一分前、僕は地球を捨てた
いきなりの出来事すぎて、僕は理解ができなかった。
今日も僕はいつも通り寂しいリビングで夕食後のニュースを見ていた。速報の項目を見て、目を疑った。
・・・地球に隕石が接近中、一年後地球崩壊の恐れあり。
訳が分からない。僕は23歳だぞ?こんな若さで死んでたまるか。
僕はゲーム開発の仕事をしている。部長はとんでもなく怖く、みんなから『鬼野郎』と密かに呼ばれている。
今日も昨日のニュースが頭にこびりついているまま会社に行った。みんなゲームの案を頭から捻り出そうとPCと対面している。
「おはよう!」
隣に座っていた僕の友達に声をかけた。
「おはよう。今日もいい天気だね!こんな日が永遠に続きますように!」
あれ?隕石のニュースを知らないのか?
「昨日のニュース見た?」
気持ちを抑えきれなく、つい質問してしまった。
「ああ、見たよ!大した内容ではなかったけど」
「え?隕石の話は見たの?」
「そんなニュースねぇよ!ミステリー小説の読みすぎだ!仕事に熱中しろよ」
やっぱり知らない。昼休みに同僚同じことを聞いてみた。
やっぱりだ。みんなこのニュースは知らないのかもしれない。
「ま、こんなことある訳ないか!」
少し気が楽になり、なんとなく嬉しかった。
あの話は頭からすっかり抜けていた。
ある日会社に行くと、みんなの顔が暗かった。
「どうした?なんかやなことでもあったのか?」
僕は友達に話しかけた。
「え?お前が前言っていた隕石の話、昨夜やってたじゃないか!もうおしまいだ!希望は消え・・・た」
友達が倒れてしまった。
僕は部長に報告して、救急車を呼んだ。
すぐに数台の救急車が駆けつけ、病院直行になった。
次の日、友達は来なかった。
なんか気分が落ちつかないまま、家に帰った。
次の日、そのまた次の日と人が一人づつ来なくなった。終いには部長も来なくなった。
みんな鬱病にかかってしまったのか?そう思いつつ、会社を後にした。
どうしたらいいのだろう・・・
今夜はなかなか眠れなかった。やっと眠りについたその時、聞き覚えのある声が
耳元で囁いた。
「ゲームに、不可能はない。機械に、できないことはない。自分の想像は無限大、今世界を救う時。自然が産んだ資材を活用しよう」
・・・目が覚めた時は、朝だった。
あの夢の言葉はなんだったんだ?そういえば、体の疲れが吹っ飛んでいる。
僕は決めた。今日は一人で仕事をしよう!
– 衝突まであと11ヶ月 –
会社についてすぐさま、PCを開き、イヤホンを耳に差し込んだ。
デスクトップに、見慣れないファイルがある。何かの広告なのか?恐る恐る開くと、『君は世界を救う!地球そっくりな世界にinしよう』という文字が楽しげな背景に包まれて映っている。
そうか、わかったぞ!誰が僕のPCを弄ったか知らないけど、これはゲームに入り込んでしまえば地球衝突も怖くないという意味だ。
地球そっくりだと、生活に違和感がない!
こんなくだらない妄想を・・・と自分でも思ったが、早速僕はゲーム作成用ソフトを開いてコマンドを打ち始めた。
でも、昨日の言葉の自然が産んだ・・・はなんだったんだろう。
– 隕石衝突まであと10ヶ月 –
ソフトを作り始めて1ヶ月が経った。まだ完成は程遠いが、あと10ヶ月以内で
完成させないと地球は滅んでしまう。
今は内容や設定を考えている。会社には数千台以上のゲーム機が保管庫に入っているので、それらと通信できるようにしたらみんなで暮らせる。それを踏まえて作らないといけない。
ゲームに入るためのポータルと素材が必要だが、素材は何を使えばいいのだろう。そういえば、あの声を聞いてから毎朝疲れが吹っ飛んでいて、非常に気分が良く作業もやりやすい。
今日も仕事をやり切って寝床についた。眠りかけたその瞬間あの声が囁いた。
「入り込む素材は、A砂漠の深さ5メートルほどのところに埋まっている黒い柔らかい物体を百度の窯で一週間熱し、砕いてゲームの機械部分に小さじ一杯分
入れれば完成じゃ」
目が覚めると、やはり朝だった。
素材はわかったけど、A砂漠に行くには二日かかり、採取にも丸一日はかかる。合わせて三日はかかるけど百度の窯で一週間も熱するなんて時間が
かかりすぎる。
でも地球の運命は僕にかかっているから、今更諦めるなんて選択はできない。
とりあえず、明日は荷物をまとめてA砂漠まで行くことにする。そうすると、会社の僕のPCを持ち出そうか・・・。
– 隕石衝突まであと9ヶ月三週間 –
スターブースト夜行特急に乗って、僕の住む街を出た。スターブーストなんて言っていられるのも今のうちだぞ!
駅で買った僕の街の名物サメ弁当を食べながら、隕石に関する本を読んだ。
・・・こんなにタメになる本を書いた著者は今なにをしているんだろう。
いつの間に寝ていたんだろう。目が覚めるとそこは荒れた砂漠だった。熱風が窓から入り込んできている。
アナウンスが流れ、目的地についたことを告げた。食べかけのサメ弁当を喉に流し込み、荷物をまとめた。
降りるとそこには、考古学者や観光客で賑わっていた。
人があまり少ないところにたどり着くと、カバンから大きなスコップとツルハシを取り出して掘り始めた。どんどん掘っていき、時は過ぎていった。
休憩を間に少しづつ取りながら掘り進め、一時間を過ぎた。
カツン、と何かに当たった。
汗だくの僕の瞳には念願の黒い石が飛び出していた。嬉しさのあまり、大声を出して飛び跳ねてしまった。
周りには、人影がなかった。
周りを削っていくと、いくつもの黒い石が飛び出ていたのでツルハシで小さく砕いて三つのスーツケースに分けて入れた。
洞窟を見つけたので今日はもう寝ることにした。凍えてしまうので、ヒーターをつけるのを忘れないようにしよう!
今日は帰る日だ。帰りの列車は行きと変える。
メテオ特急と聞いて僕は飛び上がってしまった。列車の名前をつける人は、一体何を考えているのだろう。帰りの列車は行きの列車とほとんど変わらなかった。
僕の住んでいる町に着くと、今すぐベットに飛び込みたい気分だったが、今は朝10時ごろなので窯で一週間熱する作業にかかる。
しかし時間がかかるなぁ。
会社に行くと僕の机の上に封筒が置いてあった。差出人は部長と社員達だった。
中身はなんと一千万円だった。
手紙によると、部長達はもう手がつけられないから優秀な僕になんとかして欲しい、と書いてあった。優秀、と書いてくれて僕は気分が上がった。
このお金の使い道はもう決まっている。
そう、人を雇うのだ!あまりのお金で部品を買い足そう。
そうだ、焼肉でも食いに行こうか・・・いや、ダメだ。
– 隕石衝突まであと8ヶ月 –
今、僕はゲーム開発者になりたいという人物50名を会社に連れ出し、仲間達の席にそれぞれ座らせた。
なんか部長になった気分だ。年は同じくらいなのに。
「さ、さてみなさん。こんにちは!」
「「こんにちは!」」
小学生のような威勢の良い返事が返ってきた。
「隕石の話があってから・・・」
僕はこれまでの経緯と計画をみんなに説明した。
「・・・というわけで、これから地球にそっくりなゲームを作りたいと思いまーす!その前に、」
僕はあの黒い石の一塊をみんなに一個ずつ配った。
「これはね・・・」
この黒い石の話をみんなに説明した。
「なるほど!なら今から各ゲーム機にこの黒い石の粉を小さじ一杯分入れて行けばいいんですね!」
「話が早くて良いなぁ」
僕は挙手した人を褒めた。
「それじゃあ始め!」
一斉にキーボードを打つ音が鳴り響いた。
この音、めちゃくちゃ気持ち良いんだよね!
– 隕石衝突まであと5ヶ月 –
みんなのおかげで3ヶ月しかたっていないのにゲーム完成までもうすぐだった。
そういえばこの前部長から最近調子が良くないとの連絡があった。
今日も仲間達と仕事を終わらせて家に帰った。ニュースをつけると、隕石のスピードが早まり衝突が早くなると告げていた。
ということはあと3ヶ月しかない!これはまずい!明日朝早く会社に行こう!
深夜に僕のスマホがなった。部長に悪い知らせがあったとのことだ。
あの部長がゲーム完成直前に・・・部長の思い、きっと叶わせて見せる!
次の日、大事件が起こった。
隣のビルで火事が起き、僕たちの会社含む7棟が燃えていた。周りには避難した人や、消防士、救急隊員などが群がっていた。
待って!僕たちが作ったあのゲームは!?こりゃまずい!どうしよう!
僕は焦って焦りまくった。後ろには会社員が大勢いた。
この状態は消防士に任せて僕は指を咥えてみているしかないのか・・・
火が収まったら消防士が一斉に各建物に入っていき、水で消化してくれた。
中に入っていくと、なんともいえない悲惨さだった。PCは水や火で全てが故障し、壁や床は真っ黒でほとんど廃墟そのものだった。
ゲームは、僕の足元に黒焦げになっていっぱい落ちていた。すると一人の会社員が名乗り出た。
「あの、僕ゲーム持ってなくて一つ持ち出していたのですが・・・これ使えませんか?勝手にすいません」
なんてことだ!これは一番初めに作ったものじゃないか!これは0.1%よりも少ない確率の奇跡だ!
僕はすぐさまそれを取り、残りの金でゲーム機を大量に買ってそれぞれコピーした。
会社は撤去されたが、もう完成そのもの。あとはポータル作りだ!
– 隕石衝突まであと1ヶ月 –
ポータル作りはマジ簡単!
まず5m×5mの穴を掘ってその側面と床をA砂漠でとった黒い石で作った特殊な鉄で固める。その中に魔水をいれて、ゲーム機を全て沈める。それを例の鉄で蓋をする。
その外に2本の低い鉄の柱をたて、その上に鉄と黒い石で作ったリングを斜めに乗せる。
そこに特殊なレーザーを当てれば完成!
それを何個も作って世界の住民を呼び寄せた。
集めて集合するまで三週間かかった。急げ!隕石衝突まで三時間しかない。
世界中の住民は大急ぎでポータルに次々と飛び込んでいった。
やばい!あと1分だ!
僕は残っている奴らを片っぱしから押し入れた。
あと10秒!
9、8、もう時間はない!
7、6、急げ!
5、4、残りは数人しかいない!
3、2、マッハで僕はポータルに飛び込み、別世界で扉を閉じた。
さよなら、地球。
1、0!
冷や汗はまだ僕の頬を流れている。わずかな熱風と爆音が響いた。
ここから新しい生活が今、始まろうとしている。
次世代は僕らの苦労も気づかず、この裏世界に違和感を持つこともなく今も
伸び伸びと生活している。




