いざ!
あとがきに大切なお知らせがあります!
ぜひ最後までご覧になってください!
次の日、パーティーハウスへ行くと既に準備万端な様子の三人が待ち構えていた。
睡眠時間を削って話でもしていたのか、三人ともいつもより眠そうにしていた。
「とりあえずエルザ達にはしばらくは秘密にしておくことにしたわ」
「私達自身、完全に消化しきれてるわけじゃないしね」
「そっか、了解」
それならその選択を尊重しよう。
早速彼女達を俺の1Kマンションへ転移させることにする。
「準備はいいか?」
「大丈夫よ」
「なんだかドキドキするね……」
「異世界ですか……一体どんな場所なんでしょう」
緊張しているけどそれを必死で取り繕うとしているアイリス。
そわそわしている様子のウィドウに、目を輝かせているルル。
俺は三者三様の様子に顔をほころばせながら……
「テレポート」
転移魔法を使い、三人を俺の日本の自宅へと飛ばすのだった――。
一瞬の浮遊感の後に、見慣れた景色が現れる。
だが当然ながら、見慣れているのは俺だけで、残る三人にはまったく見ず知らずの場所だ。
「うわっ……」
「ここが」
「タイラーさんの家……」
対して広くない部屋の中に四人が入っているので、スペースはさほどない。
皆興味深げにキョロキョロとしていたが、一番最初に動き出したのはやはりルルだった。
「タイラーさん、これはなんの魔道具ですか?」
「それはパソコンって言ってだな……」
パソコンって何の魔道具って説明すればいいんだろうか?
なんでもできすぎて、ルル達にわかるように用途を説明するのも難しかった。
とりあえず物を買ったり情報にアクセスしたりできると聞くと、ルルはキーボードを適当に叩き始めた。
ルルばあさんや、パソコンを動かす時はマウスを使うんじゃぞ。
「部屋はここだけなの?」
「あっちにキッチンがあって、出て右側にトイレ、更に奥にあるのが風呂だ」
とりあえず部屋の中を案内していく。
といっても、ロフトもない1Kなので説明は一瞬で終わった。
「なんか思ってたより普通で、ちょっとほっとしたよ。よくわからないものはいくつかあるけど、部屋の内装や廊下はわりとこっちと似てるところも多いし」
「悲しいことに、俺ってこっちの世界じゃ一般人だからね……」
もしかするとウィドウ達の予想より下をいってしまっていたかもしれない。
くそぅ、俺が起業でもして富豪になってたら度肝を抜かせてやることができたのに……。
ディスグラドなら何不自由ない生活ができている俺だが、こっちでの俺はただのちょっと時給の良いフリーター。
最近では来る頻度も減っているし、もっと安いところに引っ越すことを真剣に考えるべきかもしれない。
そんな風にちょっとだけ落ち込んでいた俺の右腕に、むにゅっとやわらかい感触が。
見ればアイリスが俺にほほえみかけてくれていた。
「でもこっちの方が親近感が湧いていいわよ。イラの街なら誰にも負けない大魔術師なんだし、こっちの……日本で合ってるかしら?」
「ああ」
「この日本では、普通くらいがちょうどいいんじゃない?」
言われると、なんだか本当にそんな風に思えてくるから不思議だ。
現金なもんで、すぐに気分も上がってきた。
俺の頭をぽんぽんと撫でてくれたアイリスと一緒に立ち上がって、ぐっと背筋を伸ばす。
「日本の観光しましょうよ! ほら行きましょ!」
「よし! ――って、ちょっとストップ!」
ついそのまま外に出そうになっていた流れを強引にぶった切る。
アイリスが若干不満そうな顔をしているが、こればかりは譲るわけにはいかない。
なにせ今のアイリス達の格好はめちゃくちゃ冒険者装備。
外行きの格好のままなのでウィドウもアイリスも背中に自分の得物を背負っているし、ルルは魔法使い然としたローブと杖を身につけている。
今日がハロウィンなら話は変わったのかもしれないが、残念なことにド平日。
こんな格好で外に出てしまえば、間違いなくSNSにさらされて大変な騒ぎになってしまう。
「というわけで、とりあえずこれに着替えてくれ」
俺が取り出したのは昨日のうちにコンビニで買ってきたシャツと、その上から羽織るユニセックスのジャケットだ。
とりあえずこれに着替えてもらえば、なんかめっちゃかわいい外国人くらいで済むはずだ。
「あとちょっと窮屈かもしれないが、ルルはこれを常につけといてくれ」
ルルに渡すのは、以前凝っていた時に大枚叩いて買った高めのヘッドホンだ。
クォーターエルフとはいえ、ルルの耳は少し尖っている。
これが見えっぱなしだと、明らかにマズい。
フードは取れるとマズいが、三万ほどで買ったこのがっちりしたヘッドホンならそう簡単に取れることもないだろう。
お着替えタイムなので席を外そうとするとアイリスから、
「その……別にいいのよ、ここに居たって」
そう言われて思わずごくりとつばを飲み込んでしまう。
い……いいんですか?
俺ここにいて生着替えを見ていても、いいんですか!?
「ダメに決まってるじゃないですか!」
「そ、そうだよ恥ずかしい!」
だが現実は残酷で……鼻の穴を大きく広げて興奮していた俺を見たウィドウ達に、追い出されてしまった。
ちなみにウィドウとルルの顔は真っ赤だったが、こちらに背を向けているアイリスの耳も赤かった。
部屋越しに音が聞こえてくるが、シュルシュルという衣擦れの音ではなく、ゴトゴトという物騒な音ばかりだった。
装備を外してるわけだから、そりゃそうだよね……。
ただおかげで悶々とした気分になったりすることもなかったのは助かった……かな?




