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第39話 ホワイトオブホワイト

「今日から諸君にも我が社のC級ダンジョン踏破を手伝って貰おう」


朝早いのにピシッと着こなされたスーツ姿で大声を張り上げるケイコ社長。

「あとは任せた」と社長室に戻っていった。


「えーとねC級ダンジョンの踏破の報酬は、依頼者からの報酬と『ダンジョン踏破手当て』が国から支給されるから、大体50万円くらい貰えるんだよ」


「マジすか!?じゃあ100回以上踏破すれば借金完済出来るじゃ無いですか」


「マジです。しかし、ここで問題点があります。そう簡単にC級ダンジョンが生まれないんだなあ。それに競合があるから週1回依頼を受けれれば良い感じなの」


なんですと!?週1だって事は…

カズキの脳みそ内に住み込むミニカズキが、全力でペダルを踏み漕ぎ思考をフル回転させる。

365日割る事の7日で52回、1回50万だから年間約2600万円の収入が有ることになる。

うまくいってもだ。


5000万円の借金が遠く高く、絶望的に見える。


「おおーい帰ってこーい、話続けるよ?簡単に言いますと契約内容の金額に絶対届かないわけ。上位ランクのダンジョンに挑戦するのも一手だけど、大手の冒険社企業が持ってちゃうし、結局上位のダンジョンを踏破するのにはレイドになっちゃうから、一人頭貰えるお金はC級ダンジョンに毛が生えた程度なんだよ」


話を聞くカズキ達3人のテンションが明らかに下がり、誰も口を開かない。

それもそのはず、このあと2ヶ月後の4月から1年間で、5000万円返さないと冒険者生命が終わってしまうのだから。


「まままあ元気出した!契約書にある通り私たちが協力を惜しまないからさ!C級踏破で足りない分は、冒険者産業の【踏破】に並ぶ収入源【探索】をするんだよ。依頼がない日はノウハウを教えるから探索しようね」


「たんさく?」


「そう探索、S級ダンジョン【東京】でモンスターを倒しドロップ品を持ち帰って売り捌く!それが探索です。他には情報とかも売れるんだけど、深部に行かないと売れる情報ないからA級上位冒険者しかこれは無理」


要は【踏破】依頼の無い日は、【探索】でお金を地道に稼ぐってことだ。

わかりやすくていい。


「さあ今日、明日は依頼があるから3人でよろしく!」

「1週間に1回入れば依頼があれば良い方なんじゃないんですか?」


皆が思う疑問をアツシが率先して言葉に変える。


「あーうちの踏破は人気だから予約殺到しちゃうんだ」


ドヤ顔が全面的にストレスを与えてくる。

松本家並みに有名で人気になれば週2〜3回の依頼が舞い込んでくるらしい。

なんなら松本家に頼みたくて踏破が遅れても良いという人もいるのだとか。

実力社会はどこの業界でも世界でも一緒なのだ。


「じゃあ今日も元気にいってみよー!!!」


◯●◯


「なんでこんな事しないといけないのよ!」


「これも仕事なんだよお金貰ってるんだから頑張らないと」


弱音を吐きたくなるのも少しわかる気がする。

金銭面の話を聞いた日はパブリックベアという魔物を2匹討伐した。

オークに毛が生えた程度のモンスターでカズキ達の相手じゃ無かった。

その次の日、昨日はツノの代わりに刃が生えた鹿の魔物ディアランス3匹を討伐。


そして今日も依頼が入ったので現地に行くと、人間サイズの蜘蛛ビックスパイダーが家中に這い回るお化け屋敷だったのだ。

ユキとカズキの絶叫がうまい具合にビックスパイダー達を引きつけたので、討伐しやすかったのだが、本人達は大きい虫に怯え、それどころでは無かったようだ。


「昨日、一昨日はうんこ掃除、そして今日は壁が見えなくなる量の蜘蛛の巣掃除って何なんですかー…」


身体中蜘蛛の巣まみれになりながらユキはうんざりしている。

口には出さないが男2人も同じ気持ちだ。


「来た時よりも美しく!これが我が社の意向なんだから頑張って、それにお客さんが喜んでくれるんだからさ」


「でもお客さんに会う事無いじゃないですかー」


「まあそうなんだけどね。自己満になるけど喜ぶ姿想像すると気持ちいいじゃん」


やはり女神だ。

ケイコ社長、タカシさんに埋もれた一輪の花はカズキの心を温かくしてくれる。


「なんかキモいから殴りたい」


「いって!殴んなよ」


いつものが始まり鎮火するので蜘蛛の巣掃除が長引いたが、無事完了し家まで送り届けてもらう。


「こんなんで1回1人5万も貰えるなんて破格のバイトだよな」


「拘束時間も3時間くらいだしね」


「逆に申し訳なくなるよな」


そうは言ってもカズキ達のレベルだからできる事で、3人ともCランク冒険者ならここまでの成果を上げる事は出来ない。

カズキの火力、ユキの支援、そしてアツシの統率力が有ってこそなせるのだ。


「今日もハズキさんのとこ行くのかい?」


「ああ、手入れして貰いに行く」


「ハズキさんによろしくね」


「はいよー」っと適当な返事をしてカズキは玄関へ向かった。

「今日こそ朝帰りですかー」なんて茶化す声が飛んでくるが、そんなものは無視に限る。

俺らは客と店員だけの関係なのだから。


「今日も来てくれたの?」


「キモデカのビックスパイダーを数えきれないくらい討伐してきました」


「どうりで蜘蛛の巣があちこちに付いてるんだね」


ベロを出し気持ち悪いことを表現するハズキがシャワーを進めてくれる。

もちろん答えはYESだ。


「昨日の服は洗濯終わってるから、カズキくんがシャワー終わるまでにはこっちも終わらせとくね」


一昨日のパブリックベア戦闘後のメンテナンスから、手入れして貰っている間にシャワーを借りるのが日課となっている。

もちろんカズキの青ジャージはハズキ家に常備される形となっている。

シャワーが終わり、脱衣所にある洗濯機にジャージを放り込みハズキの元に向かう。


「今日も綺麗に扱えてるね、刃こぼれひとつないよ」


「まあ天才なんで」


「調子乗らないの」


微笑む刀鍛冶の美少女にお礼と別れを告げ、帰路に着くが、あまりにも早い退社による手持ち無沙汰で、落ち着かないので精神安定剤を求め、その足はあそこに向かう。

明日はついにS級ダンジョンでの【探索】なのだ。

秘密基地ダンジョンに辿り着き、精神安定剤であるスライムを踏み潰そうと探すが1匹しかいない。


「あれ?」


このまま目の前のスライムを踏み潰しダンジョン踏破となった暁には、二度と立ち直れない心の傷を負うだろう。


「しゃーね帰るか」


仕方なく幼馴染が待つホームに帰る。

ソファにダイブを決め込みコーラを寝転びながら飲み込む。


「きもちー」


「まーたハズキさんとシャワー入ってきたな」


「ハズキさん家で、な?」


バカユキに反応するか迷う気持ちがあったが、どうしても反応してしまう。

染み付いた反射とは恐ろしいものだ。

互いに火をつけ合うのは百も承知しているのに、反応してしまう。


「今日は依頼が無いので諸君には【探索】をしてもらう。くれぐれも引き際を間違えないように!」


朝早いのにピシッと着こなされたスーツ姿で大声を張り上げるケイコ社長。

またもや「あとは任せた」と社長室に戻っていった。


「じゃあ車出すから行こうか!注意事項とかは車内で説明するね」


サヤさんがお団子を揺らしながら、S級ダンジョンへ向かうことを宣言した。

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