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241  作者: Nora_
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04

「あ、きた」


 直前に絵夢ちゃんから連絡があったから驚きはないものの、なんで? と気になってしまう件だった。

 だって相手は、


「お、小牧だよな?」

「うん」


 そう、羽原君だから。

 聞けば羽原君の方から教えてくれと頼んできたという。

 とりあえず外で集まることになったから問題もない服に着替えてお家をあとにした。

 二人きりで過ごすのはなにも今回が初めてというわけではない。


「お、来たな」

「こんにちは」

「おう!」


 うん、あのときと変わらないいい笑みを浮かべている。

 私と二人きりのときにもこれなのは正直に言ってすごいと思う。


「あのさ、青戸のことで聞きたいことがあったんだ」


 ああ……結局はこういうやつか。

 増井先輩みたいによく絵夢ちゃんのことを口にしていたからいま思うと露骨だった。

 それでこれまでなにも聞いてこなかったのにプールで男の子、先輩といるところを見て聞いてきたということは、まあ誰だってわかるよね。


「一緒にいた男の人が好きなんだろ?」

「わからないかな」

「隠す必要はないぞ、青戸は相変わらず年上好きなんだな」


 自分一人で考えて答えが出ているのならいちいち集まる必要はなかったと思うけど。


「でも、そうしたら小牧は一人――あ、そういえば友達がいるんだったか」

「うん、結構来てくれるよ」


 お友達のお友達レベルとか言ったらまた「そんなに寂しいことを言うなよ」と刺されそうだ、だからこういうところから気を付けておかなければならない。


「なら安心だ! 小牧はいつも平気そうな顔をしていたけど本当のところは誰かといられることを求めているからな」

「うん、ずっと一人じゃ無理だよ」


 弱音なんかも吐いたことはなかったけど色々とわかられていそうだった。

 どういう顔をしていたとかは本人よりも相手をしてくれていた彼や彼女らの方がわかっているだろうから強気には出られない。

 そんなことはなかったけどねなんて言ったところで「嘘だな」と言われて終わるだけだろう。


「本当は俺が近くにいてやれればいいんだけどなあ、別々の高校だからな」

「はは、羽原君に甘えたことはないよ」

「いっつも線を引かれていたよな、いまだから言うけど寂しかったんだぜ?」

「だってメインは羽原君とえっちゃんだったから」

「それでも一緒に過ごしてきたんだから友達だろ、もっと頼れよ」


 でも、もう近くにはいないのだ。


「羽原君が中学生のときみたいにいてくれたらまた違っていたかもね」


 顔を見てしまったからなのか走っている間なんかにも似たようなことを考え続けていた。

 普段ならすぐに切り替えられるのにどうしたというのか、実は意識していたことから影響を受けていたりなんかしたら恥ずかしくてやっていられなくなる。

 

「そうだろうな」

「はは、自信満々だ」


 まあ、そんなことはないとして、彼はどちらかと言えば先輩寄りだ。

 余裕があってわがままを言っても聞いてくれる感じ、実際に絵夢ちゃんに対してはそんなことばかりだったからこれも勝手な妄想では終わらない。


「いやーあの男の人といるときは笑っていなかったのに俺のときは違うからな」

「出会ったばかりだから、流石に差があるよ」

「だよな、差がなかったら寂しいし」


 あ、これはここで解散になりそうだ。

 メインの片方だけいてももう片方がいなければいつもそう。

 私としても変に粘られても困るだけだろうからいいと言えばいいか。

 なんか変な意地を張って相手から切り出されると嫌だから自分から動くことにした。


「じゃあこれで」

「待てよ、まだいいだろ」


 これ、私が頼む側だったら聞いてもらえなかったと思う。

 証拠は中学生のときの私だ、自分に甘いからすぐに相手に甘えたくなるけど彼は露骨すぎてできなかった。

 なにも私だけに問題があるわけではないのだ、そう棚に上げておく。


「別に止めてほしくてこんなことをしたわけじゃないからね?」

「ならなんで?」

「だって羽原君が解散にしそうだったから、時間が経過してからならいいけどまだ三十分も経過していない状態で相手から動かれたくなかったんだよ」

「別に解散にするつもりなんてなかったけどな。それより連絡先を交換しようぜ、これもずっと気になっていたことなんだよ」


 嘘でもなんでも勢いで出したことでもまだいられるならいいか。

 ということで小学生から一緒にいるお友達の連絡先を今更ゲットすることになった。

 家族と絵夢ちゃんしか登録されていないそこに同級生の男の子の名前があるのは違和感しかなかった。


「青戸に好きな人がいるならあんまり会うべきじゃないからな、小牧が相手をしてくれよ」

「なんかごめん、差がありすぎるよね」

「おいおい、いつもそんなことを考えていたのか? ま、こうして小牧も色々と吐いてくれるようになったから本当に動いてよかったぜ」

「そうなんだ」


 ただ連絡なんかこない前提でいようと思う。

 前みたいに簡単には会えないからだ、甘えたくなったら困るからだ。

 そういうのもあって特に変わっていないというのが本当のところだった。




「もう夕方だな、はは、俺らのことを確かめるだけでこんな時間になるなんてな」

「帰りたい気持ちにはならなかったよ、羽原君は流石だね」

「お、それならよかったよ。だけどそろそろ家まで送って解散にしないとな」

「羽原君がいいなら上がっていかない? お母さんも久しぶりに会いたいだろうから」

「なら上がらせてもらおうかな」


 付いてきてくれるようだったから連れていった。

 久しぶりから始まってこちらの方が同級生なのではないかと言いたくなるぐらいには盛り上がっていた。

 なんかもう気にしてもあれだから絵夢ちゃんを呼びだすことにする、こちらもすぐに『わかった』となったから楽でいい。


「久しぶりだなっ」


 わかりやすく嬉しそう、これは最初から呼んでおくべきだったかもしれない。

 このあと一歩が足りなくてお友達を逃してきてしまったのだとしたら……もったいないとしか言いようがなかった。


「久しぶり、羽原君も変わっていないわね」

「まあまだ一年の夏だからな、わかりやすく変わりすぎていても怖いだろ」

「また二人が来てくれて嬉しいわ」


 私のお仕事は二人をお家に連れてきたことで終わっているからご飯ができるまでは客間の方で大人しくしておくにした。


「ふぅ」


 今日は座ったままの時間が多かったから足が疲れた、走ったときと同じぐらいには疲れが溜まっているかもしれない。


「羽原君と楽しかった? それとも、帰るに帰れなくて困ったのかしら?」

「おい」

「ううん、楽しかったよ」

「ふふ、それならよかったわ」


 あー……だからここも下手くそだったか。

 これでは母が可哀想だから二人を連れて戻る。


「あ、もう戻ってきた」

「お母さんごめんね?」

「謝らなくていいわよ、二人だって静代といたいのよ」


 いたいというかそうするしかなかったというか、うん、そうやって後から考えるくせに勝手に抜けた私が悪いから謝る必要があったのだ。

 

「いまから作るなら私も手伝います」

「そう? ありがとう、一緒に頑張りましょうか」 


 彼女らしいけどできれば彼の相手をしてあげてほしかったなあ。

 だって彼は私とお昼前から一緒にいたわけでもう話したいこともないだろう。


「小牧も座れよ」

「うん」


 距離が近いのが気になる、けど、あくまで昔と同じで安心している自分もいる。


「無理だとはわかっているけどやっぱりいてほしかった」

「お、おう、学校の話か」

「そうすればえっちゃんも安心できただろうから」


 それでも好きになる人は変わっていなかっただろうけど。

 詳しくはわからないけどなにも春に出会ってすぐに好きになったわけではないらしいからね。


「小牧は?」

「私からいてほしかったって言っているんだよ? その時点でわかると思うけど」

「はは、だよな!」

「羽原君は優しいけどやっぱり意地悪なところもあるよね」

「いや、俺はただただ優しい人間だ」


 自分で言ったら駄目ではないだろうか。

 だけど彼のおかげで気まずい時間とはならずにそのままご飯の時間となったのはよかった。

 当然、食べ終えたら解散の流れになるけど今日は十分優先してもらえたから満足できている。


「今日はありがとう」

「いや、こっちこそありがとな」


 彼女のことを送ってもらうように頼んであるから今回はここまでだ。

 戻ってなんとなくお部屋にいこうとしたら「ちょっと待って」と母が止めてきたからリビングに寄る。


「やっぱり羽原君はいい男の子よね、他校なのが少し痛いところだけど」

「いい子はそうだけど今日だけだよ」

「もう、静代はすぐにそんなことを言うんだから」


 あの子のことを聞いたり言いたかったことがあっただけなのだからそんなものだろう、後半の私がおかしかっただけなのだ。


「というか、学校での話ももう少しぐらいは教えてもらいたいところだけどね、どうだった? って聞いてもいつも問題なかったよと答えるだけじゃない」

「男の先輩とはいられているけど」


 一緒に遊びにいったりもしているけどあくまでおまけの域を出ないからこういう言い方をするしかない。

 増井先輩の意思で私といたくて誘ってくれたとかだったら私だって意地を張らずにいちいちおまけの~なんて考えたりはせずに済むのだ。


「そ、そういう話をもっとしなさいよっ、羽原君とどっちがいいのっ?」

「その先輩はえっちゃんがよく過ごしている男の先輩と仲良くしたいだけだから」

「ん? それなのにどうして静代のところに来るの?」

「わからない」


 ではなく、一人だけでは無理だとわかってどうにか一人にならないように頑張っているだけだと思う。

 似たような存在が現れればなにも私でなくてもいいのだ、だから時間の問題だった。


「よし、今度連れてきてちょうだい」

「ありがちなやつだね」

「そうよ、親としてはやっぱり気になるじゃない」

「わかった」


 一つ言うことを聞くとかなんとか先に出せば増井先輩なら受け入れてくれるはず。

 実際に会って本当になにもないことを母に教えてあげてほしかった。




「はあ? やだよ」

「え」


 これは予想外だった。


「いや、それで『わかった』って会いにいくわけがねえだろ」

「そうですか」

「藤嶋の母ちゃんにだって会いたくねえよ」


 物凄く嫌そうな顔、一瞬、お友達の親関連のことでなにか嫌なことがあったのではないかという考えが浮かんできたけどすぐに捨てた。

 まあ相手は羽原君というわけでもないのだから仕方がない、いや、前々からいる場合でも来てくれるのは同性の絵夢ちゃんぐらいかもしれない。


「つかなんで急にそんな話になったんだよ、家で俺の話とかするのか?」

「学校ではどうなのかとよくありがちな話をした際に増井先輩のことを出しただけです」

「どういう風に?」

「学校では男の先輩といられていると言っただけですね」

「そりゃそんな言い方をされたら小牧の母ちゃんも気になるだろ、友達って答えておけばよかったんだよ」


 いや、本人の前ではあんな反応をしておいて裏ではお友達なんだ! などと自信満々に言えるわけがない。

 少し関わっていればそういう人間ではないとわかるはずだけどな。


「羽原君とはもう安定していられないからお母さんも気になっただけだと思います、付き合ってくれてありがとうございました」


 約束を守れなかったっておかず抜きだとかご飯そのものを抜きにする鬼母ではないから安心してお家に帰ることができる。

 持ち掛けた時間の選択が今日の私にとっては最適だった。

 だって言うことを聞いてくれる前提で出てきていたのだから恥ずかしい状態だしすぐに帰ることはできない。


「あ、羽原君からだ」


 連絡先を交換したばかりだから、というところか。


「もしもし? ん? 羽原君?」

「何気に交換とかしていたのかよ、小牧もやるな」

「増井先輩が大きいせいじゃないですか? そのせいで電波が届いていないんですよ」

「そんな訳がねえだろ、ちょっと貸してみろ」


 渡して彼も喋りかけていたけど特に効果はないみたいだった。

 

「駄目ですよね?」

「ああ、届いていないな」

「一旦切ってメッセージを送ってみます」

「そうだな、もったいないだけだからな」


 それにしてもこの人……挨拶をして別れても付いてくるのはどうしてなのか。

 普段は寂しがり屋で片付けられるけどこれはその言葉だけで片付けられないと思う。


「わかりました、藤嶋先輩のところに連れていってあげるのでこれ以上無言でアピールをしてくるのはやめてください」


 彼を送り届けることができれば多少は気分もマシになって今度こそお家に帰れる。

 何度も言っているように鬼母ではないのだから素直に吐いて謝っておけばいいのだ。


「ん? ああ、藤嶋はどうでもいいぞ、いまは小牧がこそこそしないか見張っているんだ」

「付いてきても羽原君とは会えませんよ?」

「いやその男子もどうでもいい、小牧観察人だ」


 だから私単体をずっと見ていたって意味がないと何故わからないのか。


「はい――あ、小牧さん」

「藤嶋先輩、この人の相手をしてあげてください」

「いいよ、小牧さんも上がってよ」

「はい、お邪魔します」


 玄関のところですぐにわかった残念なことは絵夢ちゃんがいないことだった。

 今回もいつものように呼びだそうとしたけどすぐに増井先輩が止めてきたから諦めた形になる、だけどこれだとなにかやましいことがあって誘っていないみたいで嫌だな、と。


「増井がうざ絡みをしてごめんね、もう少し相手をしてあげられれば減るとはわかっていても結構こっちも忙しくてさ」

「藤嶋先輩が謝る必要はありませんよ、それに構ってもらいたい増井先輩の気持ちは私もわかりますからね」

「え、小牧さんが?」

「はい、私も普通の人間ですから」


 普通の人間だからこそすぐに距離感を見誤って壊しそうになって怖くなってしまっている。

 何故同性の絵夢ちゃんにはできるのに男の子達にはできないのかと呆れてしまう件だ。


「なら青戸さんにも会えるから積極的に僕の方からいこうかな、そうすれば素直になりづらい増井だってみんなといられるだろうし」

「いいですね、できる範囲でいいのでお願いします」


 やはり大人だ、先輩なら相手が動いてくれる前提でいたりなんかはしないだろうな。


「よし、じゃあこっちの話はいいとして、増井はなんでそんなに不満顔なの?」

「小牧が言うことを聞かないからだ、別に藤嶋といられないからでもあの男子君とのことを気にしているわけでもねえってのに」

「あの男子君?」 

「私達には羽原君って男の子のお友達がいるんですよ」


 そういえば声を掛けなかったみたいだからわかっていなくても仕方がないか。

 あのときは心配してくれていたとかなんだとか片付けた私だけどどう見てもカップル的なそれには見えなかっただけなのかもしれない。


「え、もしかして青戸さんとも仲が良かったとか?」

「主に絵夢ちゃんのお友達ですからね」

「ぼ、僕も気になったきた、今度その男の子がいいならみんなで集まろう」

「「え」」


 えぇ、こちらがこういう反応をしてしまうのか。

 

「一応聞いておきますね」

「お願いねっ」


 今回は最初から無理なつもりで動こう。

 そうすれば少なくとも自分は守れるからそれでよかった。

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