表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

夫には想い人が居るらしいので、婚約破棄をしようとしたら泣きそうな顔で嫌だと言ってきます!?

夫には想い人が居るらしいので、婚約破棄をしようとしたら泣きそうな顔で嫌だと言ってきます!?

作者: 月乃 寝々

皆様初めまして。

つきのねねと申します。

初投稿ということで、色々とおかしなところがあると思いますが、暖かく見て頂けると嬉しいです!

ヘタレな溺愛系主人公とじれじれしている恋愛が好きなので書いてみました。

是非お楽しみください( ´ `* )ꕤ︎︎

「ユーリアス様、本日はお天気がよろしいですね。」

「…ああ。」

「実はメイドと一緒にクッキーを作りましたの。もし宜しければどうぞ。」

「…良いのか。では、有難く頂く。」

「……」

「……」


私、エミーリア・ファーリテスはユーリアス・サーマン王子と婚約をして2年が経った。なのに、未だにユーリアス様とはキスは疎か、ハグや手を繋いだりする事も出来ていない。

そして現在、寿命が縮まる沈黙の気まず過ぎるお茶会という名の、お昼に約1時間くらい行われるユーリアス様とのお茶会を行っている最中である。


正直言って気まず過ぎて息も出来ているかすら分からない。しかも1時間もこの地獄の空気の中で過ごすことになる。長い。長過ぎる。何故1時間もお茶会をすると決めたのだろうか。早く自室に帰りたい。


こうして私は時々、少しでも仲を深めるために自分で刺繍をしたハンカチやお菓子をプレゼントしているのだけれど、全く嬉しそうに貰ってくれない。


いや、期待している訳ではないけど……

やっぱり少し喜んでもらえるか期待してるけど……


というか、そもそも私があげたハンカチ等は使っているのだろうか。そういえば、最初は仲良くなりたくて高頻度でハンカチ等をプレゼントしていたけれど、今までで使っているところを一度も見た事がない。


そりゃあ、嫌いな女から貰ったものを使いたいと思うはずがないか―…と、ユーリアス様には聞こえないように小さく溜め息をつく。


こうして沈黙を挟みながら、私がひたすら話続け、お茶会はいつも終わる。私は挨拶を済ませると陸上選手もびっくりの速さで自室へ戻った。


そして、ベッドにばふっ!と埋もれる。


「はぁ〜〜〜〜〜〜ぁ……。」



ユーリアス様との出会いは今から2年前、私は16歳、殿下は17歳だった頃――――



「いいかい、リア。お前は今からサーマン王家へと嫁ぐのだよ。何かあったら、すぐに連絡をしてね。嫌になったら帰ってきても良いのだよ。」

「そうよ、リア。何かあったらすぐに帰ってきてね。いつでも待っているからね。」

「もう、お父様とお母様は心配性が過ぎます。私だってもう16なのです。次期王妃として、立派な務めを果たして参ります。」


ファーリテス公爵家は、歴史もあり、資産も豊かなため、この国の国王のご令息である、ユーリアス・サーマン王子の婚約者としてサーマン王家へと嫁ぐことが決まった。


ユーリアス様は儚げなライトブルーの瞳に深青のサラサラな髪を持ち、スラッとしつつ、剣術により鍛えられた体型にシュッとした、本当に同じ人間なのかと思うくらいには美しいお顔を持ち合わせている。

その上、剣術や頭脳でもユーリアス様の右に出るものはこの国に居ないと言われる程、頭脳明晰、運動神経抜群、顔も超絶イケメンときた。


私は今からこんなスパダリなイケメンの奥様になるらしい。正直、この婚約話が来た時には信じられなかった。私なんかとは天と地くらい差があり、生涯関わる事のない人間だと思っていたからだ。


これはあくまで政略結婚、私達の間には愛なんてものは存在しないと頭の中では理解しつつも、私だって恋愛に興味がありまくる乙女なのだ。心の中で少しはユーリアス様と恋愛をしたいなと考えてしまう。



だが、そんな私の甘い妄想はサーマン王家に着いた途端、ボロッボロに打ち砕かれた。



使用人の皆様は至り尽くせりで何もケチをつける所が無いくらい、とても素晴らしすぎる対応をしてくれる。


だが、サーマン王家に着き、出迎えてくださったユーリアス様と顔を合わせるなり、そっぽを向いて最低限の挨拶を済ませると直ぐに走り去ってしまった。


これはもう、何処からどう考えても嫌われている。

私と顔を合わせるのも、話すのも苦痛と言うくらいに嫌われているのではないだろうか。いや、もう確定で嫌われているな。


そんな私とユーリアス様の話しているところを、使用人達は温かい目で見ていたとは知る由もない―――





「ふぁ〜……今日も頑張るかぁ……。」


日が昇る頃、私は専属侍女のマーシャに着替えをされながらそう呟いた。マーシャは私が公爵家に居た時からの侍女で、王家では唯一肩の力を抜いて話せる人物だ。


「お嬢様、手で覆わないであくびをするのははしたないですよ。」

「え〜…!もういいじゃない!!マーシャしか見ていないのだから〜〜……。」


私はマーシャとこんな事を言い合いながら朝の支度をする。こんな昔から行っているやり取りも、この暮らしの中ではとても楽しいなと思っている。


「ほら、お嬢様。もう少しでサーマン王子とのお食事の時間ですよ。」

「え〜……行きたくな〜い……。」

私はマーシャの前だから、と、いつも思っている言葉を零す。

「そんな事言ってはいけませんよ。何故そんなに嫌なのですか?」

「だって〜!!あの王子様明らかに私の事嫌っているのに一緒に食事とかもう地獄でしか無いじゃない!!!!そりゃぁ、行きたくもなくなるわよ!!」


「…お嬢様も鈍感ですねぇ。」


「ん?何か言った?マーシャ。」

「ふふ、いえ、何でもありませんよ。」


こんなやり取りをしながら王家で今日も過ごしている。何故かユーリアス様からは仕事や雑用をやらせて貰えないため、私は何も出来ていない。


そして今、あまりの暇さに廊下を彷徨いていると、何やら男の人の声が聞こえた。どうやら、声からするにユーリアス様とそのお友達らしい。


横を通り過ぎようとしたのだけれど、「なぁ、ところでユーリアスの大好きな彼女とはどうよ〜!」

というユーリアス様のお友達の言葉で、思わず壁に隠れてしまった。


確かに今、ユーリアス様のお友達は“ユーリアスの大好きな彼女”と言ったはずだ。


あぁ、やはり、ユーリアス様にはお慕いする女性が居らっしゃるのね……。そう考えると、今までの態度も納得がいくわ…。


そう思いつつも、ユーリアス様にはお慕いする女性が居ると考えるだけで、胸がチクリと痛む。


するとまた、話す声が聞こえくる。


「で?いつまで婚約してる気なの?」


思わず、ビクッと跳ねてしまう。


「そうだな。もう婚約期間は終わりにしようと思っている。だが、中々彼女にそれを伝えられないんだ。

俺はダメだな………。」


………えっ!? 私、ユーリアス様に婚約破棄されるの?

嫌だ、嫌だ…。もうその後の話を聞きたくなくて、私は走って自室へ駆け込んだ。


枕に顔を埋め、赤子のように声を上げて泣いた。


分かってた。分かっていた。

きっと、ユーリアス様にはお慕いする女性が居て、ユーリアス様は渋々、嫌だけれど政略結婚をさせられたのではないか、と。

元々私達の間に愛なんてものは一切ないと分かりきっていた。


でも、私はユーリアス様の努力家なところを本気で愛していたし、お慕いしていた。

だから、ユーリアス様と口から直接婚約破棄をしたいと聞くと、とても辛かったのだ。


ユーリアス様は心優しいお方だから、「婚約破棄をしたい」と私に言い出せないのね。



――――――その日の晩、ユーリアス様との晩食の時間になっても私は自室から出れなかった。


とてもユーリアス様と顔を合わせられそうではなかった。


何度かマーシャが私を心配して呼びに来てくれたけれど、私は自室に鍵をかけ、枕に顔を埋め、目を赤く腫らし泣き続けることしか出来なかった。


まだ赤く腫れている目元を鏡で見ていると、コンコンコンと、扉を優しく叩く音が聞こえた。

またマーシャが心配して来てくれたのだろうか。


そんなことを考えていると、「リア……大丈夫か…?」

と、とても優しい、私が聞き間違えるはずもない、大好きなユーリアス様の声が聞こえた。

この王家で私のことを“リア”と愛称で呼ぶのは彼しか居ない。


今はそんな呼び方を聞くだけでも辛くて、黙り込んでしまった。


「……リア、体調が悪いのか?どこか痛いのか…?」


そんな彼の優しさに溢れる言葉を聞くだけで、心臓がはち切れそうになってしまうくらい、辛かった。



きっと、このまま彼の気持ちを知りながら、ここで暮らしていくのは出来ない。

そう思い、私は自分の顔をパシッと叩き、酷く目元が腫れたまま、鍵を空け、ユーリアス様の元へと出た。


するとユーリアス様は、「ど、どうしたんだ!!その顔は…!」と言ってきた。醜くて見たくもないだろうと思いつつ、私は涙が溢れないよう必死に堪え、ユーリアス様に面と向かって言った。




「ユーリアス様、婚約を破棄して頂けませんか。」




その後、沈黙の冷たい時間が流れた。

ユーリアス様に婚約破棄をしたいと言われるくらいならば、私から言ってしまった方が傷が浅いはず。

そうは思っても、やはり、ユーリアス様から離れなくてはいけないのはとてもとても、辛かった。


するとその空気を破り、ユーリアス様はこう言った。



「嫌だ。」



と。思わず、「は?」と言ってしまいそうになった。


「な、何故でしょう…?」

感情が混乱したまま、ユーリアス様に問いかけた。


「それはこちらのセリフだ。な、何故嫌なのだ。なにか不便な事があったのか?君には毎月ドレスを贈ったり、アクセサリーを贈ったり、何一つ不便なく尽くしたつもりだったのだが…。それとも俺と結婚をするのが嫌なのか………?」


「え?」

確かに、毎月ドレスやらアクセサリーやらを大量に贈ってくださっていたが、これも仲が睦まじい夫婦を演じるためか、私がユーリアス様との婚約を了承したお礼のようなものかと思っていた。


「そりゃ嫌だよな……。こんな無愛想で、君に触れることさえ出来ない、ヘタレな男なんて。

心の中では君のことを愛しているし、可愛いと思っているのに、そんな言葉すら言えないだなんて………。

婚約者失格だよな………、本当は君の事が好きで親に頼み込んで婚約話をして貰ったのに、恥ずかしくて政略結婚だなんて嘘までついて。

初対面であんなに無愛想な対応をしてしまったのも、君が可愛すぎて目も合わせられなかった、あのまま君と話していればあまりの可愛さに失神して倒れそうだったから走って自室へ篭っていたなんて気持ち悪いよな……。」


「えっえっ………………………??????????」


「だから君には他におっ、お、想い人が出来てしまったのだろう?

きっとその男は俺なんかとは違って愛の言葉も囁けるしスマートに触れることも出来るのだろう…………。

嫌だ、嫌だ…。俺が悪いのに、君だけは誰にも取られたくない。

本当に済まなかった。これからは毎分君に愛の言葉を囁くし、デートだって毎日するし、きっききききききき、キスだってするし、もっとカッコイイ男になるから…………。捨てないで、欲しい………。こ、ここここここここここここここ婚約はははは破棄なんて言わないで欲しい………。自分勝手なのは分かっているけど……嫌なんだ…!」

ユーリアス様は泣きそうな表情で私に早口で言った。


「……………………は?」


私はもう、何が何だか分からなかった。

というか、想い人が居るのはユーリアス様の方じゃなかったのか。

ユーリアス様は私の事が嫌いじゃないの…?好きなの…?えっ…?いや、でも……。


「あの、話していらっしゃるところを聞いてしまったのですが、ユーリアス様には想い人が居て、私とは婚約破棄をしたいのではなかったのですか………?」


「!? なっ!それは誤解だ…!!」

「でも、婚約は終わりにしようと思っているって…。」

自分で言っておきながら、何だかまた泣きそうになってしまった。


「ち、違う!!本当に誤解なんだ!!!婚約“期間”は終わりにして、そろそろ本当に結婚をしようと話していて…!!!」


「えっ…!た、確かに…………!!!!!」


私は思い出した。確かに、婚約を終わりにするとは言っていなかった。

そして私は、今一番の疑問であることを聞いてみた。


「では、ユーリアス様は私にプロポーズをしようとしていて、そのお友達が仰っていた“ユーリアスの大好きな彼女”という想い人はわ、私のことだったんですの………?」


するとユーリアス様は、顔を真っ赤にさせ、ユーリアス様の体で水を沸騰出来そうなくらい、湯気を出した。


「……そ、そこから聞かれていたのか…。君の言った通りだ………。」


消え入りそうなくらい、小さな声で、子犬のように言うユーリアス様が何だかとても可愛くって、今までの私の勘違いが馬鹿馬鹿しくなってしまった。


まさか、あの完璧なユーリアス様はこんなにも初心だったのかと思うと微笑ましいと感じると同時に、こんなにも愛されていただなんて、と顔に熱が篭っていくのを感じた。


それから私達は、ユーリアス様に勘違いをしていたことを伝え、すっかり仲直りをした。

ユーリアス様からは何度も、自分がヘタレ過ぎるが故に君を傷付けてしまって申し訳ないと、これからもうリアを二度と傷付けない、一生かけて償うと、プロポーズなのか謝罪なのかよく分からない言葉を何度も何度も耳が取れそうなくらい聞かされた。


そしてその晩、私達は今までの中で一番楽しい、温かい食事をした。今までなら途方もなく長く感じた食事の時間も、今日は一瞬で終わってしまうように感じた。


その夜はユーリアス様に延々と愛を囁かれながら眠った。


ユーリアス様が横で延々と聞いている方が恥ずかしい言葉を囁き続けたせいで、ユーリアス様に愛を囁かれ続ける夢を見てしまった。眠れた気がしない夜だった。


――――そして私達は結婚式を迎え、ユーリアス様の奥様となる事が出来た。


ユーリアス様は花嫁姿の私を見るなり、鼻血を出してフラフラして倒れかけてしまい、結婚式が始まる前から慌ただしく、大変だったが、そんなところも可愛いなと思ってしまった。



――――その後私達は無事初夜を迎え、その次の日も、さらにその次の日も私はしばらく部屋から出ることは無かった。ユーリアス様はとても満足していたらしい。





―――――――あの国の王子はとてつもないくらいの愛妻家で、家に居ようが、外に居ようが、どんな式をしている時でも、ずっと妻に愛の言葉を囁き続け、ボディタッチをしまくるくらいには、妻のことを愛していて、更には嫉妬深すぎて妻に触れたり話しかけた者は無事で済まされないという話は、使用人だけに留まらず、国中の人々にも、隣国の人々にも知れ渡り、後世にもその話が伝えられたというのは、また別のお話。


「ユーリアス様、もう二度と離婚をしたいなんて言いませんよ。寧ろ、私が離婚なんてさせてあげるものですか!!!」


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

ユーリアス視点も投稿しようと考えていますので、そちらも見て頂けると嬉しいです♪

誤字・脱字など、おかしなところがあれば是非是非教えていただけますと助かります✨✨✨

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ