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第7話 海賊船

評価、ブックマークしていただいた方ありがとうございます。

つたない文章ですが楽しんでいただけましたら幸いです。


「私と船長を代わって」


 アルトリアの言葉にメイビスが呆けたような顔になった。

 いきなり言われたため、メイビスの頭が理解できていないのだろう。


「ですがよろしいのですか、船長。メイビス様に船の所有権も移ってしまうことになりますが」


 副長の言葉に、アルトリアは自信満々にうなずいた。


「大丈夫。メイビスは持ち逃げするような人間じゃないし、それに共同所有の形にするから」

「それでしたら大丈夫でしょう。わかりました。指示に従います」

「お願い」

「え、えっ!?ちょっと待ってよ。意味が分からないよ!!」


 副長とアルトリアの話がまとまったころに、やっと再起動したメイビスの顔が驚愕に代わった。本来ならばちゃんと説明するところだが、今は一刻を争う時だった。


「ごめん。メイビス。後でちゃんと説明するから、これにサインして!!」


 艦長席のモニターに設定画面を表示させると、半ば強制的に船長の資格と船の所有権をメイビスにも移した。これで現在の『あるぜんちな丸』の所有者はアルトリアとメイビスの二人なった。


「オッケー。これで良しっと。じゃ、後は頼んだよ」

「了解しました」


 恐喝や詐欺に近いの手口だが、今は手段を選んではいられない。別にメイビスの損になるわけでもないし良いだろう。

 アルトリアは、そう自分の考えを正当化すると内火艇(ランチ)を発進させるため右舷の格納庫を目指した。


 格納庫にたどり着いたアルトリアは、内火艇(ランチ)に乗り込む前に、必要な機材を整備員に持ってこさせた。


「こんな物どうするんですか?」

「いいから。そうだ。貴方と貴女一緒に来て」

「わ、わかりました。船長」


 オレンジ色の服を着た整備士が二人係で持ってきたコンテナを内火艇に積み込むと、そのまま二人を連れて発進の準備に入る。整備員の不安げな顔を見ると、何をさせられるか皆目見当もつかないのだろう。

 そんな二人に、アルトリアは至っていい笑顔でこう言った。


「安心しなさい。貴方たちが傷つくことはないから」


 かわいい少女である船長の笑顔に二人はホッと胸をなで下ろしそうになったが、続いた言葉に気を失いそうになった。


「ただ敵船を撃沈してもらうだけだから」


 ガタガタと震える整備員の男女を後ろの格納庫にほったらかして、アルトリアは操舵室へと向かった。

 そこにはすでに乗組員が待機しており、船長から下される命令を待っていた。


「船長いつでも出せます」

「ありがとう。あなたにも重要な役割があるからよろしく頼むよ」

「はい!!」


 座高の高く、大柄な乗組員の横の席に座るとパイロットスーツへとアイテムを交換した。こういう時にアイテムストレージというのは非常に便利だ。

 どこでもすぐに着替えられるし、必要なものを取り出せるのだから。


「出たら、そのまま方位A34地点まで進んで」

「わかりました。こちらマーラⅠ号艇。離艦します」

<こちら艦橋。了解しました。無事のお帰りを祈ります>


 オペレーターからの指示を受けると、内火艇が浮上して横へスライドしていく。 

 開いたハッチから出ると、目的の地点へ向かってゆっくり加速していった。


 ◇


 一方その頃、メイビスは嵐のように去って行ったアルトリアが、内火艇でどこかへ向かっていくのを艦橋から見ていた。


「で、副長さん。私はどうしたらいいんでしょうか?」

「船長は、こちらの席にお座りください」

「どうぞ。ハーブティーでございます」

「ありがとう」


 さぁさぁと副長に勧められるまま、先ほどまでアルトリアが腰かけていた場所に座るとすかさず、船員(クルー)が紅茶をティーカップに入れて差し入れてくれる。

 ゲームとはいえなかなか侮れないほど、よく再現された紅茶を一口含んでホッとする。そして、少し冷静になってみるとこんなことをしている場合ではないと気が付く。


「こんなのんびりしてたら駄目でしょう!?」

「すこし混乱されていたようでしたので、落ち着いていただきたく思いまして」

「そ、そうなんですか。それは、ごめんなさい」


 紅茶を淹れてくれた船員が、メイビスにスコーンを差し出しながらそう言った。


「船長には、我々に下せない大事な判断をしていただかなくてはなりません。ですので、どうかそれまでは我々に任せてはいただけませんか?」

 

 真剣な表情でそう告げた副長の言葉を、メイビスも真摯に受け止めた。


「わかりました。副長さん何かあったら私に言ってください。責任は私がとります」

「ありがとうございます」


 副長が静かに頭を下げると、メイビスはほのかに笑って紅茶を一口飲んだ。

 その間にも『あるぜんちな丸』は、コロニーの残骸へとゆっくりと近づいていた。


「これは、プレーヤーメイドのものですね」


 以前この周辺にステーションを作ろうとした名残だろう。爛れた(ただれた)ような大穴が外壁に開いており、恐らく戦艦クラスの高エネルギーレーザーによる砲撃を受けたのだろう。

 クラン同士の抗争か、はたまたNPCと戦争でもしていたのか。なんにせよ修復が不可能と判断され、放置されたコロニーが絶体絶命の危機にある『あるぜんちな丸』のわずかな希望だった。


 ◇


<こちら『あるぜんちな丸』。予定ポイントに到着いたしました>

「わかった。これからは探知されないよう無線を封鎖。私から連絡があるまではそこで待機」

<了解しました>


 『あるぜんちな丸』からの通信が切れると、アルトリアは通信機を置いて立ち上がった。


「あのー。船長?自分たちを何をしたら?」

「何そんなに心配そうな顔をしてるの?」


 『あるぜんちな丸』を離艦した内火艇は、アルトリアが初めに指定したポイントへと辿り着いていた。周辺には、隕石や損傷した艦などの残骸が浮いていたが、整備員たちにはいまだに何をするのかわからず、非常に不安げな表情をしていた。

 それに対してアルトリアは、迷わず指示を出す。


「ほら、例のコンテナを下して。急いだ急いだ!!」

「は、はい!!」

「あ、LSS(生命維持システム)も忘れないでね」


 

 アルトリアに急かされて、整備員の二人が慌てて派手なオレンジ色の宇宙服へと着替えている間に、彼女はヘルメットを被ってコンテナの固定用ケーブルを外す。

 無重力で浮き上がったコンテナを宇宙服と酸素タンクや冷却装置、バッテリーなどを搭載したLSSを背負った二人を引き連れて、アルトリアは目当ての場所へと向かう。 


「二人とも、準備はいい」

<本当にするんですか?>

「する。時間無いから貴方は電源を見てきて、貴女はここで言った通り準備して。私はすぐに戻って獲物を釣り上げてくるから」

<……。私たちが失敗した場合は?>

「私が死ぬ。船も沈む。―――――これで良し。じゃ、あとはよろしくね」


 平然と整備員の二人にそう言った、アルトリアは自分が終えるべき仕事を済ませると、二人に軽く手を振ってそのまま内火艇に戻る。


<……急ぎましょう。私たちが船の命運を握ってる>

<だな。ここまで来てウジウジ言ってられないぜ>


 アルトリアの姿が見えなくなると整備員の二人は、力強く頷き合うとそれぞれの持ち場へと向かった。


 ◇


 戦争において、敵の隙を突き攻撃する『奇襲』は非常に効果的な戦法だ。確かな情報とそれを元に緻密に練られた作戦、そして少しの運が味方すれば、最小の被害で最大の損害を与えることができる。


 海賊クラン【双頭の番犬(オルトロス)】に所属する彼らは、それを忠実に実行していた。


 彼らの手段はこうだ。

 まずファリス星系へ向かう亜空間ゲートに見張り員を置き、相手の戦力を見極めさせる。得られた情報を解析した後、タッチダウンして油断したところを本船が襲うのだ。

 さらにこの周辺を牛耳る【正義の味方気取りのクラン《アルテミス》】が戦争を始めたという情報も得ていた。


 まさに千載一遇のチャンス。幾ら【三大国トリニティ】の一角とはいえ、戦争を始めれば戦力の一極集中は避けられない。ファリス星系のような、安全な地域に部隊を置いておくことはないだろう。

 そう考えた彼らは、作戦を実行し見事に成功させた。


 彼らは実に三桁にも上るPKを行い、その装備を略奪していた。

 

 そして、戦争状態が終わりかけ、そろそろ潮時だと海賊船の船長(プレーヤー)が撤退を考えていた時、見張り員から運命を決定づける情報がもたらされた。


 非武装の大型客船が護衛も無しにファリスへと向かっていると。


 彼らは、迷うこともなく客船を襲うことにした。

 誰も、己の勝利を疑っていなかった。


 ◇


「ずいぶんと無茶な積み方した船ね」


 アルトリアが、岩礁の上でつぶやいた。

 整備員たちを下した残骸からほどなく言った場所にある岩礁帯。そこには、小惑星が砕け散った後なのだろうか、幾重にも岩が浮遊している。

 その一つ、大きさは約20mそこそこの赤茶けた表面に、アルトリアがうつ伏せになったまま双眼鏡を構えていた。

 内火艇はすでに整備員たちの所に戻しているので、この場にいるのはアルトリアだけだ。


(かた)はたぶん、峯風(みねかぜ)型駆逐艦『羽風(はかぜ)』かな。それにしても、駆逐艦に巡洋艦の砲を積むなんて、何考えているの」


 双眼鏡で見る先には、青白いプラズマの光をまき散らし航行する一隻の駆逐艦が居た。恐らく先ほど攻撃を仕掛けてきた敵艦に間違いないだろう。

 グレーのボディの駆逐艦には、不釣り合いなほど巨大なレーザー砲が一基、本来魚雷発射管が装備されているターレットの上に乗せられていた。


「20.3㎝連装レーザー砲。重巡洋艦(じゅうじゅんようかん)の砲じゃない」


 海賊船にしてはえらく足が遅いなと思っていはいたが、全長100mほどの小さな船体に、200mを超す(ふね)乗せる武装を無理やり乗せているのだ。船足が落ちるのは当然だろう。


 快速こそが最大の武器である駆逐艦が、そこら辺の民間船と同等度以下の速度しか出ていない。


「でも、相手が馬鹿でラッキーだった。こちらアルトリア。準備は大丈夫?」

<大丈夫です船長。ですが、どうやって攻撃するんです?>

「そこは心配しなくても良いよ。すぐに獲物が視認(みえる)ようになるから」


 そこで、通信を切るとアルトリアは、背中に背負っていたスーツケース大の金属ケースを取り出す。

 中にはカメラに取りつけるような三脚とノートパソコンぐらいの大きさの機械が入っていた。

 アルトリアは脚を岩礁に固定し、その上に双眼鏡と機械をケーブルでつないでをノロノロと航行している駆逐艦へ向けたると、

 

「さぁ、レッツパーリィ!!」

 

 凶悪な笑顔でそう叫んだ。


また微妙なところですが、ここで切らせていただきます。

明日は更新が難しそうですが、ちゃんと続きます。

3/29修正

『あるぜんちん丸』→『あるぜんちな丸』

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