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切り取られた世界  作者: 本郷透
12/13

一転

「う……あ……」

「トウヤ、どうした?」

「み……美影さんの……後ろに……」

「トウヤ、落ち着いて。「何が視える」の?」


何かに怯えるトウヤにマリが力強く低い声で宥める様に尋ねた。


「美影さんの後ろに……死神が居る……」


しかし答えたのはツバサだった。


「トウヤくん、無理に視えたものを答えなくてもいいよ。私にも同じものが視えてるんだから」

「ーーありがとう……ツバサさん……」

「それで? 死神ってのは今何をしているんだ?」

「……シンイチロー?」


キキョウがシンイチローの顔色を伺った。シンイチローは普段こういう事に興味を持たないのに、今日は違った。だからキキョウが不安そうにしているのだ。


「ーー美影さんの首に大きな鎌の刃を宛がってる。そのまま首を切るつもりなのかもね」

「何でそんなに聞きたがってるんだ? シンイチロー。お前普段そんな事一切気にしないだろ」

「……美影の……『願い』が痛い程分かったから……だ」

「美影の願い?」

「……美影は梓と一緒に居る事を切望してる。……俺には他人事には思えない」

「お前もそういう事思うんだな」

「……まあな」

「……美影さん……『心』が壊れそう……」

「キキョウにはそれが分かるのね?」

「……うん」

「美影に残された時間は少ないぜ。どうする?」

「ランは時間か……」

「ボクたちは何かしらの能力があるみたいだね。選ばれた子供っていうのも頷ける。残念ながらボクには何も分からないけど」

「は? 今はそんな事どうでもいいだろ。それより……」

「そうだな。じゃあ……」

「御主人待つの! さっきの事を思い出して欲しいの! 御主人の『言葉』が他人に与える影響は物凄く大きいの……!」

「俺は何も言うなってか」

「違うよ。タクトは『意志を持った言葉』を発しちゃだめ」

「分かった」


「……で、どうする? 俺らは同じ世界を共有する事ができない。てことは、お互いのサポートなんてできない訳だ」

「じゃあどうするんだよ。俺には今何が何だか分からねぇぞ」

「じゃあランの為に一回整理しようか」

「そうね。ラン、あなたには美影さんの何が分かる?」


トウヤの提案にマリが仕切り始めた。


「残った『時間』」

「トウヤは?」

「美影さんが置かれている状況」

「それはツバサさんも同じよね」

「うん」

「メアさんは?」

「ウチには『嘘』が分かるの」

「タクトさんは?」

「俺の『言葉』に意志が宿ってるって事だな」

「そうね。さっき実際にあったものね。シンイチローは?」

「……美影の『願い』が分かる」

「キキョウは?」

「……美影……さんの……『心』の声が……」

「そう……アタシには美影さんの『声』が聞こえる」

「声なんて俺達も聞こえるだろ」

「違う。声にならない声よ。美影さんの本心」

「なるほどね」

「ナツメさん、ハルカ、レオには何も分からない?」

「私は美影さんの『夢』が分かるよ。梓さんとの生活を夢見てた」

「俺は特に何も」

「ボクも」


何も分からない奴が二人……。

時間……心……願い……夢……状況……嘘……言葉……。


「あ、私は他にも『眠らせる右目』を持ってるよ」

「それは具体的にどんな力だ?」

「対象の活動を停止させるの。私は眠らせるって言ってるけど」


眠らせる……力……?

……!


「……行ける」

「どうしたの? 御主人?」

「美影を助けられる……」

「本当かよ!! タクト」


小学生に呼び捨てされたが今はそんな事気にしてられない。


「おい、小学生組」

「何ですか?」

「お前ら体力に自信あるよな? キキョウを除いて」

「まあ……あるな」

「一周目であんだけ走ったからな」

「よし……。お前ら、俺の指示が信じられるか?」


全員が言い淀んだ。

当たり前と言えば当たり前だ。

出会ったばかりの中学生の指示に従える奴なんてそうそう居ない。

ましてや、年下の奴に言われた通りに動くのはプライドが許さないだろう。

最初から何も期待しなかった。

人間なんてそんなもんだと半ば諦めていた。


「ーーウチは御主人に従うよ」

「……メア……」

「アタシも従うわ。だって司令塔にするにはぴったりの能力を持っているもの」

「ボクも。何も出来ないかも知れないけど」

「マリがやるなら僕たちも」


トウヤがみんなを見る。

みんなはそれに頷く。


「私も。何かよく分からないけど、命が掛かってるもんね」

「……みんな……ありがとう」

「作戦は? あるんでしょ?」

「当然!」


俺は力強く言い放った。

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