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第22話 Let's Go Shopping!

遅くなりました。

今回はいつもより長めです。

 銀河第三帝国所属『グナイゼナウ』を離れたアルトリアとメイビスは、そのまま『羽風はかぜ』の内火艇(ランチ)で真っ直ぐファリス星系外宇宙交易ステーション『アリエスⅡ』へ向かった。


「よし。ショッピングをしようか」

「いきなりすぎると思うよ、アルちゃん」


 内火低(ランチ)から『アリエスⅡ』のターミナルに降り立つと同時に、アルトリアがメイビスの方を振り向き彼女の姿を見ながらそう言った。

 唐突なアルトリアの発言に思わずメイビスが苦笑する。

 

「だってメイビス。さすがに今の姿じゃ街中歩けないでしょう?」

「えー。そうかな?」


 メイビスが自身の服装を確認するように両手を広げる。

 今の彼女の姿は、『グナイゼナウ』に乗艦した時の真っ白なジャケットとスカートが眩しい、第三銀河帝国軍の軍服だった。シミ一つない真っ白な軍服は、群衆の中に紛れ込んだとしても非常に目立つことだろう。


「これがだめなら、前に着てたのがあるけど?」


 メイビスが首を傾げる。確かに、初期装備のジャケットとパンツであれば街中を歩く分には充分だ。しかし、最低限度の防御力しかない初期装備は戦闘に不向きだ。これから星系戦に参加するにしても、しないにしても、防弾素材の戦闘服と小型の宇宙服はゲームをするうえで揃える必要がある。


「まぁ。確かに初期装備でもなにも問題はないんだけどね。いいお店知ってるから、騙されたと思ってついてきて」


 ◇


「ここだよ」

「ここ?」


 アルトリアがメイビスを連れてやってきたのは、『アリエスⅡ』の表通りの一角にある小さな洋服店だった。

 この宇宙時代(ゲーム)には珍しい木を使った店は、周囲の無機質なコンクリートや合成繊維で建てられた建物のせいで時代錯誤な印象を抱かせた。


 店の名前は『ブルー・チューリップ』。


 ドアもこれまた珍しいことに自動化されておらず、アルトリアは引き戸の取手をつかみ前方へ引いて中に入った。扉につけられたベルがカランカランと空気を震わせる。

 店内は決して広くはなかったが、可愛らしい洋服を展示するハンガーラックやマネキンの位置が工夫され、圧迫感は感じなかった。

 すると店の奥のカウンターから、アルトリアが入ってきたことに気が付いた従業員が笑顔で声を掛けた。


「アルトリアちゃん!?久しぶりねぇ!!」

「お久しぶりです。ジョディ」


 挨拶をするとジョディと呼ばれたノースリーブのシャツとジーパン、そして青のチューリップの可愛らしいワンポイントのエプロンを身に着けた長身の従業員が、カウンターから出てきた。


 ジョディは軽く膝を曲げると、シャツの間からチラチラと見える立派な胸元にアルトリアの体を勢いよく掻き抱いた。ハグされるのは毎度のことなのでアルトリアは、苦笑しつつも大人しくしていた。

 しばらく、ギュッと抱きしめていたジョディだったが、その後ろで立っていたメイビスに気が付き、我に返って慌ててアルトリアを開放する。


 ジョディが思わずといった風に赤く染まった自分の頬に両手を添えた。

 

「あらあら!!あたしったら、恥ずかしい。ところでそちらの可愛らしい御嬢さんは?」

「私の友達です。名前はメイビス」

「まぁ。珍しい。アルトリアちゃんがお友達を連れてるなんて」

「そんなことはないですよ」


 立ち上がったジョディの言葉に、ため息をつきながら笑う。


 確かに近頃では、ソロとして有名になりつつアルトリアではあったが、決してボッチではない。クランには所属していないのも、周りの人に迷惑が掛からないようにするためと、変なしがらみなく自由にゲームを楽しみたいと考えているからだった。


「それもそうね。昔はクランにもいたんだし」

「クランって。もう何か月も前の話ですよ」

「そうだけど。あたしまたアルトリアちゃんの白いパイロットスーツ姿みたいわぁ。あの頃も強かったけど、今は比べものにならない位、いい飛行機乗りになったって聞いたわよ?」

「勘弁してください。私なんてまだまだですよ」

「そんなことは無いと思うけどなぁ。……ところで今回のご用件は?」

「あぁ。忘れていました。彼女の、メイビスの戦闘服とパイロットスーツをお願いします」


 アルトリアは。話がひと段落すると、先ほどから無言を貫いていたメイビスの後ろに回り込み、肩に手を添えてジョディの前に連れてくる。


「そちらの御嬢さんね。ちょっと待っててね。ちょうど良さそうなのを見繕ってくるから」


 メイビスの姿をパッと見たジョディはそう言うとカウンターの奥へと引っ込んでいった。

 すると、口を軽く開けたまま目を白黒させていたメイビスが店内に入って、初めてまともな言葉を口にした。


「ね、ねぇアルちゃん」

「何?メイビス?」

「さっきの人は?」

「……あぁ、このお店の店長だよ。ジョディの仕立ててくれる戦闘服(アイテム)はかなりいい出来だから、期待していいよ」

「そうじゃなくてね。えっと、ジョディさんって」


 どこか言いずらそうで、そしてとても困惑した様子のメイビスに向かって、アルトリアは悪戯が成功した時のようなとびっきりの笑顔でこう言った。


「うん。メイビスの思っている通り。ジョディは、間違いなく男性(・・)だよ」

「……やっぱり?」


 先ほどから、メイビスが思考停止していた原因は、アルトリアと女性らしい話し方で楽しそうに会話していた従業員こと、ジョディのせいだった。


 その体は並みの男性よりも高く、軽く二メートルは超えていた。アルトリア以上にミニマムなメイビスにとってみれば、巨大な壁が立ちはだかっているも同然だった。さらに、ノースリーブのシャツから見える胸、いや胸板は立派な筋肉に覆われおり、袖口から見える腕と脚は丸太を思わせるほどの太さだった。


 そのような姿をしているくせに、ジョディの話し方は女性的で柔らかった。


「ごめんなさいねぇー。ビックリしたわよね」

「だ、大丈夫です」


 後ろにネームドNPCの女性従業員を一人連れながら、気にした様子もなくジョディが戻ってきた。

 

「改めて紹介するね。『ブルー・チューリップ』の店長であり、装備屋ギルド『ヒガシ屋』のギルドマスター、ジョディ」

「初めまして。ジョディよ」


 ジョディのたくましい低音ボイスにビビっているのか、メイビスの顔には警戒心が見え隠れするぎこちない笑顔が浮かんでいた。

 現実でとても大事に育てられた純粋培養の箱入り娘のメイビスだ。ジョディの見た目、というかオカマという事実は、彼女にとって少し刺激が強すぎたのかもしれない。

 こんな感じでも、彼曰く現実(リアル)では、やり手の会社員で奥さんと子供が二人いるらしい。


 それに、本当かどうかは知らないが、女性にあこがれる男性は意外に多いという。

 その切望が現実(リアル)であれば、周囲との信頼関係が揺るぎかねない大事だ。しかし、ヴァーチャルであれば、オカマと言うのは一つの個性として受け取られるし、どうせゲーム内では誰もが別の自分を演じている。そんな些細な事を気にする奴は、本気でこの世界を楽しんでいない。


 それに、このゲームではネカマ(男性が女性アバターを使って女性の振りをする)プレイは重大な規約違反だが、オカマプレイは全く問題がない。それどころか、逆に推奨している節もある。なんせ、装備品の中には、男女ともに装備できるプレーヤーたちがオカマ用アイテムと呼ぶものも存在しているのだ。

 結局のところ重要なのは、その人物の人柄だ。


 別にオカマだろうがジョディの人柄を知れば、順応が早く肝も据わっているメイビスなら、すぐ仲良くなれる。そうアルトリアは確信していたから、ここにいきなり連れてきたのだった。

 

「あたしってば、こんなアバターでしょ?もう女の子に怖がられてねぇ。でも、こう見えてもお掃除は大好きだし、お料理を作るのも得意なのよ?」

「へ、へーそうですか」


 とはいえ、すぐには無理そうではあるが。

 ジョディの方も、メイビスのような反応は慣れっこだというように、極めて明るく接していた。このポジティブなテンションも彼のいいところだ。


「とりあえずジョディ。メイビスの着付けお願いしてもいいですか?」

「オッケー。ほら、取って食べたりしないから。いらっしゃい。あぁ。安心して触ったりしないから。サイズとかアバターでも見られるのが嫌なのは知ってるから。こっちのリリーちゃんにしてもらいましょ。お願いね」

「わかりましたわ。さぁお嬢様こちらに」

「え、あ、ちょっと」


 戸惑い立ち止まろうとするメイビスの背中を、ニコニコ顔の女性NPC(従業員)リリーがグイグイと引っ張ってハンガーラックへと連れて行く。

 ジョディはと、いうとリリーに軽く指示を出すとカウンターの横に立っていたアルトリアの元へ戻ってくる。


「あの子、新人(ルーキー)かしら?」

「そうです」

「ってことは今度の星系戦のための準備ね。……そういえば、こんなこと聞くのもあれだけど、予算は大丈夫?」

 

 ここ『ブルー・チューリップ』は、店の規模自体は小さいが、販売している物はすべてジョディが手製で作り上げたプレーヤーメイドの物ばかりだ。

 そのため既製品に比べて値段は高い。

 それこそ、新人は手の届かないぐらいには。


「大丈夫ですよ。実はですね―――」


 アルトリアは、ドナルド・レーガンのミッションのことを包み隠さずジョディに話した。彼は、ミッションの話に目をキラキラさせながら聞いていた。

 

「中々面白いことに巻き込まれたわねぇ。あたしも久しぶりに宇宙(そら)に出ようかしら?」

「いいですね。剛腕の二つ名が復活ですか?」


 ジョディはこの店を開店させる前は、とある大規模クランに所属する【軍人】だった。それも主に施設占拠やテロリスト排除などを得意とする実践派のクランだ。


 そして、そのアバターの見た目とハンマー片手に壁を次々に破壊していく戦い方から『剛腕のジョディ』と呼ばれていた。このゲームで二つ名を貰うのは、とんでもなくぶっ飛んだ優秀な人物か、何かをやらかして有名になった人物だけ。ちなみに彼は前者だ。


「もう!!そんなこと言って、おだてても何も出てこないわよ」


 ジョディが腰をくねくねと揺すりながら恥ずかしがる。

 謙遜しているのだろうが、巨大な体が揺れ動く姿を見ても全くそう感じさせないのが不思議なものだった。


「じゃぁ。私は銃の方をみてきますので」

「わかったわ。いつもの市場(マーケット)でしょ?終わったらメイビスちゃんを向かわせるわ」


 『ブルー・チューリップ』の装備は優れてるだけではなく、そのデザインも素晴らしい。おそらく買い物が好きなメイビスが購入するまで、もう少しの時間があるだろう。ちなみに、ウィンドウから選択して着替えることができるのは、購入したもののみであるため、試着は現実(リアル)と全く変わらない。


 従業員のリリーに勧められるまま、いろいろな服に着替えているであろう、メイビスの声を聴きながらアルトリアは店を後にした。

 

 ◇


 アルトリアが向かったのは、大型のショッピングモールではなく、NPCやプレーヤーが裏道の路地に溜まってできた闇市のような市場(マーケット)だった。


 本来であれば、新人には中古品ではなく新品の方を進めるのだが、メイビスに限って言えば、表立てて戦うわけではないのでいいだろうと判断した。

 それにアルトリア自身も今使っている装備を新調したいと考えていた。

 アルトリアが、今持っている三八式短銃は、突撃銃(ライフル)である三八式歩兵銃の銃身を落とし、装填数の増加とストックの軽量化を図ったモデルだ。


 しかし、元が突撃銃であるため、基本的に艦内や撃墜された時ぐらいにしか銃を使わないアルトリアにとってみれば、取り回しの悪い銃に他ならなかった。だから、メイビスの武器探しのついでに自分の銃も揃えるつもりで、掘り出し物がいい値段で買えるこの市場にやってきたのだ。


 アルトリアは、様々な銃器を扱っているテントの前で立ち止まると、難しい顔をしながら品定めを始めた。


「やっぱり三十式と三八式かぁ。ねぇ、おじさん。なんかいい掘り出し物ある?」

「おう。ねぇちゃん。こいつはどうだ?」


 NPCの店主が取り出したのは、1.2mほどのスッキリとしたフォルムの突撃銃(ライフル)だった。

 銃の上には、小銃に取り付けるには比較的大きなスコープが付いている所謂狙撃銃(スナイパーライフル)だ。


「バラセラバル製九七式狙撃銃だ。使用弾頭は7.62㎜。高倍率のスコープ装備。バイポッドも初期装備よりもいいやつだ」

「あぁ。ごめん。なんていうかなぁ。もっと初心者向けなやつない?」


 確かに掘り出し物ではあったが、完全に地上戦用の仕様だし、初心者にいきなり狙撃は無理だろう。アルトリアの質問に、テントの主は申し訳なさそうな顔をして答えた。


「残念ながらねぇかなぁ。最近は、新しい客が増えたからなぁ。どこも似たようなもんだと思うぜ」

「そう。ありがとう」


 どうやら、星系戦のために装備を整える新人に先を越されたようだ。

 それからしばらく、市場の中をプラプラと歩き回っていたアルトリアの目に、見慣れない露店を見つけて足を止めた。

 その店は、他のテントのようにガンラックに銃を掛けるのではなく、布を引いた地面に直接商品を並べていた。その後ろに、褐色の肌と大きく剃りこみが特徴的な男性NPCが胡坐をかいて座っていた。

 立ち止まったアルトリアの銀髪が、銀縁メガネに映ったのか、男性が顏をあげた。


「やぁ。御嬢ちゃん何かお探しかい?と言ってもウチで扱っているのは銃と弾薬だけだから、関係ないかもしれないけどな」

「ねぇ。これちょっと見せてもらっていい?」

「……構わないよ。どうぞ、ご自由に手に取ってくれ」


 肩をすくめた黒人の店主の許可を得た、アルトリアはしゃがんで目の前に置いてあった先ほどの狙撃銃よりも短い銃、短機関銃(サブマシンガン)を手に取り銃のステータスを表示させた。


 ランクⅢ 

 カテゴリ:短機関銃(サブマシンガン)

 名称:一〇〇式機関短銃(中古品)

 銃弾:9mmナンブ

 攻撃力B 発射速度A:毎分1,000発 有効射程距離D:約20m 最高射程D:約200m 装填数S:80発

 状態:正常80% 

 付属品(オプション):なし


「これって、一〇〇式機関短銃?」

「ほー。よくわかったなぁ。――そう。そいつはバラセラバル製の一〇〇式機関短銃だ。かなり弄くってはあるが、純正品だぜ」


 言葉では驚く振りをした黒人の店主だったが、傍から見てもそれが子供に対する反応で、本心でないことはバレバレだった。

 店主の言葉を無視して、アルトリアは銃本体の確認をする。


「たしか、一〇〇式は弾倉(マガジン)が下になかった?」

「あぁ。だがこいつの弾倉は下じゃなくて上だ。強化プラスチック製で段数は八十発」

「八十。かなり多いね。――――試し撃ちしたいんだけど?」


 本来ならば、細長い羊羹のような弾倉が下にまっすぐ突き出しており、それをグリップ代わりにして射撃する一〇〇式機関短銃だったが、店主曰く、これは扱いがしやすいようにいろいろといじっくた結果、上に弾倉が装備できるようになっているのだという。

 

「……曲がったところだ」


 どこか呆れた様子の店主が指差した先には、簡易射撃場が設けられていた。

 コンクリートの壁を背に四つの人型ターゲットが置いてあり、手前には、銃を構えるための台らしき木箱が置いてあった。


「じゃぁ。お言葉に甘えて」


 アルトリアは、手に取った一〇〇式機関短銃をタップして、試射の項目を選択する。同時にセーフティを解除すると、右肩に合わせてプラスチック製のストックを伸ばし構えた。

 左手で銃の下部をしっかりと支え、人型のターゲットの胸部に銃口を向ける。


 右手の人差し指で軽く引き金を引くと、景気よく銃口炎(マズルフラッシュ)が輝き、弾丸が空気を切り裂きながらターゲットへと突き進んでいく。


 弾丸が右端のターゲットに数穴を開けたのを確認すると、今度はフルオート射撃で引き金を引き絞った。右肩にストックから伝わる振動を感じながら、銃口を左へとスライドさせていく。彼女の周りには軽快な音とともに排出された薬きょうが、人工太陽に照らされてキラキラと輝いて散らばっていく。


 そして、ものの数秒でカチッという音とともに機関短銃は機能を停止した。

 弾倉を抜いて確認してみると装填されていた弾丸、全八十発が綺麗に撃ち切られていた。


「感想は?御嬢ちゃん?」

「うん。かなりいい。これいくら?」


 射撃を見て少し感心した風の店主の問いかけに、アルトリアは少ししびれる右手を振りながら笑顔で答えた。

 反動は短機関銃としては、強い。手元で暴れる感じだ。その分威力は十分で、装填数も多い。まさにパイロットの非常時用にうってつけの銃だった。どうせ近距離でばら撒くのが仕事なのだから。

 

「そうさなぁ。全くの新品ってわけでもないから九千クレジットでどうだ?」


 黒人の店主が告げた値段にアルトリアは躊躇なくうなずいた。


「買った。弾薬と予備弾倉もお願い」

「おぉ。まいどあり。レーザーサイトはいらないかい?」

「いらない。けど光学照準装置(ドットサイト)はほしいかな」

「あいよ。それでほかにいる物はあるかい?」


 手渡された照準装置を覗き込み、幾つかのうち性能が良さそうな暗視機能付き光学照準装置(ドットサイト)を装備してもらうように頼む。


「あと、初心者が扱いやすい拳銃(ハンドガン)が欲しい」

「初心者用か。なら、こいつがおすすめだ。FNブローニングM1910コンパクトモデル。安心のドラッセン(ヨーロッパサーバー)製だ。装填数はマガジンに五発と薬室に一発。装填数は少なめだがお嬢ちゃんが持つにはちょうどいい大きさだろ?」


 先ほどとは異なり嬉しそうに黒人の店主は立ち上がり、後ろに置いてあった鉄製のケースから一丁の拳銃(ハンドガン)を取り出した。

 その銃は、全体的に丸みを帯びたフォルムで、小柄なアルトリアの手でも持て余すことなかった。

 このぐらいの大きさであれば、ポケットに入れて撃つことも可能だろう。


 ランクⅠ 

 カテゴリ:拳銃(ハンドガン)

 名称:FNブローニングM1910(新品)

 弾薬:7.65㎜ブローニング

 攻撃力D 発射速度D 有効射程距離D:約10m 最高射程D:約150m 装填数D:5発

 状態:正常100% 

 付属品(オプション):なし


 ステータスを見ると小型な分、威力も低かったがメイビスが護身用に持つには十分だった。動作も、スライドや弾倉を見る限り問題はなさそうで純正というのも本当だろう。


「こいつじゃ不満かい?なら、大口径の拳銃もあるが……」

「いや、大丈夫。それも買う。そっちはいくら?」

「そうさな……。悪いがちょっと値がはるぜ?――八千クレジットだ」

「よし。買った。それも弾薬と予備弾倉よろしく」


 これまた、即決の購入に気をよくしたのか黒人の店主は気味の悪い笑顔を浮かべていた。


「いや、ありがたいねぇ。こんな薄汚い店には誰もよってかないから、困ってたんだ」

「物はいいのにね」

「そうよ。そうなんだよ。全く外見で人を判断しやがって」


 店主の愚痴に適度に応じながら、アルトリアは周りを見渡した。確かに、この露店の前で止まる人物はアルトリア以外誰もいなかった。


「ここは長いの?」

「いやぁ。先月から店を開いた新参者さ。―――土地代もかからないから別にいいんだがな」

「そう。あ、短機関銃(サブマシンガン)弾倉(マガジン)は五本お願いね」

「あいよ。ほら、一〇〇式機関短銃と予備弾倉五本、弾薬は三百発分。M1910の方は、五十発分だ。おまけで消音装置(サプレッサー)も両方つけてやる。これでジャスト二万五千クレジット。どうだ?」

「それでいい。ありがとう」

 

 アルトリアは、商品を入れたボックスをメニューからインベントリにしまう。そして自分の口座から店主の口座にお金を振り込んだ。それを店主が確認すると商談成立となった。


「そうだ、嬢ちゃん。俺の名前はフランクだ。また来てくれたらサービスするぜ」

「わかった。また機会があったらね」


 去り際の言葉に、アルトリアがそう答えると店主は嬉しそうに頷いた。そして、立ち去っていくアルトリアの背中を見送った店主は、再び自分の定位置に座り込み胡坐をかいた。


読んでいただきありがとうございます。

8/17 銃の能力値を変更

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