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13話 石の異能兵

 ハーナ大尉による暴走した石の異能兵の説明が終わり、私に任務が下された。

 任務は石の異能兵の暴走を止めること。

「止めることができなかった場合はどうするんですか?」

 私の任務に隊長が1つの疑問を大尉にぶつけた。

「その場合は可能であればの話ですが…これ以上被害を出さないためにも…彼を殺してください」

 大尉は言葉に詰まりながらもそう言って、私の任務の内容は確定した。石の異能兵を止めるか…殺すかだ。

「よし…止められるように努力します」

 私はそう言って、行くための心の準備をした。隊長や隊のみんなは心配そうな顔をしていたけど、でも大丈夫。

 私は今まで、勝ってきた。それも無傷で。今回はゴールが殺すことではないのが難しいことかもしれないけど…。

「シア、無理だけはしないでくれ」

 私が一応、戦闘前の観察のために石の異能兵を一直線に見つめていると、横にいた隊長がそんな言葉をかけてくれた。

「大丈夫。今までも無理してきたと思ってないから」

 私はそう返して、心の準備は完了した。


 心の準備を終えた私はハーナ大尉にもう出ていいか、確認を取った。

「あぁ、『鬼神』様がよろしければ…好きなタイミングで始めてください。もう、私たちが関与できる次元ではないので…」

 大尉のその言葉に私は土塁の壁から出て、鬼の姿へとなった。

「ここも同じだ」

 どこの戦場も変わらない。互いに命を奪い合う場所。そして、私が鬼になると全ての人の視線が私に向く。私の存在に誰もが意識してしまう。それは異能兵でも例外ではない。

 私がこの戦場に来て、今まで動くことがなかった石の異能兵が私が鬼になった瞬間、私の方を向いた。それに警戒する表情にも変わった。

 さらに表情が変わってすぐに私の方に顔だけでなく、体までも向きを変えた。表情だけじゃない。体全体で私を警戒している。警戒するっていうことは、脅威と認識しているということだ。

 そんなことを思いながら歩いて近づいていると、石の異能兵が行動を始めた。石の弾丸を撃つみたいだ。


 石の弾丸が私に向けられる。ハーナ大尉が言っていたように先端が鋭く尖っている。それに何故か、その弾丸に意識が持ってかれる。

 私がその石の弾丸を見ていると、10発あった全ての弾丸が発射された。でも、銃弾よりも少し速いぐらいだから、目で追える。

 何も問題はないはず。なのに直感が…あの弾丸を警戒している。脅威に感じてる。

 でも、考えている時間はなかったから、私は全弾を簡単に避けた。地面に着弾した弾丸は、そこに着弾したとすぐに分かるぐらいの穴が空いていた。

 私が穴に目を向けていた一瞬の間に石の異能兵は次弾の準備が整っていた。しかも、さっきの倍以上の弾数だった。

 私は地面を思いっきり蹴って、走って一気に距離を詰めることにした。このままだと、近づけずに時間を無駄に使うだけだと思った。

 私が走ると石の異能兵は少し顔を歪めたが、石の弾丸を発射してきた。でも、私を捉えられないんだろう。1回目の私の近くに着弾した弾丸と違って、私の方向に全体的に土煙を立てながら着弾させてる。

 私は弾丸を目で追えて避けれる。だけど、周りが土煙で覆われたら、弾丸が目の前に来ないと見えなかった。


 私の周りに弾丸が近くに着弾したことで土煙が舞って、視界が悪くなった。そんな時だった。目の前から現れた弾丸が見えたのは…。

 私と弾丸の距離は、手を伸ばせば届きそうな距離。私の直感は弾丸を避けることを決めた。

 私は体を右に傾けて、弾丸を避けようとした。でも、間に合わなかった。左肩に被弾した。

「痛っ…」

 石の異能兵が放つ弾丸は私の体に擦り傷ではあるが、傷を付けた。軽傷といえど、鬼になって初めて傷を負った。

 私は怪我を負って動揺したのか、すぐに後ろに下がって距離を取ってしまった。近接特化の私と違って、石の異能兵は遠距離を攻撃できるのに…。

 そのことで私はハッとして、また距離を詰め直した。石の異能兵による攻撃が続く中で私は弾丸だけを見て、着弾地点を予測して走った。

 正直、考えながら戦うのは性に合わない。でも、自分を傷つけることが可能な攻撃。私の中の鬼が昂って、思考がいつも以上に回る。


 カサン国の氷を使ってた異能兵を殺した時に、私が喜べなかったのは自分が人に戻り始めていたからだと思ってた。でも、今は違うと感じてしまう。

 私はただ、退屈だったんだ。私の中にある鬼の興が湧かなかっただけなんだ。

 今、相対している石の異能兵は私に傷を付けることが出来る。すなわち、私を殺せる存在。

 今までできなかった対等な殺し合い。今回はそれが出来る戦い。

 あぁ…私はやっぱり異能兵なんだ。

(良いじゃないか)

 そう思っていたら、初めて鬼になった時に聞こえた声が頭の中に響く。

「そう…かもね」

 私はつい、その声に同調するかのように言葉が漏れた。でも、不思議とすんなり、言葉が出てきていた。

 それに私から見える景色がさっきよりも、時間がゆっくりと進んでいるように感じた。


 何十発の石の弾丸が私を襲うけど、もう当たる気がしない。弾速は遅く感じるし、前よりも体が軽いくて、思い描いたように動ける。

 そして、私は石の異能兵がいる中央の土塁の内側へと入った。それでも、まだ全然距離があったが、もう数歩で間合いに入る距離だ。

「俺はもう、自由なんだ!」

 石の異能兵に近づいたことで彼の声が聞こえた。それで私は頭から抜けてしまっていた任務を思い出した。

 これは殺し合いではなくて、彼の暴走を止めるための戦い。でも、私の目には彼の異能そのものが暴走しているようには見えなかった。

「この力があれば、もう奪われない。俺は奪う側になったんだ!」

 多分、これは石の異能兵である彼自身の暴走だ。今までの兵器として、道具として扱われてきたことへの不満の爆発だ。

「使われるだけのお前が俺の邪魔をするな」

 彼がそう言うと全身に石を纏った。氷を纏った異能兵の石バージョンだ。

 じゃあ、ここからは近接戦だ。


 石の異能兵が石を全身に纏った次の瞬間には、私は彼の元に辿り着いていた。彼は動揺してか、私が目の前に来ると後ろに一歩だけ下がった。

 でも、すぐに攻撃が来た。1発の超近距離の石の弾丸だ。近接格闘を想定していた私としては不意を突かれた。

「あぶっ」

「くそっ」

 弾丸を目視で確認した私は即座に避けて、油断からかガラ空きの足に蹴りを入れた。すると、蹴ったところの石は砕けて、彼はバランスを崩して転けた。

 その時に私は一瞬油断してしまった。彼は転けながらも拳を振り下ろしてきた。私は避けるのが間に合わず、腕で攻撃を受けた。

 私は攻撃を受けたことで少し後ろに飛ばされた。でも、傷は負わなかった。私に傷を付けられるのは石の弾丸だけみたいだ。

 転けた彼もそれに気付いたのか、石の鎧をそのままに石の弾丸での攻撃を再開し始めた。

 私はその弾丸を避けながら、再び彼へと距離を詰めていった。


 私が距離を詰めても、彼は私を見ながらも後ろへと下がっていく。それに近づけば近づくほど、石の弾丸の数が増えていく。でも、着実に近づいている。

「くそっ…くそっ、くそっ!」

 石の弾丸と共にそんな声が聞こえてきた。やっぱり、異能兵は一般の兵には無双できるんだろう。だからこそ、彼にとっては一瞬で決着がつかないのは予想外なんだろう。

「何だよ…お前は!」

 そして、石の弾丸を避けきって、私は彼を間合いに収めた。彼はもうそれは想定内になっていたみたいで、最初に近づいた時みたいに超近距離の石の弾丸を飛ばしてきた。

 一度経験したその攻撃に私は油断しているつもりはなかった。でも、どれだけゆっくり見える弾丸でも避けるのが精一杯だった。

 私がその弾丸を避けると彼は隙だらけの私に攻撃せずに後ろへ下がっていった。

 そして、また石の弾幕を張って私を牽制してきた。最初に逆戻りだ。

 私は再び、弾丸を避けながら距離を詰めることになった。


 再び、弾丸を避けながら私は彼に近づくのを試みた。でも、今回は何故か一定の距離以上が近づきにくくなっていた。

 私はその理由を探るために弾丸を避けながら、観察をすることにした。

 それからしばらく観察して、その理由がなんとなく分かった。弾幕の張り方が少し変わっている。

 さっきまでは斜め上から一直線に飛んでくるだけだったけど、今は斜め上からなのは変わっていないけど、左右の斜め上からも飛んできていた。というか、単純に弾丸の数が増加していた。

 時間が長引くにつれて、私が知らない領域に入って行く。今まで2回、異能兵と戦ったがどっちも私が圧倒した、短期戦。長期戦になった場合、私はいつまで鬼を維持できるのか分からない。

 でも、そんなことを考える暇は無くなった。なんなくだが、彼に近づく道が見えた。

 私は見えた道を出せる全力で進んで、私は再び、彼を間合いに捉えた。

 彼は近づかれると思っていなかったのか、超近距離の弾丸の用意がほんの少し遅れていた。


 彼が弾丸の用意を遅れたことで、私は彼の胸の辺りを殴った。それと同時ぐらいに超近距離の弾丸が私の頭目掛けて飛んできたが、殴る勢いで姿勢が低くなったことで私はそれを避けた。

 その後、私は殴り飛ばした彼の状態を確認しようと顔を上げたら、彼は地面に倒れながらも私目掛けて弾丸を飛ばす瞬間だった。

 それを認識した次の瞬間には弾丸が発射されていたが、私は咄嗟に避けて少し距離を取ってしまった。

 近接戦が染み付いている私は危険を感じると直感で距離を取ってしまう。そのせいで石の異能兵である彼はもう、立て直していた。

 私がせっかく殴ってひびを入れた石の鎧が修復されてしまった。というか、本気の殴りが鎧にひびを入れることしか出来なかった。

 立て直しが終わった彼は私から再び距離を取ろうとして、石の弾幕を張ろうとした。

 私は距離を取られないためにすぐに距離を詰め直したら、彼は腕を振ってきたが、私は拳を振り返して腕の部分の鎧を砕いた。


 私の拳は腕の鎧は砕くことができた。胸の鎧とは厚みが違うみたいだ。

「はぁ!?」

 鎧が砕かれた彼は驚きを声に出したが、すぐに私から離れようとした。だけど、私はすぐに彼の足を踏んで、彼は思いっきり後ろに倒れた。

 私はすぐに倒れた彼に殴りかかろうとしたが、彼の抵抗は激しかった。超近距離の石の弾丸が5発ほど飛んできたのだ。

 そのうち2発は私に当たらない場所に飛んで行って、1発は避けた。残りの2発は避けれそうになかったから、1発は殴って破壊し、もう1発は掴んで止めることが出来た。

 殴って破壊した時に拳の皮膚が少し抉られたがその時には痛みはあまり感じなかった。

「ふざけるな!ありえないだろ!」

 彼は私が超近距離の石の弾丸をほぼ無傷で対処したことにそんなことを言っていた。

 私はその声を無視して、まだ地面に倒れたままの彼の胸の辺りに倒れる勢いを乗せた本気の拳を入れた。


 私の拳に彼は腕を胸の前に持ってきてガードをしようとしたが、私の拳の方が速かった。

 そうして、私は彼の胸の辺り重い一撃を叩き込んだ。

 私の拳が入ると、周りは土煙に覆われるほどの威力が出た。

「やべっ…」

 止める任務なのに殺す可能性があるほどの重い一撃だったから、そんな言葉が口から漏れた。

 それで、私は土煙が薄くなるまで焦ることになったが、土煙が薄なってから彼を見て安堵することが出来た。

 彼は白目をむいて動かなくなっていたが呼吸が聞こえた。多分、気絶しただけだ。

「…俺は……自由になるんだ」

 私は彼が死んでないことの確認ができて安心していたら、彼のその言葉が聞こえた。もう、気絶から目を覚ましたみたいだ。

「…えっ!?」

 私は彼をこれ以上傷つけないようにと、少し距離を取った瞬間だった。地面が盛り上がったと思ったら、私は空に飛ばされていた。


 空に飛ばされた瞬間は私は焦った。だけど、そんなに高くないと思った。鳥の異能兵を落とす時に跳んだ高さに比べれば高いけど、倍も無いぐらいに感じたから大丈夫な気がする。

「どうしよう…」

 でも、私は着地する場所を悩んだ。高さがそこまで無いからすぐに地面に落ちる。このぐらいの高さなら、着地に失敗しなければ無傷だろう。

 問題は彼の近くにしか着地できる余裕がないことだ。私が着地した衝撃とその衝撃によって盛り上がった地面は崩れて、彼に覆い被さるだろう。

 いくら考えても答えが出なくて、私はそのまま彼の近くに着地してしまった。

 着地して、しばらくは土煙に覆われた。私はその時に気がついた。異能兵であればオーラが見えるから、それで生きているかを確認できる。

 だけど、私がいくらオーラを探しても見つけることが出来なかった。

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