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プロローグ 大戦の幕開け

「ねぇ、師匠!」

「なんだい?」

「師匠の異能ってどんなの?」

「私の異能か…私の異能は鬼だよ」

「鬼?それってどんな異能」

「うーん、私は鬼の異能を使いこなせたことがないから…わからないなぁ」

「えー、なんで使えないの?異能って適性がないと手に入らないんでしょ」

「そうだね。でも、この異能は特別なんだ。これは彼女から私に継承された異能だから…」

「彼女?…師匠の恋人?」

「いや…彼女は私の戦友。そして、始まりの鬼の鬼神」

「始まりの鬼?鬼神?」

「あぁ、こんな話をしていると懐かしいな。…そうだ、少し昔の話をしようか。今も続く世界大戦の、最も激しかった時の話を…」


 その戦争は『スンセン国』と『メンネイ国』の小さな2つの国の争いが世界全体へと広がっていったことで始まった。

 最初は二国が1つの領土を求めて争っていた…だけだった。だが、スンセン国が不利になり始めた頃に隣の国の『シスレイ国』に救援を求めた。

 救援を求められたシスレイ国は最初は無関係だと断っていた。それでも救援を求めていたスンセン国はシスレイ国に対して、「シスレイ国が救援を求めてきた場合はすぐに応じる」とまで言って救援を求め続けた。

 シスレイ国はスンセン国の反対側の隣の国の『ネレ国』とは昔から小競り合いを何回もしていた。

 シスレイ国はその小競り合いがそのうち、大きな戦争に発展することを警戒していた。そんな時にきた「いつでも助ける」と言う約束。

 シスレイ国にとって、それは価値のあることだと考えるものたちが大勢いた。

 その結果、シスレイ国は2つの国の戦争に介入した。だが、それを見た周りの国々は「それはおかしいだろ」と言い、その戦争へと参戦を始めた。

 その結果、のちに『世界大戦』とまで呼ばれる大戦へと拡大していくこととなった。


 その戦争は開戦当初、『センテル地方』の東の端の小国達の少し大きめの戦争でしかなかった。

 だから、私が所属していた国の『テンレイ国』は近くではあったが傍観していた。周辺の中〜大規模国家も傍観していた。

 開戦当初に参戦していた国は『スンセン国』側に『シスレイ国』、『エンレン国』、『ヘンセン国』、『カネン国』の五カ国。『メンネイ国』側に『ネレ国』、『ノフル国』、『テレンロ国』の四カ国。スンセン国側は『同盟陣営』、メンネイ国側は『連合陣営』と互いに呼んで牽制しあっていた。

 しかし、ここで戦線拡大の引き金となる事件が起きた。

 同盟陣営のカネン国が北側の隣国の『ルレン国』に対して攻撃を行った。カネン国は攻撃を否定したが、ルレン国は連合陣営側で戦争に参戦をした。

 私の所属するテンレイ国はルレン国の隣国で同盟を結んでいた。同盟の内容は「どちらか片方が複数相手に戦争をする場合、もう片方がその戦争に参戦する」というものだ。

 故にテンレイ国はルレン国と共に連合陣営側に参戦した。


 戦争に参戦した私の所属するテンレイ国はセンテル地方の中では大国である。そのため我が国が参戦したことで戦争は終戦へと向かうと思われていた。

 戦場から離れたセンテル地方の西側の国々は終戦すると考えて日常生活に戻り始めていた。だが、その予想は外れた。ある国がテンレイ国とルレン国が戦争に参戦したことに不満を覚えていた。

 その国ーー『アーロイト国』はセンテル地方で1番の大国と呼ばれ、東側の戦場である国々の北側にあった。不満があるアーロイト国はすぐに同盟陣営で参戦した。

 その情報を聞いた各国は混乱して、まともな判断ができなかった。これはこの戦争がさらに拡大する原因となった。

 混乱していた各国は戦争にすぐには参戦はしなかったが、当時、使われていた武器である小銃の製造と徴兵を急ピッチで行った。そのため、隣国同士で戦争に介入するのではないかと懐疑の目で互いに見合っていた。

 それでもこの時はセンテル地方での戦争だと思われていて他地方では一時的なものだと思われていた。だから他地方には広がらないと楽観的に考えられていた。


 戦争が開戦して、しばらくは元々戦争をしていた小国が中心で居続けた。途中参戦をした我が国とルレン国は連合陣営に武器と兵の支援をして、アーロイト国は同盟陣営に同じように支援をした。

 三国はセンテル地方の大国側であるため、大規模な戦争を避けるために本格的な参戦は避けていた。

 そのため、戦争の終結に向けての話し合いも行われていた。だが、話し合いは平行線であった。

 どちらも相手が先に戦争から手を引くことを条件に自分達も手を引くと言って引き下がらなかった。

 そんな状況がしばらく続くと本格的な戦争をしている小国達に不満が溜まる。

 大国側が参戦したのに今までと変わらない戦争。武器と兵が供給されてあまり減らないこと以外、状況は変わっていなかった。

 小国達は大国側の本格的な参戦を懇願していた。小国の民衆は「このままでは終わらない」と口々に言い、「今なら一気に片をつけられる」と希望的観測で騒ぎ立てていた。

 そのため、三国の首脳陣は迷っていた。話し合いは平行線。小国の民衆からは本格的に参戦して欲しいという声。

 だが、一手を誤れば戦火は全土に広がる。故に本格的な参戦には億劫になっていた。

 そうして、三国は無駄だと思い続けている話し合いの席に着く。それが三国の最後の対話になることを知らずに…。


 三国の話し合いはいつものように平行線であった。互いに戦争から手を引く条件を最後まで変える気がなかった。

 その結果、話し合いの答えは出ず、また次があると考えて各国の使者はその場を後にした。

 そんな中、結果が変わらない状況に小国だけでなく大国側の民衆までもが不満を露わにし始めた。

 それだけだったのであれば良かったかもしれない。三国それぞれの状況は危機に直面していた。民衆が2つに割れてしまったのである。

 2つに割れた民衆は「戦わずにさっさと終戦させろ」と言う、話し合いなどで平和的な解決を求める平和派と「本格的に参戦して戦争を終わらせろ」と言う、軍による制圧などで過激的な解決を求める過激派に二極化してしまった。

 三国の首脳陣は対応を協議するために連絡を取り合った。だが、話し合いをしようとすると過激派がそれを阻止しようと使者を囲んで話し合いの場に行かせないようにする。

 逆に軍を動かそうとすると平和派が行軍中の軍の前に立ち塞がって軍を進めないようにする。

 三国は和平も戦争も選べず、何も出来ない状況が出来上がってしまった。


 三国が何も出来ないことで戦争は泥沼化していた。この状況でまともな判断を出来るものなどいない。

 小国の民衆は戦争で勝利することのみを考えて、和平の道など考えていなかった。それに感化されてしまっていた小国の首脳達も戦争を継続した。

 その結果、民衆が暴走して農具を持って、敵の塹壕に飛び込んで、一方的に撃たれる事が起き始めた。

 これを聞いた首脳達は普通であればこんな事が起きないように対策をするものであろう。だが、小国の首脳達は民衆を「勇ましい者」だと言って、全国民に強制徴兵を行った。

 一国が行う事でそれに続くように戦争に参加する小国全てで行われた。

 そして、徴兵された民衆は「この戦争は俺たちが終わらせる」と言って自ら前線へと喜んで突き進んで行った。

 そんな無謀を勇敢と勘違いした人達は前線で命を散らしていった。大怪我はしたけど、命は取り留めた人は「まだ戦える」と言って、再び前線へと向かった。そんな異常とも言える状況が出来上がってしまった。

 だが、参加する誰もが異常だとは思わずにその行動を讃えてしまっていた。

 そうして、前線は狂気の場と化していた。


 その小国達の状況を見て、周辺国家はこの戦争の異常性に当てられて気が狂ったのか、小銃の製造や徴兵を必要以上にし始める。

 それはセンテル地方だけで留まらず隣接する他地方にも広がっていった。でも、センテル地方から離れた他地方はまだ、戦争が「今までで一番でかいだけ」として傍観していた。

 そんな中、戦争を一変させる出来事が起こる。アーロイト国が新兵器を完成させたのだ。

 その新兵器は各国が独自に実験を繰り返していて、互いに実験のことを秘密にするほどのものであった。それは実験の内容が非人道的であったため、各国はそれを秘匿していた。

 各国はそれぞれの国でその実験をしていることは分かっていたが自国もやっていると言うことで黙認していた。そして、他国を出し抜くために情報の共有をせずにいた実験でもある。

 そして、完成された新兵器の名は『異能兵』。約十年前に突如発見された『異能』を国に従順な人に与えて、兵として使うというものだ。

 しかしながら、国に従順な人はそう多くはいない。故にいなくなっても誰も気にしない孤児達を洗脳教育をして使っていた。

 だが、今まで異能兵がいなかったのは異能に適合する子が存在しなかったからだ。異能を与えても拒絶反応を起こして死んでいく。故に人に異能を使う事ができない。

 それがこれまでの常識だった。


 アーロイト国の異能兵はすぐに戦争に投入されたことで各国の上層部に情報が駆け巡った。

 聞いた情報では異能兵は1人で1個師団並みの強さだと言う話だった。

 それにより連合陣営は多大な被害を受ける。形勢は同盟陣営が大きく有利となった。

 その情報で我が国とルレン国の民衆の空気が一変した。過激派の勢いが増したのだ。

 民衆の影響を受けた二国は戦争へ本格的に参戦をすることとなった。

 ルレン国は北東の隣国であるアーロイト国に軍を動かし、テンレイ国は最前線に大軍を送った。

 当時、異能兵はたった1人しかいなかった。だが、その1人が前線を大きく変えたのも事実だ。

 最前線は1人の異能兵に連合陣営だけでなく同盟陣営も振り回されていた。

 異能兵は1人で連合陣営の陣地に突如として現れて暴れたと思えば、すぐに姿を消す。その後に追いかけてきたと思われる敵兵がぞろぞろやってくる。

 その時は我々の反撃の好機となっていた。統率が取れずに無策で陣地に入ってくる敵。異能兵にやられたフリをして急襲するのは容易かった。

 私がいた最前線ではそんな戦いが繰り広げられていた。


 そんな時、センテル地方の隣でアーロイト国の隣国、ルーレンド地方のホードン国と呼ばれる国が異能兵の情報を渡せとアーロイト国に迫った。

 ホードン国は世界で見て、大国中の大国。国土で言えば、アーロイト国の倍以上もある国だ。

 世界中はホードン国とアーロイト国の情勢を注視することとなった。場合によっては戦争がさらに拡大することとなる。世界は固唾を飲んで二国の行動を見守る。

 その結果は最悪だった。

 アーロイト国は情報提供を拒否。ホードン国は武力で脅しを始める。

 二国の周辺国家は「武器を今すぐ作れ!」と言ったり、「離れた国に逃げるぞ!」と言ったりして、荒れに荒れた。

 ホードン国が参戦すれば、センテル地方だけの戦争ではなくなる。もしかしたら、別の地方の国まで参戦するのではないのかと気が気で無くなる。

 武力で脅されたアーロイト国は前線から異能兵を国に連れ戻して、逆にホードン国に対して異能兵という力で対抗する。

 それはホードン国が戦争に参戦するのは時間の問題だと、世界中の人々が察する最悪の出来事であった。


 周辺国家が慌ただしくなっている中、私は前線から本国に呼び戻された。呼び戻されたのは私と他に3人いた。その3人と私は面識があった。同じ軍学校でチームを組んでいた友人だ。場所は違えど、皆、最前線に派兵されていたみたいだ。

 私たちは呼び戻される理由が分からず、国に帰る軍用車に乗り、緊張の中で国に着くのを待っていた。

 軍用車に揺られて、数日。私たちはとある建物の前で降ろされた。石造りのボロい建物。見た目から人が住めるような建物ではなかった。

 私たちはその建物の中へと案内される。中は盗みにでも入られたように荒れている。そう思っていると奥へと案内されていく。

 奥へ着くと案内人が床の一部を持ち上げて、地下室への階段が出てきた。私たちはその光景に顔を見合わせるがすぐに地下室へと案内された。

 地下室へと向かう階段は異様なほど静かで、自分たちの足音だけが響いていた。

 階段を降り終えても地下室はなかった。あったのは薄暗くて終わりの見えない廊下。私たちは何も言わずにその廊下を歩いた。

 廊下をしばらく歩いた先に一つの扉が見えた。私たちはその扉の先に到着して、ここが目的地であったことをその時に初めて知った。だが、その地下室には私たち用と思われる椅子しか置いていなくて、私たちが入ってきた扉と別の扉が一つしかなかった。

 私たちはしばらく、椅子に座って待っていた。その時はこの後に起きることなど、全く想像できていなかった。

 この地下室で私はこの後の人生を大きく変える、『神鬼』と呼ばれることとなる彼女に出会ったのだ。

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