はじめに
歴史というのは何だろうか?
と最近考え始めている。
子供の頃はずいぶんと単純だった。
人間がサルから進化し、文明が発達し、国が出来、縄文時代があって、聖徳太子がいて、武士がいて、戦国時代になって、維新になって、近代化して...
まあそういうものだろうで終わっていた。大河ドラマもあったし。
世界史というものはそれと別物である。
が、なんとなくそういうものですませていた。
やっぱりサルで、そのうち4大文明ができて、エジプトがあってローマがあって、ヨーロッパが近代で、日本史とのつながりは明治維新っぽい感じ?
年表も覚えさせられたがそれだけである。その関係性もよくわからない。
「ルター」「宗教改革」
教師にひつこく覚えさせられたが「宗教が変わった」「へー」以外に感想はなかった気がする。
エジプトでは鞭でリーダーが石を運ぶ奴隷をぴしぴし叩いて、インディアンが馬に乗って銃を持って白人の軍人を襲い、あんまり疑問に思わなかった。
年表はあくまで数字だし、キリスト教がなにかもしらない。
エジプト人は映画でしかみたことないし、インディアンは昔のアメリカの人以外なにも知識がなかった。
何か自分には一生わからない理屈でそうなった、理解できないからそういうものだと納得するしかない。それで終わりである。
でも大人になるといろいろ知識が集まる。
いろいろな仕事をこなしていくとわかることがどんどん増えていく。
最初は公務員で研究職だった。
数値風洞という。ロケットを飛ばす...ただしコンピュータの中で。
衝撃、熱、分子、重力、いろいろな計算式にあてはめると、数式があって現実があるのではなく、現実を数式に当てはめるだけだった。
似たような式なのは当たり前だ。
くっつくか、離れるか、動くか、止まるか、式の出来た理屈はとっても偉い人がたくさん研究して作ったのだろう。
でも使う側が知りたい事は単純だ。
理論が何であろうが、とっても単純なものを、とっても単純に集めて、結果的に複雑な計算式になるだけだ。
次は警備会社に勤めた。夜が苦手ではないのでのんべんだらりと暮らした。
そしてその経験で警備システムを作る。
人間が侵入するということはどういうことだろう?
犯罪者を捕まえるために人をよこすということはどういうことだろう?
機械を作るということは、いろいろな現実を単純化する作業だ。
人を体温と考えるか、振動と考えるか、光を遮る物体と考えるか、一定の形の物体と考えるか。
警報機は複雑なことはしない。
温度計?振動感知?光センサ?映すカメラ?
高価で複雑なものなど必要ない。目的が決まれば単純な機械で充分だ。
コンピュータ会社に勤めた。1000万円もするルーターを開発した。
いまの3000円のルーターと理屈は同じだ。
メモリも処理装置も性能が高いから今の方が複雑かもしれない。
でも単純な理屈で動いている。
安くちちゃくなったのは数の暴力と他技術がメインだ。
軍人にもなった。
今はボタン一つで地球の裏側に爆発物を飛ばせる。
でも昔のアフリカ人が300m先に槍を飛ばす行為と大して理屈は変わっていない。
小っちゃくなった、大きくなった、細かくなった、大ざっぱになった、
こんな理屈の積み重ねである。
経理システムから工場システム、Webサイト、ICカード、テレビ、放送機器、いろいろなものをつくったが、どれも単純な理屈を複雑な組み合わせで何とかするものばかりだった。
みんなもその道のプロになったら、その分野で同じことを感じているだろう。
世の中は単純な理屈で動いている。複雑なのは組み合わせだ。
そういう大人になって改めて歴史を考えるきっかけになったのはNHKだったか...テレビ番組をみたからである。
古事記という文学があって、卑弥呼がいて、古代日本があって、金印が届けられて、魏志倭人伝....
あれ?
「魏」って聞いたことあるな?
「古代」ってどういう意味だっけ?
なんで自分のリーダーを「卑」という卑しい漢字をつかうのだろう?
まだ日本が「古代」という意味不明の総称で動いている時、中国は「三国志」という神話ではない軍記物があるという違和感。
日本はイザナギだかアマテラスだかの神話でしか語られない時代に中国は軍事史があるという事実、そしてローマはあるけどベルギーだのフランスだのイギリスだのはかけらも存在しない。
ロシアのはずの台地には中国人っぽい名前の人達が跳梁跋扈している。
「なんかひとつひとつは独立した物語で、接点などないし、自分のわからない理屈でなんか歴史は進んでいったのだろう」
と思いこんでいた今までと違って、
もしか世界は一体となって動いていたのではないだろうか、
人間も実は単純な理屈が集まって、それを覗き見するだけだから「わからないもの」と納得しただけではないだろうか?
単純なものの積み重ねなだけで、それがたくさんあるから複雑なだけではないだろうか?
私は歴史学者からほど遠い。
どころか今までの職はそこから一番遠い職ばかりである。
学問としての歴史など興味はない。
ただ凝り性な私は、その人間が歩んできた「単純な理屈」というものを探しただけだ。
それが随分と集まってしまった。
だからもったいないので備忘録替わりにここに集めてみようと思い始めた。
人間は単純な理屈で集まっていた。
と思う。
もしか私が浅はかで実は複雑な理由があるかもしれない。
いや、きっとそうだ。
でも私は歴史の複雑な何かを知りたかったわけではない。
私がいまここにいるという理由を、私がわかる単純な事実だけをかき集めて納得したいだけだ。
だから複雑なことは歴史学者や専門家に任せて、いろいろ詳細な歴史ではなく「人間の」歴史としてつらつらと書いていこうと思う。