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娘が結婚できないので雛人形供養したら結婚できた話

作者: 昼月キオリ
掲載日:2026/03/03


3月3日。

35歳の誕生日。


「ごめんねキヨミ。私があなたが子どもの頃頃、雛人形を仕舞うの遅かったから」


毎年飾られている雛人形。

私は母の言葉を聞き流しながら雛人形を眺めていた。


私は三十五歳。恋人もいない。

いや、正確には「もう何年もまともな出会いがない」と言ったほうが正しい。

母は最初のうちは「いい人が見つかるよ」と励ましてくれたが、最近は諦めている。


そしてついにこんなことを言った。


「この雛人形、祟ってるんじゃないかしら」


「え?」


「毎年飾っても何も起きない。もしかして、この雛人形がキヨミを縛ってるんじゃないかって」


「それはないよ。本物の雛人形ならそんなことしない。

神社でよくこうしないと祟りがあるって言うのと一緒。その程度の理由で祟るなら神様じゃなくてただの疫病神だよ」


「そうねぇ・・・でもまぁいい機会だしこの子達、供養してあげようかね」


「うん」


三月三日の前日。

母は近所の古い神社に電話をかけた。宮司さんに事情を話すと、「それなら簡易な供養をしましょう」と快諾してくれたらしい。


母は目を閉じて、こう呟いた。


「三十五年間ありがとう。でも、もういいんです。

この子を自由にしてあげてください」


私は何も言わなかった。


「これでよかったのよね」


「うん」


それから2ヶ月。

会社の同期だった男から、突然LINEが来た。


『久しぶり。覚えてる? 昔、飲み会でキヨミさんが「雛人形って実は怖いよね」って言ってたの、ずっと覚えてたんだ』


覚えてる。

あれは二十七歳の頃。酔っ払って言ったやつだ。


『今度、良かったら飯でもどう?

俺、去年離婚してさ。街中で雛人形見たら急に思い出して連絡したくなった』


私はスマホを握りしめたまま、母の顔を思い出した。


今まで自分を縛り付けていた何かが無くなったような感覚だった。


私は母に伝えた。


「明日、会う約束した人がいる」


窓の外。桜は散っていたけれど若葉がまぶしく揺れていた。


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