのはまさにこの「ピアノ線」のおかげ
メッキは耐腐食性ともに、装飾その他にも大きく寄与しますね。
セレブな人達は本物の装飾品や時計をX千万円、X億円で購入し、そのダミーをパーティーでつけてきます。
そしてそのダミーの出来の良さ、職人の腕で後年、本物並みに値段がついたりして。
いろいろな使われ方があるモノです。
鉄以外。。。アルミは本格的なものは20世紀ですね。この発展は電気が必要なので。
ガラスなんかとっても科学の発展に寄与してます。
もちろん窓ガラスがヨーロッパでメジャーになるのは一瞬でしたが、たとえば望遠鏡、顕微鏡はガラスの性能がとっても寄与します。
工芸品、装飾品もガラスが占める率は高いですね。
ヴェネチアガラス職人は大変、というかヴェネチアガラス職人はガラス職人で19世紀以降たくさん芸術品を作りました。
あと後年ビニルハウスになる「温室」「ガラス室」「水晶農場」。
蒸気ボイラーと併用して、ガラスで季節外れの高価な作物を作ることで金持ちの道楽を加速させます。
温室は農業の研究にも便利ですし。
ゴム。
コロンブスがなした数少ない偉業の一つ。
ま、私はタバコ吸うので「コロンブスさん、人より2倍ありがとう。」
窓枠やパッキン、緩衝材、食べ物、いろいろと利用できますが、一番の寄与はタイヤですね。
ゴムの分子式がわかり、合成等が出来るようになってチューブとして使えるようになって出来たのが「ミシュランタイヤ」です。
ゴムと空気で緩衝し、さらにスプリングで作ったサスペンションは乗り物にさぞかし寄与したことでしょう。
アスファルト
ロックアスファルト鉱山の技師M.Merianさんが運搬中に荷車からこぼれたアスファルトのかけらが荷車で粉砕、固められて良好な路面になっていることで発明しました。
日本はしょっちゅう年度末に道路工事するので一番お世話になってますかね。
セメント(=モルタル、コンクリート)
別にローマ時代から使われています。
そもそもローマのコンクリはとっても優れた建材ですし。
ただ石灰その他材料を入れてポチンとボタン押すだけで蒸気機関がジャカジャカ作ってくれます。
とっても安く作れますね。
これは大量生産の煉瓦で作る家の隙間を埋める需要から始まってます。
石材がないヨーロッパで石造りの家がメジャーになった一助がこちら。
しかし水硬性モルタルの発見で水関係の土木にも使えるようになった、高炉セメントで耐久性も硬さも丈夫になったとかいろいろ発展します。
フランスで、鉄柵にコンクリを塗りつけることによる、コンクリの硬さ、鉄の粘り強さを併せ持った「鉄筋コンクリート」を発明することで、そもそも煉瓦もいらない建材としてもメジャーになりました。
というかこれ以降は大型建築もこちらにお任せ状態の偉大な発明です。
道路、トンネル、ダム、堤防、地形を変えるような建築物はコンクリートのおかげ。
本格的な使用は20世紀ですが、19世紀に様々な発明、考案、企画がなされています。
スエズ運河とかは19世紀。
奴隷労働だったとかイギリスのエジプトの搾取とか色々あったようですけどね。
まあそんな感じでいろいろな素材がヨーロッパの技術や建物、町並みが変わっていきました。
たとえばヨーロッパ各地を旅する機会があったら、道路に注目してみるのも良いかもしれません。
日本のように、道路公団や地方の工事業者が癒着して意地のように税金を食い潰しているのと違い、歴史的な試行錯誤、様々な試み、産業革命後の発展の道筋とか如実に出ています。
建物と違って長く使うものですし、日本のように画一的なものでもないですしね。
(そのかわりとっても品質は悪いですが)
石畳、煉瓦にコンクリ、コンクリ、アスファルト、たとえばアスファルトが出来る前につくっちゃった古い石畳の道とか、まだタイヤがないうちに舗装したコンクリの道(コンクリートはゴムタイヤを痛めるので)、一瞬だけ舗装してほっとかれてるヒビわれ舗装道は先にも街があったからでしょうか、広大な麦畑に一本だけ通じている半石畳、半アスファルトの道とか。
その製法と時代、舗装時期、材料でヨーロッパの町並みがどのように出来たか想像するのもおつかも。
ブラタモリは道筋とか丘、坂道とかで面白いですが、ヨーロッパは道の材質で歴史を楽しめます。




