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第47話 漆黒の鎧との再会

「おお?特別指定モンスターが見つかったらしいよ」


「どこで?」


「ありゃーこっから距離があるなー」


赤羽付近を捜索していた2人のS級冒険者は、歩みを止め自分達の標的が見つかった情報を確認していた。

質問に対して答えの返ってこない事に、若干の苛立ちを覚える【救世主】は自分んでスマホを確認する。


『S級ダンジョン【東京】等々力の入り口に特別指定モンスターが出現。冒険者数名が応戦中。至急応援に向かって下さい。』


「反対側じゃん」


赤羽と等々力は【東京】の深部を挟んで反対側に位置する。

S級冒険者とはいえ全力を出しても時間が掛かるだろう。


「んん?この子、スミカちゃんの友達じゃない?」


「え?」


「ほら!始まりのダンジョンでオークの下敷きになってた、えーとなんて言ったけ…思い出したぺちゃん子だ!」


緊急依頼に添付される動画には、特別指定モンスターとデュラハンに相対するカズキ達が映っていた。


「うわあっ!ちょ、待って俺はスミカちゃんみたいなスピード出せないんだよー!」


強力な踏み込みで抉られ、飛び散るアスファルトと白煙を残し【救世主】スミカは現場に急行した。

小さい頃からの知り合いであり、兄弟の様に接してくれるカズキ達を助けるために。

本来パーティを組み、やりすぎるくらい準備して侵入するはずの深部を全力で駆け抜ける。

幸い今のスミカのスピードに反応し、手を出してくる強力なモンスターには出会わなかった。


あと少しでというところで大地を揺らす轟音が、建物の屋根を飛び移動するスミカの鼓膜を揺らす。

焦りが全身を包み込み、踏み込む足に力が入りすぎて建物が倒壊する。


「なによ…これ」


現場にたどり着くと妹のユキが倒れていた。

少し離れた位置には、重度の火傷を負ったアツシも倒れている。


母親から聞いた話によると妹は、最近冒険者ライセンスを取得し、【青空】というパーティーを組んだらしい。

もちろんそのランクは底辺のC級と、スミカとは真逆だ。


なのに周囲にはバラバラになったビックゴーレムや、鎧のみ残したデュラハンが転がっている。

どれもA級モンスターでありC級冒険者が出会っていいレベルじゃない。


そして離れた位置に大きなクレーターが広がっていた。

きっと先ほどの轟音が生み出したクレーターだろう。

クレーターの中心から少し離れた位置に、見慣れた少年が立ち尽くしていた。


「カズキ何があったっていうの?」


疑問を投げかけた相手の肩に手を置くと、電池が切れた人形の様に倒れ込んでしまったので、スミカは抱き止める。


「A級だった頃にこんな状況に陥ったら、僕はおしっこ垂れ流してるよ」


明らかに不自然な現場に、困惑するスミカに遅れて到着した男が、周囲を見渡し現状を把握して言った。

その手には光る紐が握られており、先端には大きな泡が繋がっている。

まるで風船の様な泡の中には、アツシとユキが入っていた。


「すぐに病院に行こう」


「その子も僕が連れて行こうか?」


「いや大丈夫」


そうしてカズキはお姫様抱っこっで病院に運ばれたのであった。


◯●◯


「えええええおえ!?」


カズキが退院し、返ってきたホームのリビングには漆黒の鎧が、首のない幽鬼が立ち尽くしていた。

見間違えるはずも無い。

苦渋を味合わされたA級モンスターのデュラハンだ。

今にも床に置かれた大剣を拾い上げ、横凪に振るってきそうだ。


「ユキさん?この動かないデュラハンさんは何してるんですか?」


「あーそれはスミカが運んでくれたデュラハンのドロップ品」


「ええ!?スミねえ来てたの?」


「倒れた私たちを救出してくれたんだって」


「マジかよ…」


想いを寄せる雲の上の人が、ホームに来ていた事を知り絶望する。

何故自分は病院のベットで3日も寝てしまっていたのか、頭を掻きむしりながら自分の愚かさを呪う。


「きもいから外でやって」


「いや外でやったら職質されるだろ」


「それが狙いだって」


「てか本当にスミねえが特別指定モンスターを倒したんじゃないのかよ」


「何度も言うけど違うって!スミカが来た時にカズキだけが立ってたんだって」


「全然記憶に無い」


そう、カズキは目が覚めたら特別指定モンスターを討伐した功労者となっていた。

最後に見た光景は、振り上げられる血管が浮き上がりまくった巨大な拳だった。

あの時、魔力も使い果たし最悪な状況下だったのに何故無事なのか。


「ああ、そうそうスミカから伝言が2つあるの思い出した」


「おい!早く言えよ勿体ぶんな!」


「みんな退院したら市役所に行って冒険者ライセンス提示しなって、特別指定モンスターの討伐報酬があるのと、ビックゴーレムのドロップ品を換金してくれたらしく、お金が沢山貰えるらしい」


「おお楽しみだな!あとは?」


「S級ダンジョンからお姫様抱っこしちゃったー」


「はあ?」


やはり姉妹だ。

無駄にクオリティーの高い姉のモノマネをするユキ。

本人じゃないってわかっているのに、心が跳ね上がる。


しかし


「なんでお姫様抱っこなんだよ!!!」


「女に抱かれてやんのー」


腹を抱え笑い転げるユキを踏み潰してやりたい気持ちよりも、周知の感情が押し寄せてくる。


「ああああああああ!!!」


後日、アツシが退院し3人は市役所で受け取る大金に、目玉をくり抜かれる。

特別指定モンスター討伐報酬 800万円に、ビックゴーレムの体300万円。

ビックゴーレムの体の中には、魔鉱石という魔力を含む金属が入っているらしく、今回掘り出した魔鉱石の金額が300万円もするらしい。

魔鉱石は魔力が流れやすい性質を持っており、武器や防具の必需品らしく高額買取となるらしい。

しかもデュラハンの鎧と大剣までドロップしており、カズキ達【青空】の運が高すぎると運搬した【泡王】は嘆いていたのだとか。


これでカズキ達の通帳には1200万の文字が刻まれ、目標金額まで残り3800万円となったのだった。

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