表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

VOL.8

「ねぇ……セシル。なんだかあちらが騒がしくない……?」

「んー? そうかなぁ?」

現在、こっそりテーブルから取ったクッキーを試食中。

何でライア様達は食べないんだろう? と思うくらいの美味しさだった。

「今私は、このクッキー以外どーでもいい!」

「セシル……。これはね、いわばお飾り……。『淑女が他人様ひとさまの前で何かを食べるなんてはしたない』、これが暗黙のルールだから……」

「えぇ!? こんなに美味しいのに、もったいないよ。見た目だって綺麗だよ?」

薔薇の形が忠実に再現され、仄かに桃色に色づいているコレは、もう芸術の域。

「淑女だって、食べるでしょう? 見えない所で。だったらいいじゃない! お菓子職人さん達が泣くよ?」

ていうか、紹介してくれないかな? 弟子入りしたいんだけど!

「何を騒いでいるんだ? こんな所に隠れて!」

「殿下! 申し訳ありません……」

ゲッ! 現れやがった!

慌てて頬を染めて立ち上がった、トレニアの陰に隠れる。

「おい、それで隠れたつもりか?」

うぅ……。ずっと屈んでいて分からなかっただけで、トレニアは私より頭一つ分ほど背が低かった。私は女にしては背が高いけれど、トレニアは小柄だと思う。

「え、えっと……。私は空気だと思ってください」

「何言ってんだお前」

冷たい目で見ないでぇっ、流石に傷つく! ああっ、トレニアまで!?

「それよりお前、さっきまでクッキーを貪り食ってたよな? そんなに食ってると……太るぞ」

「た、確かに……。同じクッキーを何枚も何枚も食べて……飽きないのかな、とは思ってた……」

イヤ……W精神攻撃……効くわぁー……。特に、カイ様の『そんなに食ってると』と『太るぞ』のワザワサ゛空けた間……。

「まぁいい。トレニア、後で話がある。公務が一段落したら部屋に向かうから、待っておけ」

「はっ、はい……。嬉しいです……!」

「嬉しい? 何故だ?」

キョトンとした顔をするカイ様。あれ、手慣れていると思いきや意外と鈍感?

「あっ、そろそろお開きですか!?」

「いや、違うだろう。時間が合わないからトレニアは退場させるが、基本ライア達は日が暮れるまで話し込んでいるからな」

「私、一緒に退場します」

2人のお邪魔はしないから!! お願い! 孤立無援はちょっと……!!

「あーあー、またライアのやっかみか? アイツは根はいい奴なんだ、許してやってくれ」

イケメンスマイルを向けてきても無駄ですよ、それはモテる人のヨユウでしょ?

「殿下……お時間がありません……」

「そうだな。おい、お前」

カイ様の首がグリンと回転して、こちらを向く。

「トレニアの後ろをしっかりついて行け。これで大丈夫だ。ああ、ドレスの皺は直しておけ」

言われたとおりに皺を直し、歩き始めたトレニアの後ろをついて行く。

トレニアはカイ様の斜め後ろを歩いていて、さながら私は付属品。

庭を抜け出すと、ワザと自室に行くには遠回りになる道を選ぶ。

「じゃあ、お二人でごゆっくり! 私はこちらから!」

トレニアは明らかにカイ様を好いているし、私は邪魔だ。

トレニア! 私は、全面的に君を応援するよ!

とにかく一刻も早くこの場を離れようと、私は振り返らずに歩き去った。



「セシル様。トレニア様が伺われております」

「あぁ、お茶会で仲良くなったんだ。通してください。ありがとう、ルリカさん」

今まで読んでいた魔導書から顔を上げて、背伸びを一つ。カルから送られてきたもので、今は魔導の歴史の部分を読んでいる。

寺子屋の中では本嫌いとして有名だったが、不思議と魔導書は平気らしい。

「セシル、ゴメンね……。忙しかった?」

「ううん、むしろ暇。どうしたの?」

トレニアは少し迷っていたようだったが、暫くして切り出した。

「あのね……。さっき、殿下が誘ってくださったの。城下町にお忍びで視察に行こうって」

へぇ、よかったね! それって所謂『デートのお誘い』だよっ、距離を縮める大チャンスだよっ!

「そんなの、一も二も無く行くっていえばいいじゃない!!」

「いや……そうなんだけど……」

少し俯いたトレニアは、一気に言った。

「セシルも、一緒に行って欲しいの……!」




登場人物紹介Ⅶ




トレニア・ストレミング



ストレミング男爵令嬢。但し、一応貴族とはいえ男爵。かなり貧乏である。

そんな彼女が第一王子の側室となれたのは、隣国の王族の血を引いているから。自身はよく分かっていない。

ゆったりとした喋り方をする美少女。この国では珍しい金髪のため、「金色こんじきの天使」との異名あり。


能力:外見(?)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ