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第5話 金持ちインフルエンサーと緑の包容

こんにちは。

3/11 2投稿目です。


今日も3話投稿します!

無性にイライラしている。

後頭部から背骨にかけて熱がこもり血液が沸騰している様な感覚だ。

あと少しで頭の穴という穴から、蒸気が飛び出してしまいそうな程に怒りが込み上げてくる。


それは最悪のあだ名「ぺちゃん子」と学校中で侮辱されているからでは無い。


それは今、目の前に俺の醜態をSNS等で世界中に発信した男がいるからでは無い。


それは今、その男が札束で俺の顔を叩いているからでは無い。


そう!


なんてったって俺にはスライムがいるから。

だからこそ今の現状に耐えられない。


ああダンジョンに行きたい!

最後にスライムを討伐してから3時間も経過しているのです。

ということは?

新たなスライムが今この瞬間にも誕生しているという事なんです。


討伐したいと、踏み潰しいと咽び泣く右足の嘆きにより、頭の内側で沸騰した血液が蒸気となり始めている。

このまま圧が上昇し続ければ爆発してしまう。

これは3ヶ月間2時間毎に踏み潰し続けられた数多のスライム達の怨念による呪いなんじゃ無いかと、錯覚するほどの中毒症状だ。


あああああ

ダンジョンに行きたい!


あの日スミねえに討伐されたオーガの様な憎たらしい笑みを浮かべた男が、だる絡みをしてきているのなんか気になりもしない中毒症状がカズキを襲っていた。


●◯●


時を戻そう


これは中毒症状に気づく前の話。

我らが光陽中学校がダンジョン化し踏破され2ヶ月が過ぎた。

政府の調査により安全が担保され、学校生活が再開する事になった朝だった。


「カーズーキー!早く出てこーい」


チャイムを鳴らさず、恥ずかしげも無く玄関前で大声を出しカズキを呼ぶ幼馴染。

きっとコイツがイケメンじゃなければ御近所さんからクレームが入ってくる事だろう。


カズキの自室は2階にあり玄関の上に位置している。おかげで玄関前で叫ばれると、丸聞こえなのだ。

3ヶ月無かったやりとりが再開された事で、学校が再開することを再認識する。

ベットと隣接する位置に窓が有り、上半身を起こすと窓から顔を出すことが出来るので窓を開け放ち、外にいる2人組に声をかける。


「わかったわかった聞こえてるから、てかチャイム鳴らせよ!」


しかし、2人の姿は玄関先に無かった。

直後、自室の扉が勢いよく開け放たれる。


「遅いよ私らが来る前に玄関前待機しとけ」


ニシシと悪びれも無く笑うユキと、一緒にアツシが入ってきた。

佐倉家の玄関には植木鉢がある。

その鉢の裏には合鍵が貼り付けられている。これは、ユキとアツシの為に母親マキが準備した物で、こうして勝手に家に上がり込んでくる。


何が厄介って、気づけば家にいる時がある。

何の連絡も無しに暇だからと、お陰でダンジョンに入る前は誰もいない事を確認しなければいけなかった。

高く高く積まれた信頼関係が成す、迷惑パワープレイなのだ。


「ヒーローは遅れて行くもんなんだよ。アンパンマン見直せウンコ」


「はあヒーロー?まだ夢見てる様だから顔引きちぎって起こしてやる」


カズキとユキが子供のような言い合いを続け揉み合い、一向に動き出さないのでアツシが出発する事を提案する。


「カズキ早く着替えて、学校に行くよ」


久々に袖を通された制服が心なしか喜んでいる気がする。


「絶対ぺチャン子って馬鹿にされて、カズキが耳を真っ赤にしてキレるにパン1個かけまーす!」


通学路を歩いていると遠くの方から「あれペチャン子じゃない」と、他校の生徒がカズキを指差すのを見たユキが面白がって賭けを提案する。


「じゃあ僕もキレる方でパン一個かけようかな」


「絶対にキレないし!お前ら今のうちにパン買っておけよ」


そうして成立した賭けを、昼飯代が浮いた事を心の中で笑うカズキ。

絶対にキレる事がないと確信しているからだ。


そう!


なんてたって俺にはスライムがいるから。


スライムという心の拠り所を得た最強メンタル男は、謎の自信と共に学校の門をくぐる。

案の定笑い声があちこちから聞こえてくる。

全然動じないカズキを見て「嘘でしょ」と動揺を露わにするユキを見て勝利を確信していた。


その数分後に中毒症状に心を蝕まれるとも知らずに。


◯●◯


「よおぺチャン子」


教室に入ったカズキの元へ、山の様に大きな少年が声を掛ける。

175cmと中学1年生にしては大きい少年。


塚内大樹


トウコとオーガの死闘、そしてカズキの醜態を世界中に発信した張本人である。

無駄に整った歯並びと目つきが悪い少年だ。


「ありがとう!お前のおかげで俺はインフルエンサーの仲間入りだ」


そう言って肩を組んでくるタイキ。

クラスメイト達は興味津々に2人の絡みを見ていた。なんなら廊下に人だかりが出来ている。

どうやらぺちゃん子を一目見ようと集まってきた野次馬達らしい。

そんな絡みを誰よりも嬉しそうに見ていたのは、他でも無いユキだった。

きっと賭けに勝つことを確信したからだ。


「それはよかったな。俺は男とベタベタする気はねえよ」


肩に回された腕には体重が掛けられており、大柄なタイキを普通の中学生1年生が振り解くのは困難だ。

しかしカズキは簡単に振り解く。


「おおっと、そんなツンケンするなよ俺ら友達だろ?それに今日は提案をしにきたんだ」


腕を振り解かれたことで若干驚くタイキは何やら提案があるらしい。

鞄の中に手を突っ込み汚い笑みを浮かべ、ソレをひけらかす。

野次馬達から不意に声が漏れる。


「まずは謝罪を含めた謝礼金だ受け取れよ」


初めて拝むソレには、慶應義塾を設立し「学問のすすめ」を書き上げた偉大な人物が印刷されている。

さらに皺ひとつなく綺麗な帯で纏められている。


そう100万円の札束だ。


それはカズキのポケットに無理矢理入れられた。

元々承認欲求が強いタイキは、野次馬というオーディエンスから注目を浴び、気持ちが良くなってきたらしく口角が絶好調だ。


◯●◯


こうして冒頭に戻ってきたのだ。

そして2個目の札束を出してカズキの頬をペチペチと叩き出した。


「インフルエンサーって儲かるんだわ!んで提案なんだけど俺のチャンネルでぺちゃん子として活動してくんないか?絶対人気でる!なんてたって俺のおかげで世界がお前を認知してんだからなあ」


ちょうど良いところに良い相手がいただけだ。

決して賭けに負けたわけではない。

ただ少しだけ、ほんの少し血液が煮え繰り返っているだけだ。

言い訳ではなく事実だ。

スライムに会えなくて、若干寂しいからやってしまった。


ああユキの口角が、タイキの邪悪な笑みよりも天を仰いでいる。

くそ1番アイツがムカつくな後で引っ叩こう。


ペチペチと札束で頬を叩かれながら、そんな事を考えているとカズキの右拳がタイキの腹部に吸い込まれた。


「どうなんだ?悔しいだろ早く首を縦にグベシャっ」


それはそれは綺麗な弧を描き、大柄な少年は宙を舞った。


本来なら中学生の腕力で出来る技じゃない。

レベリングによりステータスが上昇したカズキの力が成すパワープレイだ。

中学生離れした身体能力を持ったカズキの拳を受け、机をばらま散らかしながら飛んだタイキは白目を剥きながらピクピクと痙攣していた。


「誰がお前なんかと組むかよばぁーか!」


教室だけに収まらない悲鳴と歓声が響き渡り、何人かに取り巻かれ賞賛を受ける。

さながらヒーローになった気分だったが、騒ぎを聞きつけた先生達に身柄を抑えられ、酔いしれる間もなく連行されたのだった。


先ほどから視界の端に映り込む少女が大喜びしているのが腑に落ちない。

しかしぺチャン子を広めた仕返しが出来たので、とても気持ち良かった。


ははは…


◯●◯


こっぴどく先生や校長先生から怒られた。

なんなら校長はコレクションの模擬刀をへし折った事を未だに根に持っており、嫌味の嵐だった。

折ったのは俺じゃないのに。


放課後に親を呼ばれ、追い説教を受けた帰り道ニヤついた母親に嫌味を投げかけられる。


「あんたも馬鹿だねカズ」


「うるせー」


「お金もらって一緒にお金稼ぎすればよかったじゃん。200万だよ?」


「そっち!?」


殴ったことで馬鹿にされた訳ではなく、目の前の美味しい話を蹴ったことに対しての嫌味であった。


「当たり前でしょ。男なら喧嘩して毎週親を学校に召喚しなさい。なんなら私は今とても誇らしい」


言葉を失った。

開いた口が閉まらないどころか、地面に着いてしまいそうだ。

この母親は、圧倒的な体格差に打ち勝った息子の喧嘩を喜んでいるらしい。


変な母親だ。

しかしカズキの口角は緩やかな弧を描き、密かに喜んでいる事を隠せずにいた。


「今日は何食べたい?赤飯炊いてあげる」


「ピーマンの肉詰め」


好きな食べ物はと聞かれたらこう答えるしかない。

カズキにとってのテンプレだ。

ジューシーな肉汁と共にお肉様を包容するピーマン様は、神として仏壇に祭るべきだと切に思う。


「それしか無いのかね息子よ」


呆れた母親の事など気にせず大きく頷いた。


「もちろん」


◯●◯


あれから3日間が経った。


スライムダンジョンを調査して分かったことを報告しよう。


秘密基地ダンジョンメモ

No1,スライムはリスポーンする。

No2,多分スライムを2匹(全部)討伐するとダンジョンを踏破してしまう。

No3,スライムは2時間でリスポーンする。

No4,人間がダンジョン内にいる時はリスポーンしない。

No5,スライムを討伐するには体を爆散させないといけない。

   中途半端に攻撃すると飛散した体が集合し元に戻る。

   踏み潰すのが一番効率的だ。

No6,スライムをダンジョンから持ち出すことは不可能。

No7,レベルUPするのにはレベル×10たぶん


以上を踏まえ、将来正式にダンジョンへ挑むことが出来る様になったら、勇者として無双する夢を抱きカズキはレベリングするのであった。


最後までお読みいただきありがとうございます。

3/10〜16の間は毎日2話投稿します。


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