第6話 ワールドミッションの達成と絶叫
こんにちは。
3/11 3投稿目です。
2日目にして小説を書くのが楽しくなってきました!
政府がダンジョンを立ち入り禁止区域として、1年という長い月日が経った。
各地でダンジョンが増え続け不安の声が大きくなった為、早急に対応せざるを得ない状況となった。
政府が捜査を進めていたが、未知のダンジョンは甘くなかった。
既存の銃器がモンスターには通じなかったのだ。
おかげで自衛隊は、ダンジョンに追い返される一方で難航に難航を重ねた。
結果、特別な許可を得た人間に調査協力を依頼する様にした。
その人間達が、後に冒険者と呼ばれるようになる。
政府から1番初めに声を掛けられたのは、人類初ダンジョン踏破に成功したカズキの想い人スミカだった。
スミカが投入されてからのダンジョン調査は、順調そのものだった。
持前の剣技でモンスター達を討伐することで上昇していくステータスにより、幾度となくダンジョンを踏破していったのだ。
世間には調査チームを編成し、ダンジョンを調査しながら踏破していると政府は公表していた。
しかし監視役の役人とカメラを持った研究者の3人チームで、戦闘はスミカ単独だった。
徐々にダンジョンの謎が解かれていくにあたり、不安の声は小さくなっていった。
それと比例する様に世間のスミカを勇者として讃える声が大きくなっていった。
更に半年が経過し政府からダンジョンに関しての情報が発表された。
ダンジョン化は不規則に建物や土地に発生し、モンスターを生成する。
モンスターの種族、強さはダンジョンによって異なるが、基本的にはダンジョン化した建物や土地の規模が大きければ大きいほど強くなる傾向にある。
ただし例外も存在する可能性があるので要注意。
ダンジョンの規模やモンスターの強さを判断材料として今後はランク付けしていく方針とのことだ。
ダンジョン化した建物等は一定の条件を達成すると踏破したとされダンジョンから解放される。
条件は2つあり1つ目がダンジョン内のモンスターを全て討伐すること。
そして2つ目がボスモンスターの討伐だ。
ボスモンスターは、規模の大きいダンジョンに存在し他のモンスター達より圧倒的な力を持つ。
このボスモンスターが厄介極まりなく戦闘が長引けば、他のモンスターがリスポーンし戦闘が不利になってしまう。
逆を言えばボスモンスターさえ倒してしまえば良いのだ。
又、モンスターの討伐に関して重要なことがある。拳銃など既存の銃火器が全く効かないという事だ。
始まりのダンジョン光陽中学校で、警察官の銃撃にオークが微動だにしなかったのが例だ。
体術か鈍器や刃物等の直接攻撃のみが有効打となる。その為、どんなモンスターであろうと近接戦闘を余儀なくされる。
最後に全国男子が待ちに待った報告があった。ステータスについてだ。
モンスターを初討伐すると脳内にアナウンスが響き、ステータスを取得したことを知らせてくれる。
モンスターを討伐した分レベルが上がるシステムで、常人がレベルUPした際にどれだけの恩恵が得られるか今後調査していくそうだ。
どうやら地の技術力がありすぎる勇者スミカは、常人として扱って貰えなかった。
「へーなんかゲームみたいだね」
システムキッチンで料理をしながら、テレビに映るダンジョンの情報を見て母親マキは興味無さげに呟いた。
L字のソファに横たわったカズキは、自分の知らないダンジョンの情報に目をギラつかせている。
誰がどう見ても興味津々だ。
「危なさそうだからステータス欲しさにダンジョンに近づく馬鹿な真似したら、私がアンタを討伐するからね」
「こわっ!モンスター扱い!?」
「つい最近まで、なんなら今も理性のないモンスターみたいな子供でしょ、スミカみたいになりたいとか考えないこと」
「考えとくー」
さすがは母親と言わんべきか、自分の目標を言い当てられたカズキはそっぽを向き最大限の抵抗をする。
「刃物はモンスターに有効、だったっけ?」
「はい!ダンジョンには近づきません!」
カレーの具材を切っていた包丁を掲げ、ドスの効いた声を発する母親マキ。
聞き分けのない息子をモンスターとして討伐しようとする母に恐れ、姿勢を正し従順な姿勢を見せたのだった。
そんなやり取りがあった中、カズキのボルテージは爆上がりしていた。
特殊な許可を得れば俺もスミねえの隣で戦えるんだ!
許可を取得するのにどんな条件を満たせば良いかの情報は開示されなかったが、カズキには知る術があるのだ。
何なら近日中にでもわかるだろう。
スミカの妹とは思えないユキに情報を聞き出してもらおう。
さて時間だ。
半年間2時間毎にスライムを討伐した結果、体内時計の正確さが常軌を逸してしまったのだ。
トイレに行くふりをして愛しのスライムを潰しに行く。
バチュん!
「母さんはああ言っていたけど時すでに遅し!世界で俺以上にダンジョンへ出入りしている人間はいないであろう」
謎の優越感に浸っている俺は優しいんだ。
半年間の成果をお見せしよう!
秘密基地ダンジョンメモ
No1,スライムはリスポーンする。
No2,多分スライムを2匹(全部)討伐するとダンジョンを踏破してしまう。
追記 政府の調査で確かなものとなった。
No3,スライムは2時間でリスポーンする。
No4,人間がダンジョン内にいる時はリスポーンしない。
追記 政府によれば複数の部屋がある場合、その部屋に誰もいなければ
リスポーンしてしまうしリスポーン時間はダンジョンによるらしい。
No5,スライムを討伐するには体を爆散させないといけない。
中途半端に攻撃すると飛散した体が集合し元に戻る。
踏み潰すのが一番効率的だ。
No6,スライムをダンジョンから持ち出すことは不可能。
No7,レベルUPするのにはレベル×10匹
そして今の俺のステータスだ。オリンピックに出れるくらいの身体能力になった気がする。
佐倉和希 人間
LV:13
HP:51
MP:1
STR:58
VIT:2
AGI:4
SP:13
スキル一覧
無し
最近レベルが上昇しにくいのが悩みだがステータスを見ていると惚れ惚れする。
いったいステータスの上昇基準は何なのだろうか。
気になる。
『ワールドミッション スライムを連続で1000匹討伐 を達成しました』
聞いたことのない世界の祝福が聞こえた。
1年間スライムを潰しに潰しに潰し続けてきたが初めて聞く内容だった。
「ワールドクエストって初討伐でステータス貰った時に聞いたような気がするな、っとおおお?」
そういえば初めてスライムを討伐した時に聞いたかもしれないと考えていた時のことだった。
目眩も体調不良もないのにバランスを崩し転倒してしまった。
「いっ…たくない?」
手を着く事も出来ず転倒し、頭をぶつけたが衝撃のみで痛みを感じなかった。
疑問を感じつつ立ち上がろうにも力が入らない。
「くそなんだよこ、れ…」
辛うじて動く視界を動かして自分の身体を確認し絶句する。
右足が出張なされているのだ。
痛みは無い、がしかし右足が膝下から出張し地面で孤立しているの。
頭が真っ白になり、一瞬思考が停止するも痛みがない事から、ゆっくりと正気を取り戻し始める。
ゆっくりと深呼吸しようとするも。呼吸すらできない。
なのに苦しくない。
そんな自分の体が大変な事になっているのに痛みを感じない、そんな状況がさらに恐怖を掻き立てる。
よく見てみると地面とぶつかった衝撃で体のあちこちが崩れゲル状になっている。
「…血がでていない?」
自然と疑問が口から漏れ出る。
落ちている?というより今も尚、立ち続けている右足の断面を見ると水色で半透明だった。
それが何か一瞬で判明した。
約1年間毎日欠かさず見続けたからだ。
秘密基地ダンジョンの奥で大人しくしているソイツと目が合う。
いやソイツに目は無いが、しっかりと目が合っていると言える。
水色で半透明のソイツと。
「は、はははっ、やり過ぎたんだ」
カズキはあまりの恐怖で笑っていた。そして気付いてしまった。
毎日無抵抗なソイツらを潰し続けた無慈悲な男に、神罰が下ったと。
「これは呪いなんだスライム達を殺し続けた呪いなんだ」
何故か、何故かスライムがじっと見つめてきているような気がする。
きっと俺を恨んでいるんだ。
そして世界を通して呪いをかけたんだ。
カズキは後悔した。
未知のダンジョンに触れてしまったことを、好奇心だけで行動したことを、そして1000という多くの命を葬ってしまったことを。
命の尊さを重さを改めて、遅いかもしれないが痛感する。
視界がぼやけてきたがスライムから目が離せない。
目を離すと今にもやられる気がする。
恐怖と絶望に溺れた少年に、世界は無慈悲にも追い討ちをかける。
聞きたく無いのに機械的で中世的な音声が、カズキの脳内へ祝福を囁く。
『祝福「スライム化」が贈られます』
わかっていた。
わかりきっていた。
弱いと、美味しい経験値だと思っていた最弱のスライム達。
そんな彼らと同じ体になったんだ。
転んだ後に身体を見た時からわかっていたが目を背けていた。
しかし、はっきりと世界の声に告げられ、強制的に現実と向き合わされる。
絶望と恐怖に溺れ、決壊した涙腺と夥しい鼻汁で顔面を汚した少年の悲痛な叫びをお聞きください。
では、行きます。
「誰かあああああ、たすけてえええええええ!!!」
世界一小さなダンジョンで、世界中の誰よりも強い思いを込めた大声が響き渡った。
最後までお読みいただきありがとうございます。
3/10〜16の間は毎日2話投稿します。
もし面白かった!続きが読みたい!と思ったら、広告下にある【☆☆☆☆☆】評価ボタンで応援をお願いいたします。
又、ブックマークや感想を頂けると励みになります。




