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人間の歴史。  作者: TAK
科学の発展
102/176

風力が役に立つのは「風の谷」くらい

18世紀からの科学の発達。


我々が考える「文明」「科学」をイメージするほとんどは、実は18-19世紀で出来てます。

もちろん普通の歴史書に書いてある「初めてのXX」と書いてあるモノ、それは正しい。


ただそれは「最初」に作られた、考案されただけ。

生活に密着し、我々はボタン一つで何か出来る仕組みというのは「工業化」という道程をたどって、ようやく電気屋や自動車屋で手に入れることが出来たのです。

それまでは上位何パーセントの貴重なモノ。

とっても生活用品ではありませんでした。



どころか馬車、帆船、家畜、我々がイメージする田畑、紙や食器一つとっても、その姿形、構造、使われ方は、それが作られた時、18世紀、現代は全く異なるモノです。


馬車や幌馬車、インディアンと戦う映画で良く出てくる奴、あのほとんどはあんなかっこ良いものではありません。

時代に照らすと、当時はリアカーに毛が生えた、というか毛が抜けたような貧相なもので、サスペンションなどまともなモノはなく一部を除けば連結に金属が使えるようなものではなく、紐でがんじがらめにしてあるもの。

幌なんて貴重品はもってのほか。

引いている馬も、我々が考えるかっこ良いサラブレット、あるいはポニー、あるいは北海道にいるような130cm程のちっちゃな蒙古系馬でさえ贅沢な馬格、17世紀でもかなり貧相なモノです。

 #まして日本なんてポニーよりちっちゃい


帆船も立派な「帆」、帆を何本も連ねたマスト、接続金具、ワイヤー、全部が産業革命後。

どころか絵画や映画で見るような帆船は、実は金属、金属で加工した質の高い材木をつかったもの。

よーするに後年でのそれっぽい想像図がほとんどです。

あれは産業革命前後の、どころか20世紀に食い込むあたりの知識で描いたもので、「大海賊時代」とか「大航海時代」の映画のイメージする帆船はずーっと後のもの、時代に合わせるととっても貧相なモノです。

ネルソン提督はたった3-400トンの小舟の船長です。


家畜だって同じく。

もちろん牛、馬、ロバ、水牛を農耕に使ったのはずーっと前。

しかしそれはよほどの大規模農場でないと割に合いません。

ほとんどの田畑は農奴か奴隷か、小作か、人力の方がコストが安いのです。

そもそも家畜のためだけに餌を作るのはとんでもないコストです。

一番安いのは人間です。


紙だって量産するまでは一苦労。

人の手で量産しやすくした日本の和紙(それでも職人が多いからできる)、広大な領土で水車を動力とする工場らしきモノを建てれた中国、そういった限定された国以外は紙は貴重品。

図書館なんて19世紀もかなり後半。

パピルス、羊皮紙、紙は随分前の偉大な発明品と言われていますが、だからといって鼻紙に使えるようなお気楽なものと出来たのは、19世紀でも日本と中国くらい。


パスタはほとんどの時間、手づかみで食べるものでした。

今の100円ショップで売ってる茶碗さえも貴重品、テーブルにくぼみを作ってそれを食べるような不衛生な食生活がほとんど。

それでも東洋は「箸」という稀代の人の命を救った発明で、多少でも衛生的な生活が出来ました。

イスラムやインドのように、宗教的な制限で不衛生な食生活を避けたところもあります。

が、まずそれ以外の庶民の食事は手づかみ、手洗いなしの不衛生なもの。


得意げに文化人を気取っている人が呑む葡萄酒も同じく。

あれは飲料水の代わりです。

痩せた地でも育つブドウを搾って発酵させたものが、数少ない衛生的な飲料水だったのです。

そして身分お高いモノはアルコールが入ったましなモノ。。。それでも1000円以下の安物ワインより酷いモノですが、庶民はほとんどアルコールが入っていない粕汁。

それを考えるとセレブ気取りの過去の遺物な女優が、スキマなテレビ番組でヨーロッパ旅行し、得意げにワインを語る姿をみるとおかしみを感じます。

まあそんなのが実際の歴史だったりするです。

ローマ時代は現代の水道より綺麗で美味しい水が縦横無尽に届いていたのにね。


しかし18世紀になると大きく変わる。

なんやかんやで我々のイメージするものと近いものが次々と出来上がります。

直接的に現代の生活につながる綺麗な技術はここら辺からです。

いままでご神託か、貴重品か、上流者がイベントでしか使わないものが、一気に庶民が目につくものになったのです。

ヨーロッパが必死に作り上げた「科学」、整理された知識の体系が大いに芽吹いた時期と言うことなのでしょう。




さて、どう言うものをご紹介すべきか...

まずは「動力」でしょうか。

なにしろ蒸気機関があって初めて工業化が成り立ったわけですから。


もちろん、蒸気機関は実にギリシャ時代から考案されていたものです。

ただ、


その燃料がどこから手に入るのか?


何のために必要なの?


作るのは安いの?


となるとなかなか全てのニーズに応えられません。




石炭や石油が気楽に採れるとこと、

その文明圏でそれを使いこなせるような商品ニーズや自動XXといった工作技術があるかどうか、

そして金属製でなければ難しいでしょうし、そのコストは冶金が稚拙な古代や中世ではなかなかに高そうです。


もちろん蒸気機関だけが動力だけではありません。

水力なんかは古代から続く、世界中で使われたメジャーな動力です。

12世紀頃とか製紙工場、織物工場の動力として中国が使いこなしてました。

しかしそれだけですね。

都合の良いところに河川があって、都合の良いところに大量生産が必要な商品を必要とする文明の場所があって、工作技術が高いところは限定されます。

中国以外の水車は、灌漑ポンプ、挽き臼といった農作物の加工、メジャーではあるものの一次産業に派生した限定的なニーズでしか使ってません。

現代でもメジャーな動力ではありますが、湖を作るといった人工衛星で確認できるような巨大な土木作業である水力発電所は、コンクリ、鉄筋、発電機、変電所、送電線、整備機械、土木作業や材料を送り込む輸送機器、自動化システム、物質文明の最先端な技術を使った産業革命後の産物です。



風力なんかはメジャーとまでは行きませんが、それなり先進国では使われてます。

なにしろ水がなくても使える古代の数少ない動力。

河川から遠い丘の上とかの灌漑とかとっても有効そうです。

実際有効でした。


しかし安定動力は「風の谷」くらいでしか期待できません。

オランダ風車も、建てたは良いが一瞬で廃れて蒸気機関になってしまいました。

現代でも同じくですね。

流行して何十年たっても「役立ったなぁ」というまともなデータが返ってきません。

ディーゼルはクリーンとか嘘ついてたドイツも「良い」「使える」というおバカな子供の返答みたいな下らないレポートしかないですね。

で、こそっとフランスの原子力発電所から電力を購入すると。

だっせぇ。


山間部といった別な理由でのニーズで役立っていますが、メジャーな動力としては病気みたいに「クリーン」とか言い続ける人へのプラシーボ効果しかメリットなさそうです。

電力会社にとって、自然エネルギー信者は狂人やクレーマーに縋り付かられたような恐怖な存在のようです。

もちろん、きちんと考えている工学博士な人は別ですよ?

とも言い切れないか。

バックに政治家つけた、とっても政治的な技術者は面倒だそうで。

ちなみに電力自由化で電力会社が立ち上がっても、みんな火力発電所になるのが笑える。

JRでさえギリ水力。

偉そうにクリーンといってた連中はどこにいったのでしょうか?

現実ってこんなもので。




まあそんな感じで蒸気機関以外の動力は限定的、蒸気機関自体はイギリスの産業革命で初めて「燃料」「ニーズ」「工作技術」が結びついたものと言えましょう。

特徴は=外燃機関と考えて良いものなので、長所も欠点も同じです。




長所


大動力が得やすい、というかそれ以外の機関は大動力がつらい。大型ディーゼルエンジンとか悪夢です。

船舶のディーゼルエンジンとかどんだけごついクランクシャフトを使っているかわかります?

そしてそんな丈夫なのに容赦なく折れる。


燃料がいい加減で良い。


なんせ燃やして水を沸騰させて蒸気にすれば良いわけですから。

原子力発電所を蒸気機関といって良いかわかりませんが、安い重油でもOKです。木炭でもOK。ゴミでもOK。というか最近のゴミ焼却場は風呂屋と火力発電を細々と兼業しているようですね。

地熱発電もある種の外燃機関です。

燃えている場所が地下のマグマというのがあれですが。


地熱発電、実績もノウハウもあるのに日本ではマイナーです。

なんか昔は温泉街の景観を壊すからだとか何とか。

現代の今更なひなびた温泉でも手つかずのようですね。

こういうときに老害と一票の格差の問題を感じますね。

私も半分は地方に住んでますが、どうでも良い寄生虫な連中多いですよ?

廃村寸前なのに偉ぶってるじじいとか。

地熱発電は進んでいるのに採用されない理由は利権がらみでしょう。

国民のエネルギー問題より、温泉利権の爺ややーさんに口利きされた人達の一票の方が政治家にとって大事。

爺ややーさんは誉めてくれるし場合によってはお金をくれるけど、国民の皆さんは誉めてくれないどころか「俺ならもっとうまくやれた」とか貶されるだけですし。




短所


効率がとっても悪い。

まあそもそもエネルギーの取り出しを熱を媒介にする時点でもう。

大抵の機械は「熱」と「振動」の処理と言うぐらい設計には邪魔で、できれば抑えたいものなのに、それを使っている時点で効率の悪さを感じます。

スターリングエンジンとか一番効率が良いとか言ってますが、所詮は熱機関。

面倒がかかる割にたいして効率よくならないので何度も復活しますがマイナーです。



でかい。


炉だかボイラーだかわかりませんが、エネルギーを取り出す=じゃんじゃん燃やす場所と、それを運動エネルギーに変えるピストンタービンだかの場所がまず別ですしね。

で、燃やす割に冷やしたりしなきゃだし、出力のコントロールが二カ所以上だし、排煙処理とかも必要だし、整備とか燃料を置く場所とか考えるとどんどん大きくなります。






まあこんな感じが特徴ですので、最初のメジャーなワットの蒸気機関は巨大で遅い、効率が悪い、ここからの発展は小型化と大出力化、効率化の方向でしょうか。


とくに出力は重要な要素で、出来た途端に新しい単位「馬力」が出てきました。

ボイラーの高圧化(たくさん燃やして蒸気を圧力かけて貯めていく)、圧を逃さない密閉技術、ピストン形状、色々工夫してます。


小型化についても同じく、高圧缶、機械精度、各部品の強度を高める、いろいろな方法で頑張ってます。



そして高出力になり、小型になると用途も広がります。

本当にいろいろな事に使われたので割愛しますが、蒸気船、蒸気機関車は有名ですね。

特に蒸気機関車の発展はすごいです。


陸の輸送は馬車か人力と制限ばかりだったからでしょうか。

1804年に生まれて以来恐ろしく発展し、「鉄道狂時代」という一時代を名乗られるようなすごいものでした。

イギリスは1846年には、実に272もの鉄道会社が設立されます。


アメリカは実は意外に遅いのです。

鉱山鉄道とかは古くからたくさんありましたが、旅客、貨物の輸送はイギリスほど急激ではないです。

インディアンとばんばん打ち合いをする蒸気機関車とか見てたんでびっくりです。

あれも嘘だったんだなぁ。

が、広い国土、発展は急激でした。

鉄道網 1830年はたった40マイル、1890年は163,562マイル。

4000倍以上ですな。




蒸気船については、まずは河川/沿岸/港湾用の外輪船が最初のメジャーなものですかね。

風任せでは支障が大きいことからです。

定期便、狭い場所でも大丈夫、小回りが利く、高速、一定範囲や決まった場所なら給炭所をたくさん作らなくて済む。

メリットたくさん。

アヘン戦争の時、喫水の浅い蒸気船で揚子江や黄河を駆け上り、ばかばかサンパンを沈み倒して中国を青ざめさせました。

まさに蒸気船のメリット。


あと帆船が産業革命のおかげでどんどん高速になり、お金のかかる動力船はいまいち本流にはなれませんでした。

こちらは本格的なのは20世紀になってから。



あと動力としてメジャーなのは内燃機関。

燃焼室で爆発させ、その運動エネルギーをピストンなりタービンなりで受け止める奴ですね。

かなり前からありました。

あ、ちなみにロケットは燃焼室で火薬を爆発してその運動エネルギーで飛ぶので内燃機関です。

10世紀より前からある中国の奴も含まれますが、さすがにこれは無視しますね。


特徴はまんま外燃機関の逆。





メリット


効率が良い。

いまでもガソリンエンジン、ディーゼルエンジンはとっても効率よいです。

爆発=急激に燃料を酸化膨張させる運動エネルギーは大出力だしとっても効率よいです。

運動エネルギーをそのまま使えば良いし。


小さい

部品点数は少ないわ、爆発の運動エネルギーをそのまま取り出せば良いわ、小型化に最適です。

私の子供の頃、ラジコンは内燃機関でしたがまだあるんですかね?



デメリット


大出力が大変。

たくさん爆発を受け止めなきゃならない。

燃焼室が大きくなると爆発が伝播が大変になる。

その爆発を全部一軸に集める必要がある。

曲がったクランク、タービンその他、燃料圧縮するため、運動エネルギーを取り出すために強度に問題が出る部品が多い。


燃料選ぶ。

なにせ爆発する条件を作らなければなりませんから。少なくとも石炭や重油は爆発しませんね。




1801年にすでに2ストロークの特許があります。

しかし、しばらくは農業用の小型エンジンくらいでいまいちメジャーな動力ではありませんでした。

なにせ燃料がアルコールでしたから。

しかし、馬車に変わる乗り物という欲求はすごいのでしょうね。


鉄道に比べて自動車は、蒸気自動車とかいろいろ試みましたが大変でした。

さすがにでかすぎる。

バスとか大型車はそれなりの用途で使われてたんですがね。

1900年あたりは蒸気自動車の方がメジャー。


ガソリン自動車も作られましたが、まだまだマイナーな燃料、最初はダイムラーベンツはいまいちでした。

そんな中、まだまだアルコールなのにその欲求に答えるようにフォード社がT型フォードを作ります。

販売実績1500万台。

すげぇ。

燃料はアルコールです。

どう使ったんですかね?

あまり今の自動車のような実用性はなさそうです。


しかし、これがきっかけで将来を見込み、ガソリンが大量に作られるようになります。

1884年にはアメリカ合衆国全体の石油精製能力の77%、石油販売シェアは80-85%。

まだまだマイナー燃料ですが、アメリカが世界一の油田国になり、ガソリン車がメジャーな動力で乗り物になるのはここら辺が皓歯でしょう。


20世紀が石油の世紀になるきっかけがこれです。


まずは動力の話でした。

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