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「こ、小牧さーん……?」
「あれ、来ていたんですね」
廊下から少し情けない声が聞こえてきて扉を開けてみたら先輩がいた。
どうやら絵夢ちゃんも連れてきたみたいだけど恭介はいないみたいだ。
「あれからどうなりましたか?」
「あんまり変わっていないかな、あっ、またふざけているわけじゃっ」
「慌てる必要はありません、ただしっかり絵夢ちゃんに向き合ってくれればそれでいいんです。今更ですけど、そこは確かなんですよね?」
「うん、僕は絵夢ちゃんが好きだ」
「ふふ、それならなにも問題ありませんね」
どこの誰目線だとツッコまれてしまうか。
「いまの藤嶋先輩の笑顔は好きです」
「そんなこと言わない方がいいよ、増井が悲しむからね」
「事実ですから」
「はは、そうか、ありがとう」
とりあえず一階にいって絵夢ちゃんに先輩を返した。
どうせこの二人はある程度したら出ていくだろうから恭介を呼びだす。
「なんで静代達は夏休みでもこんなに早起きなんだ……眠たすぎる」
「もう九時なんですからしっかりしてください」
お誕生日の日からはよくくっつくようにしていた。
何故かは九月が近づいて段々と微妙な状態になってきてしまっているからだ。
九月はまだいいけど十月になれば寒くなってしまう、そのときでもくっつけるように頑張らなければいけない。
「それよりこの二人は? なんか進展したのか?」
「特に変わっていないそうです、それでもこれまでとは違うと思います」
「そうか」
絵夢ちゃんも安心していい、もう残り少ないけど夏休みが終わるまでにはわかりやすく変わると思う。
「し、静? そんな増井先輩は抱き枕じゃないんだから……」
「少し冷えてきてね、恭介の温かさは丁度いいんだよ」
「よ、呼び捨てにしているの?」
「あれ? そっか、まだえっちゃんの前では呼んでいなかったか」
「……私もやってみようかしら」
どうだろう、拘りたい人もいるだろうからどうなるのかわからない。
先輩がなにもかも自分から頑張りたいタイプなら逆効果になる可能性だってあった。
また同じような理由で停滞するとやりづらくなるから待っているぐらいがいいかも?
「静代、なんか食べられる物ってないか? 腹が減った」
「それならいまから作りますよ」
「なら俺も手伝う、食べさせてもらうだけなのはあれだから」
「そのかわりに抱きしめてください」
「い、いや、それも後でやるけどいまはご飯だ、やろうぜ」
なら丁寧に素早くを意識して頑張ろう。
何故か絵夢ちゃんも手伝ってくれたから更に早く終わった。
朝ご飯を食べてきたはずの先輩も乗っかって一緒に食べていたのは謎だけど。
「藤嶋、頑張れよ」
「うん、ありがとう、だけどまた困ったら相談に乗ってよ」
「任せておけ、経験者の静代もいるから安心しろ」
「はは、確かにこういう点に関しては小牧さんの方が上だね」
経験者とは。
初めてお付き合いができたぐらいなのに笑われてしまうのではないだろうか。
「静」
「うん、困ったら言ってね」
「ありがとう、あと今更だけどおめでとう」
「はは、ありがとう」
二人が出ていってまた二人きりになった。
意外だったのはすぐに抱きしめてくれたことだった。
「今日はどうしたんです? 恭介らしくないですけど」
「普段は色々と我慢をしているんだ、だから静代も気を付けてほしい」
「もっと出していけばいいじゃないですか、私は恭介の彼女なんですから」
「お、おいおい……」
事実だろう、そしてこれだって私から言い出したことなのだから結局は出せているわけではない。
「恭介のこと好きですよ」
「なんでいま言った?」
「そうすればがばっとやれるかと思いまして」
「帰ってきたら静代の母さんに言うわ」
好きにしてくれればいい、きっとそこでも負けるだけだ。
これから先も彼に負けるつもりはなかった。




