集められた子供達
新しいキャラクターが登場。
その子の視点で描きます。
夕闇が迫る森の奥。
人目に付かない大きな屋敷の一室には一人の少女が居た。彼女は時計の秒針が時を刻む音を聞きながら何かの準備を整えていた。
部屋には当然少女以外に人は居ない。
「急がないと。『あの瞬間』で無ければ私の願いは叶わなくなる」
誰に告げるわけでもない。
少女は自分自身にそう言い聞かせていた。
手元は忙しそうに必要なものを捜し求め、小さな鞄に詰めていた。
少女が胸元のポケットから出した懐中時計が示している時間は5時27分。
部屋にあったアンティークの鳩時計とは違う時間だった。
「残された時間はあと6時間半か……。これでこの世界ともさよならすることになるんだね……」
彼女は惜しそうに言って窓を開け放った。
「早く自由が欲しいね、……。梓」
そして二階のその部屋の窓から飛び降りた。
着地した地点は学校の屋上の給水等の上だった。
「懐かしいな。よりによってこの学校とはね……」
そこは彼女が昨年卒業し損ねた学校だった。
「舞台はここなんだね。ここで全てを終わらせろって言うんだね、神様。あなたはとても……非情だよ」
自嘲気味に笑う少女の服装はその学校の制服だった。
白と茶色のセーラーブレザ-。
黒い紐リボンが胸元には結ばれていて、まるで『あの日』を思い出させるようだった。
既に陽は暮れていて、辺りは暗くなっていた。
背後から差し込む夕日が駅前の五階建てビルに反射して少女の目に映る。
「早くおいでよ。君達」
キィ……
小さな金属音がしてすぐに屋上のドアが開いたことがわかった。
見下ろすとそこには高校生くらいの女の子が居た。
目が虚ろで、身体に力は入っていない。誰かに操られたみたいに自我を感じなかった。
その子を筆頭に次々にドアは開いて、全部で10人が集まった。
最後はその場にすうっと人が現れて、ドアが閉まったその音で皆目を覚ましたみたいだ。
「ーーここはどこ?」
「何で俺達学校に……」
「わたし……店から出ないと決めたのに……」
「えっ!? ウチ消えたはずじゃ……何でまだ生きて……」
「……メアか?」
「あっ、御主人、久しぶり☆」
「久しぶりじゃねえだろ、一体あの時間はなんだったんだよ。俺にわかるように説明しろ!」
「皆さん早々とお集まりのようで何よりだよ」
がやがやと煩い中、私の一言で皆一斉にこちらを見た。11人分の視線が私に集まる。
「お前誰だ?」
「私の名前は美影。ある事情できみたち『選ばれた子供』は今日この時間にこの場所に集められたんだよ」
「子供なんて7人しか居ない。あなたは何を言っているの?」
「子供だよ、みんな。『あの時間』の中では、だけど」
「ボク達には何を言っているのか解らないんだけど。ちゃんと説明してくれる?」
「良いよ。きみたちには聞く権利があるんだから。でもその前にあの時間に戻ろうか。その方が話を聞きやすいよ」
私はそういって指をパチンと鳴らした。
するとそこにいた11人の姿が変わり、みんな子供に戻っていた。
「これは……」
「6年前のきみたちだよ。驚いたでしょ?」
微笑んだけども特に意味は無い。
「それじゃあ聞いてね。私の話」