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アラサー魔術師のゆる~いハーレムライフ  ~異世界と現代を行き来してのんびり暮らします~  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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逸材


「これは……青色、ですか?」


「ああ、どうやらアンナの得意な魔法は水属性らしい」


 アンナが手をかざした星見球は、目にも鮮やかな青の光を放ちだした。

 星見球は本人の魔法の資質を教えてくれる。


 色は得意属性、そして輝きはその属性に持っている才能。

 つまり強い青色発色をしていることからもわかるように、どうやらアンナには水属性の強い適性があるらしい。


「水属性はあると便利だぞ。氷やお湯が出せるようになれば、宿屋のグレードは一気に上がる。今までかけていた手間もコストも、一気にグッと減るはずだ」


 水属性は結構範囲が広く、水でさえあれば固体・液体・気体を問わない。

 霧を生み出す魔法も、氷を生み出す魔法も、合わせて水魔法ということになる。


「たしかに……夏場なんかだと、どうしても食材はすぐ駄目になっちゃいますからね。お風呂を用意するのも、男手がお父さんしかいないうちだと難しいですし……」


 この国ではある程度規模のデカい街だと、水屋や氷屋と呼ばれる存在がいる。

 簡単に言えば水や氷を売って歩く魔術師達のことだ。


 金をかけられる宿屋は彼らと契約を行い、定期的に氷を購入することが多い。

 そして金属の箱の中にバカデカ氷を置いておく、昔ながらの冷蔵庫を使っているわけだ。

 けれど大きな氷を作るには当然ながら多量の魔力を使うため、当然ながら値が張る。


 風呂を沸かすのは熱湯を頼むより水を運んで薪で沸かす方が早いが、実際かなりの重労働だ。

 頑張れば子供にもできるような仕事ではあるが、それを頼むにもやはり金がかかる。


 そこらへんのコストをまるっと抑えられるのは、経営の観点から見てもかなりありがたいだろう。


「それに水魔術師なら、最悪潰しも利くし」


 水屋や氷屋は冒険者と比べれば稼ぎは落ちるが、特に死の危険なんかもないために安定志向の水魔術師の進路として人気だと聞いている。


 アンナが最悪宿屋を継がなかった場合であっても、水魔法さえ覚えておけば食いっぱぐれることはないだろう。


「私でも使えるようになりますかね?」


「そりゃなるさ。お前、俺のこと誰だと思ってるんだ」


「誰なんですか?」


「タイラーさんです」


「今のやりとりにっ、なんの成果も得られませんでしたっ!」











「じゃあまず魔法の基本のキから始めよう。なお水魔法だけを重点的に学ぶような横着はしないように。魔法っていうのは得意属性を極めればいいと思われがちだが、たとえ初級魔法しか覚えられなかったとしてもとりあえず色々と手を出してみるに越したことはないと、俺は思っている」


 俺はアンナのお父さんであるダンナーさんとお母さんであるマリーさんからの許可をもらい、自室でアンナに教鞭を振るうことになった。


 こういうのは雰囲気が大事だと思い、小道具の眼鏡と指示棒を用意する。

 アンナをしっかりと机に座らせ、俺はくいっと眼鏡を押し上げた。


「はいタイラー先生!」


「なんだね、アンナ」


「以前冒険者の魔術師の方は、得意属性をひたすら使うのが魔法上達の近道と言ってました!」


「そいつはモグリだ、聞かなかったことにしなさい」


「ええっ!?」


「というのは冗談だ。現代ま……いや、現在の考え方だと魔法は一属性使えればいいと思われているが、かつては最低でも四属性は使えた方がいいという考え方の方が主流だった。魔法というのはまったく関係していないようで、実は案外関わっている部分が多いからな」


 用意しておいた蝋の板に、ノミを使って『魔法の属性』と書き込んでいく。

 紙は高いので、基本的には蝋板で済ませてしまうつもりだ。


「じゃあまず魔法の属性がいくつあるか、アンナは知っているか?」


「火・水・土・風の四属性ですよね」


「それだと足りない。そこに聖と魔が加わり、最後に星を加えた七つが、いわゆる属性と呼ばれているものになる」


「聖属性と魔属性、それに星属性ですか……?」


 聖属性と魔属性というのは、少々理解のしにくい概念だ。


 そもそもの話をしてしまうと、最初は魔法を四つの分類で分けるだけで済んでいた。

 けれど技術の発展に従って、徐々にそれでは表せないような魔法が増えてきたのだ。


 熱湯を相手に吹きかけるバーンジェットという魔法は火魔法と水魔法の複合魔法にあたるが、現象としては熱せられている水が出ているために水魔法という形になる。


 それらは理論上説明がつくが、回復魔法や結界魔法といったものに関しては完全にお手上げ状態になった。


 そこでできた概念が、上記の二つの属性である。

 誤解を恐れずざっくり言えば、なんか神々しくてプラスに働くのが聖属性で、暗くて陰キャっぽいのが魔属性だ。


 そしてそれら六属性全てをかなりの練度で使えるようになって初めて使えるようになるのが、星属性魔法である。


「星属性って、おとぎ話でしか聞いたことないですけど……」


「まあ、そうだろうな」


 現代で星属性魔法が使える人間のことを、俺はあまり聞いたことがない。

 使えるやつも一人や二人くらいならいるのかもしれないが、積極的に情報を教えたりはしてないんだろう。


 なので星属性に関しては、俺もあえて説明はしないことにした。


 ちなみに星属性魔法はちょっと特殊なため、この星との相性や天体の位置関係でできることが大分変わってくる。


 俺は空を飛んだり小隕石を落としたりするのが精一杯だったけど、俺の師匠だと意識だけを別の場所に飛ばして、あらゆる地点の情報を集めることができたりしていた。

 多分見たことはないけど、他にももっと色んなことができてたと思う。


 アンナに教えながら考えているうちに、ふと疑問が浮かんでくる。


(あれ、そういえば……地球で星魔法を使ったら、どうなるんだろう?)


 星魔法でできることは、星との関わりによって決まる。

 であればこのディスグラドの星と地球、二つの母星を持つ俺の星魔法には、なんらかの変化が起きてるんだろうか?


「どうかしましたか、タイラー先生?」


「いや、なんでもない。とりあえず授業を進めるぞ」


 気を取り直して授業を進めていく。

 やはりアンナの飲み込みは早く、座学なら数日もしないうちに終わりそうだった。

 ……ひょっとしたら彼女、かなりの逸材かもしれない。


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