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第33話 開戦


 星系戦当日。

 現実(リアル)で終えておくべきことを全て片づけたアルトリアは、バラセラバルは向かわせていた護衛空母『海鷹(かいよう)』へとログインした。


「お疲れ様です。隊長」

「ご苦労様。副長」


 艦橋に入ると律儀に敬礼をした副長が出迎えた。

 アルトリアは、彼に返礼すると近くの開いている席に腰を掛けた。


 右側に位置した席の強化ガラス越しに、バラセラバルの夜景が映る。あと四時間もすれば、すっかり朝になるのだが、まだ太陽は惑星の反対側だ。


 宇宙から見える地上の星々を、信号灯をともして並走する防空駆逐艦『羽風』が遮った。後ろには筆箱の様な形をした輸送船の姿が見える。


 二隻ともアルトリアとメイビスの船だ。

 今回の星系戦に投入する戦力は、航空機二十八機。空母一隻、駆逐艦一隻、補給用の輸送船が一隻だ。


 どれも、出撃登録をする前に整備を行い、万全の状態だ。

 

 と、通信機が小さな音を鳴らした。

 どうやら、【兵団】の船団も到着したらしい。船団の集結ポイントを知らせる暗号通信を確認したアルトリアは、後ろを振り向いた。


「副長、進路変更。89ブロックのソ4船団と合流します。僚艦にも打電」


 ソ4船団というのは、【兵団】の船団を示す名称だ。ちなみに『ソ』はゾレグラを示し、四戦目と言う事で4という数字が盛り込まれている。


「進路変更、了解。おもーかーじ」


 アルトリアが副長に指示を出すと、側面のブースターが焚かれ、ゆっくりと艦が回頭を始める。

 そこへ真っ白な第三銀河帝国の制服に身を包んだメイビスが、遅ればせながらにログインしてきた。


「ごめん。遅くなっちゃった」

「大丈夫。まだ、始まってないから」


 慌てたその様子に苦笑しながら、アルトリアは艦長席へ座るように促す。

 腰を下ろすとメイビスは制帽を膝に置くとヘアゴムを取り出して、口にくわえる。


「今、兵団と合流中だよ」

「うん。わかった」

 

 黒いゴムで赤い髪をお団子状に結わえた彼女が、艦長席のひじ掛けの前に取り付けられた小さなモニターを操作する。

 先ほど送られてきた暗号通信を見ているのだろう。


 しばらくすると、惑星の陰に【兵団】の艦船がちらほらと見えてきた。まだそろっていないのか、陣形は組まれておらず騒然としていた。


 すると、艦橋の強化ガラス越しに、船団から光がチカチカと瞬いているのが見えた。


「メイビス艦長。『あきつ丸』より発行信号です。陣形ニツイテ指示サレタシ」

「えぇーと、私とアルちゃんが向かいますと返事をしてください」

「了解」


 これでいいだろうか、とこちらを不安げに赤い双眸で見つめてくるメイビスにアルトリアは頷いた。

副長に内火艇を準備させると、メイビスを伴って『あきつ丸』へと向かった。


 ◇


 強襲揚陸艦『あきつ丸』の隣に『海鷹』が並ぶ。

グレーの船体の側面に数門の対空砲が装備され、平たい全通甲板によって上面が覆い隠されている。ところどころに、無理やりつなぎ合わせたような印象を受けるが、こうして見るに『あきつ丸』の見た目はほとんど『海鷹』と変わらない。


 その甲板上にはレッドリーダーから派遣された『零式艦上戦闘機33型』の二個小隊八機が待機していた。


 この『零式艦上戦闘機33型』、実はこの星系戦のため専用に製造されたプレーヤーメイドの機体だった。


 わざわざ新型機開発などという回りくどい方法を採ったのは、『あきつ丸』他【兵団】所有艦の甲板では【Collars】の機体は運用できなかったからだ。


 地上用に特化した『あきつ丸』などでは、甲板に宇宙仕様のプラズマエンジンやイオンエンジンに対応したコーティングがされていなかった。

 数回の発着艦であれば耐えられるだろうが、実戦では使える代物ではなかった。


 そのため、急きょ地上飛行が可能な主翼(ウイング)が装備されており、なおかつ滑走路が短い『あきつ丸』に対応した小型のボディを持つ機体を準備する必要が出てきた。


 そこで目をつけられたのが『零式艦上戦闘機32型』だ。これに地上機『一式戦闘機 (はやぶさ)』の燃焼エンジンを搭載して『33型』が開発された。


 ただ、この『33型』急造ゆえに多くの問題点を抱えていた。

 

 まず、宇宙用に開発された『32型』のボディでは燃焼エンジンの燃料を十分な量を搭載することができなかった。それに加えて『隼』の燃焼エンジンを搭載したことにより、さらなる燃費の悪化を招き、航続距離が従来の三分の一まで大幅に低下してしまった。


 開発を依頼した技術者たちは、操作性が低下することを承知で落下型増槽(ドロップタンク)を増設し、主翼下に『ロ式補助推進機』を装備することで対応した。


 この『ロ式補助推進機』は簡素なつくりの小型のロケットエンジンだ。

 これにより最も燃料を必要とする離陸が、機体の燃料を消費することなく可能になっている。……スペックの上では。

 離陸後は、スペースシャトルと同じようにロケットを破棄し、燃焼エンジンでの飛行をすることになる。


 さらにもう一つ問題があった。


 これも『33型』に搭載された『隼』の燃焼エンジンに起因する。

 『32型』には初期装備として20㎜レーザー機銃が主翼に内蔵されていた。この機銃は、エンジンから直接エネルギーを送り、圧縮、指向性を持たせて発射するタイプだった。


 しかし、『隼』のエンジンでは、20㎜レーザー機銃を撃つだけのエネルギーを賄うことができなかった。

 当然ながら予備のバッテリーをつける余裕もなく、火力低下は覚悟して何とか撃つことができる12.7㎜レーザー機銃に換装していた。


 可哀そうなことにもう二度と生産されることがないであろう『33型』は、そのほとんどが甲板に放置された露店係止の状態で運用されることになる。

 

 ◇


「お、待っとたでぇ」


 『あきつ丸』の艦橋に入った二人をライデンとテンドンが出迎えた。

 二人とも先日と変わらない装備を身に纏っていた。一瞬、ここが宇宙船の中であることを疑いたくなる服装だ。


「ほんで、護衛隊長さん。陣形はどないする?」


 艦橋中央にあるホログラムを内蔵したテーブルを前にライデンが、アルトリアとメイビスに視線を向けた。


「陣形の前に……空母と戦艦はどれくらい揃ったんですか?」


 アルトリアは、ホログラムの前で立ち止まるとライデンに問いかけた。

 ライデン達が準備すると言っていた護衛部隊だが、結局予定の通りには相手方の都合がつかなかったため、実際どのくらいの戦力が集まっているのかを把握していなかった。


「あぁ、こっちも紹介せないかんな」


 そう言って、ライデンは自身の後ろに控えていた男性プレーヤー二人に合図した。


 一人は、仏頂面をした金髪碧眼の青年で宇宙服の胸元に見える階級章は中尉。もう一人は、顎に大きな傷跡があるスキンヘッドの黒人で階級は専任曹長だった。


「金髪がアーガイル。ハゲがロバートソンや」


 紹介されたアルトリアは、二人の名前を以前見たことがあることに気が付いた。


「もしかして、お二人はグレザー(アメリカ)サーバーの方ですか?」

「Yes!その通りダ!―———俺は、Robertson!船は『New(ニュー) Mexico(メキシコ)』型戦艦『Idaho(アイダホ)』。それにしても有名な【Collars】のリーダー殿に会えて光栄ダ!よろしく!」


 アルトリアの問いかけに、黒人のロバートソンは、真っ白な歯を光らせながらサムズアップしてみせた。

 どうやら、ロバートソンは翻訳機能を使っていないようだ。

 時折イントネーションにおかしな部分がある。


「こちらこそ。それにしても、日本語お上手ですね」

「Oh!thank you!それで、こっちはArgyle。顔が固いのは緊張してるカラだから気にしないでクレ。―――乗艦は『Pensacola(ペンサコラ)』型重巡洋艦『Salt(ソルト) Lake(レイク) City(シティ)』」


 ロバートソンがアーガイルに腕を回す。が、一切表情が変わらない。なまじアバターが美形であるがゆえに、余計に無表情が際立っている。つかみどころのない人物だ。

 

「……あとの船ガ、『Omaha(オマハ)』型軽巡洋艦『Detroit(デトロイト)』と

Farragut(ファラガット)』型駆逐艦『Worden(ウォーデン)』と『Clemson(クレムソン)」型駆逐艦が二十二隻ダ。すまないガ、戦艦は一隻しか出せなかった』


 ロバートソンの太い腕を首元に回されているにもかかわらず、平然としているアーガイルがホログラフィックに小型デバイスを挿入する。

 表示されたのは、船の装備などの一覧だった。


 アルトリアは、ネイティブな発音に少々圧倒されながらも、ホログラムに表示された船の詳細を目で追いかける。


 『アイダホ』も『ソルトレイクシティ』は旧式の艦でスペックは高くない。

 さらに、武装をいくつか下しているため戦力としては心許ない。

 しかし、代わりに対空レーダーは最新型が搭載されており、索敵艦として非常に優秀なスペックを誇っている。


 その他、駆逐艦群も旧式で現在の主力艦に比べれば船足は遅いが、改装を済ませてあり護衛戦力としては並といったところだろう。

 しかし戦力が困窮している護衛部隊としては、上等なぐらいだ。


「ワイらが用意できた航空隊に使える戦力は、『特TLⅡ型』が四隻と『あきつ丸』『神州丸(しんしゅうまる)』が一隻ずつや。載せてるんは『TL型』がレッドリーダーんとこの『33型』二十機ずつ。『あきつ丸』と『神州丸』が八機ずつで、後は装備の問題で運用できんかった。……とりあえず『海鷹』の方に載せる形でええかな?」

「わかりました」


 『特TLⅡ型』は、油槽船(タンカー)を改造した空母だ。ただ、商船『あるぜんちな丸』を改造した『海鷹』と異なり、『特TLⅡ型』は航空機の運用と油槽船としての能力を残したハイブリット艦だ。


 それ故に、防御力など紙にも等しい。武装も貧弱だ。燃料を満載している分だけ、発火するリスクは上がっている。

 同じ改装空母でも、商船改造空母の『海鷹』の方がはるかに強そうに見えるという不思議な現象が起きていた。


 アルトリアは頷いて、ライデンの提案を受け入れ話を続けた。


「……では、陣形について説明します。今回は、『海鷹』と『あきつ丸』を中心にして周囲を囲むように展開します」


 アルトリアは、空中に浮かび上がるホログラムのキーボードを指でタップする。アーガイルの提供してくれた情報を反映した陣形図が、各艦の名称、配置と共に表示される。

 アルトリアが考えている陣形は大きく分けて、三層構造になる。


「まず、一層目に人員(プレーヤー)が乗った輸送船と舟艇を積んだ揚陸艦、二層目に比較的自衛装備の整った武器弾薬の輸送船を配置します」

 

 アルトリアの説明に沿うようにして、陣形図が中心に焦点を合わせて拡大する。

 まるで繭のように何重にも折り重なった半透明のホロが示すのは、護衛対称である兵員輸送船だ。

これらは中心の最も安全なところに置き、その周囲に機銃を増設した輸送船が展開する。


 アルトリアの手元にある戦力では、船団を全船無事に輸送するのは不可能だ。

 そこで必然的に、優先順位をつけて必要性の低いものを外層に配置し、たとえ撃沈されたとしても被害が最小限に収まるようにするしかない。


「三層目、一番外層には、護衛艦を展開します。……先鋒はロバートソンさんに務めていただいてもいいですか?」

「of-course!」


 一番外層にはなけなしの戦力を教導艦と駆逐艦三隻にわけ、六個戦隊を編成し展開する。


 先頭には耐久力があり、索敵の要となる戦艦『アイダホ』と駆逐艦三隻、『特TLⅡ型』の『山汐丸(やましおまる)』で編成する第一戦隊。


 左には重巡洋艦『ソルトレイクシティ』と駆逐艦三隻、『特TLⅡ型』の『千種丸(ちくさまる)』で編成する第二戦隊。


 右には軽巡洋艦『デトロイト』と駆逐艦三隻、『特TL型Ⅱ型』の『陸心丸(りくしんまる)』で編成する第三戦隊。


 後方に駆逐艦『ウォーデン』と駆逐艦三隻、『特TLⅡ型』の『忠榮丸(ちゅうえいまる)』で編成する第四戦隊。


 上方に防空駆逐艦『羽風』と駆逐艦三隻の第五戦隊。

 下方に駆逐艦三隻の第六戦隊を配備する。


 この外層の戦隊は、所謂ピケットラインだ。敵の攻撃を損害覚悟で遅滞する役割を担う。


 そして、旗艦『海鷹』と『あきつ丸』『神州丸』および護衛の駆逐艦三隻を、中央の三層目に配備する。

 こうすることによって、外層に展開する『特TLⅡ型』と護衛部隊で時間稼ぎをしつつ、内層にある主力の『海鷹』と『あきつ丸』『神州丸』の艦載機を投入することができる。

 中央に置くのは、少しでも展開する時間を短くするためだ。


 あくまでアルトリア達の目的は、【兵団】のプレーヤーたちが乗った船を撃沈されないことだ。

 被害を少しでも軽減するためには、こうするのが一番いいと判断した。


「あと、航路についてなんですが、メイビスから進言があります」


 アルトリアが話をメイビスへ振ると、八つの視線が彼女へと移る。


「……今回の第一攻略目標を赤の星にしたいと思うのですが、どう思いますか?」

「我々は一向にかまわん。どこであろうが、やることは変わらぬからな」


 メイビスの言葉に、腕を組んだテンドンが静かにうなずいた。

後に続くようにライデンが気軽なノリで疑問を口にする。


「ワイもそう思う。しかしなんで赤の星なんや?ホワイトリーダーとメイビスちゃんのことなんやから理由があるんやろ?」

「はい。実は【愛国者】のマスターから、敵主力艦隊が青の星に集結していると情報をもらいました」


 そこで、メイビスは細い指でホログラムを操作する。表示されたのはゾレグラ星系の地図だった。

 恒星とその周りを周回する赤の星、青の星、そして蝮が率いる第六艦隊が攻略目標としているレセトアが浮かび上がる。


「連合艦隊は主力の第一艦隊から第五艦隊までが青の星へ向かいます。残りの第六艦隊はレセトアへ。私たちも同じ航路を辿って青の星経由で行ってもいいと思いますが、それでは、見つかる危険性が高まります。―――なので、連合艦隊とは反対の航路で向かいます」


 メイビスが告げる案は、青の星に最も近い亜空間ゲートを使う連合艦隊に対して、各艦の亜空間機関でゲートを使わずに進行することで隠密性を高めようというものだ。


 この案の利点は、何よりも航路が固定されないことにある。


 連合艦隊のように例え、ゲートを封鎖されても十分に撃破できる火力があれば問題はない。しかしソ4船団には、それができない。もし、連合艦隊のあとに続いたとしてゲートで待ち受ける敵艦隊を突破できない可能性もあるのだ。


「……。わかった。宇宙での戦闘に関して我々は不得手だ。そちらの指示に従おう」


 攻撃目標までこちらで指定してしまったから、少しは反対意見があるかと思ったが意外とすんなり会議は終わった。


「よしゃ、全部隊に打電や!作戦開始までそう時間もない。さっさと船団を組むで」


 ◇


 アルトリアとメイビスの二人が『海鷹』に戻ってから十分ほどで、船団は陣形を作り上げた。

 『海鷹』の艦橋からは、周囲どこを見渡しても取り囲む輸送船しか視界に入ってこない。

 

「さて、どれくらいたどり着けるかなぁ」


 壮観な眺めではあるが、アルトリアはこのうち少なくない数が沈むことを考えると気が重たくなった。


「大丈夫でしょう?アルちゃんが守ってくれるんだから」


 憂い顔のアルトリアの背後から声がかけられる。


 艦橋のガラス越しに、体をフワフワと漂わせたメイビスが映る。

 現在、艦橋は微重力状態―――無重力に近い状態になっている。そのため、軽くジャンプするとかなりの距離を飛ぶ。


 アルトリアは、こちらに半ば浮かんでやってくる彼女に手を差し出して受け止める。

 それにしても、戦闘配置でざわめいている艦橋の中で、よく小さなつぶやきを聞き逃さなかったものだ。


「いや、私護衛はあまり得意じゃないし」

「でも、アルちゃんは強いでしょ?」


 緊張からか、あるいは高揚感からか、頬を少し朱色に染めたメイビスが柔らかい笑みを浮かべる。

言葉の中に含まれたプレッシャーを隠そうともしていなかった。


 アルトリアは、思わず出そうになったため息を寸前で押しとどめて、何とか苦笑に変えた。

すると、通信を担当する兵士が報告の声を上げた。


「艦長!連合艦隊旗艦『大淀(おおよど)』より入電です」

「読み上げてください」


 メイビスは話を中断して、彼の方へ振り向くと静かに命令した。


「ハッ!―――発、連合艦隊司令長官。宛、作戦参加中の全艦艇へ。02:00時ヲ持ッテ『(セイ)一号作戦』ヲ開始。空母機動部隊ヲ主力トスル連合艦隊ヲ編成シ、敵本拠地ヲ強襲セントス。敵主力部隊ヲ撃滅ノ後、敵施設ヲ占領セヨ。各員ガ訓練ノ成果ヲ十二分ニ発揮サレル事ヲ望ム。です」


 それは、ゾレグラ侵攻作戦の開始の合図だ。

 兵士の報告を聞いた二人は、視線を合わせる。


「ミーシャさんたちが先に行っちゃったね」

「こっちも行こう」

「うん」


 アルトリアがメイビスの背中に手を回して軽く押す。

 その力を借りて半重力の中を飛んだメイビスは、慣れた手つきで艦長席の背もたれをつかむ。そして、スパッツをはいているスカートが捲れないように姿勢を安定させて腰を下ろす。


「えぇーっと。『海鷹』はこれから赤の星へ向かいます。出撃準備をしてください。……テンドンさんたちにも連絡を」


 多少の迷いもあったようだが、意外と様になったメイビスの姿に微笑みながら、アルトリアも艦橋内の空席に腰を下ろす。

 艦橋内が一層あわただしくなる。


「各艦、準備完了です」


 再び報告が上がる。

 深く呼吸をしたメイビスが顔を引き締めて頷く。


「全艦抜錨(ばつびょう)してください!」


 彼女の命令をきっかけに統制管理された各艦のエンジンに火がともる。

 イオンの緑色の粒子やプラズマの青色の粒子、あるいは燃料を炊いて吹かしている燃焼エンジン。様々な輝きが、船団を覆いつくす。


 ロバートソンの載る先頭艦『アイダホ』が亜空間へ消えていく。

 続いて、後続の輸送船も次々に亜空間へ突入していく。そして旗艦『海鷹』もプラズマの青い粒子の航跡(キール)を残して追随した。


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