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第111話 ビリビリ☆ラゾーナ突入大作戦

L級ダンジョン【ラゾーナ】


ボスモンスターが5階にある映画館から出てこない。

1〜4階でモンスターの強さが明確になっている。

以上のことから、初心者からベテランが自分のレベルに合った階層に行き、修行、レベリングを行う事が出来る。

レベリングを司り、L級の名を冠するダンジョン。


冒険者になりたての頃、このラゾーナでゴブリン討伐耐久レースをやった。

あの時、サヤさんがゴブリンを集める為に吹いていた笛の音が、今も耳に残っている。


あらかじめ支給されていたイヤホン型通信機より、作戦開始の合図が出されたのを皮切りに【ラゾーナ】へ突入する。

するとイヤホンから愉快な声が響く。


「こちらキャプテン=マサオだ! 2〜3階の野郎どもにはエアバックを掛けた。だから伸び伸びと戦え!」


いち早く2〜4階の吹き抜けに到着したキャプテン=マサオは、大勢に最強の盾を強制装備した。

見えないがたしかに、魔力で圧縮された空気の膜が皆に付与された。

攻撃が直撃した時、空気が膨張して装備者が吹き飛ぶ事で強制的に距離を取る。

それがエアバック、たとえ吹き飛んだ先で何かにぶつかろと空気がクッションになり無傷の生還を成す最強の盾。


前に走る冒険者の背中を追いかけ、ダンジョン化した事で電力ではなく魔力で動くエスカレーターを駆け上がる。


「っ!?」


そこはもう、汗をかき笑顔でゴブリンを倒しまくりレベルを上げたダンジョンではない。

肌を刺されている様な空気、のしかかられている様な重圧が立ち込める、生死を分つひりついた空間に変貌していた。


黄金龍リサのと出会い、何故か手に入れたスキル【ドラゴンアイ】。

リサがいつしかカズキの目に指を這わせ言った。


「んーなんで私とおんなじ目してるの? 人間でスライムなのになんで? なんでなんで?」


ソファで寝そべっていたら、長く綺麗な金髪が絡み付いてきた。


「え? コレのこと?」


【ドラゴンアイ】を発動する。

真っ黒な瞳が魔力を帯び、蒼く姿を変える。


「そう。これこれ、なんでなんだろう」


人差し指で目を不思議そうに撫でるリサを、引き剥がす。


「やめい! 人の目ん玉いじいじしない。普通の人は痛いんだからな、試しにユキのを後でいじいじしてみ。んでコレはなんなのさ」


「それはね。魔力を可視化する目で、やろうと思えば地球の反対側の魔力だって見ることが出来る目だよ」


今の説明を聞いて理解ができた。

このスキルを発動した時に見える謎の流れ、これが魔力だという事に。

そして、死にかけたリサが【アマゾン】から、天使とミラを見つける事が出来た理由を。


「まじすか、地球の反対側ですか?」


「まあ、カズキの魔力じゃ無理だけどねー」


「ですよねー」


びっかびかに光るリサに内包された膨大な魔力に、視界が潰されそうなのでスキルを解除した。

リサとの話が終わりスマホを見つめていると、奥から女子のキャッキャした声が聞こえてきた。


「ねえ、ユキ目見せて!」


「んん? いいよーっていったぁあああ!!! なんでぇ!? 目ん玉触るの!? いったぁあああああああい!」


「ほんとだ目触ると痛いんだ」


言われた通りにユキの目をいじいじしたらしく、悶絶するユキの哀れな絶叫がホームに響いたのだった。


そんな【ドラゴンアイ】を発動し、ダンジョン内を視る。

1、2、3、4、5と異常な魔力を放つ個体がいる。

そして6、その中でも5階と思われる場所にそんな5体が束になっても敵わないだろう化け物いる。

全身が前に進むことを、全力で拒もうとする。

正直S級冒険者がいなければ、今すぐにでもここから逃げ出している。


「ユキ、今すぐ全力でバフかけてくれ」


返事よりも前に周囲の冒険者に向け、白魔法でバフをかけるユキ。

深碧の魔力が身体を包みあげ、能力値を強制的に引き上げる。


「アツシ!!!」


3階に出た瞬間、前の冒険者を掴み後方へと投げ飛ばす。


「なっ! なにすんだよ、おわ!?」


飛ばされた冒険者は怒りを露わに怒号をあげるが、アツシに優しく受け止められ困惑している。

正直謝りたい気持ちもあるが、それどころじゃない。


高速、否、異常な速度で迫り来る橙色の激しい魔力に刀を抜き振り抜く。

高速で迫り来る橙色と衝突し、雷鳴が【ラゾーナ】に轟き、雷を撒き散らす。


オレンジ色の爛々とした大きな瞳が、蒼い俺の瞳を興味津々に見つめてきた。

真っ金髪で毛先に行くに連れオレンジ色になるショートウルフ、花魁の様に肩を大胆に出した和装なのに、下半身を隠す事を諦めた長さのミニ袴、それでも羞恥心は残っているのかスパッツを履き込んだ少女。

これだけ聞けばコスプレの類かと思われるが違う。

右のこめかみ辺りから荒々しく伸びる角がモンスターたらしめる。

その華奢な腕の先には金属で出来た六尺棒が握られており、俺の刀と切り結んでいる。

考えられないくらいの力で押し潰そうとしている。


「あっれぇ? いっちばん始めに目に入った首を刎ねるつもりだったのになーって、ターゲットはっけーん!!!」


弾け飛びそうな声。


「はい?」


今確実に俺の顔を見てターゲット、そう言った。

アツシとユキのゴブリン腹話術じゃなく正真正銘の喋るモンスターだ。


とりあえず叩く!!!


相手の力を利用する事に特化したスライムの身体を有効活用する。

流れ込んでくる力の流れをスライムの身体の中で操作し、両手で握った刀へと伝え六尺棒ごと鬼娘を後方に切り飛ばす。


「スイッチ!!!」


戦闘中に言うと気持ちいい言葉ランキング第1位を叫び、後方へと飛ぶ。

そこに地面を砕く勢いで踏み込みを入れるアツシが、鬼娘を肉薄し漆黒の大剣で横凪にする。


「あっぶなーいっと」


鬼娘はカズキに切り飛ばされた勢いを殺さず、バク転の要領で六尺棒の先端で地面を叩き、後方へと逃げる。

しかし、周りを見過ぎている男は、その漆黒の大剣に魔力を込め振るっていた。

青白い炎の斬撃が大剣から吐き出され、空中の鬼娘を追撃する。


「だけどー当たらなきゃ意味ないよね」


六尺棒を大きく振り炎の斬撃を叩き壊した。

斬撃は爆発し鬼娘を襲うが、爆炎も爆風も彼女を避けるように散らばっていった。


「ふっふふ〜ん、青いおめめのキミいーねいーね。ビリビリきてる〜! テンアゲなんですけどー!」


オレンジの瞳がカズキを捉える。

まるで玩具を見つけた子供の様に口角を上げ、六尺棒を肩に担ぐ。


「さーてと! ライカちゃんのお遊びタイム、はっじまっるよ〜! ターゲットロックオン!!!」


ビシィっと指で鉄砲を作り、銃口をカズキへと向けた。

振り下ろされた六尺棒。

空気が裂け、雷光が床を駆け抜けた。

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