緊張と緩和
外では――
魔獣たちが一斉に吠えた。
リオネル騎士の喉がごくりと鳴る。
「リオネル…リオネル?…もしかして…
あの大酒飲みのドランクさんの息子かな…?」
店長が悩み始める。
「うーん…あの人常連だしなぁ…」
ゴルダさんの方をチラッと見る。
魔獣の群れが外で唸り声を上げているというのに、
店長のぼそりとした独り言が、妙に店内の空気を和ませた。
◆ゴルダさんの反応
店長の視線を受けたゴルダさんは、巨大トングを肩に担いだまま、
ほんの少しだけ目を細めた。
「…えぇ、そうよ。リオネルはドランクの息子。
あの人、昔は“獅子殺し”なんて呼ばれてたけど…
今じゃ酒場で酔いつぶれて、うちの“二日酔いポーション”を常連買いするだけね」
淡々とした声なのに、どこか懐かしさが滲む。
「息子の方は…まあ、真面目だけど不器用。
剣の腕は悪くないけど、度胸がね…」
ゴルダさんは、外で震えながら剣を構える若い騎士をちらりと見た。
「…あの子、父親と違って真面目ないい子なのよ、
店長、あんまり無茶言わないであげて。」
その声は、いつもの豪胆さとは違い、
ほんの少しだけ柔らかかった。
◆外の状況
魔獣の群れは、リオネル騎士を中心に半円を描くように包囲している。
リオネルは、店長の言葉を聞いてしまったせいか、
逆に腹を括ったように剣を握り直した。
「見ててください…ぼ、僕…やります…!」
声は震えているが、
その背中は確かに“覚悟”を帯びていた。
ゴルダさんに言われちゃ仕方ない。
店長は魔導フォンをピピピっとタップして王国騎士団詰所に魔話する。
「あのーおたくのリオネル・グランツさん、
クリスタルマート前で魔物に囲まれてちょっとヤバそうです、はい…はい、
ええ、わたし?店長の鈴木です、はい。
営業できないので早くなんとかしてください。
はい、はい、よろしくお願いします。」
プッ
「ふぅ…これでよし。」
店長は魔導フォンを置いて伸びをする。
「ミナちゃん、ゴルダさん、これ観ながら休憩にしよっか。コーヒーちょうだい。」
店内に“妙な安心感”が広がった。
店長の雑な通報が、逆に状況を落ち着かせてしまうあたり――
クリスタルマートは今日も平常運転だ。
読んでくれて感謝です!
ドランクはあだ名です、禿げてます。




