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アラサー魔術師のゆる~いハーレムライフ  ~異世界と現代を行き来してのんびり暮らします~  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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『戦乙女』の憂鬱 後編

【side エルザ】


 皆でやれば、テントの設営にもさほど時間はかからない。

 身体強化さえ使えれば、女だろうと非力とは言わせないだけの力が手に入る。

 私達は下手な男達よりパワフルに、力仕事をやってのけた。


 夜ご飯の炊事はウィドウの担当だ。

 大して強い魔物が出てこないこの高原では、漏れ出す匂いも心配する必要はない。

 やって来た分がそのままパーティーの収入に早変わりするだけだ。


 今日の夕餉はポリッジと干し肉。

 干し肉を千切ってから粥の中につける。

 塩みを足してからまとめて木の匙で救い、音を立てずに口に運ぶ。


 うん、いつものポリッジの味だ。

 よく言えば素材の味を活かした、悪く言えば薄い淡泊な味。

 周りの様子を確認してみると、そこには微妙そうな顔をするメンバーの顔があった。


「やっぱりタイラーに来てもらうべきだったんじゃないかしら……」


 アイリスがどこか疲れた様子で、ズズズと音を立ててポリッジを食べ進める。

 他のメンバーも、何も言わずに無言でそれを肯定していた。


 今の食事は今までと比べると大して変わらぬものなんだけど、人間というのは贅沢な生き物。


 一度タイラーと一緒にガルの森の探索をしていた時のあれを味わってしまうと、どうしても味気なく感じてしまうのだ。


 重さを気にせず荷物を運べる『収納袋』の価値は、私達冒険者にとっては何者にも代えがたいほどに高い。


「それに、タイラーはテレポートの魔法が使えるじゃない。なんなら彼に毎回お屋敷に送ってもらえればそれで……」


「はぁ……何度も言ってるじゃないアイリス。それはできないって結論になったでしょ」


 そりゃあため息も出るというものだ。

 あの一件以来、彼女は何かあればすぐにタイラーに頼ろうとする。


 元々全てを一人で済ませようとしていたアイリスが誰かを頼ろうとするというそれ自体はいいと思うんだけど……今まで誰にも頼ってこなかった弊害か、寄りかかり方が尋常じゃないのよね。


 そのまま寄りかかられたら、タイラーからはまず間違いなく重い女認定されるだろう。

 そしてこれは私の勘だけど、彼はそういう女の子を苦手とするタイプだと思う。


「たしかにタイラーは優しいから、頼めば許してくれるかもしれないわ。でも私達と彼の関係がずっと続くわけじゃない」


 明日をも知れぬ冒険者稼業、たしかにあれだけ強いタイラーが簡単に死ぬことは想像できないけれど、彼が気を変えてどこかへ行ってしまうことはあるかもしれない。


 だって彼には――テレポートの魔法がある。

 他の多くの人達とは違い、タイラーにとって距離というのは大した問題にはならないのだ。


 それに自由に屋敷に帰れて、重さを気にせずに食材を運び込める便利さに慣れてしまえば、彼がいなくなってからが大変だ。


 だからたまに甘えてありがたく思えるくらいに留めておくのが、距離感としては一番いいと思っている。


「でもタイラーは勝手に行ったりはしないと思うんだ。タイラーは根が真っ直ぐだし」


「ですね、タイラーさんってああ見えて実は結構真面目ですから」


「ルル、ああ見えてってナチュラルに毒吐くね。でもたしかにあんまりいやらしい視線とかは感じないから、楽ではあるよね」


 これはいいことなのか悪いことなのか。

 ここ最近うちのメンバーのタイラーへの評価がとんでもなく上がっている。


 たしかに彼は優良物件だと思う。

 基本的にやる気はないけど、自給自足生活できる豪邸も持ってるし。


 オリハルコン級に届くほどの魔法の腕もあるわけだし、それに見た目だってちょっと童顔っぽいけど悪くないし。


 結婚するならああいう男の人が……って、違う! そうじゃない、私!


「と、とにかくっ! 今はゴーレム探しのことだけ考えるべきよ! 食料事情の改善は、ルルの今後に期待ってところかしら」


「は、はいっ、頑張りますッ!」


「エルザさん、なんか焦ってる?」


「ああいう時は大抵くだらないこと考えてるんだよ。ライザちゃん知ってる」


 現状ではまだ満足のいく水準の『収納袋』は作れないらしいけど、タイラーの見立てではそう遠くないうちに、素材さえ揃えればある程度のレベルのものならできるということだった。


 もしそうなったらその時は金に糸目はつけず、ルルに作ってもらうつもりだ。



 というわけで私達だけの力で頑張ろうと再度気合いを入れ直し、次の日からも調査を続けていく。

  そして更に五日後、そろそろ食料が心許なくなるか……というところで、ライザがとうとうお目当てのものを見つけてくれた。


「エルザさん、これっ!」


 そう、私達は地下深くへ続く洞穴を、ようやく発見することができたのだった――。


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