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VOL.7

「まあ、あなたがセシル様? カイ様、なぜこんな田舎臭い野暮ったい子を……。いえ、何でもありませんのよ」

「は、はあ……」

カイ様と同じくらいの年かな、他の側室の中でも一際美人のお姉さんに、引きつった表情で返事を返す私。だって、絶対に聞こえるように言ってる……。

そりゃ、ここにいる他の側室の方々に比べれば、私なんてただの小娘だ。自分でもそう思う。

でも、こんなに見事な『女の暗くてドロドロとした嫌み』ってあるのか。十人に『女の陰湿な部分』イメージさせたら、十人中九人この通りになるだろ。

この他の側室の人も日々こんな戦いを展開しているのか……!? ここは女子高か!

思わず戦慄が……怖っ!

「ライア様!? そのお香水は新作ですの? とても良い香りがしますわね」

「あら、お分かりになる? 特別に作らせたましたの」

いや、平和な部分も理解できないけど。あぁ……そうなの。さっき嫌み言った人、ライアっていうの。……そうなの、プンプン香ってくるのは新作の香水なの。ふーん。

…………………………………………………………………………。

……っていうか、何で私がお茶会に!?

現実逃避している場合じゃない! ちょっとコレ無理!! 耐えられないよ、今すぐ帰りたい!

……とりあえず落ち着こう自分。このままだとライア様達に無意識になにいうか分かったもんじゃない。

深呼吸を繰り返す私に、さっきとは違うお人が。しかも、オブラードに包んでくれなかった。

「カイ様はとても美しく気高く、思慮深いお方ですわ。あなたのような者が横に立ってはいけませんの。分かっておられて?」

分かってるけどね!? こちとら無理やり側室にされたわ!! ほぼほぼ庶民の私が何でこんな事になったか教えてやろうか、代われるもんなら代わってあげたいわ!

「わ、私あそこがなぜか気になるなぁ……」

ヘラヘラとしたごまかし笑いを浮かべて言う。勿論、睨まれました。

「ちょっ、ちょっと失礼します~」

薔薇の茂みの近く。そこに逃げる。

「あなたも、なの……?」

ぎゃぁあああ!?

「ごめんなさい……。驚かせた……?」

そう言ったのは、茂みの陰にしゃがみこんだ少女。私と同い年くらい何だろうけど外見は幼い。そして、ゆるゆると首を傾げる様子がとてもかわいい。

「あ、あの……『あなたも』って……?」

「あたしと同じ、新人さんなのかなぁ……って意味……」

ようやく意味を理解して、慌てて頷く。

「そっか……あたしはトレニア。トレニア・ストレミング……。ストレミング男爵家の長女……」

男爵? 男爵って貴族の階級では一番下じゃなかった? 側室になれるの?

「あたしはね、隣国の王族の血を引いているんだ……。何か色々とあったっていうことは分かるけれど、詳しくは教えてもらえない……」

隣国の王族。きっと大変な思いをしてきたのだろう。

「殿下は優しい方なの……。あたしは所詮男爵令嬢。なんの価値もない……なのに、優しくしてくれる。あなたも知ってるように、2ヶ月後に殿下のお誕生日が来る……。その時に、正室を殿下が選ぶ。たぶん、選ばれるのはライア様だと思うんだ……。でも、優しくしてくれたら、勘違いしそうで……」

カイ様のお誕生日が2ヶ月後だったことも、その時に正室が選ばれるのも、初めて知ったけど。それを口に出すほど、私はバカじゃない。

「良いんじゃない? だって、トレニアはかわいいよ? きっとカイ様も選んでくれるよ」

そう言えば、彼女は頬をうっすらと染めて頷いた。

「うん、ありがとう……。えっと、あなたお名前は……?」

名乗っていなかった事に、初めて気づく。

「セシル。セシル・ルーシー・ヴィトン」

「ん、セシル……。よろしくね……」

そして、トレニアは大輪の花のような微笑みを見せたのだった。










登場人物紹介Ⅳ



カルハリト・ツァーニ


セシルと同じ聖女の末裔であり、王宮魔術師。更に、カイの友人でもある。

殆どの魔法を使いこなすチートな能力の持ち主。実力は折り紙付き。

柔らかい物腰とその実力、容姿で非常にモテる。だが、本人は「この人!」という心に決めた人がいるらしい。


能力:魔術



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