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切り取られた世界  作者: 本郷透
8/13

惨劇の始まり

ナツメ視点→美影視点

帰ってきた記憶はボクの引っ掛かりを取り去った。

そうか、居ないと思ってたのは……美奈だったのか……。彼女は今……どこに?


「美影。美奈は今……どこに居る?」

「美奈ちゃんか。懐かしい名前だね。彼女なら今、詐欺師のカジノで働いているよ。お父さんの借金を返す為にね」

「この世界には……居ないってこと?」

「まあ、そういう事になるかな」


良かった。

美奈の行方がちゃんと掴めた。

これであの言葉の真偽を問う事も出来る。


「でもナツメちゃん……いや、ナツメくんと呼んだ方がいいかな?」

「好きに呼べば良いよ」

「ナツメくんは美奈ちゃんに会いたい?」

「……会いたい。美奈に会って確かめたい事があるんだ」

「まあ、その願いはきっと叶わないよ。彼女はきみに会う事を拒絶してる」


美影の蔑むような微笑に腹が立った。

そんな事は美奈じゃなければ解らない事なのに。

お前が美奈を語るな!!

そういう思いを籠めて美影を睨み付ける。


「恐い顔だね。でも私をそんな目で見ても何も変わらないよ」


美影は相変わらずボク達を面白がるように見ている。それはまるで推理小説の犯人を推理している時の様に愉しそうに、全てを見落とさない様に、という観察だった。


* * *


「聞きたい事はもうない? 今しか答えてあげないよ。私にももう時間がないからね」


私は再び懐中時計を見る。

時刻は07:52

残り時間は刻一刻と迫っている。

そろそろ始めなければいけない。


「じゃあそろそろ私の話をしてあげる。気になるでしょう? さっきから勘ぐってるみたいだし。ね? トウヤくん、シンイチローくん」

「やはり気付いていたんだな」

「当たり前だよ。私は全てを知っている」


「私はね、ある願いを叶えたいんだ。そのためにきみたちのちからが必要不可欠なんだ。でも協力してなんて言わないよ。いやでしょう? こんな素性の知れない女の子の手伝いなんて。だから私は勝手にきみたちを利用するの。きみたちはただそこに居て、見ていてくれればいい」


「美影さん、貴女の願いとはなに?」


ツバサちゃんが尋ねた。


「私の願いは親友を助けること。一年前……といってもこの時間軸じゃないけど、そこで私の親友は自殺したの。そこから飛び降りてね。下の花壇で花に囲まれて亡くなった。私はそんな親友を救えなかったから、あの子を助けるの。きみたちにわかる? 大切なものを失くした私の気持ちが」


沈黙。

誰も何も言わない。

風が吹いた。

沈黙を破るように、一吹き。


「……分かるよ。……そんなの、ウチだって分かるよっ!!」

「わたしも……分かるよ。わたしも……わたしの所為で……大切な人を亡くしてるから……」

「ボクにも分かる。ボクだって美奈を失った」


違う。

こんな答えは求めていない。

私は同意してほしいわけじゃない。

賛同してほしいわけじゃない。




じゃあ……

私は一体何をしてほしかったの……?




懐中時計を見る。

時刻は08:43

あと三時間。

そろそろ始めよう。


さあ、カウントダウンを始めよう。

願いが叶うまでの、カウントダウンを。


階段を昇るみたいに、少しずつ、少しずつ、着実に近付こう。


「時間がないって言ったわよね。何をするつもり?」


マリちゃんがきつくこちらを睨んでる。すごい突き刺さるような視線だ。


……フフッ。


思わず笑った。

これから何をされるか解らないのに私を挑発する、彼女の姿が滑稽だった。


「そう焦らないでよ。もうじき始めるんだからさ」


そう、この時計の長針が12を指した時に始めようと思っている。今はまだ、その時ではないから。


もう少し、もう少し。

早く、早く。


(はや)る心を抑えて時計を握り締める。

あと五秒……3……2……1……時間だ。


「じゃあ始めよう」


私は手のひらを空に向け、腕を肩の高さまで上げる。

するとそこには一人の子供が眠った状態で現れた。丸くなってすやすや眠る子供には重力が適用されていない。


「エリー!?」

「そうだよ。エリクシア。この子が私の願いを叶える鍵の一つになるの」

「……1つ……? まだ……あるの……?」

「鋭いね、キキョウちゃん。その通りだよ。まだある」

「……なんだよ、それ」

「ランくんもようやく興味を持ってくれたみたいだね」

「もったいぶってねぇでさっさと教えろよ」

「それはね、きみたちのその能力だよ」

「意味が分からない。トウヤとかならともかく、おれたちに何の能力があるって言うんだ」

「きみたちが持っている能力はそれぞれ違うよ。トウヤくんはその目だけど、ツバサちゃんの左目もそうだよ」

「言ってる事がよく分からねえ」

「分からなくても良いよ。これで私の願いは叶う。無意識の願いの集合体、エリクシア。それと欠けた欠片を集めれば願いは叶う……!!」

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